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第4章  失敗知識構造の調査手順

4.2.  PAC 分析実施法を用いた調査手順

4.2.2.  第一次インタビュー手順

第一次インタビューは、クラスター分析図を実際に作成するためのデータを収集 する目的で行った。その大きな目的は、プロジェクトによって思い浮かぶキーワード

の創出と、クラスター分析を行うために行われるキーワード間の距離行列測定の 2 つ である。これらの作業の所要時間は 1 名あたり約 1 時間である。具体的な手順の流れ を下記に示す。 

 

(1)プロジェクトの想起 

キーワードを創出するためには、プロジェクトについて想起する必要があるが、

何らかの刺激なしに、漫然と想起することは困難であるため、その方法の示唆を行っ た。具体的には、プロジェクトという「場」にいた調査対象者自身について視覚化

(visualize)させるようにした。実際に用いた刺激語は下記の通り。 

 

「あなたが参加した***プロジェクトを再現する場面や状況を思い浮かべてく ださい。そのプロジェクトに対して、あなたが心に留めているイベントや風景、

業務遂行の上で強く感じたことを思い浮かべてください。」   

(2)創出されたキーワードの記述 

プロジェクトの想起に基づいて創出されるキーワードがプロジェクト全体を代表 するものとなるように、「失敗」という表現の当段階での使用を避け、作成済みのク ラスター分析図に基づいて「失敗体験」を浮かび上がらせる戦略をとった。つまり、

想定したキーワードの内容は、プロジェクトの環境、事象、環境や事象についての調 査対象者の評価や思い等である。これらの内容のキーワードがクラスター化されるこ とにより、そこから浮かび上がってくる「失敗体験」に対する分析を試みた。 

キーワードは、縦 4.5cm×横 13.5cm の白地のカードを用意し、それに記入させた。 

キーワードの数においては、少なすぎるとクラスター分けが困難となり、一方で 多すぎると後述のキーワード間距離行列測定の組み合わせが膨大となる38。概ね当作 業が 20 分ほどで終わる 20 前後を想起数の目処とした。 

キーワードの形式については特に限定しなかったが、形式についての質問を受け        

38 組み合わせの計算式は、キーワード数を n とすると、(n×n−n)÷2 となる。 

たときには、名詞・形容詞・動詞等の単語、もしくは単文の形式の指定を行った。 

また、キーワードを書き終えても、さらに思い出すことがないかどうか確認をと った。この確認によって、大半の調査対象者が数個のキーワードを追加した。 

 

「頭に思い浮かんできたイメージや言葉を、思い浮かんだ順に、なるべく簡潔に カードに記入してください。カードには番号が記載されています。その順番どお りの記入をお願いします。カードの枚数は、20 枚前後を目処にしてください。」   

(3)キーワードの重要度順位付け 

キーワードを重要度合いによって順位付けすることにより、いかなる内容をとり わけ重要と感じているかが明らかになる(内藤,1997)。 

実際の説明に使用した表現は下記の通りである。 

 

「言葉の意味やイメージが+(プラス)の印象であるか、それとも−(マイナス)

の印象であるかは関係なく、あなたにとって直感的に重要だと感じられる順に上 から下にカードを並べて置いてください。並べ終わったら、上から順に、青のボ ールペンで、カード右上に、①、②・・・という風に数字を記入してください。」   

(4)キーワード間の距離行列測定 

クラスター分析を行うために、キーワード間がイメージ的に近いかどうかの測定 を行い、その結果を基に距離行列を測定する。 

距離というのは、キーワードの辞書的な定義の近似度合いではなく、直感的なイ メージにおける近似度合いである。例えば、ある事象を示すキーワードがあり、その 事象が起こった場所を示すキーワードがあると、その距離は近いものとなる。 

近さ度合いは、1(非常に近い)〜7(非常に遠い)の 7 段階変数に置き換えて測 定させた。段階数については内藤(1997)に従ったが、実際の調査においても、運用 上特に問題はなかった。 

実際の説明に使用した表現は下記の通りである。 

 

「あなたが、あなた自身がとりあげたプロジェクトに関連するものとしてあげられた イメージや言葉の組み合わせが、言葉、つまり辞書的な意味ではなく、直感的イメー ジの上でどの程度似ているかを判断し、その近さの程度を、下記の尺度の該当する数 字で答えてください。4 番の どちらともいえない に注意してください。この番号 は、「近い」と「遠い」の中間点に位置し、「近い」や「遠い」では表現できない、と いう意味ではありません。」 

 

    非常に近い・・・・・・  1      かなり近い・・・・・・  2      いくぶんか近い・・・・  3      どちらともいえない・・  4      いくぶんか遠い・・・・  5      かなり遠い・・・・・・  6      非常に遠い・・・・・・  7