(2) lim
n→∞ℓn = lim
n→∞rn =c.
更に、(1)–(2)とはさみうちの原理より limn→∞ak(n)=c. \(∧2∧)/
チェコの数学者ボルツァーノ は1817年に発表した論文の中で定理6.5.1の原型を述 べた。この仕事は半世紀もの間ほとんど知られていなかったが、1870 年頃にはドイツ の数学者ワイエルシュトラス による再証明を通じて重要性が認識され始めた7。
問 6.5.1 (⋆) 任意の数列は、単調部分列を含むことを示せ。
ヒント:有界・非有界で場合分けし、前者には 定理 6.5.1を用いよ。
6.6 (⋆)定理 6.4.1の証明
定理 6.4.1におけるcの存在を示す(c′ についても同様)。中間値定理よりf(I)は区
間である.その上端をR(≤ ∞) と記す.このとき,数列 an ∈ I, n = 0,1,2, ... で f(an) −→R なるものが存在する. 所が定理 6.5.1(ボルツァーノ・ワイエルシュトラ ス)よりc∈Iおよび(an)の部分列(ak(n))でak(n) −→cなるものが存在する。すると、
R = lim
n→∞f(ak(n))f の連続性= f(c).
よってR <∞かつRはfの最大値である. \(∧2∧)/
7歴史について次の文献を参考にした:Dugac, P: El´ement d’analyse de Karl Weierstrass, Archive for History of Exact Sciences10, 1973, 41–176.
7 一変数関数の微分
(2013年3月21日更新)
曲線に接線をひく問題は、古くから考えられていた。例えばアルキメデスは、紀元 前 3 世紀に螺旋 (現代風に書くとf(t) = t(cost,sint), t ≥ 0) の接線を求めている。
17 世紀になると、デカルト やフェルマー 達により、接線・法線を一般にどう定義す るか?が盛んに議論された。特にフェルマーはy =f(x)の接線の傾きを(y の変動)/(
x の変動) において x の変動が 0 に近づくときの値と捉え、その考えを極値(点)を 求める問題にも応用した。フェルマーの考え方は、現代の微分法に近く、後にニュート ン にも影響を与えた。ライプニッツ は (y の微小変動)/( xの微小変動)書き表す為に
dy/dx という記号を用いた。 また、ニュートンは、同じものをy· と記した。これらの
記号は現在でも微分係数や導関数の記号として受け継がれている。
7.1 一変数関数の微分
定義 7.1.1 (一変数関数の微分) I ⊂ R を区間、f : I → Rk とする(f : I →C の 場合も k = 2 として含む)。
I x∈I で次の極限 f′(x)が存在すれば、その極限を x での微(分)係数と呼ぶ:
f′(x) = lim
y→x y̸=x,y∈I
Dx,y(f), 但し Dx,y(f) = f(y)−f(x)
y−x . (7.1)
この際、k = 1 ならf′(x) =±∞も許すことにする。f′(x) を次のように記すこと もある:
(f(x))′, d
dxf(x), df dx(x).
I 極限 f′(x)∈ Rk (ここでは、k = 1,f′(x) = ±∞ の場合は除く!) が存在すれば
f は x で可微分と言う。
I f が全てのx∈I で可微分なら、関数x7→f′(x)が定義され、これを f の導関 数と呼ぶ。微(分)係数、あるいは導関数を求めることを、微分するという。
(c, f(c))
y=f′(c)(x−c) +f(c) y=f(x)
定義 7.1.1 の f′(x) は、幾何的には、グラフ上の点(x, f(x)) における接線の勾配を 表わす。また、xを「時刻」を表す変数と解釈すると、f′(x)は動点 f(x) の時刻x に おける速度ベクトルを表わす。
例 7.1.2 (単項式・対数関数の微分) (i) p∈N, x∈Rなら (xp)′ =pxp−1. (ii) x∈(0,∞)なら(logx)′ = 1/x.
証明: (i): y̸=x, y→x とするとxp−yp x−y
命題1.4.1
=
p−1
∑
k=0
xkyp−1−k→pxp−1. (ii):x, y ∈(0,∞),y̸=x ならlogx−logy の評価(命題5.3.1) より
1 x ∧ 1
y ≤ logx−logy x−y ≤ 1
x∨ 1 y.
上式で y−→x とすると、(右辺)−→ 1x, (左辺)−→ 1x. \(∧2∧)/
例 7.1.3 (可微分でない関数の例)
(a) グラフに角がある場合: f(x) =|x|は x= 0で微分不可能。実際、y >0,y <0 に応じて D0,y(f) = 1,−1. よって極限 f′(0) は存在しない。
(b) 微分が発散する場合: f(x) = xp, 0 < p < 1 は x = 0 で微分不可能。実際、
y >0 としてD0,y(f) = yyp =yp−1 −→ ∞, (y−→0).
命題 7.1.4 (可微分点は連続点) I ⊂ R は区間、f : I → Rk が x ∈ I で可微分な ら、f は x で連続である。
証明: I\{x} ∋ y → x で Dx,y(f) は収束するのでf(y)−f(x) =Dx,y(f)(y−x) → 0.
\(∧2∧)/
命題 7.1.5 I ⊂R は区間、f, g:I →Rk が x∈I で可微分とする。
(a) (和の微分) f +g は x∈I で可微分でかつ(f +g)′(x) = f′(x) +g′(x).
(b) (積の微分)f, g :I →C ならf g は x∈I で可微分かつ (f g)′(x) = f′(x)g(x) +f(x)g′(x).
(c) (商の微分)f, g :I →C,g(x)̸= 0 なら f /g は x で可微分かつ (f /g)′(x) = f′(x)g(x)−f(x)g′(x)
g(x)2 .
証明: (a),(b):y→xとするとき、
Dx,y(f +g) = Dx,y(f) +Dx,y(g)−→f′(x) +g′(x),
Dx,y(f g) 簡単な計算= g(y)Dx,y(f) +f(x)Dx,y(g)−→f′(x)g(x) +f(x)g′(x).
(c):g(x)̸= 0 かつ g はx で連続(命題 7.1.4)なので、y→xとする際、g(y)̸= 0 を仮
定してよい。すると、
Dx,y(1/g)簡単な計算= − Dx,y(g)
g(x)g(y) −→ −g′(x) g(x)2.
となりf ≡1の場合が判る。これと(b)からf /g=f1g に対する結果を得る。\(∧2∧)/
次に偏微分の概念を導入する:
定義 7.1.6 (偏微分) D ⊂ Rd, f : D → R とする。点 x ∈ D の座標のうち x1, .., xi−1, xi+1, .., xd を固定しi 座標のみ動かして得られる実一変数関数
t 7→f(x1, .., xi−1, t, xi+1, .., xd)
が、t ∈(xi−ε, xi+ε) に対し定義されると仮定する(ε > 0)。この関数を微分す ることを f をxi について偏微分 すると言う。この関数がt =xi で可微分なら f は xにおいてxi について偏微分可能といい、微分係数を偏微分係数という。偏微 分係数は
∂if(x), ∂xif(x), ∂
∂xif(x), ∂f
∂xi(x)
等の記号で表す。全ての x∈D で ∂if(x) が存在するとき、関数∂if :x7→∂if(x) をxi についての 偏導関数と言う。
例 7.1.7 (べき級数の微分) r ∈ (0,∞], an ∈ C (n ∈ N), また、全ての z ∈ D def.= {z ∈C; |z|< r} に対し、級数:
f(z) =
∑∞ n=0
anzn
は絶対収束するとする。このとき、 z ∈D に対し f′(z)def.= limw→z
w̸=z
f(w)−f(z)
w−z =
∑∞ n=1
nanzn−1 (右辺の級数は絶対収束). (7.2) 上の極限を複素微分という。また、z =x+iy (x, y ∈R) と書くとき、z ∈Dの範 囲で、f(z) は x, y についてそれぞれ可微分で、
∂xf(z) = 1
i∂yf(z) =f′(z). (7.3)
上式第一式をコーシー・リーマンの等式 という。
証明:z∈D とし、|z|< s < r となるs をとる。w→z のとき、|w|< s としてよい。
このとき、補題 7.1.12より
(1) |wn−zn−nzn−1(z−w)| ≤ 12n(n−1)(z−w)2sn−2.
従って、w̸=z なら
f(w)−f(z) w−z −∑∞
n=1
nanzn−1 =
∑∞ n=1
an
(wn−zn
w−z −nzn−1 )
(1)≤ |w−z|
∑∞ n=1
n(n−1)|an|sn−2
| {z }
命題4.4.2より有限
.
以上より、(7.2)を得る。(7.2)で z =x+iy のy を固定し xだけを変数と考えると
∂f
∂x(z) =f′(z).
また、x を固定しy だけを変数と考えると 1
i
∂f
∂y(z) = f′(z).
\(∧2∧)/
例 7.1.8 (指数・双曲・三角関数の微分)x∈R とする。
(i) c∈C なら(ecx)′ =cecx.
(ii) a∈(0,∞) なら (ax)′ =axloga.
(iii) (chx)′ = shx, (shx)′ = chx, (cosx)′ =−sinx, (sinx)′ = cosx.
証明: (i):巾級数表示 ecx=∑∞
n=0 cnxn
n! に 例 7.1.7 の結果を用い、
(ecx)′ =
∑∞ n=1
cnxn−1 (n−1)! =c
∑∞ n=0
cnxn
| {z }n!
=ecx
.
(ii): (i)で c= loga とする。
(iii): ch , sh , cos, sin を exp で書き表す定義式(命題 5.2.1, 命題 5.2.2)と (i), 命題
7.1.5 による。 \(∧2∧)/
注: 例 7.1.8 では、簡単のために実変数関数として微分したが、複素変数関数として
複素微分(例7.1.7)しても同じ式が成り立つ。
命題 7.1.9 (微分可能性の言い替え) I ⊂ R は区間、f : I → Rk, ℓ ∈ Rk (k = 1, ℓ =±∞ は含めない), x∈I とする。次の(a),(b) は同値である:
(a) f が x で可微分かつf′(x) =ℓ
(b) 次のような φ:I −→Rk が存在する:
全てのy ∈I に対しf(y)−f(x) =ℓ(y−x) +φ(y). (7.4)
y→xlim
y̸=x,y∈I
φ(y)/|y−x|= 0. (7.5)
証明: (a) =⇒ (b): φ:I −→R を(7.4) が成立するように定義する、即ち:
φ(y) =f(y)−f(x)−ℓ(y−x)
このφ に対し条件 (a) より (7.5)が成立。よって (b) が示せた。
(a) ⇐= (b): 条件(b) が成り立つなら
ylim→x y̸=x,y∈I
Dx,y(f) = lim
y→x y̸=x,y∈I
(
ℓ+ φ(y) y−x
)
=ℓ,
となり、(a) が成立。 \(∧2∧)/
命題 7.1.10 (連鎖律) J ⊂R は区間、x∈J , J −→g I −→f Rk とする。このとき、
g が x で可微分かつf が g(x) で可微分なら、f ◦g は x で可微分かつ (f ◦g)′(x) =f′(g(x))g′(x).
証明: 仮定及び 命題 7.1.9よりφ1 :J −→R,φ2 :I −→Rk が存在し (1) ∀y∈J, g(y)−g(x) = g′(x)(y−x) +φ1(y), lim
y→x y̸=x,y∈J
φ1(y)/|y−x|= 0.
(2) ∀z∈I,f(z)−f(g(x)) =f′(g(x))(z−g(x)) +φ2(z), lim
y→x z̸=g(x),z∈I
φ2(z)/|z−g(x)|= 0.
実は次が成立する:
(3) lim
y→x y̸=x,y∈J
φ2(g(y))/|y−x|= 0.
(3) の証明はひとまず後回しにし、(3) を用い、命題を示す:
f(g(y))−f(g(x)) (2)= f′(g(x))(g(y)−g(x)) +φ2(g(y))
(1)= f′(g(x))g′(x)(y−x) +f′(g(x))φ1(y) +φ2(g(y))
| {z }
φ(y)と置く。
更に、(1), (3)から
ylim→x y̸=x,y∈J
φ(y)/(y−x) = 0.
以上と命題 7.1.9より結論を得る。
以下、(3) を示す。xn ∈J\{x}, xn→x として (4) lim
n→∞φ2(g(xn))/|xn−x|= 0.
を言えばよい。g(xn) =g(x)ならφ2(g(xn)) =φ2(g(x)) = 0. よって、(4) を示す際には g(xn)̸=g(x) となるn だけで考えてよい。g は x で連続だから limn→∞g(xn) =g(x).
よって n→ ∞ とするとき、
|φ2(g(xn))|
|xn−x| = |φ2(g(xn))|
|g(xn)−g(x)|
| {z }
(2)より→0
|g(xn)−g(x)|
|xn−x|
| {z }
(1)より 有界
−→0.
以上より (4) が示せた。 \(∧2∧)/
例 7.1.11 (巾関数の微分) x >0,c∈C に対し (xc)′ =cxc−1.
証明:xc=eclogx =f ◦g(x),但し f(y) = ecy, g(x) = logx. よって (xc)′ 連鎖律= f′(g(x))g′(x)例=7.1.8 ceclogx1
x =cxc−1.
\(∧2∧)/
問 7.1.1 I ⊂ R は区間、f, g :I → Rk が x ∈ I で可微分とする。次を示せ。f ·g は x∈I で可微分で、(f ·g)′(x) =f′(x)·g(x) +f(x)·g′(x), 但し· は内積を表す。
問 7.1.2 I ⊂Rは区間、fi :I →C(i= 1, .., n)がx∈I で可微分とする。以下を示せ:
(i)積 f =f1· · ·fn も x∈I で可微分かつ x においてf′ =∑n
i=1f1· · ·fi−1fi′fi+1· · ·fn. (ii) p:Cn→C を多項式、f =p(f1, ..., fn) とするとき、f もx∈I で可微分、また f′ は多項式q:C2n −→C を用いf′ =q(f1, ..., fn, f1′, ..., fn′)と表すことが出来る。
問 7.1.3 a ∈(0,∞),x∈R なら (ax)′ =axloga (例 7.1.8). これを、命題 5.4.1 で述べ た ax−ay の評価から導け。
問 7.1.4 g :I →(0,∞)が x∈I で可微分なら、logg もx で可微分であること、およ び(logg)′(x) = g′(x)/g(x) を示せ。
問 7.1.5 次の fj :I →R (j = 1,2)の導関数を求めよ:
(i)I =R, f1(x) = sinmx, f2(x) = sinmxn (m, n∈N\{0}).
(ii) I = (0,∞), f1(x) =xx, f2(x) = xxx.
問 7.1.6 I ⊂ R は区間、f : I → Rk が x ∈ I で可微分、f(x) ̸= 0 とする。(|f(x)1 |)′, (f(x)|f(x)1 |)′ を f(x) と f′(x) を用いて表せ。
7.1 節への補足
補題 7.1.12 x, y ∈C,|x| ≤r,|y| ≤rならn= 2,3, ..に対し
|xn−yn−nxn−1(x−y)| ≤ 12n(n−1)rn−2|x−y|2.
証明:まず次の等式を示す:
(1) nxn−
n−1
∑
j=0
xjyn−j = (x−y)
n−1
∑
j=0
(j + 1)xjyn−1−j. 実際,p(x, y)def= ∑n−1
j=0(j+ 1)xjyn−1−jに対し,
xp(x, y) = nxn+
∑n j=1
jxjyn−j, yp(x, y) =
∑n j=0
(j + 1)xjyn−j.
上式の差をとれば (1)の左辺と一致する.今,
xn−yn命題=3.6.6 (x−y)
∑n−1 j=0
xjyn−1−j
従って
xn−yn−nxn−1(x−y) = (x−y) (n−1
∑
j=0
xjyn−1−j−nxn−1 )
= −(x−y) (
(n−1)xn−1−
n−2
∑
j=0
xjyn−1−j )
(1)= −(x−y)2
n−2
∑
j=0
(j+ 1)xjyn−2−j.
上式右辺の絶対値を評価すれば,容易に結論を得る. \(∧2∧)/