マクスウェルの方程式をベクトルポテンシャルで書き直してみよう。(6.35)式より rotA=B
だったので,電磁誘導の法則は rot
E+∂A
∂t
=0 (8.5)
である。rot grad = 0なので,
E+ ∂A
∂t =−gradφ (8.6)
である。結局,
E=−∂A
∂t −gradφ (8.7)
となる。A, φを求めれば,電場,磁場が決まるのである。
まず,マクスウェルの方程式の最初の方程式は Δφ+∂divA
∂t =−ρ
(8.8) となる。また,アンペールーマクスウェルの方程式は
Δ− μ∂2
∂t2
A−grad
divA+ μ∂φ
∂t
=−μj (8.9)
となる。これはマクスウェルの方程式の別の書き方である。φ,Aは4成分あり,これ らをまとめて電磁ポテンシャルとよぶ。方程式も4個でちょうどよい。
(8.8)式,(8.9)式を少し簡単化しよう。
8.1 ゲージ変換
もし,φ,Aが解だとする。このとき,
φ =φ− ∂χ
∂t , A =A+∇χ (8.10)
も全く同じ電場と磁場を与える。もちろん,φ,Aもマクスウェルの方程式を満たす。
Problem 8.1 φ,Aもマクスウェルの方程式を満たすことを示せ。
ここでχをうまく取り,
divA+ μ∂φ
∂t = 0 (8.11)
となるようにとると,(8.8)式は
Δ− μ∂2
∂t2
φ=−ρ
(8.12) となり,(8.9)式は
Δ− μ∂2
∂t2
A=−μj (8.13)
となる。このようにある関数をとってきて,φ,Aを計算するのをゲージを固定すると いう。また,今のようなゲージの取り方をローレンツ・ゲージとよぶ1。
ちなみにφ,Aはローレンツ・ゲージをとった後も,
Δ− μ∂2
∂t2
χ = 0 (8.14)
という関数χの自由度は残っている。
Problem 8.2 A= (0, Bx,0)と A= (−By,0,0)は同じ磁場B = (0,0, B) を与える。
これらを関係づけるゲージ変換を求めよ。
8.2 電磁波
マクスウェルの方程式を真空中で解いてみよう。真空中のマクスウェルの方程式は
divE= 0 (8.15a)
divB = 0 (8.15b)
rotE =−∂B
∂t (8.15c)
rotB = 0μ0∂E
∂t (8.15d)
である。ファラデーの電磁誘導の法則を表す3番目の式のrotをとると,
rot rotv = grad divv−Δv (8.16) より,
grad divE−ΔE =−∂
∂trotB (8.17)
1divA= 0はクーロン・ゲージとよばれ,これもよく使われる。
である。第1式と第4式から
Δ− 0μ0 ∂2
∂t2
E=0 (8.18)
となる。これは波動方程式の形をしており,速さ,
c= 1
√ 0μ0 (8.19)
で進む波を表している。これをもう少し,具体的に見てみよう。
8.2.1 1 次元方向に進む波
波がx方向にのみ進む場合,divE= 0,divB= 0は
∂Ex
∂x = ∂Bx
∂x = 0 (8.20)
で, ∂Ex
∂t = ∂Bx
∂t = 0 (8.21)
∂Ez
∂x = ∂By
∂t , ∂Ey
∂x =−∂Bz
∂t (8.22)
−∂Bz
∂x = 0μ0∂Ey
∂t , ∂By
∂x = 0μ0∂Ez
∂t (8.23)
となる。Ex, Bxはx, tによらないので,0ととる。未来永劫,無限大で有限の電磁場な どないので。
このとき,Bzを消去すると,
∂2
∂x2 − 0μ0∂2
∂t2
Ey = 0 (8.24)
である。ここで
Ey =f+(x−ct) +f−(x+ct) (8.25) とおくと,
Bz= 1
c[f+(x−ct)−f−(x+ct)] (8.26) である。この解は電場と磁場が直交しながら,速さcで伝わる波を表している。
Ez, Byが有限な解も同じように作れる。これは今求めたものと独立な解である。
cの大きさを計算すると,
c= 2.9979· · · ×108m/s (8.27)
となる。光速である。つまり可視光で決定された光速はマクスウェルの方程式と同じ 速さで進むことがわかった。また,二つの独立な解の存在は,これらが変更に対応し ていることを示唆している。これらより,光は電場と磁場の波,電磁波であると推測 される。
8.3 一般的な平面波
真空中を1次元的に伝搬する電磁波は,速さcでE ⊥B,進行方向とE,Bは垂直で あった。これを一般化しよう。そのために,複素形式を使う。この場合,電場,磁場を E(r, t) = E0eik·r−ωt , B(r, t) =B0eik·r−ωt , (8.28) と書く。この解は平面波とよぶ。物理的な電磁場ベクトルはこの解の実数部分をとる ことで得られる。E0,B0は複素ベクトルである。
このとき,マクスウェルの方程式は k·E0 = 0 k·B0 = 0 k×E0 =ωB0
k×B0 =−ω c2E0
(8.29)
となる。
3番目の式を4番目に代入して
k×(k×E0) =−ω
c2E0 (8.30)
となる。
A×(B×C) =B(A·C)−C(A·B) (1.8) を使うと,
ω=ck (8.31)
となる。また,k⊥E,k⊥Bが1番目,2番目の式からわかる。さらに B(r, t) = 1
ωk×E(r, t) (8.32)
となり,E ⊥Bがわかる。こうして真空中の平面波は 1. 光速で進み,
2. 電場,磁場の方向は進行方向と垂直で,
3. 電場と磁場は直交する ことがわかる。
f
1f
1’f
2θ
1θ
1’
θ
2図 8.1: 反射,屈折の法則
8.4 反射と屈折の法則
異なる屈折率をもつ物質間の界面では,同一平面で反射,屈折が起こり,反射角は 入射角に等しく,屈折角はスネルの法則で決まった。これをマクスウェルの方程式か ら導こう。
電場,磁場の境界条件は
E1 =E2 , D1⊥ =D2⊥ (8.33)
H1 =H2 , B1⊥=B2⊥ (8.34)
である。
ここでE, D, B, Hはみな,f =Acos(ωt−k·x) の形をしているので,f1を入射波,
f2を屈折波,f1を反射波とする。
このとき,
f1 = Acos(ωt−k·x) (8.35)
f1 = Bcos(ωt−k·x)
f2 = Ccos(ωt−k·x) (8.36)
である。境界条件はz = 0として,
f1(z = 0, x, y, t) +f1(z = 0, x, y, t) =f2(z = 0, x, y, t) (8.37) となり,
Acos(ωt−kxx−kyy) +Bcos(ωt−kxx−kyy) = Ccos(ωt−kxx−kyy) (8.38)
となる。これが任意のt, x, yで成立するので,
A+B =C , ω=ω =ω (8.39)
kx =kx =kx , ky =ky =ky (8.40) である。こうして,k,k,kは同じ平面にあることがわかる。
この平面を図のようにとり,k =ω/vを使うとkx =kx =kxは ω
v1 sinθ1 = ω
v1 sinθ1 = ω
v2 sinθ2 (8.41)
となるので,
θ1 =θ1 (8.42)
となり,反射角と入射角は等しい。また,
sinθ1 sinθ2 = v1
v2 (8.43)
である。物質中の光の速さはv = 1/√
μである。多くの物質(非磁性体)ではμ≈μ0で あるので,物質中の光の速さは誘電率で決まっていると思ってよい。物質の屈折率は
n =√
μ≈√
μ0 (8.44)
で与えられ,v =c/nである。こうして,
sinθ1 sinθ2 = n2
n1 (8.45)
となる。
Problem 8.3 臨界角(全反射が起こる角度)は,水で48◦,ガラスで40◦,ダイヤモン ドで24◦である。これらの屈折率と誘電率を求めよ。ダイヤモンドがよく光るのはこ の全反射が起こりやすいことに対応する。
8.5 ポインティングベクトル
単位体積あたりの電場と磁場のエネルギーは(3.19)式,(7.21)式より,
U = 1 2
dV(E·D+H·B) (8.46)
である。エネルギーといえば,エネルギー保存則である。
マクスウェルの方程式の3番目と4番目にH,Bをかける(内積として)。すると H·
rotE+ ∂B
∂t
= 0 (8.47)
E·
rotH −∂D
∂t
=E·j となる。両辺の差をとると,
−E·D−H·B+E·(rotH)−H·(rotE) =E·j (8.48) 一方,ベクトル解析の公式,
div(A×B) = (rotA)·B−A·(rotB) (1.25) から,結局,
−∂
∂t 1
2D·E+1 2B·H
=E·j + div(E×H) (8.49) となる。よって,左辺の電磁場のエネルギーの現象は,右辺のジュール熱と,div(E×H) になったことがわかる。
dVdiv(E×H) =
(E×H)·ndS (8.50) なので,この項はエネルギーE×Hが単位面から出て行っていることがわかる。この ベクトル,
S =E×H (8.51)
をポインティングベクトルとよぶ。電磁場のエネルギー保存則は
−∂U
∂t =E·j + divS (8.52)
とかける。