第 9 章 まとめと公式集 76
9.8 第 8 章: マクスウェルの方程式と電磁波
電磁気の法則をまとめたのがマクスウェルの方程式である。
1. マクスウェルの方程式は以下の4つの式である。
divD =ρ (8.1a)
divB= 0 (8.1b)
rotE =−∂B
∂t (8.1c)
rotH=j +∂D
∂t (8.1d)
2. ポテンシャル,ベクトルポテンシャルには任意性がある。
φ =φ− ∂χ
∂t , A =A+∇χ (8.10)
は,任意の関数χに対して同じ電場,磁場を与える。これをゲージ変換とよぶ。
3. うまくゲージを取ると,マクスウェルの方程式は
Δ− μ∂2
∂t2
φ=−ρ
(8.12)
と
Δ− μ∂2
∂t2
A=−μj (8.13)
となる。
4. 真空中のマクスウェルの方程式の解は速さc= 1/√
0μ0の波を与える。cは光速 である。この波は
(a) 光速で進み,
(b) 電場,磁場の方向は進行方向と垂直で,
(c) 電場と磁場は直交する
5. 異なる物質の界面での電場,磁場の接続条件よりスネルの法則が導かれる。
6. 電磁場はエネルギーの流れ,
S =E×H (8.51)
をもつ。これは単位面積から単位時間に流れ出る電磁場のエネルギーを表し,ポ インティングベクトルとよばれる。
付 録 A 付録:単位系について
この講義ノートは電磁気学をSI単位系(international system of units, 国際単位系)と いうもので記述した。これが最もよく使われているものであるからであるが,実は電 磁気学には複数の単位系がある。ここでは単位系について,一般的に解説して,より 単位に関する理解を深める。
初めに認めることは,すでに力学を議論する際に,1[kg], 1[m], 1[s]は定義されてお り,それ故,力も定義されていると言うことである。次に,連続の方程式,
divj+∂ρ
∂t = 0 (6.6)
が成り立つように,電流と電荷は決定されているとする。
まず,力
F1 =k1qq
r2 (A.1)
は力学から測定できる。これはクーロンの法則である。クーロンの法則は逆2乗則で,
その比例係数は曖昧である。つまり,力が決まっても,電荷の単位が決まってないの で,k1はqの決め方による。たとえば素電荷を1[C]とよんでしまうと,k1は非常に小 さいものとなる。電場はF =qEとなるように
E =k1 q
r2 (A.2)
と定める。
つぎに単位長さあたりの平行電流間に働く力は F2
L = 2k2I I
d (A.3)
である。電流と電荷は互いに切っても切れない関係にある。つまり,k1とk2は独立で はない。この値は測定から決まっており,
k1
k2 =c2 (A.4)
である。cは光速である。
磁束密度は,直線電流からd離れた場所での磁場が B = 2k2αI
d (A.5)
となることから定義する。別にk2αを一つの記号で書いてもよいのだが,この因子は k2 に比例していることは確実なので(平行電流間の力はローレンツ力から決まってい た),この表式にした。
ファラデーの法則は
rotE=−k2∂B
∂t (A.6)
となる。回路の面積が変わるとき,導線の運動から生じるローレンツ力による起電力 を考えても,ファラデーの法則と同じように磁束の変化から起電力を考えても,答え は同じであった。このことから,ローレンツ力は
E+k3v×B (A.7)
となる。
以上より,マクスウェルの方程式は
divE= 4πk1ρ (A.8a)
divB= 0 (A.8b)
rotB = 4πk2αj +k2α k1
∂E
∂t (A.8c)
rotE+k2∂B
∂t =0 (A.8d)
となる。真空中では,
∇2B=k3k2α k1
∂2B
∂t2 =0 (A.9)
となる。これから電磁波の速度は c=
k1
k3k2α (A.10)
となる。(A.4)式から
k3 = 1
α (A.11)
となる。
(A.4),(A.11)式から結局,k1, αを決めれば,単位系が決まることがわかる。以下,様々 な単位系を表にしておく。
単位系 k1 k2 k3 α ローレンツ力
SI 1
4π 0 = 10−7c2 μ0
4π = 10−7 1 1 E+v×B
cgs esu 1 c−2 1 1 E+v×B
cgs emu c2 1 1 1 E+v×B
cgs ガウス系 1 c−2 c c−1 E+1
cv×B cgs Heaviside 1
4π
1
4πc2 c c−1 E+1 cv×B 表 A.1: 様々な単位系による,k1, k2, k3, αの選び方
付 録 B 試験問題と解答
基礎物理コース II 試験問題
2003年11月11日
1
以下を示せ。(ベクトルはベクトルらしく表記しないと間違いとします。)1. rot(gradf)≡0 2. div(rotf)≡0 3. v = ( −y
x2+y2, x
x2+y2,0)に対して
v·dr を計算する。
(a) 半径aの円に沿って,ちょうど半円の弧,(0, a,0) → (0,−a,0)だけ積分せ よ。(右向きの半円。)
(b) 同じ積分をストークスの定理で求めよ。
4. V(r) = 1
rn のとき,−gradV を求めよ。(r=
x2+y2+z2である。)
5. E = −gradV(r) = (xy2, x2y −y, z)のとき,V(r)を求めよ。ただし,原点で V = 0とする。
2
1. 半径a,中が空洞で表面だけ一様に帯電した電荷Qをもつ電荷の作る電場,ポテンシャルを,球の中心からの距離rの関数として計算し,図示せよ。
2. 半径aで一様に帯電した電荷Qをもつ電荷の作る電場,ポテンシャルを,球の中 心からの距離rの関数として計算し,図示せよ。
ただし,ポテンシャルを求める際は,無限遠でポテンシャルが0になるように定数を あわせる。球の外側と内側で振るまいが変わることに注意せよ。
3
原点(0,0,0)と点(0,0, a)にそれぞれ電荷,q1, q2の点電荷がおかれている。前者が作 る電場をE1,後者が作る電場をE2とする。1. E1(r)を求めよ。
2. E2(r)を求めよ。
3. 電場のエネルギーは
0(E1 +E2)2
2 = 0E21
2 + 0E22
2 + 0E1·E2
である。右辺の最初の2項は,点電荷が独立にもっている電場のエネルギー,最 後の項が電荷の相互作用によって生じた項である。
この相互作用のエネルギー
dV 0E1·E2
を求めよ。
ヒント;極座標を用いよ。rについての積分を行い,その後,cosθ=tとしてtに関する 積分を行う。なお,不定積分,
dr r−A
√r2+a2−2rA3 = √ −1
r2+a2−2rA +C である。
時間があったら,授業の感想と,今後の要望を書いてください。
基礎物理コース II 試験解答
2003年11月11日
1
1. 授業でやったので省略。
2. 授業でやったので省略。
3. (a) x=asinθ, y =acosθとすると,v = (−cosθ,sinθ,0), dr = (acosθ,−asinθ,0)dθ。
よって
C1
v·dr = π
0
−adθ =−πa
(b)
C1
v·dr+
C2
v·dr =
rotv·ndS
C2v·drは,経路C2上では,v ⊥drとなっているので0。よって
C1
v·dr =
rotv·ndS =
(0,0,1
r)·(0,0−1)dS =− 1
rrdrdθ =−πa 4. 授業でやったので省略。
5.
V(r) = −
E·dr =−
(x,0,0)
(0,0,0) E·dr−
(x,y,0)
(x,0,0) E·dr−
(x,y,z)
(x,y,0) E·dr から,V(r) =−x2y2
2 + y2 2 −z2
2
2
これは授業でやりましたね。1.
Er =
⎧⎨
⎩
0 (r≤a)
Q
4π 0r2 (r > a) V(r) =
⎧⎪
⎨
⎪⎩ Q
4π 0a (r ≤a) Q
4π 0r (r > a) 2.
Er =
⎧⎪
⎨
⎪⎩ Qr
4π 0a3 (r≤a) Q
4π 0r2 (r > a)
V(r) =
⎧⎪
⎨
⎪⎩ Q 4π 0a
3 2− r2
2a2
(r≤a) Q
4π 0r (r > a)
3
1. E1 = q1 4π 0
r r3
2. a= (0,0, a)として,E2 = q2 4π 0
r−a
|r−a|3 3.
0
dVE1 ·E2 = 0q1q2 (4π 0)2
0
π2πsinθdθ ∞
0
drr2 r2−racosθ r2√
r2+a2−2racosθ3
= q1q2 (4π)2 02π
1
−1
dt
0
∞dr r−at
√r2+a2−2rat3
= q1q2 4π 0
1 a
当たり前の結果になる。
基礎物理コース II 試験問題
2003年12月6日
1
v = (−y, x,0)というベクトルを,原点Oから(a, b,0)(a, b > 0)にある点Pまで線積 分する。1. rotvを計算せよ。
2. 上の答えが0でないことから,積分,
P
O
v·dr (B.1)
は経路に依存することがわかる。そこでこの積分を (a) 経路(0,0,0) →(a,0,0) →(a, b,0)
(b) 経路(0,0,0) →(a, b,0)
に沿って計算せよ。(ヒント;後者ではx=at, y =bt,0< t <1とパラメータ表 示する。)
3. 二つの積分の違いをストークスの定理で解釈せよ。
2
授業では同心の二つの球殻の問題を考えたが,今度は半径がb,中に半径a(a < b)の 球形の空洞(同心とする)がある導体球を考える。(a < r < bは導体がつまっている。)球の中心(空洞領域)には電荷qの点電荷が存在する。ポアッソン方程式から,導体で
ない部分では,ポテンシャルは
V(r) =C+C
r (B.2)
となる。
1. まず導体が接地されている場合を考える。r > bの場合,V(b) =V(∞) = 0であ る。よって,導体の外側でポアッソン方程式を満たすようにするには,C=〔1〕,
C =〔2〕である。これより,球の外に電場は存在しないことがわかる。
a < r < bでは導体内なので電場は存在しない。この領域にガウスの法則を適用
する。電場は0なので半径rの球面を考えると,その内部の電荷は0である。よっ て,空洞と導体との表面に〔3〕の電荷が,中心の点電荷を打ち消すように存在 してなければならない。
r < aでは,ガウスの法則を使って,電場は〔4〕となる。
2. 次に導体が接地されていない場合を考える。導体は全体では中性であるとする。
r < a,a < r < bでは,ガウスの法則が前問と同じように適用できる。r > bで はどうなるかというと,今度は導体が中性のため,内側にできた電荷(〔3〕の 答え)と逆の電荷が導体外側表面に誘起される。よって,外側にガウスの法則を 適用すると,外側の電場は〔5〕となる。外側でのポテンシャルは〔6〕である。
3
雷のモデルを考える。雷雲は逆符号の電荷が雲の上と下にたまることで起きる。この とき,地表に電荷が誘起される。これを以下のようにモデル化する。導体平面から高さhにQ(>0)の点電荷が,h(h < h)に−Qの点電荷が存在すると する。二つの点電荷が平面におろした垂線は一致している。ここで言う導体とは地面 のことである。よって導体のポテンシャルは0とする。
1. 鏡像電荷を考えることにより,ポテンシャルを求めよ。
2. 鏡像電荷を考えることにより,地表面での電場を求めよ。
3. ガウスの法則により,地表に誘起される表面電荷密度を求めよ。
4. Q = 50C, h = 6km, h = 3kmとしたとき,これらの点電荷の真下での電場を求 めよ。
4
δ関数について,以下の積分を求めよ。1. a
−adxδ(x), a >0 2. −a
a dxδ(x),a >0 3. a
0 dxδ(x−b), a > b >0 4. a
0 dxδ(x−b), 0< a < b
5
双極子pが電場Eの中にあると,U =−p·Eというエネルギーをもつ。このUの表 式を数学的に求めてみよう。電荷がポテンシャルΦ中にあった場合,静電エネルギーはU =
dVρ(r)Φ(r)であ る。双極子のおかれている位置をrとして,ポテンシャルをこの周りで展開する。す なわちΦ(r)≈Φ(r) + (r−r)·gradΦ(r)を代入すると,
U ≈
dV[Φ(r) + (r−r)·gradΦ(r)]ρ(r)
である。よって,
U ≈Φ(r)
dVρ(r) + gradΦ(r)·
dVrρ(r)−gradΦ(r)·r
dVρ(r)
である。電荷の中性から右辺,第1,3項は〔1〕となる。第2項はgradΦ(r) =〔2〕,
dVrρ(r) =〔3〕から,〔4〕となる。こうして,U =−p·Eが示される。
講義の内容について感想とか、改善点を書いてください。点数には関係ありません。
基礎物理コース II 試験解答
2003年12月6日
1
この問題は授業でやりましたね。1. rotv = (0,0,2) 2. (a) (a,0,0)
(0,0,0) vxdx+(a,b,0)
(a,0,0) vydy=a
0 vxdx+b
0 ady=ab
(b) v = (−bt, at,0),dx= (adt, bdt,0)。よってこの経路上ではv·dx= 0。→積 分は0。
3. 経路(a)の積分-(経路(b)の積分)=
Cv·dr 経路(a)で(a, b,0)に行き,経路(b)を 逆にたどって原点に戻ってくる積分=経路(a)の積分-(経路(b)の積分) =
Cv·dr。 これは
rotr·ndS =
2dS =ab。
2
〔1〕0, 〔2〕0, 〔3〕−q, 〔4〕 qr
4π 0r3, 〔5〕 qr
4π 0r3, 〔6〕 q 4π 0r
3
1.
Φ(r) = 1 4π 0
Q
x2 +y2+ (z−h)2 − Q
x2+y2+ (z+h)2
− Q
x2+y2+ (z−h)2 + Q
x2+y2+ (z+h)2
第1項は電荷Qのポテンシャルで第2項がその映像ポテンシャル,第3項は電荷
−Qのポテンシャルで第4項がその映像ポテンシャル。
2. 上式のgradをとって,マイナスをつける。
E(r) = Q 4π 0
(x, y, z−h)
x2+y2+ (z−h)23 − (x, y, z+h) x2+y2+ (z+h)23
− (x, y, z−h) x2+y2+ (z−h)23
+ (x, y, z+h) x2+y2+ (z+h)23
3. 上式は地表z = 0では E(x, y,0) = Q
4π 0
(0,0,−2h) x2+y2+h23
+ (0,0,2h) x2+y2+h23
また,地表面に垂直で面積Sの円を上下にもつ円柱を考え,ガウスの法則を適用 すると,表面電荷σはσS/ 0 =ESとなる。よって
σ = Q 2π
−h x2+y2+h23
+ h
x2+y2+h23
4. これらの点電荷の真下では(x, y, z) = (0,0,0)なので電場は,
Ez(0,0,0) = Q 4π 0
−2 h2 + 2
h2
数値を代入して,7.5×104V/m。50Cが数kmも離れたところから作用しただけ で,このように大きな電場が生まれます。
4
1. デルタ関数の定義からa
−adxδ(x) = 1, a >0 2. 積分範囲を逆転させるので−a
a dxδ(x) =−1, a >0 3. x−b =yとするとa−b
−b dyδ(y),a > b > 0なのでこれは原点にまたがっている。
よって1。
4. x−b =yとするとa−b
−b dyδ(y), 0 < a < bなのでこれは原点をまたいでいない。
よって積分範囲いたるところで被積分関数のδ(y)は0。よって0。
5
電場中の双極子のエネルギーを数学的に導いてみた。授業でやったものよりもより一 般的である。〔1〕0, 〔2〕−E, 〔3〕p, 〔4〕−p·E
土曜日に試験で不満があると思いますが,それだけ電磁気学は大切なものだと思っ て下さい。
基礎物理コース II 試験問題
2004年1月23日
1
Maxwellの方程式は以下の通りである。divD =ρ (B.3a)
divB= 0 (B.3b)
rotE =−∂B
∂t (B.3c)
rotH=j +∂D
∂t (B.3d)
1. E,D,B,Hは何か?また,その単位は何か?
2. アンペールの法則に対応するのは,何番目か。
3. ファラディの法則に対応するのは,何番目か。
4. 以下は真空中でのMaxwellの方程式である。空欄を埋めよ。
divE=〔1〕 (B.4a)
divB = 0 (B.4b)
rotE=−∂B
∂t (B.4c)
rotB=〔2〕∂E
∂t (B.4d)
5. この真空中のMaxwellの方程式から,真空中の電磁波の速さを出そう。(B.4c)式 の両辺のrotととると,一般にrot rotv = grad divv−Δvが成立するので,
grad divE−Δ〔3〕=−∂rotB
∂t (B.5)
である。Δはラプラシアン,∂2/∂x2+∂2/∂y2+∂2/∂z2 である。真空中のMaxwell の方程式の(B.4a)式から(B.5)の左辺第一項は〔4〕,また,(B.4d)式から(B.5) の右辺は〔5〕となる。よって,
Δ− 0μ0 ∂2
∂t2
E=0
となる。これは速さ〔6〕で進む波の波動方程式を表している。実際にこの速さ を計算すると〔7〕となり,光速が得られる。