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第 7 章 結 言
本研究では,Moss型LNG船タンクスカートに作用するせん断荷重に対する弾塑性座屈強度評 価を主眼として,せん断および捩り荷重作用下での短い無補強円筒殻の弾塑性座屈強度における 形状初期不整等の影響,およびリング補強材の寸法および球形タンク構造がリング円筒殻のせん 断座屈強度に及ぼす影響,について明らかにした.さらに,潜水船等に用いられるリング補強円 筒殻を主眼として,外圧作用下のリング補強円筒殻に対し,補強リングの影響による胴板の周方 向応力の低下の影響を考慮した胴板座屈強度,全体座屈強度,および補強リングの横倒れ座屈強 度,の推定方法の高精度化を図るべく,弾性域での各座屈強度における新たな推定式を提案しそ の精度をFEMにて検証するとともに,その塑性修正方法について検討した.
第1章の緒言に続き,第2章では本論文で用いた基礎理論および数値解析理論について概説し た.あわせて,変位-ひずみ関係の非線形項の簡略化が座屈圧力の推定におよぼす影響,および 座屈時の従動荷重が座屈圧力の推定におよぼす影響について簡単な例題を基に検証した.
第3章では,Moss型LNG船タンクスカートに作用するせん断荷重に対する弾塑性座屈強度評 価を対象として,せん断および捩り荷重作用下での短い無補強円筒殻の弾塑性座屈強度における 形状初期不整等の影響,およびリング補強材の寸法および球形タンク構造がリング円筒殻のせん 断座屈強度におよぼす影響について調べ,以下の結論を得た.
1)せん断荷重を受ける短い無補強円筒殻の弾塑性座屈強度は,捩り荷重の場合のそれよりも大き な値となることが分かった.これは,捩り荷重の場合は円筒殻全体で座屈するのに対し,せん 断荷重の場合は円筒殻の一部のみで座屈が生じることが原因と考えられる.面外変形が生じる ことで座屈変形を妨げるような垂直引張力が生じるが,捩り荷重を受ける場合には垂直引張力 を受ける領域が全体に拡がり,せん断荷重の場合は座屈が生じている場所にのみ生じ,その値 は相対的に大きい.その結果,引張応力の大きな位置での座屈強度が上昇し,面外変形の増加 とともに,座屈の生じる場所が初期の位置から次第に引張応力のより小さなその両側の領域へ シフトするが,両側の領域では生じるせん断応力が初期の位置より小さいため,捩り変形より も弾塑性座屈強度が大きくなる.
2)短い無補強円筒殻の場合,せん断荷重および捩り荷重ともに,最大初期不整量が大きくなる につれて弾塑性座屈強度が低下していくが,せん断荷重については,最大初期不整量が板厚
の10%を超える場合,弾塑性座屈強度はほとんど変化しない.さらに,塑性化パラメータ
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の値が大きくなる,すなわち弾性的な座屈になるにつれ,初期不整が弾塑性座屈強度に及ぼ す影響は,せん断荷重および捩り荷重を受ける円筒殻ともに小さくなる.
3) 複数のリング補強材を考慮した円筒殻にせん断荷重を付与した場合,円筒殻に軸圧縮荷重時 に補強リングが節となる座屈となるようにリング寸法を決めたとしても,補強リングを巻き 込む座屈が生じる可能性がある.また,複数のリング補強材を考慮した円筒殻にせん断荷重 が作用する場合,フランジのみ板厚を増加させるとせん断座屈荷重はほとんど変化しないが 座屈モードがリングを節とするモードに転じる.一方,ウェブのみ板厚を増加させるとせん 断座屈荷重は上昇するが座屈モードは変化しない.ウェブとフランジの板厚を両方とも増加 させるとせん断座屈荷重および座屈モードの変化の両方に効果がある.
4) 円筒殻の上端境界条件が座屈強度に及ぼす影響について,球形タンクも模擬した解析モデル を用いて確認した.その結果,円筒上端面を平面保持として検討することは安全側の条件で あり問題ないと考えられる.
第4章から第6章では,潜水船等に用いられる外圧を受けるリング補強円筒殻の座屈強度評価 を対象として,外圧作用下のリング補強円筒殻に対し,補強リングの影響による胴板の周方向応 力低下の影響を考慮した胴板座屈強度,全体座屈強度,および補強リングの横倒れ座屈強度,の 推定方法について調査した.
第4章では,外圧作用下の弾性域におけるリング補強円筒殻の胴板座屈圧力の推定手法,およ び胴板座屈圧力の塑性修正方法について調べ,以下の結論を得た.
1) 弾性域における胴板座屈強度について,補強リングの影響による胴板の周方向応力低下の影響 を考慮した推定式を提案した.提案した推定式に対してFEM解析結果と比較した結果,これ まで一般的に用いられてきた無補強円筒殻に対する推定式に比べて精度の良い推定ができるこ とを確認した.
2) 胴板座屈圧力の塑性修正方法について,Johnsonの塑性修正法を適用するに当たり参照すべき 応力算出位置と算出応力について調査した.その結果,胴板座屈圧力に対しては,リング間中 央での板厚の各層におけるミーゼス応力の平均を用いることで塑性修正が適切に実施可能であ ることを確認した.
第5章では,外圧作用下の弾性域におけるリング補強円筒殻の全体座屈圧力の推定手法,およ び全体座屈圧力の塑性修正方法について調べ,以下の結論を得た.
1) 新たに補強リングの項を追加した周方向の面内力,モーメントを力のつり合い式に導入し,リ ング補強円筒殻の全体座屈圧力簡易推定式を導出した.さらに,リングの寄与分の曲げ剛性に
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関して曲り梁効果による中性軸位置の変化とせん断変形の影響を考慮することを提案した.
提案式は,外フレーム様式では傾向をとらえ従来式と比べ推定精度が向上しているが,内フレ ーム様式ではより誤差が大きい結果となっている.しかしながら,内外フレームの違いによる 全体座屈圧力の比率に関しては,提案式は従来式より改善できていること,実際に用いられる リング補強円筒殻の長さと直径の比(𝐿 𝑑⁄ )は,概ね𝐿 𝑑⁄ = 2~3程度の範囲内であり,これら に対する内外フレームの全体圧壊圧力の比は8%程度であることから,内外フレームの違いを 考慮した全体圧壊圧力の推定において,提案式は従来式に比べて大幅に改善されている.
2) 全体座屈圧力の塑性修正方法について,Johnsonの式を用いる方法を採用したうえで,参照応 力をリングと胴板のミーゼス応力を胴板と補強リングの面積比を用いて平均化した値を用い ることで比較的精度の良い推定が可能である.
第6章では,外圧作用下の弾性域におけるリング補強円筒殻の補強リング横倒れ座屈強度の推 定手法,および補強リング横倒れ座屈強度の塑性修正方法について調べ,以下の結論を得た.
1) 補強リングの横倒れ座屈におよぼす胴板の面内圧縮力作用下での曲げ剛性の低下の影響,及び 補強リングの影響による胴板の周方向応力低下の影響を考慮した,新たな補強リングの横倒れ 座屈圧力推定式を提案した.
2) 提案式は,内フレーム方式および外フレーム方式によらず,弾性域における補強リングの横倒 れ座屈圧力が高い精度で推定可能であることを確認した.
第7章では本論文の研究結果をまとめて総括した.
以上の結果より,Moss型LNG船タンクスカートのせん断荷重下での弾塑性座屈強度評価,お よび潜水船の外圧作用下での胴板・全体・横倒れ座屈強度評価に対し有意な資料を得ることがで きた.
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