一 令第82条各号に定めるところによること。
二 令第82条の2に定めるところによること。ただし、令第88条第1項に規定する標準 せん断係数を 0.3 以上とした地震力によって構造耐力上主要な部分に生ずる力を計算して令 第 82 条第一号から第三号までに規定する構造計算を行って安全性が確かめられた場合にあ っては、この限りでない。
三 木造の建築物にあっては、令第82条の6第二号ロに定めるところにより張り間方向及 びけた行方向の偏心率を計算し、それぞれ0.15を超えないことを確かめること。ただし、偏 心率が0.15を超える方向について、次のいずれかに該当する場合にあっては、この限りでな い。
イ 偏心率が0.3以下であり、かつ、令第88条第1項に規定する地震力について標準層せ ん断力係数を0.2に昭和55年建設省告示第1792号第7の表2の式によって計算したFeの 数値を乗じて得た数値以上とする計算をして令第 82 条第一号から第三号までに規定する構 造計算を行って安全性が確かめられた場合
ロ 偏心率が0.3以下であり、かつ、令第88条第1項に規定する地震力が作用する場合に おける各階の構造耐力上主要な部分の当該階の剛心からの距離に応じたねじれの大きさを考 慮して当該構造耐力上主要な部分に生ずる力を計算して令第 82 条第一号から第三号までに 規定する構造計算を行って安全性が確かめられた場合
ハ 令第82条の3の規定に適合する場合
<許容応力度等計算(ルート2)>
高さ13m、または軒高9mを超え、高さ31m以下の木造建築物はルート2以上の構造計算 を行う必要がある。ルート2では、ルート1に加えて、層間変形角の確認、偏心率、剛性率 の確認をしなければならない。また、昭和55年建告1791号第1に示されている水平力を負 担する筋かいに対する地震力の割増等について確かめる必要がある。
<保有水平耐力計算(ルート3)>
木造の保有水平耐力の計算式は令第82条の3に示すとおりでRC造やS造と同じであり、
部材や接合部などが存在する応力を伝達することが重要である。特に木造の架構の変形性能 は、接合部の性能に拠るところが大きく、想定する剛性や耐力を十分に発揮できるように設 計する。
保有水平耐力計算では、構造特性係数Dsの設定が重要で、設定方法については、昭和55 年建告1792号第2に示されているが、同告示注の各表に示された数値として設定すればよい のではなく、あくまでも架構の性能および架構の形式に応じて、規定された数値以上の数値 とし安全性を担保することが求められる。
●公共建築物で配慮すべきこと
国土交通省大臣官房官庁営繕部の「木造計画・設計基準」19)では、以下の構造計算ルート
を選択する場合に、公共建築物としての求められる上乗せの性能について示されている。
<壁量計算>
偏心率の検討を行い、偏心率が0.3以下であることを確認すること
<許容応力度計算(ルート1)>
偏心率の検討を行い、偏心率が0.3以下であることを確認すること
2-5-1-3 木造建築物の構造設計に関連する情報
2-5-1-2で示したように法的に構造計算ルートが定められており、それにしたがって設計を
進めることになる。しかし、上記の情報だけでは具体的な設計を進める中で、分からない部 分や判断できない部分が生じる。そのため日本建築学会等では大規模木造建築物に対する解 説や設計規準等の書籍を発行し、設計者への情報提供を行っている。
一方、木造建築物の設計関連の書籍においては体系的に整理されたものが少ないことや、
これまでに実施された有用な実験データが集積されていない状況がある。そこで大規模木造 建築物がより身近に設計可能となるよう、情報提供・情報共有の場として「設計支援情報デ ータベースKi20)」というものが立ち上げられている。
ここでは、木造建築物に関する書籍の紹介、設計支援情報データベースKiの紹介を行う。
●木造建築物に関する書籍
本書で紹介する書籍を、表2.5.2に示す。
これらの書籍で全て設計ができるわけではないが、建築基準法だけでは足りない部分を補 うよう活用していただきたい。
第2章
表2.5.2 木造建築物の設計に関する書籍19)、21)~28)
書籍名 発行・著者 概要
建築物の構造関係技術基 準解説書(2007年版)
国土交通省住宅局建築指導課ほか 監修
建築基準関係法令のうち、構造関係の基準について法解釈 を示したものである。
木造については、建築基準法施行令第3章第3節の技術基 準、ならびにこれに基づく関係告示が網羅的に記載され、そ の解説が詳しく示されている。
木造軸組工法住宅の許容
応力度設計 (公財)日本住宅・木材技術センター
「建築物の構造関係技術基準解説書」よりも構造計画、設 計、構造計算などの過程を明確に示している。木造軸組工法 住宅の許容応力度設計の標準的な図書として使用されてい る。
入門 木造の許容応力度
計算 (公財)日本住宅・木材技術センター 「木造軸組工法住宅の許容応力度設計」の入門編。演習付き でわかりやすく解説している。
木造軸組工法住宅の横架 材及び基礎のスパン表(増 補版)
(公財)日本住宅・木材技術センター 木造軸組工法住宅の横架材及び基礎のスパンの早見表。
木質系混構造建築物の構
造設計の手引き (公財)日本住宅・木材技術センター 木質系混構造建築物について、立面混構造を主な対象とし て、国交告第593号を踏まえ、耐震構造計算ルート等を解説。
木質構造設計規準・同解
説 (一社)日本建築学会
木質構造の構造設計を行ううえで、基本となる技術的な考え 方を示したものである。特徴としては、中大規模木造建築物を 視野にいれ、集成材を使用した際によく用いられるボルト、ド リフトピンなどを含め、接合部の設計式の詳細が示されてい る。
木質構造接合部設計マ
ニュアル (一社)日本建築学会 既往の研究成果を取りまとめ、理論的展開を最小限に留め て、接合部に特化した設計者の実務用ハンドブックである。
木質構造接合部設計事例
集 (一社)日本建築学会
「木質構造設計規準・同解説」の補足資料として、曲げ降伏型 接合具を用いた接合部におけるせん断に対する設計につい て、「木質構造設計規準・同解説」で明確に示されていない部 分を具体的に示しながら、特にボルト接合、ドリフトピン接合、
ラグスクリュー接合について、個々の接合部の耐力計算から 実際の接合部の設計事例までを提示する資料集である。
枠組壁工法建築物設計の 手引き
枠組壁工法建築物構造計 算指針
(一社)日本ツーバイフォー建築協会
枠組壁工法建築物を対象としたもので、「設計の手引き」は平 成13年国交告第1540号、平成13年国交告第1541号の解説 である。「構造計算指針」は枠組壁工法建築物の構造計算の 方法を示している。
丸太組構法技術基準解説
及び設計・計算例 (一財)日本建築センター 丸太組構法技術基準(平成14年国交告第411号)を解説、そ の計算方法や設計事例を取りまとめたものである。
木造計画・設計基準 国土交通省大臣官房官庁営繕部
「国家機関の建築物及び、その附帯施設の位置、規模及び 構造に関する基準」(平成6年建告第2379号)に基づき、官庁 施設の営繕を行うにあたり、木造施設を設計する上で、その 効率化に資するために、設計に関する技術的な事項及び標 準的な手法を定めたものである。
●設計支援情報データベースKi20)
設計支援情報データベース Ki(http://www.ki-ki.info/index.html)は木造の研究者を中心 とした有志が集まり中層大規模木造を普及させるために必要な検討を行っている成果や過程 を紹介するサイトであり、中層大規模木造の設計を担う設計者を対象に汎用構造解析ソフト による三次元解析モデルを用いて構造設計を行う場合に必要なデータが整理された構造設計 データ集や、木質材料の仕様・価格に関する情報、各種イベント情報などが掲載されている。
現在開示されている情報のうち、構造設計データ集の例を図2.5.2に示す。使用材料、寸法、
接合具、試験体の概要、また理論式とモデル化に際しての考え方、実験結果の各特性値と理 論式での計算結果との整合性などが掲載されている。これは、部材寸法等特定の組み合わせ のデータではあるが、このシートをもとに同断面・同条件の寸法で設計すれば、確認申請の 際に建築主事に対して、独自で実験を行って確認しなくても、実験データを含めた数値の根 拠を示すことができる。将来的には、断面寸法等組み合わせを変更しても、理論式で同等と 見なせるようなデータとして整備していくことが進められている。
図2.5.2 構造設計データ集の例
設計支援情報データベースKiでは、今後も中層大規模木造建築を促進していく際に必要な 情報を整備し、設計者にとってより使いやすいデータベースを構築していくために、材料や 構造だけでなく、防耐火関係や木質内装化の際に考慮しなければならない法律関係の情報な ども含めて、蓄積する情報の幅を広げていく予定であり、今後随時情報が更新されていくよ