第 4 章 本研究における 2 次元 TL 線量測定
4.4 レンズの放射状感度補正
2次元TLリーダを用いたTL画像の読み出しは、毎回同じ条件で読み出されることが理 想的である。毎回同じ条件で読み出される場合、同条件での補正フィルタにより2次元TLD のピクセル毎の感度補正を行うことができる。しかしながら、2次元Al2O3:Cr TLDは厳格 に固定して加熱してしまうと、熱膨張により破損してしまう可能性があるため、2次元TLD の設置位置は毎回わずかに異なっている。さらに、カメラレンズを通して取得したTL画像 はレンズによる放射状の感度差の影響を含んでいる。従って、TL画像は設置位置の違いに より放射状の感度差の影響が異なるため、2 次元TLD の感度補正を行う前にレンズの放射 状感度補正する必要がある。本研究では、TL画像は均一光源に対する画像から作成したレ ンズの放射状感度補正フィルタによる補正を行っている。
均一光源として無機 electroluminescent (EL) シート (KAIKOSHA Co., Ltd., Japan) を使用 した。無機ELシートの発光部は100 mm × 100 mmで発光色は白色であった。2次元TLリ ーダでの画像取得に際して、無機ELシートの上に2 mm厚のスモーク透明色のアクリル樹 脂板 (アクリサンデーEX板, EX530, ACRYSUNDAY Co., Ltd., Japan) を2枚重ね、全光線透
過率を3.6%に低減させた。また、CMOSカメラの露光時間は150 msとした。均一光源画像
は、無機ELシートの向きを90°毎回転させて取得した4枚の画像の平均画像とした。均一 光源画像はノイズを含んだ画像であるため、この画像から作成したフィルタをカメラの放 射状補正に使用してしまうと、TL画像にフィルタのノイズ成分を上乗せしてしまうことに なる。そこで、均一光源画像のx軸方向2048行及びy軸方向2048列に対して多項式近似 曲線を作成し、x軸方向とy軸方向の近似曲線画像の平均画像を算出することにより、ノイ ズ成分を除去した。この近似によるノイズ除去を15回繰り返し、均一光源画像の近似画像 を作成した。図4.4に均一光源画像と作成した近似画像を示す。また、図4.5に中心におけ るx軸とy軸のプロファイルの比較を示す。図4.4, 4.5からわかるように、作成した近似画 像は元の均一光源画像からノイズ成分をうまく除去できており、ノイズ成分の上乗せをす ることなくレンズの放射状感度補正フィルタとして用いることができる。
図4.4 均一光源画像と近似画像
4.5 2次元TLDの感度補正
2次元Al2O3:Cr TLDは繰り返し使用できるため、あらかじめ感度補正用のTL画像を取得
し、各ピクセルのTL 感度を求めておくことで、TL 画像に対してピクセル毎の感度補正を 行うことができる。本研究において、前述のレンズの放射状感度補正処理後のTL 画像は、
均一照射に対するTL画像から作成した感度補正フィルタを用いて、50 μm/pixelでピクセル 毎の感度補正を行っている。
均一照射には首都大学東京の放射線治療装置 (Clinac® 21EX system, Varian Medical Systems,
USA) を使用した。全散乱固体水ファントムを使用して、2次元Al2O3:Cr TLDを10 cm深に
設置して、SSD 90 cm、照射野10 cm × 10 cmで6 MV X線を300 MU (Dw = 2.31 Gy) 照射し た。照射後、遮光袋に入れ冷蔵庫 (5℃) で保管し、24時間後に読み出しを行った。得られ たTL画像は定数で除算することで、個体差とピクセル毎の感度補正を可能とする感度補正 フィルタを作成した。図4.6にフィルタ補正前後のTL画像を示す。また、図4.7に中心に おけるx軸とy軸のプロファイルの比較を示す。
図4.6 フィルタ補正前 (a) と補正後 (b) のTL画像
図4.7 フィルタ補正前後のTL画像のプロファイル