5.1 土圧・水圧の作用 5-2
5.2 解析条件 5-3
5.2.1対象とした構造物と解析モデル 5.2.2非線形解析条件
5.2.3地盤条件
5.3 側壁下部の挙動 55--77
5.3.1 変位モード 5.3.2 剛性の変化 5.3.3 断面力の推移
5.4 配筋量変化の影響 5-10
5.4.1 剛性の変化 5.4.2 発生断面力の変化
5.5 設計上の取り扱い 5-14
耐荷メカニズムに基づいたLNG地下タンクの設計合理化 第5章 土圧・水圧に対する躯体の耐荷メカニズム
第
5章
土圧・水圧に対する躯体の耐荷メカニズム
本章と以降の第6章、第7章では、剛結構造の地下タンクの耐荷メカニズムについて 検討する。ここまで述べてきたように、剛結構造の地下タンクは非常に高次の不静定構 造物であり、局部的なひびわれ、材料の降伏により、その耐荷メカニズムは刻々と変化 する。その結果、その限界状態に達したときの耐荷機構は、線形解析で得られる結果と 大きく異なる場合がある。第5、6、7章では、非線形解析を用いて、荷重の種類と強度 によって、その耐荷メカニズムがどのように変化するかを明らかにする。線形解析との 結果と比較することにより、線形解析を基本とした躯体設計の合理化の可能性を探る。
本章では、円筒シェルの側壁と剛結された円板の底版という構造を持つLNG地下タン クに、側壁の外側から土水圧が作用する時の耐荷メカニズムをさぐる。ここでの主要な 断面力は側壁に発生する円周方向軸力と側壁下部の鉛直方向曲げモーメントである。
5.1 土圧・水圧の作用
側壁の下部、鉛直方向外側の鉄筋は連壁を無視するケースで決まっている。前節 6.2 で述べた底版下に作用する揚圧力と共に、側壁下部の高密度配筋の一因ともなっている。
(3章3.7.2、表-3.7.2、図-3.7.5参照)
図-5.1.1 外水圧と変形モード 図-5.1.1に土圧・水圧の載荷パターンと躯体の変位モードを示す。荷重は側壁頂部を 0とし深さ方向に線形に増加する三角形荷重を軸対称に載荷した。土圧・水圧合わせた設
計荷重はモデル下端で約800kN/m2である。
このような荷重はカルバート等、地中構造物では一般的であり、隅角部(タンクでの 底版/側壁剛結部)には大きな外側引張のモーメントが作用する。
変形モードは図に示した様に、側壁は内側へ変位し、底版は下側に変位をする。その 結果側壁下部には鉛直方向の外側引張の曲げモーメントと同時に、また側壁の円周方向 の圧縮軸力が作用する。底版下は地盤で支持され大きな変形とはならない。
本解析には、COM3を用いているが、底版下の地盤の影響を考慮するために、新たに追 加した弾性バネ要素を用いている。
また、土圧と水圧は基本的に深さ方向に線形に増加する三角形の軸対称荷重であるこ とから、底版中心での深さでの圧力でʻ水圧ʼと示した。
5.2 解析条件
5.2.1対象とした構造物と解析モデル
図-5.2.1 解析モデル Z
対象としたLNG地下タンクは、200,000kl の容量 を持った完全埋設型LNG地下タンクである。同タン クは、はじめて強度版形式の地下タンクの底版/側壁 間に剛結構造を採用した地下タンクである。
180°
X 90°
図-5.2.1に解析モデルを示す。底版、側壁、屋根 をFEMの3次元シェルによってモデル化している。
0° Y
底版/側壁剛結部は、「3章3.2 非線形解析を用い た照査」に記述した様に、3次元ソリッド要素によっ てモデル化した非線形解析により充分な強度と靭性 を確保できる配筋がされているものとし、ここでは、
3次元シェル要素により、躯体の評価が終局時の評価 まで十分に可能であることとする。
5.2.2非線形解析条件
解析には,鉄筋コンクリートの3次元非線形有限要素解析プログラムCOM3 (開発:
東京大学コンクリート研究室)を使用した.COM3で用いている鉄筋コンクリートの構成 則を表-5.2.1に示す。
解析モデル:対称条件を用いた180°3次元モデル 8節点アイソパラメトリックシェル要素
(鉄筋コンクリート躯体)
耐荷メカニズムに基づいたLNG地下タンクの設計合理化 第5章 土圧・水圧に対する躯体の耐荷メカニズム
線形境界要素 表-5.2.1 鉄筋コンクリートの構成則
(地盤) WCOMD構成則
コンクリート要素 8 節点アイソパラメトリックシ ェル要素
鉄筋要素 コンクリート要素に鉄筋比とし て分散
ひびわれ 基準
引張強度と限界歪
2 軸応力下のコンクリートの破 壊包絡線を利用
引張 RC Zoneひずみ硬化
無筋Zone ひずみ軟化(破壊エ ネルギー考慮)
圧縮 弾塑性破壊モデル
引張ひび割れによる圧縮強度の 低減考慮
コ ン ク リート 構成則
せん断 接触面密度関数に基づくコンク リートひび割れ面の応力伝達構 成則
鉄筋構成則 バイリニア コンクリートと鉄
筋の付着効果
コンクリート側のひずみ硬化で 表す
ひび割れモデル 分散ひび割れモデル
ひびわれ方向 第1主応力(引張主応力)の直 交方向
ひびわれ角度固定 本来は地盤も非線形性を考慮すべきだが
COM3で用意されている非線形3次元ソリッ ド要素を用いるとモデルが非常に大きくな り、種々の条件でのパラメータ解析は時間的 に困難となる。また本章では代表的な載荷パ ターンに対する躯体の耐荷メカニズムを知 ることを目的とするために、地盤は線形の境 界バネ要素でモデル化する事とした。また今 回使用した COM3 のバージョンでは境界バ ネ要素が用意されていないため、新たにその 機能を追加して解析を行った。
その他の躯体の構造寸法などは第3章に 示した通りである。
5.2.3 使用材料
表-5.2.2 コンクリート強度 部 位 圧縮強度
(N/mm2)
引張強度
(N/mm2)
底版 24 1.9
側壁 60 3.5
側壁と底版に用いたコンクリート強度を表 -5.2.2に鉄筋の強度と弾性係数を表-5.2.3に 示した。
表-5.2.3 鉄筋強度および弾性係数 部 位 材質 降伏強度
(N/mm2)
弾性係数
(kN/mm2) 底版上側鉄筋 SD390 390 200 側壁ハンチ部
円周方向鉄筋 SD390 390 200 上記以外の鉄筋 SD345 345 200
5.2.3地盤条件
表5.2.4に地盤条件を示す。建設地点は埋め立て地で、地盤はタンク躯体の中間付近 のレベルに当たるDL.-28m以深が比較的硬い洪積層、それ以浅にシルト分が多い軟弱な 沖積層、埋め立て層、そして盛土層の大きく4層に分かれている。また底版直下数mの ところには土丹層があり、地中連続壁の根入れ部と底版下の支持層は非常に堅固な地盤 となっている。
表-5.2.4地盤条件 標高
DL.(m) 土層 層厚
(m)
密度 ρt
(ton/m3)
N値
変形係数 E50 (N/mm2)
せん断波速度 Vs (m/sec)
動的ポアソン比 v +14.40
+4.75 盛土 9.65 1.80 10 7.0 160 0.350
+3.50
-2.80 BS1 7.55 2.00 13 5.0 150 0.495
-12.00 BS2 9.20 1.65 6 4.0 160 0.495
-21.30 A1C 9.30 1.60 3 11.0 110 0.497
-22.70 A1S 1.40 1.85 8 6.0 270 0.487
-24.00 A2C 1.30 1.80 6 4.0 220 0.489
-28.50 A2S 4.50 1.85 19 13.0 250 0.487
-38.20 D1S 9.70 1.90 56 38.0 390 0.471
-56.50 D3S1 18.30 1.90 145 100 480 0.454
-60.50 D3C 4.00 1.60 37 83 430 0.464
kac 1.75 50 360 530 0.444
耐荷メカニズムに基づいたLNG地下タンクの設計合理化 第5章 土圧・水圧に対する躯体の耐荷メカニズム
表-5.2.5、表-5.2.6に解析に用いた地盤バネを示す。バネは道路橋示方書に従って 算定した
表-5.2.5側壁外側地盤バネ定数
土層レベル 土層 E50 常時 (kN/m3) 地 震 時 (kN/m3) DL.(m) 区分 (N/mm2) KR Kθ, KZ KR Kθ, KZ
+14.40
+ 4.75 盛土 7.0 1,700 600 3,300 1,100
+ 3.50
- 2.80 BS1 5.0 1,200 400 2,400 800
-12.00 BS2 4.0 900 300 1,800 600
-21.30 A1C 11.0 2,500 800 5,100 1,700
-22.70 A1S 6.0 1,400 500 2,700 900
-24.00 A2C 4.0 900 300 1,800 600
-28.50 A2S 13.0 3,000 1,000 6,100 2,000 -38.20 D1S 38.0 9,000 3,000 18,000 6,000 -56.50 D3S1 100.0 23,600 7,900 47,300 15,800 -60.50 D3C 83.0 19,700 6,600 39,400 13,100 kac 360.0 85,800 28,600 171,600 57,200
KR:半径方向(側壁法線方向)
Kθ:円周方向(側壁接線方向)
KZ:鉛直方向(側壁接線方向)
表-5.2.6底版下地盤バネ定数
常時 (kN/m3) 地 震 時 (kN/m3) バネ成分 KV KR, Kθ KV KR, Kθ
バネ定数 52,600 17,500 105,100 35,000
KV:鉛直方向(底版法線方向)
KR:半径方向(底版接線方向)
Kθ:円周方向(底版接線方向)
5.3 側壁下部の挙動
5.3.1 変位モード
図-5.3.1 に水圧の大きさと、底版中央の鉛直変位、側壁下部の内側への変位関係を 示している。
図-5.3.1 外水圧による荷重-変位関係
図からも、8000kN/m2以上では、変位は急速に進み、底版の動きからも構造物として の安定性を完全に失っていることがわかる。但し設計荷重は800kN/m2であることから土 圧・水圧は対しては十分な耐力を有している。
終局付近では、変位の動きは、非常に急激な動きであり脆性的な破壊状態を示してい る。これは、揚水圧による終局が底版の曲げであ
ったのに対して、土水圧では側壁円周方向の圧縮 軸力(リングコンプレッション)によるコンクリ ートの圧縮破壊によるためである。但し、側壁の 壁厚は浮き上がりと、側壁下部の鉛直方向の応力 から定まっている関係で設計荷重に対しては十分 な裕度がある。
5.3.2 剛性の変化
着目する断面力は図-5.3.2 に示す側壁の円周 方向圧縮軸力(リングコンプレッション)と、側 壁下部の外側引張の鉛直方向曲げモーメントであ
1601 1501
1701 0°
X
Z
Y 180°
90°
-20 -15 -10 -5 0 5
20 40 60 80 100
荷重 x100 (kN/m2)
変位(cm)
底版中央 側壁̲1501 側壁̲1601 側壁̲1701
図-5.3.2 対象とする断面力 0
耐荷メカニズムに基づいたLNG地下タンクの設計合理化 第5章 土圧・水圧に対する躯体の耐荷メカニズム
る。
側壁下部での揚水圧の増加に伴う鉛直方向曲げ剛性の変化と円周方向の軸剛性の変化 を図-5.3.3に示す。
鉛直方向曲げ剛性は1200kN/m2でひびわれの発生により低下がはじまる。
円周方向の軸剛性は6000kN/m2程度までほとんど剛性の低下は生じていない。しかし 8000kN/m2を超えると急激に剛性が低下しこの時点では、躯体は既に終局に達している と考えられる。側壁の壁厚、強度は円周方向の圧縮応力に対しては十分な裕度があるこ とから、設計荷重の800kN/m2に対して終局荷重は非常に大きい結果となった。
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
0 20 40 60 80 100
水圧 (x100kN/m2)
残存剛性率
円周方向軸剛性 鉛直方向曲げ剛性
図-5.3.3 外水圧と側壁下部剛性低下 鉛直方向の曲げ剛性はひび割れ後徐々に剛性は低下しているが、8000kN/m2 を超え た時点で急激な剛性の低下が見られる。これは円周方向のコンクリートが圧縮終局に達 した後である。
5.3.3 断面力の推移
外水圧と、側壁下部に発生する鉛直方向曲げモーメントと円周方向軸力の関係を図 -5.3.4に示す。
円周方向軸力は、終局に至るまでほぼ線形に増加している。
また鉛直方向曲げモーメントは、ひび割れて剛性の低下と共に、断面力の増加勾配 は小さくなり、線形に増加した場合の60〜70%程度の大きさとなっている。その傾向 は円周方向軸力が終局に達するまで続く。
このことから、鉛直方向曲げモーメントに関しては、剛性の低下に伴い応力の再配