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調査の概要

ドキュメント内 著者 本莊 雄一 (ページ 40-48)

第 2 章 自治体間協力による人的支援の評価構造モデルの構築

2.3 神戸市職員派遣のワークショップの結果

2.3.1 調査の概要

発災から2011年10月3日までに派遣された職員を対象として,支援活動内容別ワークショ ップが神戸市によって計16回開催された.参加者は合計96人であった.各ワークショップで は,「うまくいったところ」,「うまくいかなかったところ」,「改善策」の3つのテーマ を取り上げて,テーマごとに,参加者が意見を出し合った.全体で16回のワークショップか ら,合計で1,116枚の意見カードが得られた.これらの意見カードを集約して,テーマ別に 支援活動内容別の親和図を作成し,つぎに各親和図のタイトルカードを集約して,テーマ別 の全体の親和図として図8,図9,図10を作成した.このテーマ別の全体の親和図をもとに,

職員派遣の実態と改善策を整理・分析した(神戸市 2012b).

図 7 グランド KJ 法のフロー

2.3.2 グラント KJ 結果「うまくいったところ」

グランド

KJ

の結果のうち,「うまくいったところ」は,大きくは「全体評価」と「個別

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評価」とに整理できた.「個別評価」については,さらに,「派遣チーム」,「職員」,

「後方支援体制」,「信頼関係」に分けられた(図 8 参照).

2.3.2.1 全体評価

「全体評価」は,主効果と副次効果との2つの側面に分けられる.主効果は,迅速な派遣 を行うことができたことや,自己完結型の支援ができたこと,相手の立場に立ち臨機応変な 支援ができたこと,阪神・淡路大震災時の記録や経験をもとに適正なアドバイスができたこ とである.この効果は,阪神・淡路大震災の経験や教訓から,先遣職員をいち早く派遣して 被災状況や支援ニーズを把握することができたことや,できるだけ先方に負担をかけずに

「自己完結型」で支援することを基本方針としたこと,阪神・淡路大震災を受けた自治体と して被災自治体や被災者に共感できたことなどに基づくものである.

今回の支援活動を通じて得られた副次効果は,近い将来発生が予想される南海トラフ大 震災(内閣府 2013)等の被害想定ができたことや,阪神・淡路大震災の経験者と未経験者 がペアで行動することによりノウハウの伝承ができたこと,さらには,他都市からの応援 隊員に神戸のノウハウを研修できたことである.東日本大震災発生時は,阪神・淡路大震 災発生から16年が経過しており,神戸市では,震災の災害復旧を経験した世代が退職して いく中,災害復旧の経験の風化が課題となっていた.

2.3.2.2 派遣チーム

「個別評価」について,まず「派遣チーム」の中をみると,1つは派遣体制である.保健 衛生関係や災害廃棄物関係などにおいて,人員構成が適切であったことや,指揮命令系統が 明確であったことである.前者は,多職種で活動することで,被災者の多様なニーズに対応 することができたことを示す.2つは,情報収集・共有・発信で,神戸市の記録誌や災害マ ニュアルが役に立ったことや,直接被災者からニーズを聞いたこと,朝礼などで情報共有を することができたこと,被災自治体の災害対策本部に出席でき情報収集や共有ができたこと である.3つは派遣条件で,り災証明関係において,10日という派遣期間が適当であったこ とや一定の安全性への配慮ができていたことである.4つは活動に必要な物資で,下水道・

道路・水道関係などにおいて,カーナビ,防災携帯,モバイルパソコンを持参できたことで ある.5つは,短期間の派遣では,先発隊と後続隊の引き継ぎが極めて重要となるが,災害 廃棄物の撤去運搬・水道関係などにおいて引き継ぎがスムーズにできたことである.

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2.3.2.3 職員

「職員」については,派遣された職員の士気が高かったことや職員全体の意識が共有化で きたことである.この背景には,神戸市職員は阪神・淡路大震災時に受けた励まし・支援に 対する恩返しの気持ちを持っていたことがあるという意見が,多くの職員から出された.

2.3.2.4 後方支援体制

保健衛生・医療関係や道路関係においてバックアップ体制がしっかり取れていたので派遣 職員は安心して現地に赴くことができたことや,保健衛生関係などにおいて現地に派遣され る職員だけでなく,神戸にいながらも被災地職員への支援ができたことである.

2.3.2.5 他の支援団体との連携

「他の支援団体との連携」の評価については,支援活動分野によって異なるが,医療関係 では他都市の医療・保健師チームとの連携が,また災害廃棄物の撤去運搬関係では自衛隊や ボランティア等との連携が,それぞれ図られたことである.

2.3.2.6 信頼関係

震災経験都市ということで,被災地からの信頼・共感を得られたことや,神戸市のマーク の入った防災服の着用によって被災市民に受け入れてもらいやすかったことである.また,

避難所運営支援関係において,避難者の要望等にできる限り対応したことで,信頼関係を築 くことができたことである.

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図 8 グランドKJ結果「うまくいったところ」

2.3.3 グラント KJ 結果「うまくいかなかったところ」

グランドKJ結果の「うまくいかなかったところ」は,大きくは,「全体評価」,「個別評 価」とに整理できる.

「個別評価」は,従来,支援活動のあり方を考える上で中心テーマであった支援を行う 側としての「支援」の課題と今回注目された支援を受ける側としての「受援」の課題に分 けられる(図 9 参照).

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2.3.3.1 全体評価

「全体評価」では,東日本大震災と阪神・淡路大震災との相違点を十分に認識できず,イ メージ先行の支援となったところもあったことである.また,提案したことを必ずしも受け 入れてもらえなかったことである.さらに,被災地職員の心身の負担などにまで配慮できな かったことである.

神戸市としては,阪神・淡路大震災の被災経験市として得られたノウハウを生かして,

被災地の一刻も早い復興に寄与しようというモチベーションで,助言を行った.しかし,

被災自治体は,小規模な自治体が多いこともあって,災害対応業務を熟知した職員が少な いことや,また,職員も被災者であり,同僚らは失った喪失感や疲労が蓄積していたこと などにより,支援側の経験も「押し付け」ととらえたこともあったという意見が受援側か ら出されている.

2.3.3.2 支援

「支援」について,その中を見ると,課題項目としては,前述の「うまくいったところ」

で挙げられた項目である「派遣チーム」,「職員」,「後方支援体制」,「他の支援団体 との連携」,「信頼関係」に加えて,「派遣隊の位置づけ・任務」が挙げられた.

「派遣隊の位置づけ・任務」については,分野により,全国組織の枠組みでの神戸の位 置づけが不明であったり,任務が必ずしも明確でなかったことである.協定や協議会,被 災自治体,省庁のそれぞれの要請が並行して行われ,全体を見据えた支援調整が行われて いないために,混乱したケースが生じた.

つぎに,「派遣チーム」の中で,1 つめの派遣体制では,消防関係において大部隊での移 動は部分的に非効率であったことや,活動分野によっては必ずしも指揮命令系統が明確で なかったこと,被災地の需要と支援とのミスマッチがあったこと,下水道関係などで日常 業務に影響がでたことである.2 つめの情報収集・共有・発信では,現地情報が不足したこ と,情報の整理が上手にできなかったこと,電話・通信事情が悪く情報伝達がうまくいか なかったこと,阪神・淡路大震災以降の制度変更への対応ができていなかったこと,津波 被害・原発事故に対する知識がなかったこと,派遣チームに広報力がなかったことである.

3 つめの派遣条件では,分野によっては派遣期間が短かったこと,宿泊場所と活動場所の移 動時間が長く活動時間の制約があったこと,安全管理の配慮が十分でなかった分野もあっ たことである.4 つめの活動に必要な物資では,装備の準備に手間どったことや,ガソリン

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入手が困難であったこと,また,5 つめの後続隊への引継ぎでは,引継時間が十分とれなか ったことや実施報告書のボリュームが大きすぎたために現地での引継ぎができなかったこ とである.

図 9 グランドKJ結果「うまくいかなかったところ」

さらに,「後方支援体制」については,支援活動分野によっては後方支援体制の位置づ けが明確になっていなかったことである.また,「他の支援団体との連携」については,

他都市・県などの支援者間の連携が不足していた分野もあったことである.

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2.3.3.3 受援

「受援」という言葉は,東日本大震災前まで,防災ボランティアや消防行政など限られ た分野で限定的にしか使われていなかった.今回,「受援」の態勢の重要性が注目される に至った要因として,神戸市からの派遣職員は,被災自治体側において,つぎのような支 援を生かしきれなかった事例があったことをあげている.

1 つは,被災自治体が経費負担の心配から支援を断るケースがあったことである.この原 因に関して,応援に要する費用が,法律上は原則として被災市町村の負担であることから 応援要請を躊躇することになったという意見が支援に行った職員から出ている.

2 つは,被災自治体と神戸市とで思いのギャップがあったり,被災自治体内での職員間や 行政と市民との間での温度差に対して支援職員に戸惑いが生じたことである.

3 つは,支援を受け入れる総合的な窓口がはっきりしていなかったり,市役所内に執務ス ペースがなかったなど受け入れ体制が十分に整っていなかったことである.

4 つは地元チームとの情報交換ができなかったり,要請された支援業務の内容が漠然とし ていたことである.

2.3.4 グラント KJ 結果「改善策」

前述の「うまくいったところ」,「うまくいかなったところ」で出された意見について ワークショップの参加者で共有化し,それを踏まえて「改善策」の意見出しを行った.そ のグランド

KJ

結果の「改善策」は,大きくは「支援活動のあり方」と,その理念に立っ た「改善策」に整理できる.「改善策」は,「支援力」や「受援力」,「派遣制度の充実」

の 3 つの側面に分けられる(図 10 参照).

2.3.4.1 支援活動のあり方

「支援活動のあり方」として,迅速性,自己完結型,阪神・淡路大震災の経験の活用,

被災地のニーズや被災状況への適応,被災自治体の職員や被災市民への配慮が挙げられた.

このような支援のあり方を実現するために,支援を行う側としての「支援力」と支援を受 ける側としての「受援力」をそれぞれ高めることや,「派遣制度の充実」を行うことが,

必要であるとされた.

2.3.4.2 支援力

ドキュメント内 著者 本莊 雄一 (ページ 40-48)