• 検索結果がありません。

窒素ドープポーラスカーボン触媒の調製条件の検討

2.1 緒言 2.2 実験方法

2.2.1 窒素ドープポーラスカーボンの調製 2.2.2 物性評価

2.3 電子顕微鏡観察および結晶構造解析 2.4 細孔構造解析

2.5 化学結合状態解析 2.6 本章のまとめ 参考文献

35

2.1 緒言

窒素ドープカーボンは酸素還元反応,酸素発生反応や二酸化炭素還元反応を 促進させる電気化学触媒として作用する.また,窒素ドープポーラスカーボンは 大きな静電容量をもつことから,電気二重層キャパシタとしての応用が期待さ れている1,2).調製条件が窒素ドープカーボンに与える影響を明らかにすること は,これらの用途において最適な材料を得るためには欠かせない.本研究では熱 処理法により,カーボン材料表面に窒素をドープした.この表面修飾的アプロー チによる手法は,簡便であり,スケールアップも容易である.しかし,特定の窒 素種のドーピングおよびその量を制御することは困難であり,また,熱処理は形 態にも大きな影響を与え,比表面積や細孔容積を変化させる.本章では,炭素源 として使用したカーボンブラックの前処理および熱処理が,得られる窒素ドー プポーラスカーボンの窒素種や細孔構造に与える影響を評価した.

2.2 実験方法

2.2.1 窒素ドープポーラスカーボンの調製

窒素ドープポーラスカーボンの合成フローチャートを Fig. 2.1 に示す.市販 のカーボンブラック(Carbon black,CB;EC600JD,ライオン)に,窒素フロ ー中での熱処理(900℃,4時間)もしくは70 wt%濃硝酸(和光純薬)中で60℃,

5時間の酸処理の二種類の異なる前処理を施し,それぞれ前処理を施したCBを

CB-HP,CB-NPと示す.前処理をしたCBもしくは無処理のCBを炭素源とし,

シアナミド水溶液に含浸させた後,蒸発乾固して得た前駆体を窒素流通下で,ま

ず550℃で 4時間保持してカーボンナイトライド(C3N4)をCB 表面で重合さ

3,4),続けて800—1100℃で4時間,熱処理を行ってC3N4を完全に分解させて 窒素ドープポーラスカーボンを得た.以後,無処理のCB,CB-HP,CB-NPを 炭素源として合成した窒素ドープポーラスカーボンをそれぞれ NPC-noP,

NPC-HP,NPC-NPと表す.熱処理は管状炉を使用して石英管(内径:19.5 mm,

外径:22.5 mm)中で窒素を300 mL min−1でフローさせながら行った.

36

2.2.2 物性評価

合成した窒素ドープポーラスカーボンを 透過電子顕微鏡(Transmission electron microscopy, TEM; Titan Cubed G2 60-300, FEI)および走査型電子顕 微鏡(Scanning electron microscopy, SEM; S-4800もしくはSU-8220,日立ハ イテクノロジー)により観察した.電子顕微鏡観察用試料は測定試料をエタノー ル中に分散させたものをマイクログリッド膜貼付メッシュ(Cu,200メッシュ)

にすくい取り,乾燥させて作製した.X 線回折パターンは粉末 X 線回折装置

(X'Pert Pro, SpectrisもしくはRINT 2100,リガク)を用いて,CuKをX線 源として測定した. X線光電子分光分析装置(X-ray photoelectron spectroscopy, XPS; Quantera-SXM,アルバックファイ)を用いてAlKαをX線源として光電 子スペクトルを得た.インジウム板(ニラコ)に粉末試料を圧着して測定試料と した.なお,エネルギー軸はCu 2p(932.62 eV)およびAu 4f(83.96 eV)を 用いて校正した.元素濃度はShirley法によりバックグラウンドを差し引いたピ ークの面積より相対感度係数法によって求めた.ラマンスペクトルは532 nmの レーザーを用いてレーザーラマン顕微鏡(InVia Reflex, Renishaw)により測定

Nitric acid pretreatment

(60 , 5 h)

Heat pretreatment

(900 , 4 h)

Pyrolysis (800—1100 , 4 h)

Polymerization of cyanamide into C3N4 on

pretreated CB and non-pretreated CB (550 ℃, 4 h)

NPC-HP NPC-NP

Carbon black (CB)

NPC-noP

Fig. 2.1. Flowchart of synthesis of noP, HP, and NPC-NP.

37

した.得られたラマンスペクトルはいずれも 4 つのピークに波形分離した.

1339—1343 cm−1および1598—1601 cm−1の二つの大きなピークは端部および欠 陥,およびグラファイト構造に対応し,それぞれD band,G bandと呼ばれる

5,6).1200 cm−1および 1515 cm−1のブロードな小さなピークはそれぞれ多環芳 香族炭化水素に似た乱れたグラファイト構造およびヘテロアトムドープ等によ り歪んだグラファイト構造に帰属される7,8).窒素脱吸着等温線はガス吸着量測 定装置(BELSORP-max,日本ベル)により測定した.比表面積は,分圧0.05—

0.20の領域でBET(Brunauer-Emmett-Teller)式を用いて算出した.また,径

が 2 nm 以下の細孔であるマイクロ細孔の容積は t プロットの切片より求めた

9).細孔分布はBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により解析した10).全細孔容 積は分圧0.98における吸着量から,密度変換係数として0.0015468を用いて求 めた11)

2.3 電子顕微鏡観察および結晶構造解析

合成した窒素ドープポーラスカーボンの形態をTEMおよびSEMにより観察 した.NPC-HP 1000℃,NPC-NP 1000℃の粒子は,粒子外周部に沿うように2—

3 nm 幅の炭素六角網面が数枚重なったグラファイト状の微結晶子が確認でき,

粒子内部に向かうにつれてアモルファスな構造をとっていた(Fig. 2.2a, b12)). ともに粒子径が30 nmほどであり,一次粒子が凝集して100—300 nmほどのア グロメレートを形成し,さらにアグロメレートが連なってアグリゲートを形成 している(Fig. 2.2c, d12)).Fig. 2.3に窒素ドープポーラスカーボンの概略図を 示す 12).窒素ドープポーラスカーボンは一次粒子表面のグラファイト状の微結 晶子間にスリット状のマイクロ細孔を形成し,アグロメレート中の凝集した一 次粒子間に細孔径が2—20 nmのメソ細孔,さらに,アグロメレート間にメソ細 孔およびマクロ細孔を形成している. CBは炭化水素の熱分解と不完全燃焼を制 御して生産され,微結晶子を含む歪んだ球状の粒子が鎖状に連なり13),窒素ドー プポーラスカーボンの構造はこの出発原料であるCBに由来する.

Fig. 2.4に窒素ドープポーラスカーボン,CB, C3N4/CB-NP, C3N4/CB-HPお よびC3N4の X線回折パターンを示す 12).窒素ドープポーラスカーボンの回折 パターンに確認できる二つのブロードなピークはグラファイト(JCPDSカード No. 75-1621)のピークに一致した.ブロードな(002)ピークはグラファイト状 の微結晶子から窒素ドープポーラスカーボンがなることを示し,TEM像(Fig.

38

2.2a, b)より観察できる微結晶子に対応する.窒素源として用いたシアナミドは

550℃,4時間の加熱によって重縮合反応が進行し,メレムユニットが連結した

ポリマーが積層した C3N4を生成する.C3N4は 700℃以上の加熱で分解され,

発生した窒素を含むフラグメントによってカーボン表面に窒素がドープされる

14).窒素ドープポーラスカーボンの回折パターンにおいてC3N4由来のピークは 確認できず,また,電子顕微鏡観察においてもC3N4は確認できなかったことか ら,C3N4は完全に熱分解されているものと考えられる.

Ordered shell Disordered core

5 nm

Disordered core

5 nm

100 nm 100 nm

(a) (b)

(c) (d)

Ordered shell

Agglomerate Agglomerate

Fig. 2.2. (a, b) TEM and (c, d) SEM images of (a, c) NPC-HP prepared heating at 1000°C and (b, d) NPC-NP prepared heating at 1000°C.

39

Agglomerate (100–300 nm in a diameter) containing mesopores (2–20 nm)

Primary particle (about 30 nm in a diameter) containing micropores

Graphitic layer Aggregate (> 1 µm in a diameter) contaningmeso-, macropores(> 20 nm) Fig. 2.3. Schematic illustration of the microstructures of nitrogen- doped porous carbon.

40

10 20 30 40 50 60

2θ/degree

Intensity / arb. unit

C3N4/CB-NP C3N4/CB-HP C3N4 CB

(002) (101)

(c)

Fig. 2.4 XRD patterns of (a) NPC-HP, (b) NPC-NP, (c) CB, C3N4/CB-NP, C3N4/CB-HP, and C3N4.

(002) (101)

20 40 60 80

10 30 50 70 90

NPC-HP 1100℃

NPC-HP 1000℃

NPC-HP 900℃

NPC-HP 800℃

(a)

Intensity / arb. unit

/degree

20 40 60 80

10 30 50 70 90

NPC-NP 1100℃

NPC-NP 1000℃

NPC-NP 950℃

NPC-NP 900℃

NPC-NP 800℃

(002) (101)

(b)

Intensity / arb. unit

/degree

41

2.4 細孔構造解析

窒素ドープポーラスカーボンの細孔構造を解析するために,窒素ガス吸着測 定を行った.Fig. 2.5にIUPAC の等温線分類を示す15).I型はマイクロ細孔の 存在を示している.II,III型は無孔あるいはマクロ細孔,IV,V型はメソ細孔 が存在する.III,V 型の等温線は吸着分子との相互作用が弱い試料に観測され る.VI型は細孔の無い表面への段階的な多分子層吸着を示す.窒素ガス吸脱着 等温線をFig. 2.6aおよび2.7a, bに示す12).測定したいずれの等温線も等温線 分類タイプ I 型および IV 型が複合しているものと考えられる.また,P/P0 が 1.0に近い領域において飽和が確認できなかった.これはマクロ細孔の存在を示 す.Fig. 2.6bおよび2.7c, d にBJH法により解析した細孔分布を示す12).Fig.

2.6cに細孔径が2 nm 以下の細孔の容積(マイクロ細孔容積),2 nm以上の細 孔の容積(メソ細孔とマクロ細孔を合わせた容積),比表面積を示す12).窒素ド ープポーラスカーボンのメソ細孔とマクロ細孔を合わせた容積は全細孔容積の

90%以上を占めていた.CB-HPはCBと比較して僅かにマイクロ細孔容積が減

少した.これは900℃,4時間のアニール処理によって,マイクロ細孔が癒合し たためであると考えられる.一方,メソ細孔とマクロ細孔を合わせた容積は増大 した.Fig. 2.8にラマンスペクトルを示す12).アニール処理によってDバンド とGバンドピークの強度比(ID/IG)が1.65(CB)から1.41(CB-HP)に減少 した.したがって,結晶性の低いドメインが消滅してメソ細孔とマクロ細孔を合 わせた容積が増大したものと考えられる.NPC-noP 1000℃はNPC-HP 1000℃

より窒素ドープ量が小さかった(Table 2.112)).結晶性の低いドメインは,エッ ジや欠陥が多く,窒素がドープされやすいと考えられるが16),900℃で気化する ほど熱安定性が低いため,1000℃の熱処理により得られたNPC-noP 1000℃で は,この不安定なドメインは気化した可能性が高いと考えられる.CB-NPはCB と比較してID/IG,比表面積および細孔容積が減少した.したがって,酸処理に よって表面に酸素官能基を導入させることができるが,結晶性の低いドメイン が選択的に除去され,細孔構造が部分的に破壊されたと考えられる.NPC-HP

1100℃を除くNPC-HP および NPC-NP の比表面積とメソ細孔とマクロ細孔を

合わせた容積はそれぞれの炭素源であるCB-HPおよびCB-NPと比較して増加 し,比表面積はともに1000℃で熱処理したときに最大となった.また,細孔分 布よりNPC-HPおよびNPC-NPはCB-HPおよびCB-NPと比較して,アグロ メレート中のメソ細孔(2—20 nm)がそれぞれ発達していることが確認できた.