問 4.3.3 (⋆) f :Rd−→Rd とする。あるr∈[0,1)が次を満たすとき、f を 縮小写像 と呼ぶ:任意のx, y ∈Rd に対し|f(x)−f(y)| ≤r|x−y|. f が縮小写像なら、f(x) = x を満たす点x∈Rd が唯一つ存在することを示せ。存在証明のヒント:x0 ∈Rd を任意 とし、xn∈Rd, n= 1,2, ..をxn=f(xn−1)と定める。このとき、(xn)が 問 4.3.2の条 件を満たすこと、更にx= limn→∞xn が不動点となることを示す。
問 4.3.4 (⋆) am,n ∈C (m, n∈N) に対し以下を示せ:
(i)∑∞
n=0
∑∞
m=0|am,n|=∑∞
m=0
∑∞
n=0|am,n| (両辺が ∞ の場合も含む).
(ii): (i) の等式両辺が有限と仮定する。このとき全ての n に対し ∑∞
m=0am,n が絶 対収束し、全ての m に対し ∑∞
n=0am,n が絶対収束する。更に ∑∞
n=0
∑∞
m=0am,n =
∑∞
m=0
∑∞
n=0am,n.
ヒント:最後の等式は 命題 4.2.3 の考え方を応用して示せる。
問 4.3.5 (⋆) 2≤q∈N,D は{0,1.., q−1}に値をとる数列(xn)n≥1 全体の集合、E は D の数列のうち、有限個の n を除きxn =q−1 となるもの全体とする。以下を示せ:
(i) (xn)n≥1 ∈D\E に対しx=∑∞
n=1xn/qn が収束し、x∈[0,1) (この級数を x のq 進 小数展開という).
(ii) 写像 (xn)n≥1 7→x はD\E から[0,1)への全単射である。
(a):
an+1 an
=
(n+ 2 n+ 1
)p
−→1 = 1 1. (b):
an+1 an
= 1
n+ 1 −→0 = 1
∞. \(∧2∧)/
命題 4.4.2 (べき級数の差の評価) べき級数(4.7)が|x|< r0の範囲で絶対収束する と仮定する.このとき、
(a) 0< r < r0, p∈N なら
∑∞ n=0
np|an|rn <∞.
特に,以下のべき級数が|x|< r0の範囲で絶対収束する:
f′(x)def=
∑∞ n=1
nanxn−1, g(x)def=
∑∞ n=1
n|an|xn−1. (4.9)
(b) x, y ∈C, |x|,|y| ≤r < r0なら
|f(x)−f(y)| ≤g(r)|x−y|. (4.10) (c) xn, x∈C, |xn|,|x|< r0, xn n→∞→ xなら
f(xn)n→∞→ f(x). (4.11)
(d) an ∈R, a2, a3, ...≥0とする.このときx, y ∈R, 0≤y < x < rなら f′(y)≤ f(x)−f(y)
x−y ≤f′(x). (4.12)
等号は,a2 =a3 =...= 0の場合に限り成立する.
証明:(a): r < r1 < r0 となる r1 をとる。このとき
nlim→∞np (r
r1
)n
= 0 (例3.1.4).
よって有限個の n を除き、np(r/r1)n ≤ 1 , 従って np|an|rn ≤ |an|rn1. この評価と非負 項級数の比較(命題 4.3.1)より結論を得る。
(b):
|f(x)−f(y)| =
∑∞ n=0
an(xn−yn) ≤
∑∞ n=0
|an||xn−yn|
(3.22)
≤ |x−y|
∑∞ n=0
n|an|rn−1 =g(r)|x−y|.
(c): |x| < r < r0なるrをとる. |xn| n→∞→ |x|より,∃n1 ∈ N, ∀n ≥n1, |xn|< r. そこ でn≥n1に対し
|f(x)−f(xn)|(4.10)≤ g(r)|x−xn|n→∞→ 0.
(d): (1.8)の辺々にanを掛け,n = 1,2, ... で加えると結論を得る((1.8)はn= 1のとき 等号だからa1は非負でなくてもよい). \(∧2∧)/
命題 4.4.3 (係数の一意性) べき級数 (4.7)が|x|< r (0< r≤ ∞) の範囲で絶対収 束し,かつ次のような点列 xm ∈Cが存在すると仮定する:
0<|xm|< r,f(xm) = 0 (m∈N), xm
m−→→∞0.
このとき,an≡0 (n∈N).
証明: まず
a0 =f(0)(4.11)= lim
m→∞f(xm) = 0.
従って,
f(x) =xf1(x), ただし f1(x) =
∑∞ n=0
an+1xn.
f1(x)が|x|< rの範囲で絶対収束することは容易に分かる.また,xm ̸= 0より f1(xm) = f(xm)
xm = 0, ∀m ∈N. 従って
a1 =f1(0)(4.11)= lim
m→∞f1(xm) = 0.
以下,同様にこの手順を繰り返しan= 0 (n = 2,3, ...)を得る. \(∧2∧)/
命題 4.4.4 (べき級数の偶部・奇部・共役) べき級数(4.7)について,
(a) f(±x) が共に収束するとき、
f(x) +f(−x)
2 =
∑∞ n=0
a2nx2n, f(x)−f(−x)
2 =
∑∞ n=0
a2n+1x2n+1. (4.13)
(b) anが実数列かつ、f(x)が収束するとき、f(x)も収束し,f(x) =f(x).
証明: (a):
f(x) +f(−x)(4.3)=
∑∞ 0
an(1 + (−1)n)xn= 2
∑∞ 0
a2nx2n. となり、(4.13)の一方を得る。他方も同様。
(b):(4.3) による。 \(∧2∧)/
問 4.4.1 a0, a1 ∈ R, an ≥0 (n ≥ 2)とし,べき級数 (4.7)がx∈ (−r, r) (0 < r ≤ ∞) の範囲で収束するとする.このとき,fは[0, r)上で凸,また特にa2n+1 ≡0 (n≥1)な らfは(−r, r)上で凸であることを示せ.
問 4.4.2 べき級数 (4.7)が|x|< r(0< r≤ ∞)の範囲で収束するとき,以下を示せ:
(i)f が偶関数⇔ a2n+1 = 0 (n∈N).
(ii) fが奇関数 ⇔ a2n= 0 (n ∈N).
問 4.4.3 (⋆) x, y ∈R, 0≤y < xとする.以下を示せ:
(i)n(x+y
2
)n−1
≤ xnx−−yyn ≤ n2(xn−1 +yn−1), (等号はn= 1,2のみで成立) (ii)命題4.4.2で,an∈R,a3, a4, ..≥0,x < rとするとf′(x+y
2
)≤ f(x)x−−f(y)y ≤ f′(x)+f2 ′(y). また,等号は0 = a3 =a4 =...の場合に限り成立する.
5 初等関数 I
(2013年3月21日更新)
指数、対数、三角比といった概念は古くから「計算手段」として知られていた。18世 紀、スイスの数学者オイラー はこれらを初めて「関数」として捉えただけでなく、複 素変数へも拡張した。初等関数に関する記号の中にはオイラーの足跡が数多くうかが える。関数を f(x) と表記したのも彼が最初で、その他、足し算の ∑
, 虚数単位 i, 自 然対数の底 e, sin, cos 等の記号も彼が最初に用いたと言われる。また、指数関数と三 角関数の関係を示すオイラーの等式(命題5.2.2)は複素関数論の発展を促した。
5.1 指数関数
指数(exponential)は「外に置く」を意味するラテン語 ”exponere” (ex +ponere =外 に+置く)が語源という.一説によれば,例えばa >0に対し
a· · ·a
| {z }
n
=an
という具合に,掛けた回数nを「外に」書くことに由来するらしい.
漫談はさておき,数学にとりかかろう.指数関数は高校の教科書ではexと書かれ,「e をx乗したもの」と理解していたが,ここでは別の方法(べき級数)を用いて指数関 数を定義する.この定義の利点のひとつに,複素変数の場合も含め一気に書き下せる 点が挙げられる.
命題 5.1.1 (指数関数)全てのx∈Cに対し次の級数は絶対収束する:
expx=
∑∞ n=0
xn
n! (5.1)
関数 x7→expx を指数関数と呼ぶ。また、正数 e def.= exp(1) = 2.71828...
を自然対数の底と呼ぶ。
証明:(5.1)の収束は,べき級数の収束判定法( 命題 4.4.1)で既に述べた. \(∧2∧)/
注:expx が ex(自然対数の底 e の x乗)に等しいことは、命題 5.4.1 で述べる。
次に指数関数の主な性質を述べる.中でも指数法則が基本的役割を果たす.
命題 5.1.2 (指数関数の性質 I)指数関数 exp :C−→Cは以下の性質を持つ:
(a) 全てのx, y ∈C に対し
exp(x+y) = expxexpy (指数法則), (5.2)
expx= expx, (5.3)
expx̸= 0, 特にx∈Rならexpx >0, (5.4)
|expx|= exp(Rex). (5.5)
(b) (差の評価)x, y ∈C, |x|,|y| ≤r なら
|expx−expy| ≤ |x−y|expr. (5.6) (c) (連続性) x, xn∈C, xn−→x ならexpxn−→expx.
証明:(5.2): an= xn!n, bn = xn!n とすると,
(1) cndef=
∑n j=0
ajbn−j = 1 n!
∑n j=0
n!
j!(n−j)!xjyn−j = 1
n!(x+y)n. 従って、
exp(x+y)(1)=
∑∞ 0
cn命題=4.2.3
∑∞ 0
an
∑∞ 0
bn= expxexpy.
(5.3):命題4.4.4を(5.1)に適用.
(5.4):任意の x∈C に対し
1 = exp 0(5.2)= exp(−x) expx, よって expx̸= 0.
更にx∈Rならexpx2 ̸= 0 よりexpx(5.2)= (expx2)2 >0.
(5.5)
|expx|2 = expxexpx(5.3)= expxexpx
(5.2)
= exp (x+x) = exp(2 Rex)
(5.2)
= (exp(Rex))2.
また,(5.4)より exp(Rex)>0. これと上式より(5.5)を得る.
(b):命題 4.4.2でan = 1/n!とおくとf(x) =g(x) = expx. 従って (4.10)から結論を得 る.
(c): 命題 4.4.2で既に示した. \(∧2∧)/
(5.4)より,x∈R ならexpx >0.そこで次に,実変数の指数関数:
exp :R−→(0,∞) (5.7)
について考える:
命題 5.1.3 (指数関数の性質 II)関数 (5.7) は以下の性質を持つ:
(a) (差の評価) x, y ∈R, x > y なら
(x−y) expy <expx−expy <(x−y) expx. (5.8) 従って(5.7)は狭義↗, 特に単射である。
(b) (連続性)実数列 xn と x∈R に対し
xn →x =⇒ expxn→expx.
但し exp(∞) = ∞, exp(−∞) = 0 とする。特に(5.7)は全射である。
1
0
exp x
証明:(a): xe=x+|y|, ey=y+|y|に対しex >ye≥0,ex−ey=x−y. 従って (4.12)より (x−y) expy <e expex−expey <(x−y) expex.
両辺にexp(−|y|)を掛けて指数法則を用いれば結論を得る.
(b): a∈R の場合: 命題 5.1.2の連続性による。
a=∞ の場合: 仮定より∃m ∈N,∀n ≥m,xn >0. そこでn ≥m とすると、(1) より expxn
(5.8)
> 1 +xn−→ ∞ (n↗ ∞).
a=−∞ の場合: −xn−→ ∞ なので指数法則より
expxn = 1/exp(−xn)−→0 (n ↗ ∞).
全射性は、連続性と中間値定理による。 \(∧2∧)/
注:問 4.4.3を用いれば,(5.8)は次のように精密化できる:
(x−y) expx+y
2 <expx−expy <(x−y)expx+ expy
2 . (5.9)
命題 5.1.4 (指数関数の近似列)x∈C に対し sn(x) =
∑n m=0
xm
m!, en(x) = (
1 + x n
)n
とする。これらについて以下が成立する:
|expx−sn(x)| ≤ |x|n+1exp|x|
(n+ 1)! , (5.10)
|expx−en(x)| ≤ |x|2exp|x|
2n (5.11)
更に、a, an ∈C,an−→a なら
sn(an)−→expa, en(an)−→expa. (5.12)
証明:(5.10):
|expx−sn(x)|=
∑∞ m=n+1
xm m!
(4.3)
≤
∑∞ m=n+1
|x|m
m! =|x|n+1
∑∞ m=0
|x|m (n+m+ 1)!
ここで、
(n+m+ 1)! = (n+m+ 1)
| {z }
≥m+1
(n+m)
| {z }
≥m
· · ·(n+ 2)
| {z }
≥2
·(n+ 1)!≥(m+ 1)!·(n+ 1)!.
従って、
|expx−sn(x)| ≤ |x|n+1 (n+ 1)!
∑∞ m=0
|x|m (m+ 1)!
| {z }
≤exp|x|
.
(5.11): 次に注意:
(1) z∈Cに対し|1 +z| ≤1 +|z| ≤exp|z|. (2) expx
n −1− x n
=expx n −s1
(x n
)(5.10)≤ |x| 2n2 exp
(|x| n
) . 更に指数法則より expx=(
expxn)n
. 従って
|expx−en(x)| = ( expx
n )n
−( 1 + x
n )n
命題3.6.6, (1)
≤ nexp
(n−1 n |x|)
expx
n −1− x n
(2)≤ |x|2exp|x|
2n .
(5.12):準備として次の不等式を示す:x, y ∈C, n∈N, |x|,|y| ≤r なら
|sn(x)−sn(y)|
|en(x)−en(y)| }
≤ |x−y|expr (5.13)
実際,snに対する(5.13)は(5.6)と同様に示せる.またenに対する(5.13)は次のよう にして得られる.
|en(x)−en(y)| 命題≤3.6.6 n (
1 + r n
)n−1 |x−y| n
(1)≤ nexp
(n−1 n r
)|x−y|
n ≤ |x−y|expr.
an → aとするとき,収束列は有界だからr ∈ [0,∞)を|an|の上界とする.このとき
|a| ≤r. そこで、
|sn(an)−expa| ≤ |sn(an)−sn(a)|+|sn(a)−expa|
(5.13)
≤ |an−a|expr+|sn(a)−expa|(5.10)−→ 0.
enでも同様. \(∧2∧)/
問 5.1.1 exp :R→Rが凸であることを示せ.
問 5.1.2 lim
n→∞
n
(n!)1/n を求めよ。ヒント: limn→∞(
1 + n1)n
=e.
問 5.1.3 an ≥0, √ann →0とする。en(an) exp(−an)→1,en(−an) exp(an)→1を示せ。
ヒント:(5.11).
問 5.1.4 (⋆) e ̸∈Q を示せ。ヒント:e= p/q(p, q ∈N) と仮定すると(5.10) でx= 1 として、|pn!−qsn(1)n!| ≤qe/(n+ 1).
問 5.1.5 (⋆) x≥0に対し次を示せ:expx−en(x) ≥ x2n2. (この不等式と(5.10)を比べ ると、en(x)によるexpxの近似はsn(x)による近似に比べてだいぶ遅いことが分かる.)