(c):[0,1] の区間分割∆ = {[(kN−1,Nk]}Nk=1 を考える。Q, R\Q は共に稠密(例 2.3.4, 問 3.5.8)だから、∆の代表としてξ ={ξk}Nk=1 ⊂Qとη ={ηk}Nk=1 ⊂R\Q を選ぶことが 出来る。このとき、
sI(f,∆, ξ) =
∑N k=1
1·(1/N) = 1, sI(f,∆, η) =
∑N k=1
0·(1/N) = 0.
従って 、極限 sI(f) は代表の選び方により異なる(定義 10.1.5後の注参照)。\(∧2∧)/
例 10.1.7 I = (a, b] (−∞ < a < b < ∞) f ∈ R(I) なら、I の n 等分点ck = a+ kn(b−a) (k = 0,1, ..., n) に対し
∫
I
f = lim
n→∞
1 n
∑n k=1
f(ck).
実際、上式右辺は、I の区間分割 {(ck−1, ck]}nk=1,その代表(ck)nk=1 に関するリーマ ン和である。
問 10.1.1 記号は 定義 10.1.2 の通り、 ∆∈D(I) とする。|I|= ∑
D∈∆
|D| を示せ。
問 10.1.2 例 10.1.3 の各例について、d= 2 の場合に概念図を描け。
問 10.1.3 f : [0,1]→R に対し以下を示せ:
(i)f > 0かつ logf ∈R([0,1]) のとき、lim
n
( n
∏
k=1
f (k
n ))1/n
= exp (∫
[0,1]
logf )
. (ii) f ∈R([0,1]) のとき、lim
n
∏n k=1
( 1 + 1
nf (k
n ))
= exp (∫
[0,1]
f )
.
≤ |c|α(f,∆) −→0, sI(f+g,∆, ξ)−
(∫
I
f+
∫
I
g) ≤
sI(f,∆, ξ)−
∫
I
f +
sI(g,∆, ξ)−
∫
I
g
≤ α(f,∆) +α(g,∆)−→0.
以上と、積分の定義より (10.11)を得る。
(b):任意の ∆∈D(I) と代表ξ に対し
sI(f,∆, ξ)≤sI(g,∆, ξ).
従って m(∆)→0 とすれば結論を得る。 \(∧2∧)/
次に述べる二つの命題の証明は10.4節で与えることにし,ここでは結果だけ先取り
する.
命題 10.2.2 (単調関数は可積分) I = [a, b]⊂R, f :I −→Rが単調ならf ∈R(I).
命題 10.2.3 f, g∈R(I)とするとき、以下が成立。
(a) p∈[1,∞)に対し|f|p ∈R(I) (証明後の注参照).
(b) f g ∈R(I).
(c) infI|f|>0 なら1/f ∈R(I).
注:命題 10.2.3(a)について、より一般に次が成立する。f ∈R(I)が有界閉区間J ⊂R に値をとり、かつφ∈C(J)なら φ◦f ∈R(I). これを認めれば、例えば 0≤p <1に 対しても |f|p ∈R(I) である。
命題 10.2.4 (三角不等式) f ∈R(I) なら |f| ∈R(I) かつ ∫
I
f ≤
∫
I
|f|.
証明:命題 10.2.3(p= 1)より |f| ∈R(I).また、有限和に対する三角不等式より、区 間分割 ∆とその任意の代表 ξ に対し
|s(f,∆, ξ)| ≤s(|f|,∆, ξ).
上式で m(∆)→0 とすれば所期の不等式を得る。 \(∧2∧)/
命題 10.2.5 (積分の区間加法性) f :I −→R を有界とする。このとき、I の区間 分割 ∆に対し
(a) f ∈R(I) ⇐⇒ 全てのJ ∈∆に対し f ∈R(J) 上の条件のいずれか(従って両方)が成り立てば、
(b)
∫
I
f =∑
J∈∆
∫
J
f.
証明は 10.6 節で与えることにし、ここでは幾つかの応用を述べる。
系 10.2.6 I,J を共にRd を有界区間、J ⊂I とする。このとき (a) R(I)⊂R(J).
(b) f ∈R(I),I 上 f ≥0 なら∫
If ≥∫
Jf.
証明:(a): f ∈R(I) とし、∆ ∈D(I) を J ∈ ∆ なるようにとる。そうすれば、命題 10.2.5 (a) よりf ∈R(J).
(b): 更にf ≥0 なら、任意のD∈∆に対し∫
Df ≥0. 故に 命題10.2.5 (b) より
∫
I
f = ∑
D∈∆
∫
D
f ≥
∫
J
f.
\(∧2∧)/
系 10.2.7 f :I −→R を有界とする。このとき、
(a) f ∈R(I) ⇐⇒ f ∈R(I◦).
上のいずれか(従って両方)が成り立てば、
(b)
∫
I
f =
∫
I◦
f.
証明:I ̸=I◦ の場合を言えばよい。I の区間分割 ∆ = {D1, D2, ...} で D1 =I◦,|Dk|= 0 (k ≥2)なるものが存在する(例 10.1.3参照)例 10.1.6よりk ≥2 に対しf ∈R(Dk) かつ∫
Dkf = 0. 従って、区間加法性(命題10.2.5)より結論を得る。 \(∧2∧)/
定義 10.2.8 (ベクトル値関数の積分) V =Rk とする(V =C もk = 2 の場合とし て含める)。f :I −→V の可積分性と積分を次のように定義する:
f = (fj)kj=1 が I 上可積分 ⇐⇒def. f1, ..., fk ∈R(I).
また、f が I 上可積分なら
∫
I
f def.= (∫
I
f1, ...,
∫
I
fk )
. 特に V =C の場合、
f が I 上可積分 ⇐⇒def. Ref,Imf ∈R(I).
また、f が I 上可積分なら
∫
I
f def.=
∫
I
Ref+i
∫
I
Imf.
注:定義10.2.8 より、ベクトル値関数の積分の性質は、実数値関数の積分のそれに帰
着する。例えば、積分の線形性(命題 10.2.1(a))がベクトル値で成立することは明ら か。以下でも、定理、命題等は簡単のために実数値関数の場合に述べるが、実数値固有 の性質を用いるもの(例えば 命題 10.2.1(b))以外は容易にベクトル値に拡張される。
従って、実数値の場合に述べた事柄でも、断りなくベクトル値に応用することがある。
問 10.2.1 1≤p <∞, f ∈ R(I) に対し∥f∥p =(∫
I|f|p)1/p
とおく。1p + 1q = 1 とする とき、以下を示せ;
(i)s, t ≥0に対しst≤ 1psp+1qtq,(等号成立 ⇐⇒ sp =tq).
(ii) f, g ∈R(I) に対し∥f g∥1 ≤ 1
p∥f∥pp+1 q∥g∥qq.
(iii) f, g ∈R(I) に対し14∥f g∥1 ≤ ∥f∥p∥g∥q (ヘルダーの不等式)
問 10.2.2 1 ≤ p ≤ q < ∞ とする。ヘルダーの不等式を用い、次を示せ:∥f∥p ≤
∥f∥q|I|1p−1q.
問 10.2.3 ヘルダーの不等式を用い、次の(更に一般的な)不等式を示せ;p, q, r∈[1,∞),
1
p +1q = 1r, f, g∈R(I)に対し∥f g∥r ≤ ∥f∥p∥g∥q.
問 10.2.4 (⋆) 1≤p < ∞,f, g ∈R(I)に対し∥f+g∥p ≤ ∥f∥p+∥g∥p (ミンコウスキーの 不等式)を示せ。ヒント:p= 1なら容易。以下1< p <∞,h=|f+g|とする。∥h∥p = 0 なら所期不等式は自明。従って、∥h∥p > 0 としてよい。∥h∥pp ≤ (∥f∥p +∥g∥p)∥h∥pp−1 を示し、両辺を ∥h∥pp−1 で割れば結果を得る。
問 10.2.5 f : [0,∞) →R, limx→∞f(x) = c∈ R, 任意の T > 0 に対し f ∈R([0, T]) とする。limT→∞ 1
T
∫
[0,T]f =cを示せ。
問 10.2.6 区間の列 I =I0 ⊃I1 ⊃I2 が、|In|>0,In∋a(∀n ∈N)かつ diam(In)→0 をみたすとする。このとき、 f ∈R(I) かつ f が a で連続なら、limn 1
|In|
∫
Inf =f(a) となることを示せ。
問 10.2.7 f :I −→Rが有界かつ不連続点が有限個なら f ∈R(I)であることを示せ。
問 10.2.8 (⋆) 独立確率変数列の数学的構成:
A を有限集合、pα >0 (α ∈A) は∑
α∈Apα = 1 を満たすとする。また Ω = [0,1] に対 しΓ⊂Ωの確率を P[Γ] =∫
Γdω で定義する(積分が意味をもつとき)。この問題の目 的は関数 Xn : Ω→A (n= 1,2, . . .)であって性質;
(1) P(ω;Xj(ω) =α) = pα, ∀α∈A (2) P (∩n
j=1{ω;Xj(ω) = αj})
=∏n
j=1P(ω;Xj(ω) =αj) ∀αj ∈A
14ヘルダーの不等式の特別な場合(p=q= 2)はシュワルツの不等式 と呼ばれる。。
を満たすものの構成である。これは「コインを何度も投げる」といった独立試行の数 学的表現である。例えばコイン投げ続けて、 Xn がn 回目に 表か裏かを表わす( A= {表,裏}, pα ≡1/2 ) と思えば 、(1), (2) はその表現としてふさわしい。
Ω = [0,1]の閉部分区間の列{Iα1,α2···αn;n ≥1, αj ∈A}を次のように定める;まずΩを閉 区間Iα1 (|Iα1|=pα1, α1 ∈A)に分割する。次に各Iα1 を閉区間Iα1α2 (|Iα1α2|=pα1pα2, α2 ∈A) に分割、以後は同様の手順を繰り返す。Xn : Ω→A を
Xn(ω) =α if ω∈ ∪
α1,···,αn−1∈A
Iα1···αn−1,α
と定義するとき、(1), (2) を示せ。