2017/5/11 入門物理学 A (旧 原子から宇宙まで I)
入門物理学 A (原子から宇宙まで I)
法政大学市ヶ谷リベラルアーツセンター兼任講師 福川賢治
2017/5/11 入門物理学 A (旧 原子から宇宙まで I)
5‒1. 落体の物理
Galileo Galilei 以前の一般的な考え方
・Aristotle (B.C. 384 ~ B.C. 322、Plato の弟子) 博物学者「万学の祖」
(物理学、生物学、形而上学、倫理学、政治学、文学等)
論理学 (三段論法 A ならば Bであり、B ならば C とすると A ならば C)
・物事の本質的な姿とは何か?
Platoの考え (幾何学を重要視)
イデア…まさに事物そのものであり、
人間は感覚によってイデアを想起しながら学習を行っていく。
例. 「円のイデア」… 書かれた円は円のイデアに似ることにより円と呼ばれる Aristotleの考え (感覚・経験を重要視)
1. その物事になる可能性があるもの(可能態)が、発展することで 現実世界の現象(現実態)となる (イデアの否定)。
2. 純粋可能態は(全ての始まりの形)「火・空気・水・土」からなる。
(四元素説、Empedocles (B.C. 490頃 ̶ B.C. 430頃に始まる)) →古代・中世の錬金術 (化学) の基本思想
例. 種子 (可能態) が花 (現実態) になる
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アリストテレスの運動方程式
重いものほど<土>を多く含み、
下に行こうとする力は重さに比例する。
従って、②重いものほど早く落ちる。
四大元素のあるべき位置 (月下界)。
中心から「土・水・空気・火」
と並んでいる
月より上 (天上界)は第 5 元素の エーテル (ether)により満たされる 高い所の物質(可能態)は、
本来の固有の場所(現実態)に移動する。
一旦現実態を達成すると、物体は 静止する。従って、
① 静止が物体の本質であり、
物体を動かすには力が必要。
v ∝
運動を引き起こす力抵抗力
真空だと物体の抵抗力が 0 となり、
速度は無限大になる。
そんな状態はありえないので、
③真空は存在しえない
Aristotle (B.C.384 - B.C.322)
画像は Wikipedia より引用 画像は Wikipedia より引用
(真中の記号は比例の意味)
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Galileo の先駆者達
1543年 Niccolo Fontana (Tartaglia) (1500頃 - 1557)による
ユークリッド原論の最初のイタリア語訳 (ラテン語の誤訳を直す) 弾道学や三次方程式の解法の研究でも有名
1585年 Giambattista Benedetti
(1530-1590, Fontana の弟子でイタリアの数学者・音響学者)
1586年 Simon Stevin (1548 - 1620, ベルギーの数学者・物理学者・工学者) の二人が重さの異なる物体でも同じ速度で落ちると主張
アリストテレスによる放物運動の説明
ゴルフクラブでボールを打つ運動を考える
1. ボールはゴルフクラブから強制的に力を受けて打った方向に飛び始める。
2. 空気はゴルフボールの勢いに押されて圧縮される
圧縮された空気は、ボールの後ろに真空が生じないように後ろに回り込む
その際にボールを後押しする強制力が生じる (真空嫌悪の力)
3. しかし、ボール周りの空気による強制力は小さくなっていくので、
最後には自然にある力の運動によって下に落ちる。
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Benedetti による思考実験
1. 同じ重さの物体を同じ高さから自由落下させると、
同じ時間に地面に到達
2つの物体を長い糸で結んでも、運動には影響ないはず。
糸の長さを短くしていっても、運動には影響ないはず。
2. 糸の長さを 0 にすると、2つの物体はくっつく。
Aristotle の考え方が正しければ、
物体をくっつければ、物体は速く地面に落ちる。
3. Aristotle の考え方を推し進めると、同じ重さの物体を
3 個、4 個 … と積み重ねていくと、どんどん落下の速さは速くなる。
4. でも 1. の議論から思考すると、物体が落ちる速さは重さによらない
現実には何が起こっているか? → 4. の結論が正しいように思える この議論から、Benedetti は Aristotle の考え方には修正が必要で、
重さの異なる物体でも、落ちる速さは同じになると主張
ガリレオもこの議論を受け継ぎ、実際に実験によって確かめた
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ガリレオの観察と実験による自由落下運動の記述
観察事実: 落下中の物体の速度は段々速くなっていくように見える。
どのような関数形で記述されるか ?
垂直に物体を落とすと速すぎて測定が困難。
そこで、ガリレオは斜面を使った実験を行った。
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http://catalogue.museogalileo.it/
object/InclinedPlane.html
画像はガリレオ博物館カタログから引用
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ガリレオは、斜面の角度を色々と変え、
物体の落下速度を変えながら実験を行って、以下の結果を得た。
物体の落下する移動距離は、時間の 2 乗に比例する。
速度を計算すると、段々速度が一定に増えていく (加速度を実験で認識)。
加速度の単位 Gal (ガル)に名前を残している。
1 Gal = 1 cm/s2 = 0.01 m/s2
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t x Δx/Δt
1 12=1 12 22=4 3 3 32=9 5 4 42=16 7
(移動距離) = 1/2 (加速度 a) (時間)2
v
t O
at
ガリレオは斜面が地面に垂直の時にも 同じ形の式が成り立つと考えた。
自由落下の場合の式
x=(1/2)gt
2, v = gt
重力加速度 g = 約 9.8 m/s
2(値はホイヘンスが振り子を用い測定、
遠心力のため場所により少し異なる)。
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5-2. 慣性の法則
アリストテレスの考え方
静止が物体の本質であり、物体を動かすには力が必要
ガリレオの慣性の法則
物体に力が働かないとき、
静止している物体は静止したままであり、
動いている物体は、等速直線運動を行う。
慣性… 力を受けなければ物体が等速度で運動状態を保持する性質。
斜面での実験 (2)
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上り坂だと物体は減速 (加速度は進行方向に 向かってマイナス)
下り坂だと物体は加速 (加速度は進行方向に 向かってプラス)
物体の速度は
どう変化するか?
地球からの重力の影響
x=vt
v ∝
運動を引き起こす力抵抗力
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斜面での実験(3)
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斜面を組み合わせて、上のような面を作ると、左から転がした物体は ほぼ物体の元いた高さである A, B, C まで到達する。
そのとき物体が移動した距離は長くなっている。
では、水平面上を転がせばどうなるか?
A B C
⇨ 無限に長い距離を移動できるはず
慣性の法則の具体例
摩擦の少ない平面 …カーリング、エアホッケーなど
Wikimedia Commons,
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ret0s̲AH̲035.jpg Photo by Cristina Ruiz (2005), CC 表示 3.0 ライセンス
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5-3. 放物体の運動
アリストテレス以降の中世の学者
水平方向にものを投げると、物体は空気の力を受けて、
斜めの方向に一直線に落ちると信じられてきた。
(事実、短い距離の場合はほとんど正しい。) ガリレオの実験
ガリレオは注意深い実験と観察によって、
物体の運動が、放物運動であることを確かめた。
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Galileo の自筆ノート
米 Rice 大学の Galileo Project のサイトから引用
http://galileo.rice.edu/lib/student̲work/
experiment95/paraintr.html
高さ h と水平飛距離 d を変え ながらそれらの関係を調べた
h d
H
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放物運動の例 スノーボードのジャンプ
https://www.thinglink.com/scene/513712392413118465 より引用
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放物運動の説明
水平方向についての慣性の法則
力が働かないとき、動いている物体は、等速直線運動を行う。
x = v
xt
鉛直(垂直)方向についての自由落下運動 (等加速度運動)
この 2 種類の運動の組み合わせで放物運動が説明できる。
x, y の式から t を消去すると、
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y = (1/2)gt
2, v
y= gt
(放物線の運動, yはxの2次関数) vx=1[m/s], g=9.8 [m/s2] の場合
2017/5/18 入門物理学 A (旧 原子から宇宙まで I)
入門物理学 A (原子から宇宙まで I)
法政大学市ヶ谷リベラルアーツセンター兼任講師 福川賢治
(https://sites.google.com/site/kfukukawa00/hosei2017)