定理 7.5.1 (微分による関数の単調性判定) −∞ ≤ a < b ≤ ∞, (a, b) ⊂ I ⊂ [a, b]∩R, f :I −→R,f ∈C(I)∩D1((a, b))とする。このとき、以下が成立する。
(a) f が I 上単調増加 ⇐⇒ (a, b) 上 f′ ≥0.
(b) f が I 上単調減少 ⇐⇒(a, b)上 f′ ≤0.
(c) f が I 上定数 ⇐⇒ (a, b) 上 f′ = 0.
更に次の条件を考える:
(∗) a < s < t < b なら(s, t) 上 f′ ̸≡0.
このとき、以下が成立する。
(a2) f が I 上で狭義単調増加⇐⇒ (a, b) 上 f′ ≥0 かつ条件 (∗)が成立。
(b2) f が I 上で狭義単調減少⇐⇒ (a, b) 上 f′ ≤0かつ条件 (∗) が成立。
証明: (a) の =⇒:f が I 上単調増加、a < s < t < b ならf(t)t−−fs(s) ≥0. t →s として
f′(s)≥0. 故に(a, b)上 f′ ≥0.
(a) の ⇐=:f ∈ C(I) より、a ∈ I ならf(a) = limx→a
x>a f(x), b ∈ I なら f(b) = limx→b
x<b f(x). 従って、
(1) f が I 上で(狭義)単調増加 ⇐⇒ f が (a, b) 上で(狭義)単調増加.
一方、f ∈D1((a, b))ならf ∈C([s, t])∩D1((s, t))なので平均値定理(定理 7.4.1)より (2) a < s < t < b なら∃c∈(s, t), f(t)−f(s)
t−s =f′(c).
今、(a, b)上 f′ ≥0なら、(2) より f は (a, b)上単調増加。よって (1)より結論を得る。
(b): −f を考えれば (a) に帰着する。
(c): (a), (b) の帰結。
(a2)の =⇒:(a) より(a, b)上 f′ ≥0. 更に狭義単調増加性より a < s < t < b ならf(t)−f(s)>0.
従って (2) の c∈(s, t)に対し f′(c)>0となり条件 (∗) が満たされる。
(a2)の ⇐=: (1) より f が (a, b) 上狭義単調増加であることを示せばよい。そのため
a < s < t < b とする。(a)より、f は区間 [s, t] 上単調増加。更に、条件 (∗) と (c) よ り f は区間[a, b]上定数ではない。故に f(a)< f(b).
(b2): −f を考えれば (a2) に帰着。 \(∧2∧)/
注:定理 7.5.1 でf は実数値だが、(c) に関しては f が Rk (k≥2)や C に値をとる場 合も正しい。これは、成分(実部・虚部)に分けて考えれば明らかである。
例 7.5.2 c∈R\{0},x >0∨(−c) ならx7→(
1 + xc)x
は狭義単調増加である。
証明:f(x) =xlog( 1 + xc)
に対し(
1 + xc)x
=ef(x). 従って、f が狭義単調増加ならよ い。次の不等式が成立する:
(∗) x >0∨(−c) ならlog (
1 + c x
)
> c x+c.
(∗)はc >0 と c <0の場合に分けて対数の差の評価 (命題 5.3.1) を適用すれば得られ る(問 7.5.5)。今、
f′(x) = log (
1 + c x
)
+x 1 1 + cx
(− c x2
)(∗)
= log (
1 + c x
)− c x+c >0
以上と微分による増減判定( 定理 7.5.1) よりf は狭義単調増加。 \(∧2∧)/
例 7.5.3 (二階可微分関数の放物線による評価)c∈I def= (a, b) (−∞ ≤a < b≤ ∞), f ∈D2(I),
gm(x) = f(c) +f′(c)(x−c) + m
2(x−c)2 (m∈Rは定数) とする.
(a) I上f′′≥mなら,I上f ≥gm. (b) I上f′′ ≤mなら,I上f ≤gm.
証明:(a): φ=f −gに対し
φ′(x) =f′(x)−f′(c)−m(x−c), φ′′(x) =f′′(x)−m≥0.
よって,φ′はI上↗かつφ′(c) = 0. 従って
(a, c]でφ′ ≤0, [c, b)でφ′ ≥0 ゆえに,
φは(a, c]で↘, [c, b)で↗ これとφ(c) = 0より,I上φ≥0.
(b):I上−f′′ ≤ −mだから(a)を−fに適用すると,任意のx∈Iに対し
−f(x)≥ −f(c)−f′(c)(x−c) + (−m)
2 (x−c)2.
つまりI上f ≤gm. \(∧2∧)/
例 7.5.4 (log(1+x) のべき級数) x∈(−1,1] ならlog(1 +x) =
∑∞ n=1
(−1)n−1xn
n .
証明:x= 1 に対する証明は別の機会に譲り、x∈(−1,1)の場合を示す。x∈(−1,1)に 対し 示すべき等式の右辺は絶対収束するので、これをf(x) とおく。このとき 例7.2.5 よりf ∈C∞((−1,1)) かつ
f′(x) =
∑∞ n=1
(−1)n−1xn−1 = 1
1 +x = (log(1 +x))′.
従って、微分による増減判定(定理 7.5.1)よりf(x)−log(1 +x) = c (定数)。所が
c=f(0)−log(1 + 0) = 0. \(∧2∧)/
問 7.5.1 時刻 0 で、原点 0∈ Rd に単位熱源を置く。この熱が空間 Rd に伝播すると き、x∈ Rd の時刻 t > 0 での温度はht(x) = ct−d/2exp
(−|x2t|2)
で与えられる(c > 0 は定数)。x∈Rd\{0} における温度は時間の経過と共にどう変化するか?
問 7.5.2 I ⊂R は開区間、ε >0 とする。I 上の実数値関数 f, g が 全てのx, y ∈I に 対し|f(x)−f(y)| ≤g(x)|x−y|1+ε をみたすなら、f は定数であることを示せ。
問 7.5.3 I ⊂R を定理 7.5.1と同様の区間、u, F, G ∈C(I)∩D1((a, b)) とする。この とき、次の (a),(b) が同値であることを示せ:
(a) (a, b)上で u′ =F′u+G′eF. (b) I 上でu=eF(G+c) (cは定数).
問 7.5.4 (⋆)u∈Cn(R)及び多項式P(x) =xn+∑n−1
j=0ajxj =∏r
j=1(x−bk)mk (aj, bk ∈ C, mk ∈N\{0}, b1, .., bk は相異なる, ∑r
k=1mk =n) に対し次の (a),(b) が同値である ことを示せ:
(a) P(D)udef.= u(n)+∑n−1
j=0aju(j) = 0.
(b) u は n 個の関数xjebkx (1≤k ≤r, 0≤j ≤mk−1)の線形和。
問 7.5.5 例 7.5.2 証明中 (∗)を示せ。
問 7.5.6 c∈R に対し lim
x→∞
( 1 + c
x )x
=ec を示せ。
問 7.5.7 (⋆) 以下、a, b, c, ... ∈R3 とし、ベクトル積a×b ∈R3 を次のように定める:
a×b= (a2b3−b2a3, a3b1−b3a1, a1b2 −b1a2).
以下を示せ:
(i)b×a=−a×b, 特にa×a = 0.
(ii) a×(b×c) = (a·c)b−(a·b)c(ベクトル積は結合法則を満たさない!).
(iii) (a×b)·c=a·(b×c) = b·(c×a),特に (a×b)·a= (a×b)·b= 0.
(iv) (a×b)·(c×d) = (a·c)(b·d)−(a·d)(b·c), 特に|(a×b)|2 =|a||b| −(a·b)2. (v) f, g∈D1(I →R3) なら、(f×g)′ =f′ ×g+f ×g′.
問 7.5.8 (⋆) x:t7→x(t) はC2([0,∞)→R3) に属し、x= 0となることはなく、常に x′′ =−|xk|3x とする(k ̸= 0)。以下を示せ:
(i)a =x×x′ は定ベクトル、a·x=a·x′ = 0.
(ii) b = 1kx′×a− |x1|x は定ベクトル、a·b= 0.
(iii) |a|2 =k(x·b+|x|).
(iv) c=a×b, また xの b, c方向の座標成分を X, Y とするとき、
k2(1− |b|2)X2+k2Y2−2|a|2|b|X =|a|4.
問 7.5.8で、x の満たす微分方程式は、原点に固定された質点とxの間に働く逆2乗力
(k > 0なら引力、k < 0なら斥力)を表す。a/2はxの面積速度を表し、(ii) より定ベ クトルである。これは、ケプラーの第一法則に他ならない。(iv) の曲線はk > 0 のと き、|b|<1, |b|= 1, |b|>1 に応じて楕円、放物線、双曲線である(k < 0のとき、(ii) と |x·b| ≤ |x||b|より|b|<1はあり得ない)。k >0 の場合の楕円軌道は、太陽から引
力を受けた惑星、あるいは周期彗星の軌道を表す(ケプラーの第二法則)。また、k > 0 の場合の放物線、双曲線は非周期彗星の軌道を表す。一方、k < 0の場合の軌道は、原 子に入射された陽電子が、原子核からの斥力を受けて散乱される時の軌道を表す。
ドイツの天文学者ケプラーは デンマークの天文学者ティコ・ブラーエ の惑星観察の 記録をもとに、上に述べたケプラー の法則を見いだした。イギリスの数学者、物理学 者、天文学者、ニュートン はケプラーの法則から太陽と惑星間に逆2乗力が働くこと を導いた(問7.5.8の逆)。ニュートンはここから更に推論を進め、「任意の2質点間に 距離の2乗に反比例する引力が働く」 という万有引力の発見に至った–林檎の木を眺め ていただけで突然閃いたわけではない。