図4.20の眼鏡フレーム除去結果と眼鏡なし顔画像との類似度および人物1と2を含む15 人分の平均類似度を表4.3 に示す.0.800を大きく上回り,精度良く推定できていることが 判る.
表 4.3: 眼鏡なし顔画像と推定結果の類似度
人物1 0.905
人物2 0.840
平均類似度(15人分) 0.871
今回用いた眼鏡顔画像では,画像内の眼鏡フレーム領域を良好に抽出することができた が,本手法は画像輪郭を抽出してマッチングを行っているため,画像輪郭に途切れがある 場合には抽出を誤る恐れがある.この問題に対応するためには,画像内に分布している物 体や画像輪郭をひとまとまりとして扱えることが必要である.眼鏡フレームの形状は対称 構造を持つという特徴があることを踏まえつつ,上記のような考えに基づいた方法を次章 で述べる.
レームの各部品を関数で近似したパラメトリック眼鏡フレームモデルを構築した.分布範 囲が広く安定した抽出が期待できない輝度情報は扱わず,画像輪郭により物体形状を求め,
本モデルにマッチする領域を抽出し,肌の輝度値で置換することにより眼鏡なし画像を推 定する方法を提案した.
以下に,本章で得られた成果をまとめる.
• 眼鏡フレームの各部品形状を関数近似し,パラメータ値によりさまざまな形状を生 成できるパラメトリック眼鏡フレームモデルを構築した.
• 本モデルを用いて眼鏡顔画像の画像輪郭を手がかりとして眼鏡フレームの各部品を 抽出し,本モデルの有効性を示した.
• 抽出した眼鏡フレーム領域内の画素の輝度値を,肌の輝度値を用いて置換すること により眼鏡なし顔画像を推定する方法を確立した.平均類似度は0.871 となり,良好 な結果を得た.
appearance ベースの方法に比べると,本研究で目標としている眼鏡なし顔画像(原パ
ターン)に対して高い類似度(推定精度)が得られた.これは,本章の方法は,正規化誤 差の影響を全く受けないことによるものと考えている.ただし,原パターンとの類似度が 高くとも,眼鏡フレーム領域内の補間結果には,主観的に眼鏡フレーム領域に違和感の残 る部分があった.これは,類似度は高かったのだから,appearance ベースの方法において 議論したように,認識や識別処理には支障はないと考えることができるが,表示などで主 観的に観察する場合には問題となる場合もあろう.本研究では,先に議論した理由により,
原パターンとの類似性という意味で忠実性を評価基準においており,本結果は心理的な忠 実性や違和感のような領域まで評価を考えると,appearance ベースによる方法がより優れ ていると見ることもできる.
本モデルを用いた方法により画像内の眼鏡フレーム領域を良好に抽出することができた が,本手法は画像輪郭を抽出してマッチングを行っているため,画像輪郭に途切れがある 場合には抽出を誤る恐れがある.この問題を回避するために,画像内に分布している物体
や画像輪郭をひとまとまりとして扱えることが必要である.このような場合に対応できる ような形状モデルについては次章で述べる.
デルを用いた眼鏡なし顔画像の推定
5.1 序言
前章では,「model ベースによる方法」の枠組として,眼鏡フレームの形状について,各 部品毎に形状を関数近似によりモデル化し,眼鏡フレーム領域を精度良く抽出し,補間す ることにより良好な眼鏡なし顔画像が得られた.この方法は,画像輪郭を手がかりに探索 を行うため,画像輪郭に途切れがある場合は誤抽出をする恐れがある.そこで,本章では,
画像内に分布している画像輪郭をひとまとまりとして扱うよう,Kassらの提案した動的輪 郭モデル(Snakes)を用いることにより眼鏡フレーム領域を抽出する[71].また,その拘 束条件として対称構造物体に収束するように設計する.
眼鏡フレームをはじめとする工業製品の多くは機能的な側面や,作成の容易さの側面か ら左右対称な形状となっていることが多い.また,動植物においても,顔や体全体,花弁 などほぼ左右対称とみなせる部分がある.これら対称構造物体は,自動車や顔など,ある シーン内で抽出する対象物となることが多く,対称構造物体の自動抽出は,物体追跡や画 像合成などへ応用できる[78]-[80].
対称構造物体は,対称軸で折り返したときに軸の左右の領域が丁度重なる[81].対称構 造物体を抽出する最も簡単な方法として,画像内から物体を抽出し,それが対称構造物体 であるかどうかを調べれば良い.しかし,この方法は対称軸の与え方に依存し,場合によっ ては対称軸を試行錯誤的に与えなければならないので,処理コストが莫大になる危険があ る.一方,抽出した後に対称性を調べるのではなく,抽出方法そのものが対称性を考慮した
ものであれば,画像内から対称構造物体を抽出できる.ただし,画像輪郭を用いる場合に は途切れが生じることがあるため,各々個別に抽出するだけでは不十分な場合がある.し たがって,画像内に分布している画像輪郭をひとまとまりとして扱えることが必要である.
Kass らの提案したSnakes は画像輪郭が途切れている場合にも対応でき,連結した滑ら かな曲線が反復計算により自動的に求まるなどの利点を持っている.本章では,対象物の 外側に左右対称な初期輪郭をもたせ,その内部にある物体輪郭に対称構造を保持したまま 収束するようなSnakes を用いた眼鏡フレーム領域抽出を試み,本研究で目標としている 眼鏡なし顔画像の推定を行う.