4.1 地中連続壁の考慮方法の現状 4-2
4.1.1地中連続壁に完成後に要求される役割
4.1.2地中連続壁に関わる躯体設計合理化の対象項目
4.2 施工過程を追った地中連続壁と側壁との相互作用 4-4
4.2.1 検討条件
4.2.2作用する荷重の算定
4.2.3 従来設計による鉄筋応力度と二重円環モデルの妥当性 4.2.4 地中連続壁と側壁の現実の挙動
4.3躯体照査方法への反映 4-15
4.3.1側壁の内圧よる円周方向軸力−変位関係
4.3.2内圧が作用した時の側壁・地中連続壁の耐荷メカニズム 4.3.3常時のひびわれ幅制御に必要な鉄筋
4.3.4コンクリート打設時発熱の影響
4.3.5仮設である連続地中壁の設計上の考慮方法の提案
第
4章
内圧に対する地中連続壁と側壁の相互作用
本章では、躯体設計における地中連続壁の考慮方法について検討を行う。前述したよ うに、地中連続壁は、構造設計上、内部掘削時の土留め仮設構造物と位置付けており、
完成後の構造性能照査対象とはしていない。従って、完成後の躯体の照査では地中連続 壁の存在を無視して行っている。
しかし、円筒形の地下タンクは、外側の土圧/水圧によって外圧容器となり、内側の 液圧/ガス圧による内圧よりも土圧/水圧が大きいため、その内施工時に外圧(土圧/
水圧)を負担している地中連続壁を無視することは安全側の設計とはならないとしてい る。従って同時に地中連続壁が負担する土圧/水圧を考慮しない「地中連続壁を考慮し たケース」についても設計を行っている。
しかしながら、第3章で述べたように、躯体の鉄筋はその多くが地中連続壁を考慮し たケースがクリティカルとなっている。従って結果的にLNG地下タンクは地中連続壁が ある場合の方が躯体の配筋量が大きくなるという結果となっている。
側壁と円周方向に初期圧縮力が作用している地中連続壁の関係は、剛性低下と応力の 再配分の典型的な挙動を示し、それを追跡することは側壁の大きな配筋の合理化につな がる。
そこで本章では、施工過程を追って地中連続壁と躯体側壁との関係を詳細に把握し、
その結果から、現状の安全側として設定している地中連続壁を考慮する場合の条件を精 査することにより合理化の可能性を探る。
4.1 地中連続壁の考慮方法の現状
4.1.1地中連続壁に完成後に要求される役割
構造設計上は地中連続壁を無視するケースも実施しており、完成後地中連続壁に要求 される構造性能は無い。
しかし構造性能以外の部分で完成後に以下のような役割を要求されている。
(1)根入れ部分の止水性能
地下タンクでは、完成後凍結止水が完了するまでは底版下に水圧(揚圧力)を作用 させないで運転(低水位運転)をする。そのために底版下から地下水を揚水(ポンプ アップ)し、底版下の地下水位を底版下の砕石層内に維持する。その時の揚水量を抑 制するために地中連続壁の根入れ部分には、止水性が要求される。
そのために、耐久性能を確保できる、コンクリート配合と鉄筋のかぶりを適用して
耐荷メカニズムに基づいたLNG地下タンクの設計合理化 第4章 内圧に対する地中連続壁と側壁の相互作用
いる。
(2)浮き上がり抵抗重量
凍結止水確認後、底版下からの地下水ポンプアップを停止し、高水位運転へ移行す る。その時底版下面には大きな水圧が作用する。通常この水圧は非常に大きく、躯体 の部材寸法はそれに抵抗するための浮き上がり抵抗重量から決まっていることが多い。
当然地中連続壁も浮き上がりに対する抵抗重量として算入している。
そのことから、底版下に作用する浮力が、確実に地中連続壁に伝達されるように必 要な接合鉄筋を側壁/地中連続壁間に配置している。さらに地中連続壁の根入れ部分 で、内部掘削時に大きな荷重が作用しない深い部分にも、それ以深の浮き上がりに対 する抵抗重量を支えうるだけの鉄筋を配置している。
4.1.2地中連続壁に関わる躯体設計合理化の対象項目 (1)躯体主鉄筋
側壁鉄筋は鉛直方向外側以外ほぼ全て地中連続壁を考慮したケースで決まっている。
(表-3.3.1〜3.3.3)特に円周方向鉄筋では連続地中壁を考慮したケースとしないケ ースでの差が著しい。(図-3.3.3)また底版の上筋も全て地中連続壁を考慮したケー スで決まっている。無視するケースとの差は、側壁の円周方向ほど大きくないものの 20%前後はある。
(2)側壁/地中連続壁間接合鉄筋
側壁/地中連続壁間接合鉄筋は、側壁と地中連続壁を接合するために設置する。照 査は、高水位運転時の躯体が上へ浮き上がろうとする状態での上向きの力と、低水位 運転時の躯体の自重によって沈もうとする下向きの力が確実に地中連続壁に伝達でき るだけの接合鉄筋を配置する。
このような部位の設計には、一般にはせん断摩擦の考え方を適用するが、躯体の設 計で、地中連続壁が、供用時、内容液の温度で低温になる躯体の収縮を拘束しない様 に、接合鉄筋の側壁側埋め込み部分の付着を切りスライド構造としている。そのため せん断摩擦の考え方が適用できず、接合鉄筋のせん断で抵抗する設計をしている。そ の結果、非常に多くの接合鉄筋が必要となり、接合鉄筋の配置が施工工程でクリティ カルとなっている。またスライド構造としていることから躯体の水密性という点から も弱点となりやすい。
4.2 施工過程を追った地中連続壁と側壁との相互作用
3章で示したように、側壁の円周方向鉄筋が最も、地中連続壁を考慮したケースが決定 ケースによって増加している。外側の土水圧を地中連続壁が負担してしまい、側壁にそ れによるリングコンプレッションが作用しないことが大きな原因である。
そこで本章では、側壁の下部での地中連続壁と側壁の挙動、相互作用を施工過程を追 って追跡し、液圧/ガス圧による内圧によって側壁の円周方向にどのような荷重が作用 するかについて検討をおこなった。
4.2.1 検討条件 (1)検討モデル
対象とした地下タンクは3章で取り上げた容量200,000kLの底版/側壁剛結型LNG 地下タンクである。
検討レベルは、液圧による円周方向引張軸力が最も大きく働き、かつ底版からの拘束 の影響が小さい側壁の下部、標高DL-38.200とする。解析モデルは水平面で切断した側 壁と地中連続壁の二重円環モデルとする。
51,000
3,500 2,000
3,500 2,000 8,000208
77,140 71,540
1,500 2,800 2,800 1,500
1,0001,000
DL.+14.400
最高液位 DL.+4.595
DL.-46.613
DL.+3.500 DL.+4.750
盛 土
地中連続壁
(仮設)
保冷材+メンブレン t=208
底版
保冷材+メンブレン t=167
保冷材+メンブレン t=214
セグメント t=150
配管ピット (φ1200)
側壁
屋 根
φ70,812
200,000KL LNG地下式貯槽
検討レベル
図-4.2.1検討箇所
また検討の対象とする荷重は常時に作用する軸対称荷重のみとする。それ以外に設計 で考慮している常時の荷重としては非軸対称の常時偏土圧があるがその大きさは非常に 小さいことと(土圧の20%)、問題を単純化するためにここでは無視した。
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(2)二重円環モデルの構造寸法
側壁と地中連続壁の検討位置での構造寸法を表-4.2.1と図-4.2.2に示す。
35,700 2,800
1,500 側壁
地中連 続壁
図-4.2.2検討モデル
表-4.2.1 2重円環モデルの構造寸法
部位 寸法 備考
側壁内側半径 R2=35770mm (中心半径 Rs=37140mm)
側壁厚 hw=2800mm
連壁内側半径 R3=38570mm (中心半径 Rr=39320mm)
連壁厚 hs=1500mm
(3)材料
コンクリート
設計基準強度 f’ck
側壁 60N/mm2 地中連続壁 51N/mm2 線形解析に用いる弾性係数 Ec
側壁 35kN/mm2 地中連続壁 33.2kN/mm2 鉄筋 SD345
線形解析に用いる弾性係数 Es 200kN/mm2
(4)配筋
地中連続壁 考慮しない
(パネル間カッティング工法によりジョイント部は円周方向に配筋せず)
側壁
内側 D51@192+D41@192=175.0cm2/m 外側 D41@205+D41@205=130.7cm2/m
4.2.2作用する荷重の算定
(1)内部掘削時に地中連続壁に作用する土水圧
地下水位レベルは DL.+3.500m、静止土圧係数を 0.5、内部掘削時の地盤高さは DL.+4.750m である。完成時の地表面標高はDL.+14.400mだが、盛土は躯体完成後で あり、内部掘削時には盛土による土圧は作用しない。
1)作用荷重 水圧
Pw=-1.0x9.80665x(3.5+38.200)
=-408.94kN/m2 (=41.7 tonf/m2) 土圧
Pe=-175.83kN/m2 (=17.93tonf/m2) 土水圧合計
Ps=-584.77kN/m2 (=59.63tonf/m2) 2)断面力
N=Ps・Rr=-584.77x39.320=22993.15kN/m 3) 地中連続壁に導入される歪
σθ’=N/t=-22993.15/1.5=-15.33N/mm2 εθ’=-0.000393
内側への半径方向変位
δR0=Rr・εθ’=-39.320x0.000393=-15.45mm(-15.474mm)
(2)側壁の打設後の収縮 εsh=-13.5x10-5
δR1=εsh ・Rr=-13.5×10-5・39320=-5.31mm
(3)側壁構築後の盛土土圧 1)作用荷重
PRE=85.17kN/mm2 (8.685tonf/m2) 2) 断面力
N=Ps・R=85.17x39.320=3348.88kN/m 3) 連続地中壁に導入される歪
σθ’=15.33+N/t=15.33+3348.88/1.5=15.33+2.23=17.56N/mm2
耐荷メカニズムに基づいたLNG地下タンクの設計合理化 第4章 内圧に対する地中連続壁と側壁の相互作用
εθ’=0.000459 4)内側への半径方向変位
δR0=-R・εθ’=-39.320x(0.000459-0.000393)=-2.59mm (-18.05mm)
(4)温度による収縮
1)LNGの低温による温度分布
LNGの温度は-162℃と低温であり、それによる側壁の温度は地中連続壁の外側に設 けられた側部ヒーターによって凍結線が地中連続壁の外側1mの位置となるようにコン トロールされる。更に、流入する熱量を抑えるために、側壁の内面を断熱材で覆って いる。
その結果、側壁の内面で約-38℃、地中連続壁の外側で-5℃程度となる。側壁・地 中連続壁内の温度分布を図-4.2.3に示す。側壁と地中連続壁の平均温度は約 16℃の 差が生じる。
R0=35,408 R1=35,620
R2=5,770
R3=38,570 R4=40,070
R5=41,070 R6=42,070 側壁 連壁 地盤
凍結線 側部ヒータ
T5=0℃ T4=-5.65℃ T3=-16.56℃ T2=-38.11℃
側壁平均 -27.34℃
連壁平均 -11.104℃ 2,800 1,500
1,0001,000 150
150
T0=-162℃
図-4.2.3側壁・連壁内の温度分布
2)温度による歪分布
初期温度を16℃(地盤温度)、コンクリートの線膨張係数 αc=1.0x10-5とすると