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窒素ドープポーラスカーボン触媒の酸素還元活性と ガス拡散型酸素電極の特性

3.1 緒言 3.2 実験方法

3.2.1 回転ディスク電極法による評価 3.2.2 ガス拡散型酸素電極の作製 3.3 酸素還元活性

3.4 ガス拡散型酸素電極の分極特性 3.5 本章のまとめ

参考文献

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3.1 緒言

第 2 章で明らかにしたように窒素ドープポーラスカーボンは炭素源として使 用したCBの前処理方法(加熱前処理,硝酸前処理)および合成する熱処理温度 によって,各窒素種の濃度および比表面積が変化した.本章では,これらのパラ メータが酸素還元活性に及ぼす影響を,回転ディスク電極を用いて検討した.次 に,窒素ドープポーラスカーボンを触媒として使用したガス拡散型電極を作製 し,その性能を評価した.

3.2 実験方法

3.2.1 回転ディスク電極法による評価

回転ディスク電極(Rotating disk electrode, RDE)測定では電極自身を回転 させることによって,遠心力で電極表面の溶液は外側に流され,それを補う溶液 が回転軸を中心として電極に向かって流れる(Fig. 3.1a).したがって,回転中 心軸に対して強制的に定常的な物質輸送が実現する.測定にはグラッシーカー ボン素材のディスク電極を用いた.触媒5 mgに対し,5.0 wt% Nafion溶液(シ グマアルドリッチ)を 50 µL混合し,インク全量が 1 mLとなるように,2-プ ロパノール(和光純薬)で希釈した.これを氷水中で 30 分間超音波処理して触 媒インクを得た.この触媒インクをグラッシーカーボン電極(表面積: 0.196 cm2) 上にマイクロピペットを用いて 4 µL滴下し,60 ℃で 30 分乾燥して測定用電 極を作製し,この電極を評価した.酸素ガスを30 分以上バブリングすることに より得た酸素飽和の1.0 mol L−1水酸化カリウム水溶液(pH = 13.7)を電解液 とし,溶液中に試験触媒電極を配置した.測定温度は 22 ℃,参照電極は Hg/HgO,対極は白金線とした.ポテンショスタット(HZ-5000,北斗電工製)

を用いて電位の走査速度を 5 mV s−1とし,任意の回転数で電極を回転させなが ら電流値を測定し,リニアスイープボルタモグラム(LSV)を得た.電極表面の 拡散層の厚さは回転数に依存し,回転数が大きいほど薄くなるため,限界拡散電 流密度の値が大きくなる(Fig. 3.1b).観測される電流iはKoutecky-Levich の 式1)より回転数ω(rpm)を用いて

i−1 = ik−1 + il−1= ik−1 +B−1ω−1/2 (3.1)

と表される.ikは活性化支配電流,ilは限界拡散電流,Bは

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B = 0.201 nFC0D02/3ν−1/6 (3.2)

で表され,νは溶液の動粘度(cm3 s−1),D0は溶液中の酸素の拡散係数(cm2 s−1), Fはファラデー定数,nは反応電子数,C0は溶存酸素濃度(mol cm−3)である。

1.0 mol L−1 KOHにおけるνは 0.01073 cm3 s−1,D0は 1.53×10−5 cm2 s−1,C0

は 8.7×10−7 mol cm−3である2).Koutecky-Levichプロット(Fig. 3.1c)の傾き よりBを求め,(3.2)式より,反応電子数n を算出した.アルカリ性水溶液中 で進行する酸素還元反応は下記のように

直接四電子還元:

O2 + 2H2O + 4e → 4OH (E0 = 0.401 vs. NHE) (R3.1)

二電子還元:

O2 + H2O + 2e → HO2− + OH (E0 = −0.065 vs. NHE) (R3.2)

中間体HO2−はさらに、電気的還元経路

HO2− + H2O + 2e → 3OH (E0 = 0.867 vs. NHE) (R3.3)

あるいは、接触分解反応

HO2− → 1/2O2 + OH (R3.4)

が進行する経路が考えられる3).電位は下記の式を用いて,可逆水素電極

(Reversible hydrogen electrode, RHE)基準に換算した.

V vs. RHE = Vmeasured vs. Hg/HgO + 0.098 + 0.059 × pHelectrolyte (3.3)

なお,NHE基準とRHE基準の電位の間には下式が成り立つ.

V vs. RHE = V vs. NHE + 0.059 × pHelectrolyte (3.4)

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3.2.2 ガス拡散型酸素電極の作製

触媒層とガス拡散層からなるガス拡散型電極(Gas diffusion electrode, GDE)

を作製した.まず,触媒層粉末およびガス拡散層粉末に結着材としてポリテトラ フルオロエチレン(PTFE)をそれぞれ30 wt%添加した.蒸留水中に触媒と 1-ブタノール(キシダ化学)を添加し,超音波分散させた.これに PTFE ディス パージョン(D-210C,ダイキン工業)を添加し,超音波処理したものを吸引ろ

過して 125℃で乾燥させて触媒層粉末を得た.ガス拡散層には疎水性のカーボ

ンであるアセチレンブラック(HS-100,平均粒子径:48 nm,電気化学工業)

回転

Ox Red

e

触媒

Red

(a)

(b) (c)

Fig. 3.1. (a) Illustration of the RDE.(b) LSVs at rotation rates of 400, 600, 900, 1600, 2500 rpm (catalyst: nitrogen-doped graphene).

(c) Koutecky-Levich plots obtained from the LSV curves at —0.5 V vs. Hg/HgO.

-3.5 -3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0

-0.6 -0.4 -0.2 0 0.2

i/ mA cm-2

E/ V vs. Hg/HgO

2500 rpm 1600 rpm 900 rpm 600 rpm 400 rpm

0 1 2 3 4 5 6

0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 i-1/ (mA cm-2)-1

ω-1/2/ (rpm)-1/2 n = 2

n = 4 Catalyst

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を用いた.アセチレンブラック,界面活性剤としてTriton X-100(キシダ化学), 蒸留水をそれぞれ重量比1:1:30で混合して超音波分散した後,PTFEディス パージョンを添加して再度,超音波処理した.この分散液を吸引ろ過し,125°C で乾燥させた.得られた粉末を280°Cで3時間熱処理して,Triton X-100を除 去してガス拡散層粉末を得た.触媒層,ガス拡散層,Niメッシュ集電体(100メ ッシュ,ニラコ)からなる直径14 mmのガス拡散型電極(Fig. 3.2a)をホット プレスにて作製した.金型にNiメッシュをひいてガス拡散層粉末,触媒層粉末 を順に敷き詰めた後,7.0 MPa でプレスし,金型を加熱して温度が 360℃に達 した後,14 MPaでプレスした.

ガス拡散型電極は Fig. 3.2b のように PTFE 製セルに取り付けて,電極背面

(ガス拡散層側)から,100 mL min1で酸素を流通させた.電解液は8 M KOH,

Fig. 3.2. Illustration of the GDE. (a) Cross-section and (b) the assembly of the electrode. (c) Three-electrode cell for the measurement of polarization curves of the electrode.

O2 Potentiostat

KOH

Water bath

Hg/HgO Pt mesh GDE

(c)

Luggin capillary PTFE cell

(a) (b)

(c)

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対極はPtメッシュ(ニラコ),参照電極にはHg/HgO電極をそれぞれ用いた(Fig.

3.2c).測定は恒温槽を用いてセルを65℃に保ち,液抵抗を測定した後,定電流

を加え,定常状態に達したときの電位を測定した.

3.3 酸素還元活性

酸素還元活性を回転ディスク電極法により評価した.Fig. 3.3a, bは窒素ドー プポーラスカーボンのリニアスイープボルタモグラムである4).(3.1)式を用い て測定電流値と限界拡散電流値より活性化支配電流を求め,横軸を活性化支配 電流の対数,縦軸を電位で表したNPC-HP 1000℃とNPC-NP 1000℃のターフ ェルプロットをFig. 3.3cに示す4).NPC-HPとNPC-NP の半波電位はそれぞ れ比表面積が大きいNPC-HP 1000℃とNPC-NP 1000℃が最大となった(Table.

3.14)).NPC-HP 800℃,900℃,1000℃はquaternary Nの濃度が0.07—0.08%

とほぼ等しいが,比表面積は熱処理温度の増加に従って増え,それに伴って半波 電位は貴になった.合成した窒素ドープポーラスカーボンの中で最も貴な半波 電位である0.83 Vを示したNPC-NP 1000℃は,報告されている0.82 Vを示し たヘテロアトムドープカーボンナノチューブ(比表面積:325 m2 g−1, N濃度:

4.6%,S濃度:1.1%, F濃度:0.9%)5)や0.80 Vを示したCoを含むマイクロ,

メソポーラス窒素ドープカーボン(比表面積:523 m2 g−16)より貴な電位を示

した.Fig. 3.4に窒素ドープポーラスカーボンとCBの各回転数におけるリニア

スイープボルタモグラムと Koutecky-Levich プロットを示す.反応電子数を

Koutecky-Levichプロットの傾きから求めた.CBは電位に関わらず反応電子数

がおよそ 2 であり二電子還元反応のみが進行したが,窒素ドープポーラスカー ボンの反応電子数は2.9—3.7であり,二電子還元反応および四電子還元反応があ わせて進行しているものと考えられる.

Fig. 3.5aに電位を横軸とし,比表面積で規格化した窒素ドープポーラスカー

ボンの酸素還元電流値を縦軸としたプロットを示す 4).このプロットにおける 0.85 V, 0.83 V, 0.81 Vの電流値を縦軸として,quaternary N,pyridinic Nおよ びpyrrolic Nの濃度を横軸としたプロットをそれぞれFig. 3.5b, c, dに示す4). この比表面積で規格化した酸素還元電流値は,CBの前処理条件や熱処理温度に 関わらず,quaternary N の濃度に比例した.一方,この酸素還元電流値と pyridinic Nの濃度およびpyrrolic Nの濃度との間には相関は見られなかった.

ベーサル面にあるquaternary Nは隣接する炭素原子の電子を引き寄せ,そのpz

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軌道に電子を逆供与し,酸素の吸着を促進させて活性を向上させる7,8).一方,エ ッジ面にあるpyrrolic N や pyridinic N が活性サイトを形成するという報告も

多数ある9,10).しかし,エッジ面には触媒活性を有する酸素官能基や欠陥が存在

するため,pyrrolic Nやpyridinic Nは材料に存在するエッジ面のマーカーにな

りえる11,12).これまでのところ窒素ドープカーボンの活性サイトを形成する特定

の窒素種について一致した見解はない13).不均一触媒において,その活性は表面 の形態に大きく依存し,活性点が近接しすぎると反応物である酸素を奪い合っ て活性が低下する14).代表的な窒素ドープカーボン材料であるシート状の窒素 ドープグラフェンはファンデルワールス力によって容易に凝集してしまうため

15,16),ベーサル面の有効な活性サイトは大幅に減少すると推測される.また,マ

イクロ細孔しか持たない窒素ドープカーボンは活性が低いことが報告されてい る17).したがって,物質拡散が円滑に進まない場合は活性が低下し,結果的に活 性サイトの探索を困難にしていると推測される.Liangらは,メソポーラス窒素 ドープカーボンはその豊富なメソ細孔によって物質拡散が速やかに進み,優れ た酸素還元活性を示すことを報告している 17).Nagy らは比表面積と酸素還元 電流値との間に相関が確認できることから,活性点の利用可能性(アクセシビリ ティ)が重要であることを指摘している18).合成した窒素ドープポーラスカーボ ンは比表面積が大きく,また,Fig. 2.3に示すように一次粒子間およびアグロメ レート間に豊富にメソ,マクロ細孔を有する.このメソ,マクロ細孔は物質拡散 に優れることから,窒素ドープポーラスカーボンの一次粒子表面には多数の有 効な活性サイトが形成されると考えられる.したがって,比表面積で規格化した

電流値がquaternary Nの濃度に依存することから,窒素ドープポーラスカーボ

ンの最も活性なサイトは quaternary N によって形成されていることが示唆さ れた.NPC-NP 1000℃はquaternary Nの濃度が高く,比表面積が大きいため,

合成した窒素ドープポーラスカーボンの中で最も高い活性を示したと考えられ る.