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第 6 章 余暇における短期旅行とメンタルヘルスとの関連

第 2 節 余暇がメンタルヘルスに及ぼす心理的影響(研究 4-1 )

2. 結果

83

Pittsburgh Sleep Quality Index(PSQI) 睡眠には,身体的疲労を回復させる役割があ ると同時に,睡眠時間の長期的な障害はさまざまな疾患を引き起こす可能性があることが 知られている(e.g., 松田他, 2012)。うつ病は,そのような疾患の代表的なものであるとさ れ,うつ病患者のおよそ9割が,睡眠に関する問題を抱えているという(Tsuno, Besset &

Ritchie, 2005)。また,DSM-Vによるうつ病の診断基準にも睡眠の変化が含まれている

(Table 1-1参照)。そこで,本研究では調査参加者の睡眠の質を測定するため,Buysse, Reynolds, Monk, Berman & Kupfer(1989)が作成したPSQIの日本語版(土井・蓑輪・中 山・大川,1998)を使用した。

この尺度は,就寝時刻,入眠時間等の項目を通じて,睡眠習慣や睡眠の質を測定する。

回答者は,就寝時刻,入眠時間,起床時刻や睡眠時間に関する質問項目について該当する 数字を記入し,それ以外の項目については,4件法の中から該当する選択肢を選択する。

全18項目の質問を用いて,睡眠の質に関する7つの要素をそれぞれ得点化する。睡眠に 問題がないとされるのは6点未満であり,得点が高いほど睡眠の質が低下していることを 意味する。

84 Table 6-2

PANASの因子分析結果

2) 測定時期別の尺度得点の記述統計

因子分析の結果に基づきPANASの下位尺度得点を算出した。SHSと職業性ストレス簡 易調査票については,それぞれの項目の合計得点を算出した。CES-Dは逆転項目を処理し た後,合計得点を算出した。PSQIについては,土井他(1998)の得点化の通りに合計得点 を算出した。測定時期別の各尺度の平均値,標準偏差をTable 6-3に示す。

第1因子 第2因子 気合の入った .89 .02

強気な .86 .01

活気のある .81 .30

誇らしい .80 .34

きっぱりとした .78 .26 わくわくした .76 .39

うろたえた .07 .94

おびえた .02 .86

びくびくした .01 .83

心配した .07 .81

ぴりぴりした .28 .80

苦悩した .01 .71

      因子間相関 1 2

1 ― -.07

2 ―

第2因子ネガティブ情動(α = .90)

因子負荷量 項目内容

第1因子 ポジティブ情動(α = .90)

85 Table 6-3

測定時期別の平均値および標準偏差

3) 測定時期×群による尺度得点の差異

PANAS,SHS,職業性ストレス簡易調査票から得られる得点を従属変数とし,測定時期

(3:事前,事後,一週間後)と群(3:余暇・旅行群,研修群,対照群)を独立変数とす る2要因混合計画の分散分析を実施した。なお,全ての尺度得点において事前の3群間で は有意な差が確認されなかった。

PANASのポジティブ情動得点では,測定時期×群の交互作用(F(4, 88)= 6.33, p < .001, ηp2 = .22)が有意であった(Figure 6-1)。単純効果の検定(Bonferroni法)では,余暇・旅 行群において,事前(M = 16.79)に比べて直後(M = 20.36)の得点が高く(p < .01),ま た直後に比べて一週間後(M = 16.43)の得点が低かった(p < .01)。すなわち,余暇・旅行 群においてのみポジティブ情動得点に変化が確認された。

M SD M SD M SD 1 ポジティブ情動 17.17 6.11 17.13 6.49 16.57 5.95 2 ネガティブ情動 14.79 6.74 6.15 3.62 12.79 5.69

3 SHS 20.00 4.12 20.45 4.60 19.62 4.64

4 職業性ストレス簡易調査票 15.15 5.73 13.62 5.54 15.74 6.10

5 CES-D 17.81 7.08 ― ― 17.62 7.25

6 PSQI 6.83 2.88 ― ― 6.21 2.87

測定時期

事前 直後 一週間後

86 Figure 6-1. 群別のポジティブ情動得点

注)図中のエラーバーは標準誤差を示す。

一方,ネガティブ情動得点においては,測定時期の主効果(F(2, 88)= 76.69, p < .001; ηp2= .64)が有意であった(Figure 6-2)。交互作用(F(4, 88)= 1.05, ns.; ηp2 = .05)は有意 ではなかった。3群全てにおいて,事前より直後の得点が低く,事後に比べて一週間後の 得点が高いことが確認された。つまり,ネガティブ情動得点は事前よりも直後の得点が低 くなったが,一週間後には再び得点が高くなっていた。

0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00

事前 直後 一週間後

ポ ジ テ ィ ブ 情 動 得 点

余暇・旅行群 研修群 統制群

*

p < .01

87 Figure 6-2. 群別のネガティブ情動得点

注)図中のエラーバーは標準誤差を示す。

SHSによる主観的幸福感得点については,測定時期の主効果(F(2, 88)= 3.10, p < .05;

ηp2 = .07)と測定時期×群の交互作用(F(4, 88)= 3.51, p < .05; ηp2 = .14)が有意であった

(Figure 6-3)。単純効果の検定(Bonferroni法)では,余暇・旅行群において,直後(M =

22.29)に比べて一週間後(M = 19.43)の得点が低かった。つまり,主観的幸福感は,直後

よりも一週間後の方が低下していた。

0.00 5.00 10.00 15.00 20.00

事前 直後 一週間後

ネ ガ テ ィ ブ 情 動 得 点

余暇・旅行群 研修群 統制群

*

p < .01

88 Figure 6-3. 群別の主観的幸福感得点

注)図中のエラーバーは標準誤差を示す。

職業性ストレス簡易調査票によるストレス得点では,測定時期の主効果(F(2, 88)= 6.31, p < .01; ηp2 = .13),測定時期×群の交互作用(F(4, 88)= 5.60, p < .001; ηp2 = .20)が有 意であった(Figure 6-4)。単純効果の検定(Bonferroni法)では,余暇・旅行群において事 前(M = 15.57)に比べて直後(M = 9.93)の得点が低く,また直後に比べて一週間後(M = 15.5)の得点が高かった。すなわち,余暇・旅行群においてのみ,旅行直後はストレスが 低下していた。しかし,一週間後には元に戻っていた。

10.00 12.00 14.00 16.00 18.00 20.00 22.00 24.00

事前 直後 一週間後

主観 的幸 福感 得点

余暇・旅行群 研修群 統制群

*

p < .01

89 Figure 6-4. 群別のストレス得点

注)図中のエラーバーは標準誤差を示す。

なお,CES-D(抑うつ)とPSQI(睡眠)は,測定時期(2:事前,一週間後)と群(3:

余暇・旅行群,研修群,対照群)の2要因混合計画の分散分析を実施した。しかしなが ら,どちらの得点においても,主効果,交互作用共に有意差は確認されなかった。