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ペロブスカイト型酸化物微粒子触媒の酸素還元活性

4.1 緒言 4.2 実験方法

4.2.1 逆ミセル法によるペロブスカイト型酸化物の合成

4.2.2 アモルファスリンゴ酸前駆体法によるペロブスカイト型酸化物 の合成およびビーズミル分散

4.3 結晶構造解析および電子顕微鏡観察 4.4 表面酸化状態の解析

4.5 酸素還元活性評価 4.6 本章のまとめ 参考文献

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4.1 緒言

ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物の酸素還元活性は,主に遷移金属が 占めるBサイト元素の性質に依存すると考えられている.兵頭はLaBO3(B = Cr, Mn, Fe, Co, Ni)を酸素還元触媒として使用したガス拡散型電極において

LaMnO3あるいは LaCoO3を用いたときにその性能が高いことを報告している

(Fig. 1.9)1).また,AサイトやBサイトの金属を置換することにより,その 酸素還元活性は変化する.湯浅はLaMnO3のA,BサイトをそれぞれCa, Feで 部分置換した La1−xCaxMn0.9Fe0.1O3を用いたガス拡散型電極が優れた性能を示 すことを報告している(Fig. 4.1)2)

本章では LaMnO3,LaFeO3および La1−xCaxMn0.9Fe0.1O3を逆ミセル法によ り合成した.また,La系ペロブスカイト型酸化物の中で比較的,高い活性を示

す LaCoO3も合成した.逆ミセル法ではカーボンの酸化による消滅を抑えるた

めに還元雰囲気中でペロブスカイト型酸化物を焼成する必要があるが,LaCoO3

は低酸素分圧下では安定性が低く3),単相のペロブスカイト型酸化物を得ること ができないため,アモルファスリンゴ酸前駆体法(AMP 法)により合成した.

AMP法で合成したペロブスカイト型酸化物は数µm以上の粗大粒子が生成して 活性が低いため4),ビーズミルによる分散処理をあわせて検討した.

次に,La1−xCaxMn0.9Fe0.1O3のXPS測定を行い,A, Bサイトの部分置換が触 媒表面の酸化状態に及ぼす影響を解析した.Aサイトの3価のLaを2価のCa によって部分置換した La1−xCaxMn0.9Fe0.1O3は,結晶中の電気的中性を満たす ように Bサイトの Mn あるいは Fe の酸化状態が変化していると推測される.

しかし,酸素欠陥および格子欠陥の生成や,液相法で合成された微粒子,特に,

元素置換した複合金属酸化物では意図しない不純物の生成により,仕込み量と 実際に合成された粒子の化学量論比との間に乖離が生じやすい.したがって,生 成する欠陥や不純物の影響を受けずに,ペロブスカイト型酸化物の活性サイト となる B サイトの遷移金属の酸化状態を適切な分析手法により評価する必要が ある.XPS は固体試料の最表面を分析することができるため,触媒能の発現に 寄与する表面近傍の評価に適している.

さらに,触媒の酸素還元活性を考察する上で有用な活性化支配電流値や反応 電子数を求めることができる回転ディスク電極法によって LaMnO3,LaFeO3, La0.5Ca0.5Mn0.9Fe0.1O3およびLaCoO3を評価した.

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4.2 実験方法

4.2.1 逆ミセル法によるペロブスカイト型酸化物の合成

LaMnO3,LaFeO3およびLa1−xCaxMn0.9Fe0.1O3を逆ミセル法により調製した.

なお,B サイトの少量の Fe 置換は,還元雰囲気における焼成に対して La-Mn 系のペロブスカイト型構造を安定に形成させ,さらに,強アルカリ中でのカソー ド分極に対して安定性を向上させる5).La1−xCaxMn0.9Fe0.1O3担持カーボンの合 成フローチャートをFig. 4.2に示す.まず,各硝酸塩水和物および過マンガン酸 カリウムを蒸留水中にそれぞれ溶解した.これらの硝酸塩水溶液および過マン ガン酸カリウム水溶液とポリオキシエチレン(6)ノニルフェニルエーテル

(Polyoxyethylene(6) nonylphenyl ether,NP-6)とシクロヘキサンとを混合し たものを 約10 ℃の恒温水槽中で撹拌し,各種水溶液を含む半透明の逆ミセル 溶液を作製した.同様に,10 %テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液 Fig. 4.1. Polarization curves of GDEs using carbon-supported La1xCaxMn0.9Fe0.1O3 ((a) x = 0, (b) x = 0.2, (c) x = 0.4, (d) x = 0.6, and (e) x

= 0.8) and (f) La0.4Sr0.6Mn0.9Fe0.1O3.

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(Tetramethylammonium hydroxide,TMAH 水溶液)とNP-6 とシクロヘキ サンとを混合したものを恒温水槽中で撹拌して逆ミセル溶液を作製した.いず れの逆ミセル溶液も,水溶液と NP-6 の比が 1:9,NP-6 とシクロヘキサンが 1:2 の質量比となるように混合した.まず,過マンガン酸カリウム水溶液を含 んだ逆ミセル溶液とTMAH水溶液を含んだ逆ミセル溶液とを混合し,次に,こ の混合溶液と硝酸塩水溶液を含んだ逆ミセル溶液とを混合して逆ミセル中にペ ロブスカイト酸化物前駆体を得た.これに,シクロヘキサン中に分散させたカー ボン(ケッチェンブラックEC600JD)を添加して超音波分散処理した後,エタ ノールを加えて逆ミセルを破壊した.このカーボンとペロブスカイト型酸化物 前駆体の混合溶液をろ過し,ろ紙上で十分にエタノールを用いて洗浄した後,乾 燥させた.得られた前駆体粉末を窒素フローの管状炉にて700℃,5 時間焼成し て,ペロブスカイト型酸化物担持カーボンを得た.

74 NP-6 surfactant Cyclohexane NP-6 surfactant Cyclohexane

Mixed metal nitrates solution of La(NO3)3, Ca(NO3)2, Mn(NO3)2, Fe(NO3)3 10% TMAH solution (coprecipitant)

RM containing solid precursor KMnO4solution

NP-6 surfactant Cyclohexane Carbon dispersed in cyclohexane Ethanol

Precipitate +liquid phasesPrecipitate (Precursor/carbon)Perovskite oxide /carbon Filtration and washingCalcination (700ºC, 5 h, in N2)

Black suspension (Carbon+precursor) Fig. 4.2. Preparation flowchart of La1−xCaxMn0.9Fe0.1O3.

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4.2.2 アモルファスリンゴ酸前駆体法によるペロブスカイト型酸化物の合成お よびビーズミル分散

LaCoO3は AMP 法により合成した6).リンゴ酸は分子内に二つのカルボキシ

ル基を持ち,金属イオンと錯体を形成する有機酸である.まず,金属硝酸塩(硝 酸ランタン・6水和物および硝酸コバルト・6水和物)およびリンゴ酸を蒸留水

中に1:1.5になるように溶解させた後,この混合溶液を攪拌させながらアンモ

ニア水を滴下してpH = 2.7になるように調整した.この溶液をホットプレート 付きマグネチックスターラー上で攪拌しながら,ペースト状を経て前駆体粉末 が得られるまで加熱し続けた.得られた前駆体粉末を乳鉢で粉砕,混合し,アル ミナるつぼに入れて空気中で650℃,5時間,焼成することによりLaCoO3を得 た.

ビーズミル分散には小型のビーズミル装置(アシザワ・ファインテック,ラボ スターミニ)を用いた.粉砕室内のビーズの動きの模式図をFig. 4.3に示す.従 来のビーズミル分散では,粒子に対して与えるエネルギーが大きく,結晶を破壊 してしまうという問題があるため,低エネルギービーズミル法による分散を行 った.361 gのジルコニアビーズ(ニッカトー)とLaCoO3粉末0.464 gを130 mLのエタノール中に混合させて,これを2時間ビーズミル処理(バッチ式)し た.処理中は粉砕室の周囲に設けられた冷却ジャケットに,チラー(SMC,サ ーモチラーHRS012-A-10)を用いて冷却水(10℃)を循環させて間接冷却しな がら粉砕を行った.低エネルギー分散は径が30 µmのビーズを用いて周速6 m s−1 の条件で行い,得られた試料を LBM-LaCoO3(Low-energy bead-milled

LaCoO3)と表す.また,比較試料として従来の分散条件(ビーズ径:0.1 mm,

周速:15 m s−1)で処理した試料をCBM-LaCoO3(Conventional bead-milled

LaCoO3)と表す.ビーズミル処理後,ステンレス製のふるい(635 メッシュ)

を用いてビーズを分離し,粒度分布をレーザー回折式粒子径分布測定装置(堀場 製作所,LA-950V2)により測定した.なお,レーザー回折法では,レーザー光 を照射して,試料により散乱される光の強度の角度依存性を測定することによ りその粒度分布を求めるため,試料が凝集している場合,その凝集体の球相当径 に基づく粒度分布が求まる.

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4.3 結晶構造解析および電子顕微鏡観察

Fig. 4.4a に , 逆 ミ セ ル 法 に よ り 合 成 し た LaMnO3 担 持 カ ー ボ ン , La0.5Ca0.5Mn0.9Fe0.1O3 担持カーボン,LaFeO3 担持カーボンおよびカーボンの 粉末 X 線回折パターンを示す7).ペロブスカイト型酸化物の担持量は 10%に固 定した.カーボンのみのX線回折パターンでは,およそ 25 °および 43 °にグラ ファイト構造に由来する二つのブロードなピークが確認された.LaMnO3 担持 カーボンおよびLa0.5Ca0.5Mn0.9Fe0.1O3担持カーボンのピークはJCPDS カード のLaMnO3.00(35-1353),LaFeO3担持カーボンはLaFeO3(75-0541)と一致 し,それぞれ斜方晶系および立方晶系のペロブスカイト型の結晶構造を有する こ と を 確 認 し た . ま た , 不 純 物 に 起 因 す る ピ ー ク は 確 認 で き な か っ た . La1−xCaxMn0.9Fe0.1O3の X 線回折パターンは試料中のカーボンを除去して得た

(Fig. 4.4B8)).La1−xCaxMn0.9Fe0.1O3の回折ピークは Ca 置換量の増加に伴い 高角度側にシフトした.これはCa置換量の増加に伴って結晶格子が収縮してい ることを示している.Aサイトの12配位のCa2+のイオン半径は1.34Åであり,

La3+のイオン半径(1.36Å)と比較して僅かに小さい.また,結晶の電気的中性 を保つために一部のMnが3 価から4価に変化しているものと考えられ,B サ イトの6配位のMn4+のイオン半径は0.53Åであり,ハイスピン状態のMn3+の イオン半径0.645Åより小さい.したがって,格子を占める金属イオンのイオン 半径が小さくなったため,結晶格子が収縮したと考えられる.

Fig. 4.3. Bead movement inside chamber.

Bead movement

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20 30 40 50 60 70

2θ (degree) (A)

Fig. 4.4. XRD patterns of (A) (a) carbon-supported LaMnO3, (b) carbon-supported La0.5Ca0.5Mn0.9Fe0.1O3, (c) carbon-supported LaFeO3, (d) carbon, and (B) La1−xCaxMn0.9Fe0.1O3 as a function of the x value of (a) x = 0, (b) x = 0.2, (c) x = 0.4, (d) x = 0.6, and (e) x = 0.8.

(B)

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Fig. 4.5 に LaMnO3担持カーボン,La0.5Ca0.5Mn0.9Fe0.1O3担持カーボン,

LaFeO3 担持カーボンおよびカーボンの明視野の走査透過型電子顕微鏡像

(Scanning transmission electron microscope image, STEM像)を示す 7). STEM 像では試料を透過した電子の密度を反映するため,黒色に写っている部 分は原子番号の大きな元素からなるペロブスカイト型酸化物,薄く灰色に写っ ている部分はカーボンに対応する.いずれのペロブスカイト型酸化物も粒子径 は 10−30 nmであり,カーボン担体上に微分散担持されていることを確認した.

Fig. 4.5. STEM images of (a) carbon-supported LaMnO3, (b) carbon-supported La0.5Ca0.5Mn0.9Fe0.1O3, (c) carbon-supported LaFeO3, and (d) carbon.

1

2

100 nm

100 nm 100 nm (a)

(d) (a)

(c)

(b)

Fig. 2

100 nm

100 nm