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科学技術研究調査による企業の生産性の要因分析

ドキュメント内 公的統計の現代的意義 (ページ 120-141)

企業の生産性がどのような要因に左右されるのかという課題は、昔から各国様々な ところで問われている重要なテーマである。企業の生産性の源泉は大きく分けて資本、

労働力、技術進歩の3つの要因に区分される。第Ⅲ部の最後の章では、清水・玉熊[39]

が、科学技術研究調査のデータを用い、技術進歩について研究開発に着目して3つの 要因に区分する研究を行ったので、その一部を紹介することとする。分析手法として は、企業ごとの生産性を売上高(総売上高)とみなし、資本金、従業者数(従業者総 数)、研究費(研究費総額)等から構成される生産関数を構築する方法を採用すること とする。

最初に、科学技術研究調査のデータから企業の売上高と研究費の関係を概観する。

次に、生産関数に関する先行研究を紹介し、2003年から2007年までの科学技術研究 調査の個別データを基に、産業別に生産関数を構築し、産業別特徴を明らかにする。

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特に、科学技術研究調査が研究開発活動を明らかにする調査であることを踏まえ、研 究費を無形資産とみなし、弾力性とタイムラグに着目する。

なお、科学技術研究調査では、毎年、従業者数等の人数及び資本金については3月 31日現在、研究費や売上高などの経理項目については前年度の状況を調査している。

1 企業の研究投資効果

科学技術研究調査によると、日本における研究費の GDP に対する比率は増加傾向 で推移し、2006 年度には 3.62%と、調査開始以来最高となった。これは諸外国と比 較しても高い水準である。また、研究費については公的機関、大学等と比べて企業の 割合が高く、年々増加傾向で推移している。日本は他国と比べても企業の割合が高く、

OECD[40]によると、研究費の支出源別に見ると、ルクセンブルクに次いで2位、実

施者別に見ると、ルクセンブルク、韓国に次いで3位となっている。このように、日 本の研究における企業の役割は極めて大きなものとなっている。

ここでは、科学技術研究調査の個別データを再集計して、企業の研究費と売上高の 関係を通して、研究費の投資効果を研究する。

もっとも、2007年科学技術研究調査によると、2006年度の企業の売上高に占める 研究費の割合は1.4%に過ぎず、研究をしている企業に限定しても3.0%程度にとどま る。この僅かな比率の差が売上高の相異をもたらしているのかどうかを検証すること が本研究の目的である。

今回使用した科学技術研究調査のデータは、2003年以降継続して調査している企業 のうち、2007年調査で 3月31 日現在の資本金が 10億円以上の企業で、研究費及び 売上高が2002年度から2006年度のいずれかの年度で0になる企業並びに売上高に記 入の必要がない企業を除いた1,472企業に係るいわゆるパネルデータである。

なお、2006年度において、企業の研究費の総額の89.9%は資本金10億円以上の企 業によって占められている。

1.1 研究費と売上高の関係

まず、研究費と売上高の関係を論じる。

総じて、研究費が多いほど売上高も多い関係がある。しかし、1.2.1に示すとおり、

研究費と売上高の関係を見ると、必ずしも強い関係が見られない。それは、研究は基 礎研究から実用のための研究まで様々であり、また、研究が生産に結実するまでの期 間は研究の分野、内容、性格等によって異なるからである。しかし、それらの条件を すべて制御することはできないので、最初に、科学技術研究調査産業小分類(38区分)

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ごとに、研究費の支出と売上高の年度の対応にタイムラグを設け、両者の関係を見て みた。

研究費支出のタイムラグを1年としたとき、医薬品工業で強い相関が見られた。ま た、タイムラグを2年としたとき、鉄鋼業でも強い相関が見られた。しかし、詳細に 検討すると、これらの結果は大きな企業の数社が外れ値として作用したことによるも ので、研究費と売上高の関係を示すものとは言えない。すなわち、この種の分析に際 しては、売上高と研究費の規模が大きい企業による影響について十分に配慮する必要 がある。

1.2 対前年度変化率による階級区分

規模の効果については、前年度変化率に着目すればある程度除去することが可能で ある。そこで、ここでは研究費の対前年度変化率と売上高の対前年度変化率の関係を 検討する。

研究費の対前年度変化率は、個々の企業の研究の内容と状況によって区々であり、

年によって変動が激しいが、ある程度大括りにして比較をすればおおよその傾向が現 れることが期待される。そこで、研究費の対前年度変化率について、まず、増加して いる企業と減少している企業に区分した上で、増加している企業については2倍以上 とそれ未満に区分し、それぞれのグループごとに売上高の対前年度変化率の平均を比 べることにした。なお、研究費に増減がない企業は、産業別には存在しない場合があ るが、存在する場合には増加している企業と同じ区分に含めた。

1.2.1 全産業の研究費と売上高の関係

表21は、研究費の対前年度変化率(%)を100以上、0以上100未満、0未満の 3つの階級に区分し、階級ごとに研究費を支出した年度以降の経過年別に売上高の対 前年度変化率の平均を比較したものである。研究費の支出と売上高の年度が同一のと き、研究費の対前年度変化率が高ければ売上高の対前年度変化率も高いことが観察さ れる。したがって、1年以内の極めて短期間に研究費が売上高に影響を及ぼしている 可能性が認められる。しかし、研究費の対前年度変化率が高くても数年後の売上高の 対前年度変化率が高くなるとは限らない。このように、全体として研究開発投資の効 果は継続性が明確でない。

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表21 研究費の対前年度変化率階級別売上高の対前年度変化率の平均(全産業)

1.2.2 医薬品工業のケース

これを産業別に見ると、表21-1に示したように、事情は異なる。医薬品工業を例 にとると、同一年度の2004年度と2006年度については全産業で観察された関係は認 められない。ただし、2004年については、研究費の対前年度変化率が高いほど3年後 の売上高の対前年度変化率も高く、医薬品工業においては研究開発投資の効果が遅れ て現れることが示唆される。

表21-1 研究費の対前年度変化率階級別売上高の対前年度変化率の平均

(医薬品工業)

1.2.3 鉄鋼業のケース

鉄鋼業においては、表21-2に示したように、同一年度の研究開発投資が売上高に 及ぼす効果が認められない。1年後及び2年後に及ぼす効果については、2005年度に

0年目 1年目 2年目 3年目 100%以上 14.2 9.1 2.3 6.9 0以上100%未満 5.7 6.0 5.1 7.9 0未満 4.6 9.1 6.2 7.3 100%以上 13.5 9.4 6.7

0以上100%未満 8.7 5.4 7.3

0未満 5.9 5.5 7.9

100%以上 32.0 4.0 0以上100%未満 5.8 8.4

0未満 3.6 6.4

100%以上 21.8 0以上100%未満 8.9

0未満 4.8

2007 調査 年度

研究費の 対前年度変化率

売上高の対前年度変化率(%)の平均

2004

2005

2006

0年目 1年目 2年目 3年目 100%以上 0.0 7.6 4.2 4.5 0以上100%未満 0.5 -0.4 4.3 2.5 0未満 1.4 1.9 0.1 0.9 100%以上 2.1 35.3 2.1

0以上100%未満 0.7 1.3 3.4 0未満 0.7 2.9 -0.3 100%以上 21.0 2.8

0以上100%未満 0.3 4.0

0未満 1.8 -1.5

100%以上 10.3 0以上100%未満 3.1

0未満 -0.9

2004

2005

2006

2007

研究費の 対前年度変化率 調査

年度

売上高の対前年度変化率(%)の平均

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おいて認められるものの、他の年度においては認められないことから、研究開発投資 の効果がタイムラグを伴って現れるとは言えない。

表21-2 研究費の対前年度変化率階級別売上高の対前年度変化率の平均

(鉄鋼業)

2 生産性の要因分析

第1節で企業の研究投資効果を概観したが、一部の産業で研究費の変化が売上高の 変化に結び付いている可能性が認められるものの、総じて研究費だけで売上高に有意 に影響するとは言えない。売上高は、研究費に加えて、資本や従業者数等、他の変数 とも密接に関係しており、それらを総合して影響を計測することで説明力が強まる。

ここでは、生産量と資本、労働等との関係を定式化した生産関数を構築し、研究開発 投資に相当する変数の影響を計測することとする。

企業の生産性の分析において、生産関数として次の Cobb-Douglas 型を用いること が多い。

β α

t t t

t

T K L

Q =

1 (3-1a)

ここで、

Q

tは当期の生産量、

T

tは当期の全要素生産性、

K

t1は前期の資本ストック、

L

tは当期の労働力である。実証分析においては、入手できるデータの制約もあり、

Q

t

には売上高、

K

t1には建物、設備等の資産、

L

tには総労働時間又は従業者数が使用さ れる。

なお、生産量の指標としては付加価値が用いられることが適当であるが、使用し得 るデータの制約が強いため、ここでは売上高で代理している。

両辺の対数をとると、

t t

t

t

T K L

Q ln ln ln

ln = + α

1

+ β

(3-1b) 0年目 1年目 2年目 3年目

100%以上 2.4 -1.0 -5.2 7.7 0以上100%未満 10.0 19.8 8.4 16.8 0未満 7.2 20.7 11.9 6.0 100%以上 20.9 12.1 18.7

0以上100%未満 15.8 10.6 10.2 0未満 23.5 9.2 9.7 100%以上 10.6 -1.8

0以上100%未満 12.2 12.1

0未満 6.8 9.9

100%以上 7.7 0以上100%未満 10.7

0未満 10.7

2006

2007 調査 年度

売上高の対前年度変化率(%)の平均 研究費の

対前年度変化率 2004

2005

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