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4.5 第 4 章のまとめ
この章では,まず,本研究で対象としている11個の副動詞接辞と,15個の焦点助詞の結合 の可否について,基礎資料から収集した用例をもとに調査した.その結果,最も結合例が多 いのは副動詞接辞-keyで,12の焦点助詞と結合可能であり,例外はあるものの,だいたいの 傾向として副詞節の定形性が低いほど多くの焦点助詞が後接可能であり,副詞節の定形性が 高いほど焦点助詞との結合が制限されるということがわかった.さらに,先行研究では単に 副動詞接辞と焦点助詞の結合可否のみを示していたが,実際に用例を見てみると,副動詞が 迂言的形式の一部になっていたり,補文マーカーになっていたりと,それほど自由に副動詞 接辞に焦点助詞が結合しないということが明らかになった.
次に,「副動詞+焦点助詞」の各組み合わせについて,その統語,意味的特徴について記述 した.焦点助詞の側から見ると,結合例が最も多かった主題,対照を表す=nun/=unは副動詞 接辞に後接し様々な意味を表す.時間的関係を表す-(a/e)se, -taka, -koに=nun/=unが後接す ると,事態の連続性を表す場合と,条件を表す場合があり,このような特徴は三者に共通し ている.
最後に,副動詞に=nun/=unが後接し条件を表す例について注目し,さらに=toが後接し逆 条件を表す例と合わせて,その統語的,意味的特徴について考察した.また,なぜ時間的な 意味を表す副動詞に焦点助詞が後接することで条件,逆条件の意味を表すようになるのかに
ついて論じた.本研究では,時間的関係を表す事態が,後続する事態に対して因果関係を持 つと解釈されるときに条件,逆条件の意味が生じると結論付け,「継起」「原因」「事実条件」
「恒常条件」「仮定条件」の連続性ついて例示した.この根拠として,焦点助詞の=nun/=un,
=toはそれぞれ対照,極端なものを取り立てており,そのことによって上位節が否定的な内容 になりやすいなどの特徴が現れること,一部の例では副動詞のみで条件を表す例があるとい うことを挙げた.
第 5 章
「副動詞 + TAM 」の形態,統語,意味
第4章においては,副動詞と焦点助詞の結合例について考察したが,本章ではアスペクト,
テンス,ムードマーカーとの結合例について,その統語,意味的特徴を明らかにする.
朝鮮語の副動詞は,その述語がテンスやムードといった,典型的には文の主節に現れる文 法カテゴリを含むことができる.これまでの研究でもこのことは指摘されており,例えばそ れぞれの副詞節がテンス,ムードに関して制約を持つかということが記述されてきた(クォ ン・ジェイル1985,ナム・ギシム1994,野間1996,イ・ウンギョン2000等).
このような特徴は日本語においても同様であるが,朝鮮語,日本語と同じ「アルタイ型」
言語と考えられるモンゴル語やトルコ語は,様々な副動詞接辞を持ち,連辞的性格を示すと いう共通点を持ちながらも,副動詞接辞はほとんどテンスやムードと結合するということは ない.
次の表37は朝鮮語の副詞節述語がどのような文法要素,具体的には過去接辞-(a/e)ss-,ムー
ド形式-l kes kath-「〜ようだ,〜だろう」,蓋然性を表すムード形式-keyss-,推量を表すムー
ド形式-l kes=i-,証拠性を表す-te-と結合可能かを調査したものである.
表37 副詞節の述語がどのような文法要素を持ちうるか(野間1996: 153) -(a/e)ss- -l kes kath- -keyss- -l kes=i-
-te-様態節-myense - - - -
-様態節-taka + +? - -
-様態節-(a/e)se - - - -
-条件節-myen + + -? -?
-理由節-(a/e)se - + -? -?
-理由節-nikka + + + +
-譲歩節-(a/e)to + + - +?
-反意節-ciman + + + +
-反意節-nuntey/-ntey + + + + +
表37を見ると,疑問符がありはっきりとしない部分はあるものの,様態節から反意節に向 かうにしたがって,結合可能な文法要素が多くなることが読み取れる.ただ,これまでの先 行研究では一部の研究を除いて,副詞節述語とどのような文法要素が結合可能かということ についてのみ調査しており,結合したときに副詞節,TAMマーカーの意味がどのように制限 されるかについては十分な研究がなかった.そこで,本章では本研究の対象である副動詞と,
その述語がアスペクト形式や過去接辞と結合したときに,どのようにそれぞれの意味が制限 されるかについて考察し,そこで制限される意味と,副詞節の定形性の関係について明らか にする.
本研究では,副詞節述語が結合する文法要素として,進行アスペクト形式の-ko iss-,過去接 辞の-(a/e)ss-,大過去接辞の-(a/e)ssess-,「〜(し)そうだ,〜だろうと思う」という意味を表す 迂言的な形式[adnkes kath-]1,蓋然性を表すモダリティ接辞-keyss-,推量を表す迂言的形式で
ある-l kes=i-との結合の可否を調査した.朝鮮語のアスペクト形式に関しては,進行を表す
-ko iss-の他に結果継続を表す-a/e iss-がある.-a/e iss-はssu-「書く」を除けば結合するのは 自動詞だけであるのに対し,-ko iss-はほとんどの動詞と結合可能なため,今回は-ko iss-を 代表させて調査することにした.表38にその結果を示している.表5ですでに表38と似た 表を提示したが,表38では否定と証拠性マーカーを含めておらず,その代わりに大過去接辞 と[adnkes kath-]「〜(し)そうだ,〜だろうと思う」が追加されている.
改めて表38を見ると,時間的関係を表す副動詞は,ほとんど当該のTAM マーカーとの 結合が制限されるということがわかる.継起を表す-koは TAMマーカーとの結合はできな いが,研究対象とはしなかった列挙を表す-koは,(5-1)のように進行アスペクトの -ko iss-から,推量の-l kes=i-まで結合が可能である.しかし,これ以下では特に言及しないことに する.
(5-1) ku
その
ai=nun
子=TOP
i
この
cip=eyse
家=LOC
sal-ko
暮らす-ADV
iss-ko
PROG-ADV.SEQ
yeki=eyse
ここ=ABL
hakkyo=ey
学校=DAT
tani-ko
通う-ADC
iss-ko
PROG-ADV.SEQ
tto
また
yangpwu=uy
養父=GEN
pap=ul
ご飯=ACC
mek-ko
食べる-ADV
iss-e=yo.
PROG-DECL=POL
그 아이는 이 집에서 살고 있고 여기에서 학교에 다니고 있고 또 양부의 밥을 먹고 있 어요.
「その子はこの家で暮らしていて,ここから学校に通っていて,あと養父に食べさせ てもらっています.」[CE000024]
以下では,アスペクト(5.1),テンス(5.2),ムード(5.3)の順に,副動詞がこれらと結合し たときの統語,意味的特徴について明らかにしていく.なお,大過去については今回は十分 な用例が収集できなかったため,詳しい検討は今後の課題とする.
1この迂言的形式は用言の連体形+形式名詞(もの,こと)+形容詞(同じだ)から成る.これ以降,この迂言 的形式を[adnkes kath-]のように表記する.
表38 副動詞とTAMマーカーの結合可否
ラベル 副動詞接辞 -ko iss- -(a/e)ss- -(a/e)ssess- [adnkes kath-] -keyss- -l
kes=i-様態 -key1 × × × × × ×
継起 -(a/e)se1 × × × × × ×
同時 -myense1 △ × × × × ×
時間 -(a/e)se2 × × × × × ×
目的 -key2 × × × × × ×
継起 -ko × × × × × ×
契機 -myense2 × × × × × ×
契機 -nikka1 ○ × × × × ×
中断 -taka ○ ○ × ○ × ×
契機 -teni ○ ○ × ○ ○ ×
譲歩 -(a/e)to ○ ○ ○ ○ ○ ×
逆接 -myense3 ○ ○ × ○ × ○
原因 -(a/e)se3 ○ ○ × ○ ○ ○
条件 -myen ○ ○ ○ ○ ○ ○
理由 -nikka2 ○ ○ ○ ○ ○ ○
逆接 -ciman ○ ○ ○ ○ ○ ○
逆接 -nuntey/-ntey ○ ○ ○ ○ ○ ○
5.1 「副動詞 + アスペクト」の統語的制約
進行アスペクトの-ko iss-と結合可能な副動詞は表38に示したとおりである.進行アスペ クトの場合は,結合するか否かによって副動詞やアスペクトの意味が変化をこうむるような ことはないが,一部の例で結合に制限が見られる.具体的な例を挙げながら考察していく.
■-myense
副動詞接辞-myenseが進行アスペクトと結合する場合は,逆接の-myense3であることがほ とんどである.基礎資料のうち,-myenseが-ko iss-と結合していた例は全部で 36例あった が,そのうち副動詞が逆接ではなく同時の意味を表していると解釈できる例は1例しか見ら れなかった.ちなみに,36例中11例が,述語にal-「知る」を取っている例であった.-myense
と-ko iss-が結合し逆接を表す例を(5-2)に,同時を表す例を(5-3)に挙げる.
(5-2) ta
全部
tut-ko
聞く-ADV
iss-umyense
PROG-ADV.SIM
way
なぜ
taytap=ul
答え=ACC
an
NEG
hay!
する:INTRR
다 듣고 있으면서 왜 대답을 안 해!
「全部聞いてるくせに,なんで答えないんだ!」[시크릿 가든12]
(5-3) conglo
鍾路
eti=ey-nka
どこ=DAT(=COP)-INDF
kenmwul=ul
建物=ACC
myech
いくつか
chay
軒
kaci-ko
持つ-ADV
iss-umyense
PROG-ADV.SIM
cipsey=lul
家賃=ACC
pat-a
受ける-ADV
mek-ko
食べる-ADV.SEQ
tto
また
yekiceki
あちこち
ton=ul
お金=ACC
pilly-e
借りる-ADV
cwu-ko
BEN-ADV.SEQ
ica=lul
利子=ACC
pat-a
受ける-ADV
mek-nun
食べる-ADN.NPST
koli#taykum#epca=i-ki=to
高利#大金#業者=COP-NMLZ=も
ha-n
する-ADN.PST
moyang=i-ess-supnita.
様子=COP-PST-DECL.POL
종로 어디엔가 건물을 몇 채 가지고 있으면서 집세를 받아먹고 또 여기저기 돈을 빌려 주고 이자를 받아먹는 고리대금업자이기도 한 모양이었습니다.
「鍾路のどこかに建物を何軒も持っていながら家賃をもらい,またあちこちにお金 を貸して利子をもらっている高利貸しでもあるようでした.」[CE000078]
■-(a/e)se
-(a/e)seの場合,継起の-(a/e)se1や時間の-(a/e)se2は進行アスペクトの-ko iss-と結合する ことはできないが,原因の-(a/e)se3は(5-4)のように結合が可能である.
(5-4) sanay=nun
男=TOP
kokay=lul
首=ACC
kiphi
深く
swuki-ko
うつむく-ADV
iss-ese
PROG-ADV.SEQ
ku
その
phyoceng=ul
表情=ACC
a-l
知る-ADN.IRR
swu=ka
すべ=NOM
eps-ta.
ない-DECL
사내는 고개를 깊이 숙이고 있어서 그 표정을 알 수가 없다.
「男は深くうなだれていて,その表情を知ることはできない.」[CE000033]
■-taka
副動詞接辞-takaは基本的には進行アスペクトの-ko iss-との結合には問題がないが,過去 接辞がさらに結合した場合には制限が生じる.例えば,次の(5-5)のような文は非文となる.
(5-5) ∗wuntong=ul
運動=ACC
ha-ko
する-ADV
iss-ess-taka
PROG-PST-ADV.DISC
tachy-ess-ta.
怪我する-PST-DECL
∗운동을 하고 있었다가 다쳤다.
「運動をしていて怪我した.」(を意図)
また,朝鮮語母語話者の方1名に-takaと-ko iss-ess- (進行アスペクト+過去接辞)を使っ て文を作れるか尋ねたところ,やはり難しいということであった.ただし,基礎資料には次 の(5-6)のような例が1例のみ現れた.(5-6)で-ko iss-ess-が可能なのは否定形になっている ことが関係するかもしれない.いずれにしろ-ko iss-ess-はほとんど用いられないということ が言える.