7.3.1 密度制御によるAl2O3:CrのPDDの変化
図7.1に4, 6, 10 MV X線ビームに対する各密度制御率のAl2O3:Crと水の立方体のPDDを
示す。全てのエネルギーのX 線ビームに対してAl2O3:Cr 立方体のPDD は密度制御率が大 きくなるほど、すなわち密度が小さくなるほど緩やかに減衰し、密度制御率 70%では水の 立方体のPDDとよく一致した。従って、光子線治療においてAl2O3:Cr TLDのエネルギー依 存性には電子密度が大きく影響し、密度制御により水の電子密度に近づけることで、組織等 価性を向上させることができることが示唆された。また、Al2O3:Crの電子密度が水の電子密 度と同じになるときの、Al2O3:Crの密度制御率は69.4%であり、モンテカルロ計算による結 果は妥当であることが確かめられる。
図7.1 4, 6, 10 MV X線ビームに対する密度制御Al2O3:Cr TLDと水のPDD曲線 (scoring volumeはビーム軸中心の1.0 × 1.0 × 0.5 cm3)
7.3.2 組織等価密度制御Al2O3:CrのOPFと PDDの評価
図 7.2 に 4, 6, 10 MV X 線ビームに対する密度制御率 69.4%の Al2O3:Cr と水の立方体の
OPF比を示す。OPF比は、全ての照射野サイズとX線エネルギーの吸収線量の平均値で正 規化したものである。各照射野サイズとX線エネルギーについて、OPF比はほぼ一定で、
変動は-0.9–1.3%程度でシミュレーションの統計的不確かさの範囲内であった。一辺が5 cm
と10 cmの正方形照射野のみでは全てのX線エネルギーにおいて0.7%以内でシミュレーシ
ョンの統計的不確かさの範囲内であった。従って、光子線治療において、照射野サイズとX 線エネルギーに関して、Al2O3:Crの密度制御によりほとんど水と等価な光子との相互作用を 起こすことが示唆された。
図7.3に各照射野サイズの4, 6, 10 MV X線ビームに対する密度制御率69.4%の密度制御 Al2O3:Crと水の立方体のPDDを示す。4, 6, 10 MV X線ビームの全ての照射野サイズにおい て組織等価密度制御Al2O3:Crとは水の立方体のPDDはほとんど完全に一致した。また、表 面付近では組織等価密度制御Al2O3:Crの方が水に比べて1.4–3.0%高い値を示した。従って、
光子線治療において、深さ方向に関しては、Al2O3:Crの密度制御によりほとんど水と等価な 光子との相互作用を起こすことが示唆された。
以上の結果から、光子線治療において密度制御率69.4%のAl2O3:Cr TLDは水とほとんど 等価であり、X線エネルギー、照射野サイズ、深さに依存しないことが示唆された。従って、
現行のAl2O3:Cr TLDの密度を制御することにより電子密度を水に近づけることは、組織等
価性の向上に非常に効果的であると考えられる。
図7.2 4, 6, 10 MV X線ビームに対する69.4%密度制御Al2O3:Cr TLDと水のOPF比 (scoring volumeはビーム軸中心の1.0 × 1.0 × 1.0 cm3)
0.98 0.99 1.00 1.01 1.02
0 5 10 15 20 25
4 MV X-ray 6 MV X-ray 10 MV X-ray
O u tp u t fa cto r r atio ( ar b . u n its )
69.4%-density-controlled Al2O3:Cr/waterSide of square field (cm)
図7.3 4, 6, 10 MV X線ビーム、一辺5, 10, 20 cmの正方形照射野に対する69.4%密度制御Al2O3:Cr TLDと水のPDD曲線 (scoring volumeはビーム軸中心の1.0 × 1.0 × 0.5 cm3)