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結言

ドキュメント内 多相交流アークの変動特性の解析 (ページ 164-169)

6.1 本論文のまとめ

本論文では,多相交流アークの放電の挙動と温度特性についてまとめた.多相交流アーク を含む熱プラズマは,数千度という高温を生み出すことができるため,インフライト溶融や ナノ粒子生成プロセス技術として実用化が期待されている.一方で,熱プラズマは安定した 制御が難しいという課題を抱えている.多相交流アークは,60Hzの商用電源周波数を使う ことを基本としているため,アークおよび温度分布の変動を正しく理解することは極めて 重要である.本研究では,高速度カメラとバンドパスフィルタを組み合わせて測定システム により,多相交流アークの放電と温度特性が,相数と電極本数,駆動周波数,そして雰囲気 圧力から受ける影響について明らかにした.

6.1.1 相数と電極本数が放電と温度特性に与える影響

第3章において,相数と電極本数が放電と温度特性に与える影響について調べ,明らかに した.3相交流アーク,6相交流アーク,12相交流アークおよび6相2段交流アークについ て比較を行った.相数と電極の本数が増えることで,アークがより均一に存在する領域を作 り出すことを明らかにした.これは,アークの発生点が増えることと,アークのスウィング が増大するためである.温度分布については,アークに起因する高温領域が 7,000 K から

12,000 Kであることを明らかにした.アーク面積は12相交流アークのものが最も大きく,

アーク存在確率分布においても最も均一性の高い分布を持つことを明らかにした.多相交 流アークが材料の溶融や蒸発によるナノ材料の生成のための技術としての可能性を示すこ とができた.

6.1.2 駆動周波数が放電と温度特性に与える影響

第 4 章において,駆動周波数が放電と温度特性に与える影響について調べ,明らかにし た.6相交流アークと6相2段交流アークそれぞれの構成において,周波数を180Hzまで上 げた時の特性について比較を行った.6相交流アークの場合は,どの圧力においても駆動周 波数の増加に伴い,アークがより放電領域の中心部に集中し,温度も上昇することを明らか にした.これは,アーク放電の間隔が短くなることによって形成される,中心部の高温領域 が熱解離を促進し,電気伝導度の高い領域を形成するためであると考察した.温度分布につ いては,アークに起因する高温領域が7,000 Kから12,000 Kであることを明らかにした.ア ーク面積は周波数の増加と共に減少し,面積の変動幅も減少することを明らかにした.

180Hzにおいては最もアーク面積の変動が小さく,均一性の高いプロセスを実現することが

期待できる結果を得ることができた.つまり,駆動周波数の増大は,交流電力に起因するア ークおよび温度場のゆらぎを抑制する効果があると結論づけた.

6相2段交流アークにおいては,駆動周波数の増加に伴い.アークが放電領域の外周部に

集中していくことを明らかにした.これは電気的に位相が60Hzずれている隣接する電極と の距離が近いため,隣接する電極から発せられるアークの影響を受けることで,アークのス ウィングが大きくなるために起こっている現象であると考察した.100 kPaにおいては駆動 周波数の増大がアーク面積の増大と変動の抑制に効果があることを示したが,低圧の40 kPa においてはそれらに相関が認められなかった.

6.1.3 雰囲気圧力が放電と温度特性に与える影響

第 5 章において,雰囲気圧力が放電と温度特性に与える影響について調べ,明らかにし た.6相交流アークと12相交流アークそれぞれの構成において,雰囲気圧力を40 kPaから 大気圧の間で変化させた場合の特性について比較した.6相交流アークにおいては雰囲気圧 力の増加とともに,最高温度が上昇し,7,000 K以上の高温領域が熱ピンチ効果により減少 することを明らかにした.また,アーク面積は雰囲気圧力の増加に伴い減少することがわか った.アーク存在確率分布については,雰囲気圧力上昇とともに,均一性が低くなることが わかった.6相2段交流アークにおいては,雰囲気圧力の増加とともに,最高温度が上昇し,

7,000 K以上の高温領域が減少することを明らかにした.雰囲気圧力の増加に伴いアーク面

積は減少し,アークが放電領域外周部に偏在する様子がより顕著になることを明らかにし た.12相交流アークにおいては,雰囲気圧力の上昇に伴い,最高温度が上昇し,7,000 K以 上の高温領域が減少することを明らかにした.また,アーク面積は雰囲気圧力の増加に伴い 減少することがわかった.アーク存在確率分布については,雰囲気圧力上昇とともに,均一 性が低くなることがわかった.実際にプラズマ中に材料を投入してプロセスを行う場合を 考えると,温度とアークの存在確率分布の均一性が重要である.比較的高い温度は必要とし ないが,処理の均一性が求められる場合は低い圧力,高い温度が求められる場合は高い圧力 が適している.その場合,アーク存在確率の均一性が低下するので,周波数や電流条件との 組み合わせなどにより,均一性の向上を考えることが重要であると結論付けた.

6.2 今後の研究課題と展望

本研究で行った,多相交流アーク装置の上部からアークの挙動と温度特性の計測にお いて,おおよそのパラメータによる影響を明らかにできたと考える.以下に,実用化にむけ

た,例えば上,下段の条件に差をつけることで温度勾配を設ける場合に特に必要になる.

第3に,材料投入時の温度計測である.材料投入時は,材料の溶融や蒸発のために熱を奪 われるため,プラズマの温度は低下する.また金属材料の場合はメタルプラズマとなり,プ ラズマそのものの状況が大きく変わることが予測される.

第4に,数値解析によるアークの挙動および温度の計算である.上記に述べた新たな計測 方法の開発と共に,相互に補完しつつ開発することでより精度の高い機構設計が可能とな ると考えている.多相交流アークのような変動の大きな放電現象を数値解析で明らかにす るには技術的難易度は高いと思われるが,実現すると自由な電極配置,プロセスパラメータ の設計が可能であり,非常にパワフルなツールになることが期待される.

第5に,実用化のための周辺技術の開発である.多相交流アークによる熱源生成技術とと もに,周辺技術も完成させる必要があるのは言うまでもない.材料プロセシングを行う場合,

安定した供給機構,粒径制御のための急冷機構,そして材料の回収方法である.また連続運 転の安定性や,メンテナンスサイクルなどの見極めを行う必要がある.より信頼性の高いプ ロセスの実現のためには,加工状況をモニタリングし,パラメータ設定にフィードバックで きるようなシステムも望まれる.例えば,アーク挙動を測定し,もしくは電圧波形に同期さ せることにより,適切なタイミング,場所に原材料を投入できるシステムなどである.

以上のような課題を解決することにより,高いエネルギー効率,大容量の高温領域そして 長い材料滞留時間という多相交流アークの特徴を活かした,新しい材料プロセシングシス テムが実現すると考える.

謝辞

二十有余年前,修士課程修了と共に企業への就職の道を迷わず選び,その後も学位の取得 に特に関心を持たなかった私が,社会人コースの学生として九州大学に受け入れていただ き,今こうして論文を書き上げることができたことに驚いています.このような機会を与え ていただき,研究とは程遠い道を歩んできた私に対して,懇切丁寧かつ熱心にご指導をいた だきました渡邉隆行教授に,心より感謝申し上げます.生涯初の国際会議(ICFD 2017)に おける発表,2編の論文の投稿,国内会議における発表を通じて,論文の構成に関する考え 方,文献調査の重要性,そして学術英語について,仔細にわたるご指導を賜りました.そし て2018年7月には韓国の仁川で開催されたICMAP 2018にて,招待講演者として発表する という,貴重で光栄な機会を与えていただきました.本当に有難うございました.渡邉先生 には,2014年6月に初めてお目にかかり,以後継続して弊社の開発テーマに対するご助言 と多大なご協力をいただいています.直接,博士を目指すきっかけとなったのは,2016 年 12 月に島根県松江市で開催された研究会後の懇親会でした.偶然に先生と向かい合わせの 席になり,途中の経緯はお酒に洗い流されて記憶にありませんが,博士課程入学の選択肢を お示しいただきました.産学連携の仕事にも携わりたいと常々考えていた私は,学位の重要 性も感じておりましたので,前向きに考えようと思いました.一方で,仕事の傍ら学業をこ なす自信もなく,非常に迷いました.翌日の会議後,松江駅にて帰途につく際に,渡邉先生 より願書の締切日を明確に伝えられた瞬間,どこかで話半分に考えていた気持ちは吹き飛 びました.その後真剣に考えるものの,今まで想像もしていなかった話だけに,本当に自分 にできるのか不安でした.年末にもう一度お会いする機会を作っていただき,具体的な内容 をご教示いただいた上で願書を提出することを決めました.博士課程入学へのきっかけも 与えていただき,感謝しております.

論文の審査,ご指導をいただきました,システム情報科学研究院の白谷正治教授,工学研 究院 化学工学部門の深井潤教授に心よりお礼申し上げます.お忙しい中,審査をお引き受 けいただき,また温かなご指導を賜り,誠に有難うございました.客観的な見地からのご指 摘,ご指導を頂いたことで,論文の質を高めることができたと感じております.年末年始に かけて,貴重なお時間を私の論文審査に充てていただきましたこと,感謝申し上げます.

田中学先生にも大変お世話になりました.本論文で示したデータは,田中先生が重い機材 を持った精鋭の学生さんたちを率い,大阪まで何度もお越しいただき,測定していただいた ものです.投稿論文の作成にあたっては,私の頼りない英語を精緻に修正いただきました.

私の理解の追い付かない事柄については,何度も相談にのっていただきました.また,論文 作成や学会発表の準備やスケジュール管理についても,不慣れな私にきめ細かいアドバイ スをくださいました.随分と年上の学生で,扱いにくい部分もあったかもしれませんが,親 身なご指導に感謝いたします.ありがとうございました.

測定,データ解析,発表資料そして論文の作成にあたり,橋詰太郎さん,今辻智幸さん,

ドキュメント内 多相交流アークの変動特性の解析 (ページ 164-169)