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今後の検討

ドキュメント内 電気通信大学大学院 情報システム学研究科 (ページ 116-119)

第 5 章 まとめ

5.3 今後の検討

広角HUDを利用し,すぐに回避が必要ではなく,緊急度が低いが危険が潜むハ ザード情報を背景に重畳して提示したところ,ドライバの予測を促す支援となり得 た.読み取りに時間のかからない情報であれば,同時に複数の情報提示があっても,

ドライバは混乱することなく情報を取得し,前景交通場面を認知することができた.

これらのことから,ドライバを安全に誘導するためのドライバの予測支援という,

広角HUDを活用した新たな運転支援の実用化のための次なる課題を検討する.

5.3.1 広角HUDに表示する情報について

ドライバは運転中,注視点を移動させながら前方の交通場面の情報を得ており,

中心視周辺の有効視野内から得られる情報を手掛かりに次の注視点を検出してい る[5].広角HUDに提示された情報は,ドライバの有効視野内に提示されることが 多く,提示の気が付きやすさには優れているが,情報提示の頻度と提示内容によっ ては煩わしさを与える.今後,情報提示があっても予測が促されないケースや,危 険が潜むことの理解が難しいハザードに対し,表示内容の検討がなされる. AR-HUDは AR 表示に注意が向き,背景である現実への知覚への注意リソース配分が 減少する恐れも指摘されている[6].そのため,HUDに提示する情報は,本研究の 結果からも運転中は長くて 1 秒以内で読み取ることができる読み取り容易なもの が望まれる.また,言語情報や複雑なアイコン図形など提示情報に意味があるもの は,ドライバのアイポイントから十分に離し,重畳提示する対象の近くに提示しな ければ,提示のずれや二重像の影響でドライバが適切に認識できないため,十分な 確認が必要である.

ドライバアイポイントから上下3度であれば,HUD上の情報の読み取りが速く,

前景への認知の遅れも少なかった.しかしながら,この範囲は運転に欠かせない情 報が多く含まれているため,HUD の提示には注意が必要である.特に前景を被い 隠してしまう提示は避け,視認性の観点から大きくても視野角0.9度程度[4],3章 で煩わしさが少ないと評価された1秒間程度の明滅提示が推奨される.なお, AR-HUD による警告表示の優位性も研究されており[7],警報提示を HUD で行う場合 はよりドライバの注意を引きつける提示が望まれる.警報のようにHUDに提示し た情報を確実にドライバへ伝達する必要がある場合,先行車の色など背景により HUD 提示が認識できない場面が生じることを想定した提示方法を検討する必要が ある.また,警報を優先し,ほかの情報提示を消すなどHUD提示には統合マネジ メントが望まれる[8].

4章により広角HUDに複数の情報提示があった場合の提示情報の認知と背景交 通場面の認知への影響は確認できたが,複数提示における全体のバランスへの考慮 も必要であり,提示された情報の中に注意を引きつける色や大きさの提示があった

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場合,ほかの情報の認識に与える影響と,前景交通場面の認知への影響ついては今 後の調査が望まれる.

3 章のような自動運転レベル 2 走行中は,ドライバの視線は前方であることか ら,安全運行に必要な情報だけでなく,前景に重畳するAR表示による,経路情報 や沿線店舗情報,駐車場の空き状況など,様々な情報提示に HUD が利用できる.

HUDの提示は,ドライバからの入力を想定していないが,HUD上のアイコン対し ジェスチャー認識による入力操作といった研究[9]もあり,今後HUDの有効活用が 期待できる.ただし,現状ではHUD上の提示の規制がないが,本来は安全運転の ための情報提示想定であることから,運転とは直接関係のない情報提示の在り方に ついては検討しなければならない.

一方,年齢差による HUD の煩わしさの感じ方の違いが認められたという報告 [10]もあり,明るさや色については個人差を考慮する必要がある.また,個人特有 のディスプレイレイアウトによって使いやすさが向上する可能性も述べられてお り[11],ドライバによって HUD の提示色や位置をカスタマイズできるようにする こともHUDの有効利用につながる.

5.3.2 予測支援の安全運転への誘導について

2章と3章では,危険が迫る場面ではなく,その後の状況によって危険が顕在化 する可能性のあるハザードに対して,広角HUDを用い,ハザードに重畳して視覚 刺激を提示した.ドライバは年齢を問わず視覚刺激の意味を理解し,危険が迫る場 面でなくとも,情報提示位置において何か起こるかもしれないという予測が促され,

HUD による重畳表示は有効な予測支援となる可能性が見いだせた.一方で,情報 提示があっても,この先に危険に陥るかもしれないという予測的な運転行動が見ら れないケースも見られた.

2章では,一部の高齢ドライバは,対象のハザードに危険が潜むことを認識して おらず,視覚刺激の提示では,このようなドライバに対してハザードを理解させる には至らなかった.ハザードに対して危険が潜むこと,取るべき運転行動をアドバ イスする[12]などの手段も併用して理解を促す必要がある.島田ら[13]は,危険予 知能力は経験値によって一定の醸成が図られる可能性があると述べており,一度ハ ザードの理解ができれば,今回の情報提示により,安全運転への効果が期待できる.

一方,非高齢ドライバは潜在的ハザードに対し,予測的運転行動をとらなかっ た.本間[14]は潜在的ハザードへの情報提示は,人間工学や心理学的な知見に基づ いた検討を推奨している.状況に応じ,なぜドライバが予測的運転行動をとらなか ったかを分析し,適切な内容の情報提示を検討する必要がある.なお,情報提示を 行ったうえで,車両側から減速するなどの方策の有効性も期待できる.

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3章では,運転経験が浅いドライバにおいて.運転を担っていないことに起因す る,状況認識の不足がみられた.自動運転レベル2走行中のドライバは,周辺交通 環境の状況認識だけでなく,運転操作を担うシステムがどのような状況認識を行い,

どのような操作を行うのかを理解しなければならない.そのため,車両システムの 今後の操作をドライバへ適切に伝達した上で,余禄支援の効果を調べることとする.

2章および3章では評価したハザードの種類が限られた.車両のセンサーの高度 化により,多くの潜在的ハザード,行動予測ハザードが検知可能となる可能性が考 えられる.情報提示に対する予測の効果の評価については,今回想定したハザード 以外においても確認する必要がある.今後,車両制御に用いられているリスク定量

化の技術[15][16]により,潜在的ハザードの中でも危険が顕在化しやすいハザード

から優先して提示する,車速や位置,交通流から情報提示の必要性を判断する,ま た,ドライバの視線からハザードを認識しているかどうかを判断する技術[17]など を駆使する,など同時に提示する視覚刺激の制御と提示の頻度を調整することで,

より効果的な予測支援となり,ドライバの混乱や煩わしさへの低減にもつながる.

本研究では,予測支援の効果の継続については調査に至らなかった.今後,HUD の重畳表示による予測支援を繰り返し経験した場合の煩わしさおよび効果の継続 性について調査を行うこととする.

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