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経験年数と仕事に対する認識の 4 つのスケールの平均得点を見ると、管理システムスケ ールの平均得点が最も高いのは、経験年数1年未満の看護師だった。特に、新人看護職員臨 床研修制度により、入職 1 年間は看護の知識、技術のみならず組織人としての基礎を学ぶ 機会が多い。また、そういった研修を通して自らの成長を自覚できていることにより、経験 1 年未満の看護師のスケール得点が高かったものと判断できる。この状態を継続するには、
経験年数に応じてキャリアアップの機会を増やし、病院の方針、看護部の方針を実践できる ような継続的な働きかけが必要であると考える。
一方で、仕事上の人間関係スケール、専門職性スケール、看護師としての自己実現スケ ールは経験年数25年以上の看護師の平均得点が高かった。特に専門職性スケールでは、
「専門職意識」、「決定権」、「自律性」、「ケア提供時間」の全てのサブスケールの得点が他 の経験年齢層よりも高い。これらは、看護師としての経験値の高さを示しており、この経 験値が看護師としての自己実現を高めていると考えられた。特に、看護師としての自己実 現スケールでは変革力のサブスケールが高く、豊富な経験を病棟改善に活用している自負 があることが伺えた。
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ケールよりも相関係数は高かった。これらのことは、看護師としてのやりがいは見出しつつ あるものの、実際には病棟に変革を起こすまでの力があるとは実感できていないことを示 している。特に、回答者の経験年数分布を見ても1年以上5年未満の経験者が35.6%であ り、経験年数10年未満が69.2%を占めている。経験年数が増すごとに看護師としての自己 実現スケールの得点が増加している結果からも、豊富な知識と技能を看護現場の改善活動 に活かせるよう看護管理部門が常に働きかけていくことが、職務満足度の向上につながる と考えられた。
91 6 急性期病院における職務満足と業務効率性の関係
これまで医療・看護分野では、「良い医療・良い看護ケアを提供する」ことに主眼がおか れてきた。しかし、1998年に DPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem
Payment System)が導入され、2003年以降、特定機能病院がDPCを導入し、質的向上、
効率化、標準化を意識するようになった。これにより、入院患者の平均入院日数は年々減少 していく結果となった。つまり、これまで長期間の入院中に実施していた検査、治療、処置 等が短期間に集中して行われることになり、それだけ看護師が行う業務内容も過密化して いる。さらに、人々の価値観が多様化し、これまで以上に患者中心の医療・看護の考え方が 求められる時代になってきた。つまり、今の医療現場は、組織を取り巻く状況が複雑化、多 様化、煩雑化しており、このような多様な変化にいかに効率的、効果的に対応するかが問わ れている。しかし、看護サービスは、不確実性、在庫の不可能性、無形性、生産―消費の時 間および空間の一致性、一過性、返品も転売もできないという特殊性があり、正確な看護サ ービス(業務)の現状を把握することが極めて難しいと言われてきた87。
看護を取り巻く環境に着眼すると、2006年に行われた診療報酬改定以降、看護職員の配 置基準を引きあげる入院基本料が新設され、従来の雇用人数から実際に配置される人数に 変更された。いわゆる『7対1入院基本料』と呼ばれるものである。これと同時に、一般病 棟以外の特定入院料を算定する病棟群も増え、現在では集中治療室(ICU)(2対1)、新生児 集中治療室(NICU)(3対1)、新生児回復治療室(GCU)(6対1)、脳卒中ケアユニット(SCU)(4
対 1)など様々な看護配置が設置されている。このような診療報酬体系により、入院患者の
症状や看護の必要度合い(重症度、医療・看護必要度)に応じて看護師を各勤務時間帯に配 置することが可能となり、入院患者やその家族にとって理解しやすい形態で看護サービス が供給されるようになった。
しかし、看護師の雇用人数が配置基準の制約を受ける形となっているものの、一部の入院 基本料加算以外では看護師がどのような業務に従事するべきかという規制はない。このた め、看護師でなくても他職種ができる業務(以降、周辺業務と略す)も、看護師は本来業務 と並行して行っており、本来の業務である看護サービスの生産に労働力を十分に投入でき ず、看護サ―ビスの質低下が懸念されている88。
このような状況がある一方で、政府が進める働き方改革の波は医療全体へも波及してお
87 井部(2017)pp.105-108
88 角田(2007)p.43
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り、これまで以上に専門性に特化しつつ、生産性の向上を目指さなければならない。
他方で、産業・組織心理学領域では、1960年代ごろから「職務満足」への効果的な対処 が生産性をあげるとして、種々の測定尺度が開発されてきた。これは看護分野でも広がりを 見せ、1970年代のアメリカにおいて、看護師の職務満足に関する研究的な取組みが行われ た。また、日本における看護職の職務満足度調査に関しては、中川他(2004)89が過去15 年 間に実施された看護研究に関する文献レビューを行った結果、Stamps他が開発した尺度を 1988年に尾崎が紹介して以降、日本の看護職者の職務満足度調査が本格的に実施され始め たことが明らかとなっている。しかしながら、職務満足は環境条件や社会的要請に応じて変 化するものとも言われており、いまだ研究として確立できていないのが実情である。さらに、
「職務満足」は本人が認知する主観的な職場適応の基準として認識されるのみで、これまで 生産性との関係性は明らかにされてこなかった。