大規模災害時における自治体間協力やNPO/NGOによ る人的支援に対する被災自治体の受援力の研究 : 東日本大震災を対象として
著者 本莊 雄一
学位名 博士(社会学)
学位授与機関 同志社大学
学位授与年月日 2016‑03‑20 学位授与番号 34310甲第758号
URL http://doi.org/10.14988/di.2017.0000016280
大規模災害時における
自治体間協力やNPO/NGOによる
人的支援に対する被災自治体の受援力の研究
―東日本大震災を対象として―
同志社大学大学院 社会学研究科 社会学専攻 2013 年度 49133401
本莊雄一
大規模災害時における自治体間協力や NPO/NGO による 人的支援に対する被災自治体の受援力の研究
東日本大震災を対象として/目次
序章 ··· 1
1 問題意識 ··· 1
2 リサーチ・クエスチョンの設定 ··· 7
3 論文の全体構成 ··· 7
第 1 章 先行研究の整理 ··· 10
1.1 日本における大規模災害時の被災自治体への人的支援に関する先行研究··· 10
1.1.1 自治体間協力による人的支援に関する先行研究 ··· 10
1.1.2 単体としての NPO/NGO による人的支援に関する先行研究 ··· 14
1.1.3 行政と NPO/NGO とから構成されるネットワーク組織による人的支援· 16 に関する先行研究 1.1.4 受援計画に関する先行研究 ··· 18
1.1.5 先行研究のまとめ ··· 19
1.2 本研究の分析の視角 ··· 20
1.2.1 緊急社会システム ··· 20
1.2.2 組織的対応の DRC 類型 ··· 22
1.2.3 DTRA 分類法 ··· 25
1.2.4 成員の役割遂行モデル ··· 26
1.2.5 組織間関係論 ··· 27
1.3 研究の目的と意義 ··· 28
第 2 章 自治体間協力による人的支援の評価構造モデルの構築 ··· 30
2.1 研究の方法 ··· 30
2.2 神戸市職員派遣の概要 ··· 31
2.3 神戸市職員派遣のワークショップの結果 ··· 33
2.3.1 調査の概要 ··· 33
2.3.2 グランド KJ 結果「うまくいったところ」 ··· 33
2.3.3 グランド KJ 結果「うまくいかなかったところ」 ··· 36
2.3.4 グランド KJ 結果「改善策」 ··· 39
2.4 小括 ··· 41
2.4.1 これまで意識されてきた課題 ··· 42
2.4.2 今回浮上してきた課題 ··· 45
第 3 章 自治体間協力による人的支援の評価構造モデルの検証 ··· 47
-神戸市派遣職員データ 3.1 研究の方法 ··· 47
3.1.1 調査フレームの作成 ··· 47
3.1.2 質問紙による社会調査の概要 ··· 50
3.1.3 インタビュー調査の概要 ··· 51
3.2 研究の結果 ··· 51
3.2.1 人的支援に関する全体的評価感尺度 ··· 51
3.2.2 人的支援に関する全体的評価感と派遣職員の属性との関係 ··· 52
3.2.3 支援力を測定する要因の尺度化 ··· 54
3.2.4 受援力を測定する要因の尺度化 ··· 58
3.2.5 人的支援の全体的評価感の規定因としての支援力と受援力 ··· 60
3.3 小括 ··· 62
第 4 章 自治体間協力による人的支援の評価構造モデルの検証-受援自治体データ ·· 64
4.1 研究の方法 ··· 64
4.1.1 調査フレームの作成 ··· 64
4.1.2 調査方法 ··· 65
4.1.3 手続き ··· 68
4.2 研究の結果 ··· 69
4.2.1 人的支援に関する全体的評価感尺度 ··· 69
4.2.2 支援力を測定する要因の尺度化 ··· 69
4.2.3 受援力を測定する要因の尺度化 ··· 69
4.2.4 人的支援の全体的評価感を規定していた要因 ··· 69
4.3 考察 ··· 72
4.3.1 被災自治体の評価と神戸市派遣職員の評価との比較 ··· 72
4.3.2 支援力をめぐる課題 ··· 75
4.3.3 受援力をめぐる課題 ··· 76
4.4 小括 ··· 79
第 5 章 自治体間協力による人的支援の評価構造モデルの検証 ··· 80
-神戸市派遣職員データと受援自治体データの一元化 5.1 研究の方法 ··· 80
5.1.1 研究対象のデータ ··· 80
5.1.2 変数の尺度化 ··· 82
5.1.3 支援の組織的対応の類型化 ··· 84
5.1.4 分析方法 ··· 85
5.2 研究の結果 ··· 86
5.2.1 正準相関分析の結果 ··· 86
5.2.2 多変量回帰分析の結果 ··· 89
5.3 小括 ··· 93
第 6 章 被災自治体における NPO/NGO による人的支援の受援の研究 ··· 96
6.1 研究の方法 ··· 96
6.2 研究の結果 ··· 97
6.2.1 国際協力 NGO と国内 NPO の支援活動の特性 ··· 98
6.2.2 国際協力 NGO と国内 NPO の被災自治体における受援状況 ··· 100
6.2.3 受援力を高めるための方策の考察 ··· 101
6.3 小括 ··· 102
第 7 章 行政と NPO/NGO とから構成されるネットワーク(EMONs)の研究 ··· 103
7.1 研究の方法 ··· 103
7.1.1 社会ネットワーク分析の概要 ··· 103
7.1.2 インタビュー調査の概要と分析の視角 ··· 106
7.2 3 県別
EMONs
の全体構造の分析結果と考察 ··· 1097.2.1 3 県別
EMONs
の全体構造の分析結果 ··· 1097.2.2 考察 ··· 113
7.3 インタビュー調査の質的分析結果と考察 ··· 113
7.3.1
EMONs
の協調活動 ··· 1137.3.2 「対境担当者」の視点から構築したサブ・カテゴリー ··· 116
7.3.3 「将来の重み」の視点から構築したサブ・カテゴリー ··· 117
7.4 インタビュ―調査の量的分析結果と考察 ··· 121
7.4.1 概念的モデルの形成 ··· 122
7.4.2 概念的モデルの計量的分析結果 ··· 124
7.5 小括 ··· 126
第 8 章 被災自治体の受援態勢の実態と受援計画の研究 ··· 128
8.1 研究の方法 ··· 128
8.1.1 神戸市で職員派遣を担当する課長・係長を対象とした ··· 129
インタビュー調査の概要 8.2 研究の結果 ··· 130
8.2.1 神戸市で職員派遣を担当する課長・係長を対象とした ··· 130
インタビュー調査結果等の考察 8.2.2 国際協力 NGO/国内 NPO やネットワーク組織を対象とした ··· 139
インタビュー調査結果の考察 8.3 小括 ··· 142
終章 ··· 144
終.1 本研究の結果のまとめ ··· 144
終.2 方策 ··· 146
終.3 今後の課題 ··· 149
参考文献 ··· 151
謝辞 ··· 158
付録 質問紙 ··· 160
1
序章
1 問題意識
我が国の災害関連法律の一般法である「災害対策基本法」においては,自然災害への第一 義的な対応主体として自治体が大きな役割を担う仕組みをとっている.しかし,大規模災害 においては,被災地となった自治体内の人的資源・物的資源・財政的資源等の資源のみでは 十分な対応が困難になる質・量の災害対応業務が発生する(重川希志依 2013).したがっ て,被災自治体の対応には限界があり,被災地外からの支援が不可欠となる.
被災地支援は,支援の種類や,支援時期,支援主体等によって分類できる(渡辺千明 2001).
渡辺千明(2001)は,阪神・淡路大震災における相互支援についての実態分析において,支 援の種類を,人的支援や,物的支援,土地・施設の供与,経済支援の4つに分類している.
また.支援時期を,初動期,応急対応期,復旧・復興期に分けている.さらに,支援主体を,
自治体,企業,
NPO/NGO
に分類している.この渡辺千明(2001)によって取り上げられた 支援主体に,田中重好(2007)は,個人,コミュニティ,海外からの政府あるいは準政府,国際的組織を付け加えている.
このような支援の分類において,本研究での取り上げた対象は,つぎのものである.東日 本大震災発生後の災害対応過程において,人的不足が継続して主要課題となっている(小野 寺元 2013)ことに着目して,支援の種類として人的支援を取り上げる.また,支援時期と して初動期と応急対応期を対象とする.人的支援の主体としては,主要な担い手である行政 と
NPO/NGO
(佐藤翔輔他2013
)を取り上げる.1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は,大規模災害となり,当該自治体の行政能 力では対応不可能となった.震災当日より北海道から沖縄県に至る,全国の都道府県及び市 町村等から応援を受けており,その数も相当数に及んだ.神戸市では,全国の都道府県及び 市町村等からの応援が,延べ24万人強に達した(神戸市 2000).その一方で,神戸市では,
迅速な応援要請に支障が生じ,また広域応援を受けた他自治体や関係機関の応援部隊の宿舎 確保,食糧,道案内等の対応に困難が生じた.さらに応援部隊の配置やオペレーションにお いて混乱が見られた(神戸市 1996).
その後,阪神・淡路大震災の教訓を基にした1995年の「災害対策基本法」の改正の中で,
自治体の応援の重要性が認識されたことから,「地方公共団体は,防災上の責務を十分に果
2
たすため必要があるときは,相互に協力するように努めなければならない」と新たに規定さ れた(上妻博明 2007).また,「国及び地方公共団体は,地方公共団体の相互応援協定に 関する協定の締結に関する事項の実施に努めなければならない」と規定された.神戸市でも,
阪神・淡路大震災の経験を生かして,震災後,改定された「神戸市地域防災計画」の中で,
広域連携・応援体制の改善がなされた(神戸市 1996).その主なものは,先遣職員の派遣 や,自己完結型・地元の意向に沿った支援,協定の改善等であった.
阪神・淡路大震災の救援活動には,応援行政組織に加えて,被災自治体が機能不全に陥る 中,兵庫県の推計によれば年間137万人もの個人ボランティアが参加した(兵庫県 2006).
その動きは社会現象として注目されて,この年は,「ボランティア元年」とも呼ばれた.こ れは,1990年代以降,地方自治を考える上で,行政と民との協働が議論に上ってきたこと(荒 木昭次郎 1990)を背景として,立木茂雄(1997)が指摘しているように,行政が公共を独 占する時代は終わり,市民が公共の担い手であることを体現しているものと考えられる.そ の一方で,大勢のボランティアと膨大な被災者のニーズをつなぐコーディネーションが最優 先課題となった(菅磨志保 2011).
阪神・淡路大震災におけるボランティアによる救援活動の重要性が認識されて,阪神・淡 路大震災以降,災害ボランティアを支える仕組み等がつぎに示すように整備されてきた(菅 2011).市町村に置かれた社会福祉協議会によって,災害時のボランティアコーディネート の機能を核とする「災害ボランティアセンター」が開設されることが社会的に定着すること となった.
また,1998年の「特定非営利活動促進法(
NPO
法)」の制定や,2001年の税制優遇される 認定NPO
制度の確立により,NPO
の活動基盤が整備された.阪神・淡路大震災と2004年に発 生した新潟県中越地震での経験を通じて,2005年1月には,災害時の支援体制づくりに活用 していく効果的な仕組みを検討するために,全国社会福祉協議会(以下,全社協)や日本NPOセンター,民間企業等よって「災害ボランティア・市民活動支援に関する検証プロジェ
クト会議(後の災害ボランティア活動支援プロジェクト会議)」が組織された.同年3月に,政府と民間との対話の場として内閣府に「防災ボランティア活動検討会」が設置された.両 者が相まって,政府,経団連1%クラブ,全社協,中央共同募金会,日本赤十字社,災害救援 関係の重要なNPOが参加する基本的な体制が整えられた(菅 2011).
以上のような災害ボランティアを支える仕組みの整備に伴って,大規模な災害が起これ ば,全国から災害
NPO
を含む災害ボランティアが被災地に駆け付けて,初動期や,その後3
の応急期,復旧・復興期に支援活動を行うようになってきている.
2011年3月11日に発生したマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発 生した巨大津波,およびその後の原子炉事故によって岩手県,宮城県,福島県の東北3県を 中心にもたらされた東日本大震災の被害は,1995年に発生した阪神・淡路大震災のそれを大 きく上回って戦後最大となった.全体の死者・行方不明者数は,阪神・淡路大震災では6,434 人(消防庁 2006)であったのに対して,2013年5月10日時点で18,559人(警察庁 2013)と 見込まれている.
その一方で,被災者支援の最前線に立つべき市町村は,阪神・淡路大震災時の被災市町と 比べて多くが小規模であり,また,行政機能そのものが壊滅的な打撃を受けたものがあった.
消防庁国民保護・防災部防災課の報告書によれば,主な被災3県の沿岸市町村のうち,22市 町村において災害対策本部を設置する市町村庁舎が被災し,そのうち15市町村で本庁舎や支 所の移転を余儀なくされた(消防庁 2012).また,14市町村で職員が死亡又は行方不明とな り,その中で常勤職員の約2割が死亡又は行方不明となった団体もある(長田崇志 2012).
岩手県大槌町では町長も死亡した.その結果,東日本大震災において被災自治体の災害対応 能力が,著しく損なわれる事態が幾多見られた.
被災市町村の職員は,自らも被災者であるが,被災当初は交代要員もないままに不慣れな 災害対応業務にまさに不眠不休で従事した(黒澤直美 2012).しかし,甚大な被害に伴い 災害対応業務が膨れ上がったのにもかかわらず災害対応能力が大きく低下したために,圧倒 的な人手不足となり,外部からの応援が,阪神・淡路大震災の時以上に必要となった.
それに応えて,被災地外から,阪神・淡路大震災を上回る重層的な人的支援が行われた(佐 藤翔輔他 2013).国・非被災自治体等の行政組織やボランタリー組織の一形態である
NPO/NGOが災害支援に大きな役割を果たしたと評価されている.佐藤翔輔他(2013)によ
れば,2011年3月以降から2012年3月までの期間において,3県合計で,総務省スキームによ る自治体職員の派遣人数は1,246人,社会福祉協議会を介したボランティア活動者数は 957,270人と見積もられている.まず,国や非被災自治体等の行政組織による人的支援を概観する.被災直後,自衛隊・警 察広域緊急援助隊・緊急消防援助隊,災害派遣医療チーム(以下,
DMAT
)など緊急対応組 織が被災地に赴き救助や救急活動等に有益な働きをした(京大他 2012).それに加えて,初動期から,被災市町村と非被災市区町村との間で,多様な職員派遣スキームによる人的支 援活動が展開されてきた.その形態は,第1に,阪神・淡路大震災を契機に全国的に浸透し
4
た災害時相互応援協定に基づくものである.これには,東京都を含む政令指定都市間の「20 大都市災害時相互応援に関する協定」(神戸市 2012b)や,東京都杉並区が,災害時相互援 助協定を結んでいた群馬県東吾妻町,新潟県小千谷市,北海道名寄市に協力を要請して,福 島県相馬市を支援した「自治体スクラム支援」(井口順司 2012; 田中良 2012)などがある.
第2に,被災自治体から,あるいは省庁などからの要請によるものである.これには,総務 省が2011年3月末に構築した,全国市長会・全国町村会を経由した市町村職員の派遣要請の 仕組み(長田 2012)が含まれる.第3に,応援側の独自判断によるものである.その中で注 目された支援の方式として,関西広域連合による被災3県への「対口支援(カウンターパー ト支援)」(杉本明文 2012; 飯塚智規 2013; ひょうご震災記念21世紀研究機構研究調査本 部 2014)が挙げられる.これは,2008年に中国で発生した四川大地震時に,中国政府がト ップダウンで19の省・直轄市と被災地域の県や市とを1対1のペアで組ませて支援をさせた仕 組みを参考にして,自治体間の連携で1対1の支援を行うものである.また,職員の約4分の1 が死亡・行方不明となった陸前高田市に対する名古屋市の「包括的支援(まるごと支援)」
(須田直人 2012)も注目された.これは,事務・土木・建築・上下水道・保健衛生等,行 政機能全般をバックアップするものである.
その経験を基に,大規模災害発生時における自治体の人的支援の重要性が改めて認識され た.その一方で,阪神・淡路大震災以降意識されてきた,①迅速な派遣の仕組み,②派遣職 員の専門性,③被災自治体の負担軽減など,支援を行う側の応援する能力「支援力」を高め ることが改めて問われることになった.それに加えて,東日本大震災の発生までは限定的に しか意識されていなかった,支援を受ける側の応援を生かしきる能力「受援力」が不可欠で あるという認識が広まった.この被災自治体における受援力不足の実態について,つぎのよ うな事例が指摘されている(神谷秀之・桜井誠一 2013).被災自治体は,多種多様な災害 対応業務に対応できなくなったにもかかわらず,「目の前のことで手一杯」であったことや
「自分が何をしたらいいかさえ分からない」という状態に陥ったことから,どの分野にどの 程度の応援職員が必要かさえ分からなかった.さらには,忙しくて対応できないために,応 援職員派遣の申し出を断らざるを得なかった被災自治体もあった.また,応援職員に指示で きない被災自治体もあった,このように,全国からの支援を被災自治体が生かし切れない実 態が浮き彫りになった.
つぎに,ボランタリー組織の一形態であるNPO/NGOによる人的支援について概観する.
NPO/NGOによる災害支援が大きな役割を果たしたと評価されて,2011年は「NPO/NGO元年」
5
とも呼ばれた(阪本真由美 2011).その一方で,被災自治体に対して,
NPO/NGOによる支
援を上手に生かす力「受援力」の欠如・不足が指摘されている(神谷・桜井 2013).NPO/NGO
等のボランタリー組織による災害支援から得られた教訓を今後にいかし災害対策の強化を 図るために,2013年6月に成立した災害対策基本法の改正では,行政とNPO/NGOとの連携が うたわれた(災害対策法制研究会 2014).また,東日本大震災において,
NPO
/NGO
が被災者支援を行うにあたっては,ばらばらに 支援を行うのではなく,状況やそれぞれの活動の情報を共有して支援を行った方が被災者へ の支援の漏れや重複を防ぐことができると認識された.それを受けて,組織間の連携への関 心が高まり,地域レベルにおいてNPO/NGOと行政からなるネットワーク組織が新たに形成 された(桜井政成 2013).この背景には,阪神・淡路大震災以降,大規模災害への経験を 積み重ねていくにつれて,災害対応において組織間の連携協働が必要であるという考え方が,理念的にも実践的にも浸透してきたことがあると指摘されている(桜井 2013).新たに形 成された地域別ネットワーク組織について,対象地域の広がりごとにみると,県レベルでは,
宮城県庁に政府現地対策本部・宮城県・自衛隊・
NPO/NGO
から構成される「被災者支援4 者連絡会議」などが設置された(広域災害に備えた官民連携を考える研究会米国視察チーム 2014).また,市町村レベルでは,石巻市での行政・自衛隊・NPO/NGOから構成される「3 者調整会議」を始めとして「協議会,連絡会」などが設立された.地域レベルで,新たに形成されたネットワーク組織に対する評価を見てみると,「広域災 害に備えた官民連携を考える研究会」(2014)は,震災後,被災地において多くのネットワ ーク組織が生まれたことを評価している.その一方で,ネットワーク組織の運営体制は弱く,
また,現地から求められるようなサポートに対応しきれていないなどの課題があったとも指 摘している(広域災害に備えた官民連携を考える研究会 2014).
東日本大震災での自治体間協力やNPO/NGOによる人的支援の経験を通じて,支援力とと もに受援力を高めることが重要であるという認識が広まる中で,受援力強化の一環として,
受け入れ態勢の事前整備のために,「受援計画」を事前に策定しておくことの必要性が説か れている.これまでも,阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて,消防行政分野や水道行政分野 で,受援計画を定めることになっていた.しかし,広く災害対応業務全般にわたる受援計画 については,東日本大震災発生の前は,「静岡県広域受援計画」(静岡県 2005)や「四国4 県広域応援協定に基づく愛媛広域受援計画」(愛媛県 2007)などの先駆的な取り組みを除 いて,策定されていなかった.東日本大震災において,限定的な行政分野での受援計画だけ
6
では,大災害には対応できないことが指摘された(神谷 2012; 神谷・桜井 2013).この東 日本大震災の経験を踏まえて,中央防災会議は2012年9月に,「防災基本計画」を修正し,
地域防災計画等に受援計画を位置づけるよう努めるようにという項目を追加した(内閣府中 央防災会議 2012).自治体レベルでは,全国に先駆けて,神戸市が「神戸市災害受援計画」
(神戸市 2013)を,関西広域連合が「関西広域応援・受援実施要綱」(関西広域連合 2013)
を,それぞれ2013年3月に策定している.しかし,全国的には,受援計画に対する関心が高 いとは言えない.この背景には,受援計画について,全国一律の明確な定義がなく,また,
その内容が定まっていないことなどがあると指摘されている(神谷 2013).
将来,発生が危惧されている南海トラフ大震災では,東日本大震災を大きく上回る被害や,
それに伴う被災地における人的資源の不足が想定されている(内閣府 2013).大規模災害 に備えて,より迅速で効果的な人的支援のしくみを構築するためには,東日本大震災の初動 期から応急対応期の期間における行政組織や
NPO/NGO
による人的支援の実態を把握し,そ こで明らかになった課題について検討することが不可欠であると考える.前述のとおり,東日本大震災では,「災害対策基本法」で第一次災害対応を担うと位置づ けられている市町村の災害対応機能が著しく低下したことを踏まえて,2012年6月に公布・
施行された「改正災害対策基本法」では,大規模広域災害に対する即応力の強化等として,
国ならびに広域自治体の都道府県による調整業務が拡大・新設されている(災害対策法制研 究会 2014).その一方で,現行の法制度において,市町村間の連携が明確に位置づけられ ていないという課題が指摘されている(井口 2012).しかし,国や都道府県が必ずしも現 場の実情や実務に精通しているわけではない.実際にも,東日本大震災で国や都道府県は,
被災市町村の行政を補完できなかったという指摘もされている(神谷・桜井 2013).その ため,大規模広域な災害において,国や都道府県による垂直的な支援だけでは,臨機応変な 対応を行う上で十分とは言えない.必要なのは,国や都道府県の垂直的な支援と市区町村間 という基礎自治体の水平的な支援がかみ合った対応であると考える.このような観点から,
本研究では,基礎自治体間の水平的な支援の仕組みの構築に焦点をあてて検討する必要があ ると考える.
また,前述のとおり,被災自治体への
NPO/NGO
による人的支援が,必ずしも効果的に活 かされていなかったという課題を踏まえて,東日本大震災におけるNPO/NGOによる支援の 被災自治体における受け入れの実態を検討する必要があると考える.また,地域レベルで行 政とNPO/NGOから構成されるネットワーク組織が新たに形成されたが,その支援活動は総7
じて効果的でなかったという課題を踏まえて,東日本大震災におけるネットワーク組織の形 成過程を検討する必要があると考える.
2 リサーチ・クエスチョンの設定
前述の問題意識のもとに,本研究では,効果的な人的支援の担い手として,応援行政組 織や単体としての
NPO/NGO
,行政とNPO/NGO
から構成されるネットワーク組織の3
つの組 織形態を取り上げる.それぞれの組織形態による人的支援をどのように効果的なものにす るのか,特に人的支援に対する被災自治体の受援力をどのように強化するのかについて検 討するため,つぎのような5つのリサーチ・クエスチョンを設定する.1つは,前述のとおり,市町村レベルにおいて,自治体間協力による人的支援の評価は,
阪神・淡路大震災後に意識された「支援力」と東日本大震災で浮き彫りになった「受援力」
の双方によって規定されるという考え方について,その普遍性・法則性を量的分析によっ て検証することである.
2
つは,自治体間協力による人的支援の評価構造が,単一なのか,それとも組織的対応の 内容によって異なるのかを分析することである.3つは,単体としてのNPO/NGOの支援活動を被災自治体が上手く生かすために,東日本大
震災において,被災自治体はその支援をうまく生かす態勢を整えていたのかについて分析 することである.その際,NPO/NGOを,その組織特性に応じて分類して,分析する.4つは,効果的な支援活動を行う,行政とNPO/NGOとから構成されるネットワーク組織を
形成するために,東日本大震災において新たに形成されたネットワーク組織が,どのよう に形成されたのかを分析することである.5つは,受援力を高める受援計画づくりを全国的に普及させるために,被災自治体の受援の
実態を把握し,それを踏まえて,受援計画の意義と内容を分析することである.以上のリサーチ・クエスチョンについて,後述するように,それぞれに関連する先行研 究の考察を踏まえて,調査フレームとして理論仮説を設定する.そして,質問紙による社 会調査,インタビュー調査,ワークショップ,文献調査で得られたデータを用いて理論仮 説の実証分析を行う.
3 論文の全体構成
前述のリサーチ・クエスチョンに答えていくために,論文を下記のとおり構成する.
8
第1章では,日本における大規模災害時における被災自治体への人的支援に関する先行研 究を中心にサーベイし,先行研究の課題を提示することで,本論文の研究的位置づけ及び本 研究の目的と意義を述べる.
第2章では,本研究のベースとする自治体間協力による人的支援の評価構造モデルの構築 に向けて,東日本大震災後の初動期から応急対応期における神戸市から被災地への職員派遣 を取り上げて,事例研究する.同期間における神戸市からの派遣職員を対象として開催され たワークショップで参加者から出された意見データを,グランドKJ法を用いて整理・分析 することによって,自治体間の協力による人的支援を評価し,その課題を再整理する.自治 体間協力による人的支援の課題として,阪神・淡路大震災以降指摘されてきた「支援力」に 係わるものを再確認するとともに,東日本大震災で「受援力」に係わるものが浮かび上がっ てきたことを呈示する.
第 3 章では,前章の神戸市から被災地への派遣職員を対象としたワークショップより得 られた意見をもとに,「支援力」に加えて,「受援力」を自治体の人的支援の全体的評価 感の規定要因とするモデルを構築する.そのモデルを神戸市から被災地への派遣された職 員全員を対象とした実施した質問紙による社会調査のデータを用いて量的に検証する.
第4章では,第3章における神戸市という支援側の立場ではなく,受援にあった市町村の 立場で,効果的な人的支援を規定する要因を分析する.具体的には,前章で述べた,神戸 市からの派遣職員を対象とした質問紙による社会調査のデータを用いて量的に検証された,
支援力や受援力が人的支援の全体的評価感に影響を与えるというモデルの妥当性を,支援 を受けた市町村を対象とした質問紙による社会調査のデータを用いて検証する.
第
5
章では,自治体間協力による人的支援について,支援側と受援側の両方の質問紙に よる社会調査のデータを用いて,効果的な人的支援を規定する要因を分析する.具体的に は,第3
章の分析で使用した神戸市が派遣職員を対象として実施した質問紙による社会調 査と,第4
章の分析で使用した受援自治体を対象に実施した質問紙による社会調査とのそ れぞれのデータを,一元化したものを分析に用いて,支援力や受援力が人的支援の全体的 評価感に影響を与えるというモデルの妥当性を量的に検証する.第
6
章では,第2
章から第5
章まで研究対象とした応援行政組織とともに,東日本大震 災の初動期・応急期における人的支援の担い手として注目されたNPO/NGO
を取り上げて,その受援の実態を把握し,「受援力」における課題を明らかにする.その結果をもとに,「受 援力」の向上のための方策を考察する.
9
第
7
章では,NPO/NGO
と被災自治体との協働の場として,地域レベルにおいて新たに 設置されたネットワーク組織を取り上げて,その形成を規定する要因について組織間関係 論の観点から分析する.まず,岩手県・宮城県・福島県別に,行政とNPO/NGO
とから構 成されるネットワークの全体構造の特徴を把握する.つぎに,インタビュー調査で得られ た意見データを用いて,効果的なネットワーク組織の形成に寄与する要因を明らかにし,その結果をもとに効果的なネットワーク組織を形成する方策について考察する.
第8章では,第2章から第7章までの分析によって,「支援力」とともに効果的な人的支援 を規定する要因であると検証された「受援力」に焦点を絞り,インタビュー調査で得られ た意見データ等を用いて,それを詳細に分析する.まず,東日本大震災における被災市町 村の受援態勢に関する実態を把握する.ついで,明らかになった「受援力」にまつわる課 題を解消する上で受援計画が持つ意義や,また受援計画に含むべき内容を考察する.
終章では,まず,本研究で得られた知見を総括する.ついで,その知見をもとに,「支援 力」,「受援力」の向上のための方策を改めて考察し,提案する.最後に,今後の課題を述 べて,本論文全体をしめくくる.
図1 論文の全体構成
序章
研究の背景・論文の全 体構成
第1章 先行研究の整理
第2章 自治体間協力に よる人的支援の評価構 造モデルの構築
第6章 被災自治体にお けるNPO/NGOによる人 的支援の受援の研究
第3章 自治体間協力に よる人的支援の評価構 造モデルの検証-神戸 市派遣職員データ
第4章 自治体間協力に よる人的支援の評価構 造モデルの検証-受援 自治体データ
第5章 自治体間協力に よる人的支援の評価構 造モデルの検証-神戸 市派遣職員と受援自治 体の一元化データ
第7章 行政と NPO/NGOとから構成さ れるネットワーク組織
(EMONs)の研究
第8章 被災自治体の 受援態勢の実態と受援 計画の研究
終章
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第1章 先行研究の整理
本章では,まず,日本における大規模災害時の被災自治体への人的支援に関する先行研 究として,自治体間協力による人的支援や単体としての
NPO/NGO
による人的支援,行政と
NPO/NGO
とから構成されるネットワーク組織による人的支援,受援計画を取り上げて,それぞれをサーベイし,リサーチ・クエスチョンについて先行研究で分かったことと分か らなかったことを示す.ついで,その分からなかったことを研究するために,本研究で分 析の視角として採用した緊急社会システムという概念や緊急社会システムの重要な構成要 素である組織の対応についての研究を概観する.最後に,先行研究の課題と分析の視角を 踏まえて,本研究の目的と意義を述べる.
1.1 日本における大規模災害時の被災自治体への人的支援に関する先行研究
日本における大規模災害発生時の初動期と応急対応期における被災自治体への人的支援 に関する先行研究を中心にサーベイし,リサーチ・クエスチョンについて何がわかり,何が わからないかを整理する.先行研究としては,自治体間協力や,単体としてのNPO/NGO,
行政とNPO/NGOとから構成されるネットワーク組織という3つの組織形態別の人的支援と,
受援計画を取り上げる.
1.1.1 自治体間協力による人的支援に関する先行研究
阪神・淡路大震災や新潟県中越地震,東日本大震災の自治体協力による人的支援に関する 先行研究について,支援を行う側の態勢と支援を受け入れる側の態勢の観点から振り返る.
1.1.1.1 阪神・淡路大震災と新潟県中越地震に関する先行研究
阪神・淡路大震災や新潟県中越地震における自治体間連携についての先行研究は,主と して支援側の課題を取り上げて,迅速かつ被災者・団体のニーズに即応した支援活動に向 けて「支援力」を高めるための改善策を提案している.
阪神・淡路大震災における行政間の災害応援について支援を行う側の態勢の評価を,高 寄昇三(1997)が行っている.この研究は,中央政府・都道府県など,被災市以外の広域 団体による救援活動が,必ずしも機動性を発揮できなかったこと,また災害応援は,消防・
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警察といった緊急援助活動以外に,災害直後から災害廃棄物処理,り災証明書の発行,被 災家屋調査などの一般的行政事務も,飛躍的に増大すること,さらに事前の協定・調整が 不十分なため,到着してから,予期しない事態に直面することになったことなどを明らか にしている.その教訓を踏まえて,自治体相互間での広域応援協定の締結の推進を提唱して いる.
渡辺千明・岡田成幸(2004)は,阪神・淡路大震災における自治体による人的支援,物的 支援,施設提供,経済支援について,全国レベルで自治体規模・空間距離・開始時間に関し て法則性が見られることを明らかしている.そして,それを前提として,効果的な支援に向 けて,相互扶助体制の下で速やかな対応を行えるように,全国を一単位としたシステムの開 発が必要であることを提案している.
新潟県中越地震における都道府県の人的支援についての支援を行う側の態勢の実態調査 を,舩木・河田・矢守(2006)が行った.この研究は,都道府県間の相互支援協定がどのよ うに機能したのかや支援の調整に係る課題を明らかにしている.支援協定が事前に想定した とおりに機能しなかった要因として,費用負担をめぐる認識の違いを指摘している.また,
調整に係る改善策を提案している.それは,窓口の一本化や,支援の調整・連携を目指す第 一歩として,支援情報だけでも共有できるような体制の早急な構築を提唱するものであった.
費用負担について,さらに舩木・河田・矢守(2007)は検討を加えている.ここで,支援 を行った側,受けた側がそれぞれどのように費用負担を行ったかを明らかにしている.
その一方で,阪神・淡路大震災や新潟県中越地震における自治体間連携についての先行 研究では,東日本大震災において人的支援にかかる課題として浮かび上がってきた支援を 受ける被災自治体側の態勢などの課題については,取り上げていなかった.
阪神・淡路大震災時の自治体間協力における人的支援の受援態勢について,全ての行政 分野を対象として考察した事例調査はないものの,消防行政分野や水道分野など限られた 行政分野を対象として考察したものとしてつぎのようなものがある.伊藤芳弘(1997)は,
消防活動の応援受け入れを取り上げ,全国の消防本部から応援部隊を受け入れる態勢の課 題として,情報提供,応援隊の待機・集結場所,指揮体制,応援隊への支援体制などを指 摘している.また,水道分野について,新元為博(1997)は,初動時における受援にまつ わる混乱を踏まえて,応援隊が十分に力を発揮できるように,教訓をまとめている.
また,野田隆(1997)は,自衛隊の被災地派遣において,被災市町村における自衛隊の 受け入れ態勢の課題を指摘している.その事例として,被災市町村との調整において,派
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遣された自衛隊が,たらい回しにされたことを挙げている.
1.1.1.2 東日本大震災に関する先行研究
東日本大震災における自治体間協力による人的支援の支援実施側の評価については,支 援を行った非被災自治体や支援を受けた被災自治体の一部が,東日本大震災発生直後の初 動期から応急対応期までの期間を対象として人的支援活動の記録やそのあり方を,行政資 料として取りまとめている.支援を行った側である神戸市(
2012b
)や東京都市長会(2012
),静岡県(2011),上原美都男他(2011)などは,総じて,市区町村間の平素からの横のつ ながりによる「水平支援」や関西広域連合による「対口支援」などに対して,迅速で,効 果的であったと高く評価している.その一方で,人的支援がスムーズにいかなかった面な ど,阪神・淡路大震災から意識されてきた支援側の課題を挙げている.
さらには,これまで限定的にしか意識されていなかった受援側の課題があったことを浮 き彫りにしている.「災害対策基本法」では,災害対策や災害時の応急措置を一次的に被 災自治体の業務としており,その中で他の市町村長や,都道府県知事に応援を要請するこ とができることになっている.それは,被災市町村の行政機能が機能していることを前提 としている.しかし,東日本大震災では,前述のとおり,被災自治体の行政機能が大きく 低下した.その結果,被災市町村は,発災直後の段階で迅速・適切な行動がとれなかった.
そのため,支援を受けるための効果的な対応を行うことができなかった.このことは,支 援を行った非被災自治体にとって,支援の大きな支障となった.
また,支援を受けた側においても,宮城県(2012)や仙台市(宮野憲子,2012)などが,受 援の実態と課題を検証している.例えば,宮城県は,「複数の応援県を受入・調整するた めの体制づくりが十分ではなかった」と,支援の受け入れ体制の不備を反省して,「今後,
複数の自治体からの応援を速やかに受入れ,その支援を調整し,被災市町支援に活用する という受援システムの構築が求められる」と指摘している(宮城県 2012: 190).また,仙 台市は,「通常行っている行政サービスのうち災害後も継続しなければならない業務は何 か,災害の規模ごとに,どこにどのくらい人手が必要なのか,その人員はどうやって集め るのか,予め時系列的に想定しておけば,先々を読んで動くことができる」と受援体制整 備の必要性を唱えている(宮野 2012:36-42).
以上のように,支援を受けた自治体と支援を行った自治体の双方でまとめられた人的支 援のあり方に関する実務上の報告書において,いずれも,阪神・淡路大震災以降意識され
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てきた,支援を行う側の応援する能力「支援力」を高めることに加えて,東日本大震災の 発生までは限定的にしか意識されていなかった,支援を受ける側の応援を生かしきる能力
「受援力」を高めることの必要性を説いている.また,「支援力」や「受援力」を高める ための方策の提言を行っている.しかし,支援側や受援側である行政によってこれまで発 表された報告書は,実務上のもので,総じて「記述」にとどまり,課題をもたらした深い
「説明」や「分析」まで踏み込んでいなかったといえる.
東日本大震災を事例とした人的支援の質的分析に関する学術研究では,阪本他(2012)
や河本尋子他(2013),飯塚(2013)などが挙げられる.阪本他(2012)は,被災県自治 体における応援受入調整の経験から,被災市町の応援ニーズ集約や応援職員の一元的把握,
関係者間のコミュニケーション方策,ブロック協定内の調整,技術職・専門職の全国的調 整といった問題を指摘した.そして応援調整の要件として,日本型連携ボトムアップ式対 口支援の構築と応援拠点の設置等を提言し,県自治体の視点に立った応援のあり方に重要 な示唆を与えている.しかし,本研究で対象とする被災市町村における人的支援について は取り上げていなかった.
河本他(2013)は,市町自治体の視点に立ち,職員派遣の応援および受援業務の実態と 課題を明らかにし,災害応援・受援のあり方を検討するために,応援・受援業務に従事し た職員へのインタビュー調査から得られた記録資料を用いて質的な分析・考察を行った.
しかし,インタビュー調査の対象者数が少なく,普遍性という点で課題がある.
飯塚(2013)は,「対口支援」や支援スキームを概観している.また,支援側や受援側 の自治体へのインタビュー調査の結果から,支援体制と受援体制の課題を抽出して,支援・
受援体制の整備の重要性を示唆している.しかし,人的支援における支援と受援の重要性 についての量的検証までは行っていない.
東日本大震災発生後の初動期から応急対応期における人的支援の量的分析に関する学術 研究では,佐藤翔輔他(2013)が,2011年3月以降から2012年3月までに発表されたデータ を基に岩手県・宮城県・福島県における人的支援量を算出している.黒田洋司他(2011)
が,大震災発生から4カ月目の7月11日までを対象期間として,「災害救助法」の適用を受 けていないすべての市町村と東京都を対象団体として質問紙による社会調査を実施し,人 的派遣の概括的な状況や,人的支援で苦慮した点,および実施に当たって感じた点につい て報告している.このような質問紙による社会調査では,支援を行った自治体を調査対象 としたものが多く,支援を受けた市町村を網羅して実施した質問紙による社会調査は見受
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けられない.また,支援の実態を把握することに留まっており,効果的な人的支援を規定 する要因について量的に検証した研究は見当たらない.
1.1.2 単体としてのNPO/NGOによる人的支援に関する先行研究
単体として
NPO/NGO
による人的支援に関する先行研究について,本研究で研究対象としている
NPO/NGO
の支援活動の被災自治体における受け入れ態勢を研究対象としたものを取り上げて,サーベイする.
まず,阪神・淡路大震災の事例調査では,菅(2008)が,震災直後,行政は災害ボラン ティアに対して何の備えも無い状態であったと指摘している.また,室崎益輝(1999)は,
行政とボランティアを含む民との協働がうまく機能しなかったと指摘している.いいかえ れば,ボランティアの支援活動を行政がうまく生かし切れなかったことを示している.そ の要因として,室崎(1999)は,縦割り行政や行政とボランティアを含む市民との連携が
「ぎくしゃく」したものとなったことなどを挙げている.
菅(2011)は,このような阪神・淡路大震災の教訓をもとに,前述のとおり,阪神・淡 路大震災以降,
NPO/NGO
と行政との協働の仕組みが整備されていき,NPO/NGO
と行政と の協働が理念的にも実践的にも浸透していったことを論じている.内閣府(防災担当)(2010)は,東日本大震災前の2010年に,被災地で防災ボランティア の支援を円滑に受け入れることを促進するために,パンフレットを発行した.その中で,「ボ ランティアを地域で受け入れる環境・知恵など」を「受援力」と名付け,自治体職員や地域 リーダーに対して,ボランティアへの理解を深め,受援力を高めることが地域防災力の向上 につながる,と訴えた.
つぎに,東日本大震災における
NPO/NGO
の人的支援に対する被災自治体の受援態勢に 関する先行研究を見る前に,阪神・淡路大震災で注目された個人ボランティアの支援活動 についての先行研究を見ておく.立木(2012)は,ボランティア活動数を,災害ボランテ ィアセンターでの活動者数を全社協が集計したもので把握して,初動で立ち遅れがあった ことを示唆している.その一方で,発災後の 3 ヵ月間にボランティア活動者が集中した阪 神・淡路大震災と異なり,東日本大震災では,発災から半年まで毎月ほぼ 10 万人規模のボ ランティアが被災地で活動を続けたことを指摘している.この初動での立ち遅れを始めと した「個人ボランティアの低調問題」の原因について,渥美公秀(2013)は,被災自治体の 受援態勢の課題を指摘している.すなわち,被災地の中に災害ボランティアセンターを立15
ち上げて,ボランティアを受け入れるシステムをつくるという災害ボランティアの〝標準 形“にとらわれたことをボランティアの初動の遅れの原因として挙げている.また,菅 (2012)も,発災直後に,「ボランティアは被災地に行くべきではない」というメッセージ が繰り返し流されたことが,ボランティアの初動を遅らせ,その後の活動にも影響を与え たとして,被災自治体のボランティアに対する受援力不足を指摘している.このような被 災自治体の受け入れ態勢を原因とする仮説に,仁平典宏(2012)は,被災地の「遠さ」を含 めた交通アクセスの困難さなどの地理的要因や,多くの
NPO
の経済的自立ができていない ことを原因とする仮説を加えて,それぞれの妥当性について検討を加えている.個人ボランティアに比して,本研究の対象である
NPO/NGO
の活躍は大きかったと指摘 されている(仁平 2012).なお,林春男(2001)は,NPO/NGO を組織型ボランティアと 位置付けて,組織型ボランティアは,専門性や組織力を持っているため,災害対応におい て,戦力として考えたときにはとても頼りになると指摘していた.また,仁平(2012)は,海外での活動を主とする
NPO/NGO
(以下,国際協力NGO
)と 多くの国内活動を主とするNPO
(以下国内NPO
)とでは,支援活動の規模や内容に違い見 られると指摘している.その理由について,仁平(2012)は,国際協力NGO
は,資金力・資源力と組織力を有していることから一定の規模をもった支援活動を行うことができたと 述べている.その一方で,国内
NPO
は,限られた資金スキームの中で,限定された点の支 援にとどまらざるを得なかったと指摘している(仁平 2012).ここで,国際協力
NGO
と国内NPO
について,つぎのような活動原理の特徴に着目して,概念的定義をしておく.日本を拠点とした国際協力
NGO
は,発展途上国での大規模災害 時に,現地政府が資源の動員力に欠けるために,国連システムの部局や機関と連携しなが ら,緊急救援活動の役割を果たしてきた.言い換えれば,国際協力NGO
は,国連機関等 の調整のもとに,いわゆる「ボランティア」ではなく,高度な専門知識を持った民間の立 場から支援活動を行ってきた.このことから,国際協力NGO
の活動原理は,湯木洋一(1997)が教育の分野で指摘しているボランタリズム(voluntarism)の原則であると考えられる.
それに対して,国内
NPO
の活動原理は,利益を目的とせずに,自由意思に基づく自発性,社会性と連帯性,そして無償性を特徴とするボランティアリズム(
volunteerism
)の原則で あると考えられる.以上のことを踏まえて,国際協力NGO
はボランタリズムの原則のも とで,また,国内NPO
はボランティアリズムの原則のもとで,それぞれ災害支援活動を行 うフォーマルな組織であると定義する.16
上述のように,仁平(2012)は,
NGO/NPO
の活躍を指摘するとともに,その支援規模 や支援内容に着目して,NGO/NPOを国際協力NGO
と国内NPO
に分類できると述べてい る.しかし,仁平(2012)は,NGO/NPO の支援活動に対する被災自治体の受援態勢につ いてまでは取り上げていなかった.東日本大震災における
NPO/NGO
の人的支援に対する被災自治体の受援態勢に関する先 行研究は多くない.一つは,各NPO/NGO
による支援活動に関する報告書である.国際協 力NGO
である「アドラ・ジャパン」の渡辺日出夫(2012
)は,活動報告の中で,宮城県 山元町で支援を受け入れてもらう際,町役場職員に「アドラ・ジャパン」という名前を聞 いた者がおらず,国の紹介が必要であったことを記述している.しかし,各報告書から,個別団体の支援活動状況を通じて得られた意見・提案については把握できるが,
NPO/NGO
の人的支援に対する被災自治体の受援態勢の全体像については直接,把握することができ ない.二つは,国際協力
NGO
センター(2012
)による,国際協力NGO
の正会員団体及び協力 会員団体合わせて157
団体を対象として実施した質問紙による社会調査である.その結果 から,国際協力NGO
センター(2012
)は,支援活動における課題として挙げられた意見 の数を見ると,現地の関係機関との関係づくりが,派遣する職員の確保に次いで多かった ことを明らかにしている.国際協力NGO
が現地で認められ,支援を受け入れられるのに,行政組織と
1
ボランティアとして個人からの信頼を築いていかなければならず,時間がか かったことを指摘している.しかし,この調査対象には,国際協力NGO
センターの正会 員でなく,また協力会員でもない国際協力NGO
及び国内NPO
は含まれていない.1.1.3 行政とNPO/NGOとから構成されるネットワーク組織による人的支援に関する 先行研究
Drabek他(1981)は,ネットワーク組織の特徴を, Emergent Multiorganizational Networks
(以 下,EMONs)という概念でとらえている.EMONsは,危機事象に対して集合的・創発的な 災害対応を行うために形成される多組織ネットワークであると定義される(Drabek
他1981
).Drabek
他(1981
)は,米国での災害緊急時における7
つのネットワーク組織をケーススタデ ィとして取り上げた実証研究をもとに,EMONsの組織特性として,つぎの4項目を抽出した.
それは,①多元的な組織形態(multiorganizational),②多様性(diversity),③即興性
(improvisation),④疎結合(loose coupling)である.
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①multiorganizationalは,組織単独では存在できず,その存在に必要な資源を保有する外 部の他組織に依存していることからEMONsが形成されるというものである.②diversityは,
EMONsが規模,所在地,公式化などの異なる組織から構成されるというものである.③ improvisationは,状況に応じて一時的な規範を生成・更新するというものである.④ loose couplingは, EMONsを構成する組織は自らの自律性を高め,他組織からの依存を回避しょう
として,組織間の結びつきが比較的緩やかで,独立性が強い状態であるというものである.このような
EMONs
という概念でとらえられるネットワーク組織の先行研究について,桜 井(2013)が「世界的に,災害支援のような,非常時におけるネットワーク組織について の研究はわずかであり,さらにはその形成過程について明らかにしたものは寡黙して知ら ない」と指摘している.その中で,金井信子(1996)が,阪神・淡路大震災の事例調査で,ネットワーク組織と して形成された「阪神大震災地元
NGO
救援連絡会議」について記述している.金井(1996
) は,その形成の経緯を明らかにして,市民団体が非常時に手さぐりで組織間の連携を模索 して,ネットワーク組織を立ち上げたことを評価している.その一方で,その組織の特性 が,効率的な連携体制でなかったことを指摘している.しかし,桜井(2013)は,金井(1996)がNPO同士の有機的な組織間連携の要件や過程を明らかにしていないという課題を指摘し ている.また,金井(1996)の取り上げているネットワーク組織は,NPO同士のものであ って,本研究で取り上げる行政とNPO/NGOとから構成されているものではなかった.
アメリカでの先行研究では,
Guoと Acar(2005)が,アメリカの都市部の95のチャリティ組
織のデータを用いた量的な分析によって,ネットワーク組織がなぜ形成されるのかについ て説明を試みている.その結果では,ネットワーク組織の形成理由として,組織間関係論 の学説である資源依存論,取引コスト論,ネッワーク分析論が有意であったとしている.資源依存理論は,組織は自己充足的な存在ではなく,諸資源を所有しコントロールしてい る他組織に依存しているということに着目して,なぜ組織間関係が形成・維持されるのか を説明している学説である.一般的に,組織は自らの自律性を保持し,他組織への依存を 回避しようとする行動原理を持つとしている.取引コスト論も,なぜ組織間関係が形成さ れるのかを説明している学説である.環境における複雑性の程度が大きく,主体が限られ た合理性しか持たないときには,組織と組織との取引コストの最少化という「効率」の観 点から,協働関係が組織間に築かれるとしている.ネットワーク分析論は,ネットワーク 組織の構造特性を記述・分析する学説である.
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しかし,Guoと Acar(2005)は,本研究のリサーチ・クエスチョンの一つである組織間関係 の形成・維持過程に係わる規定要因については分析していない.また,金井(1996)と同 様に,取り上げているネットワーク組織は,NPO同士のものであって,本研究で取り上げ る行政とNPO/NGOとから構成されるものではなかった.
東日本大震災の事例調査で,小田切康彦(2013)は,NPOと行政とから構成される2つの ネットワーク組織を取り上げて,両組織がなぜ形成されたのかについて考察している.そ の結果,「市場の失敗」,「契約の失敗」,「政府の失敗」,「ボランタリーの失敗」か らのアプローチや資源依存論・取引コスト理論からのアプローチなどによって2つの組織が 形成されたと考えられるとしている.しかし,小田切(2013)は,組織間関係の形成・維 持過程に係わる規定要因については分析していない.また,事例が2件と少なく,また,そ の事例は被災地外のネットワーク組織で,被災地内のネットワーク組織ではない.
また,阪本(2013)は,前述の,震災直後に,宮城県庁に設置された政府現地対策本部・
宮城県・自衛隊・
NPO/NGO
から構成される「被災者支援4者連絡会議」を中心に,行政とNPO/NGO
との連携による被災者支援の取り組みを整理し,また,その有効性と課題を検討している.しかし,阪本(2013)も,組織間関係の形成・維持過程に係わる規定要因につ いては分析していなかった.
社会ネットワーク分析によってネットワーク全体の構造特性を記述・分析した先行研究 では,アメリカでの2011年の同時多発テロと2005年のハリケーン・カトリーナの2つの災害 を取り上げて,緊急対応のネットワークにおけるNPO間の関係を分析したKaputa他(2011)
による研究がある.しかし,東日本大震災での応急対応期におけるネットワーク全体の構 造特性を把握するために,岩手県・宮城県・福島県の各県単位で分析した研究は見当たら ない.
1.1.4 受援計画に関する先行研究
受援力強化の一環として,受け入れ態勢の整備のために事前に策定しておく「受援計画」
の先行研究についてサーベイし,その課題について述べる.「受援計画」に関する行政に よる実務上の文書として,消防庁(2008)や日本水道協会(2013)がある.消防庁(2008)
は,緊急消防援助隊の応援を受けることになった場合に緊急消防援助隊がスムーズに活動 できる体制を整備しておくために,都道府県が,「緊急消防援助隊受援計画」を策定する ことになっていることを記載している.その受援計画では,応援要請の手順や指揮体制,
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活動にあたっての必要事項などが定められていることを示す.また,日本水道協会(2013)
が,1996年に「地震等緊急時対応に関する報告書」を発行し,全国の水道事業者による応 援または受援に係る活動ルールを策定していたことを記載している.
「受援計画」の策定・検討状況についての調査には,一般社団法人地方行財政調査会が 実施したものがある(神谷 2013).地方行財政調査会は,全国の市と特別区の計810市区 を対象に,2012年9月1日時点における「受援計画」の策定・検討状況を探る調査を行った.
その結果によれば,有効回答691市区のうち,「受援計画」の策定済みあるいは策定に乗り 出した市区は1割に満たず,6割に近い市区は策定する予定がないと答えている.また,策 定済みあるいは策定作業中の市区でも,神戸市のような,詳細で具体的な受援計画(神戸 市 2013)はほとんどなく,応援要請先や受入担当部署などを地域防災計画へ記載にするこ とにとどまっているということであった.
このように,「受援計画」の実務上の文書や受援計画の策定状況についての調査はある ものの,「受援計画」の策定を研究テーマとして取り上げて,「受援計画」が持つ意義や「受 援計画」が含むべき内容について考察した学術研究はほとんど見当たらない.
1.1.5 先行研究のまとめ
以上の先行研究のサーベイ結果から,受援態勢の観点を中心に,先行研究の課題をまと めておく.まず,自治体間協力による人的支援の先行研究については,阪神・淡路大震災,
新潟県中越地震を対象とした事例調査では,行政全般を対象とした「受援」を取り上げて 調査したものは少なかった.
一方,東日本大震災における人的支援に関する先行研究では,支援側や受援側である行 政によってこれまで発表された報告書は,「支援」とともに「受援」に係る課題を取り上 げて,その解決に向けた提言を行っているが,実務上の報告書ということで記述にどどま っていたといえる.
東日本大震災における人的支援の学術研究は,インタビュー調査で得られた意見データ の質的な分析にとどまっているものが多い.また,インタビュー調査で得られた意見デー タを用いた質的分析に関する学術研究では,県レベルのみを対象としていたり,インタビ ュー調査での対象者数が少なかったりした.さらに,質問紙調査による社会調査で得られ たデータを用いた量的分析に関する先行研究では,支援を受けた市町村を網羅して実施さ れた質問紙による社会調査は見受けられないし.また,効果的な人的支援を規定する要因
20
を量的に検証した研究もほとんど見受けられなかった.
単体としての
NPO/NGO
による人的支援の先行研究では,仁平(2012)が,東日本大震 災におけるNPO/NGO
の支援において,国際協力NGO
と国内NPO
とでは,支援内容や支 援規模に違いがあることを指摘し,その理由について説明を行っている.しかし,NGO/NPO
の支援に対する被災自治体の受援態勢についてまでは取り上げていなかった.また,東日本大震災における
NPO/NGO
の人的支援に対する被災自治体の受援態勢の全 体像を取り上げた先行研究は少ない.行政とNPO/NGOとから構成されるネットワーク組織についての先行研究のサーベイでは,
ネットワーク組織の特性をEMONsという概念でとらえられることが分かった.その一方で,
非常時におけるネットワーク組織についての研究は世界的にわずかであるし,その形成過 程について分析したものは見当たらなかった.また,東日本大震災の応急対応期における 岩手県・宮城県・福島県別にネットワーク全体の構造特性を社会ネットワーク分析で記述 したものもほとんど見当たらなかった.
「受援計画」についての先行研究のサーベイでは,その実務上の文書や受援計画の策定状 況についての調査報告はあるものの,「受援計画」の策定を研究テーマとして取り上げて,
「受援計画」が持つ意義や「受援計画」が含むべき内容について考察した学術研究はほとん ど見当たらなかった.
1.2 本研究の分析の視角
前述したリサーチ・クエスチョンについて,先行研究で分からなかった点を研究するに あたって,分析の視角として,緊急社会システムという概念や緊急社会システムを構成す る組織の対応を採用する.本節では,分析の視角として採用した緊急社会システム,組織 的対応の
DRC
類型,DTRA 分類法,成員の役割遂行モデル,組織間関係論について,そ れぞれを概観しながら,採用理由を述べる.1.2.1 緊急社会システム
災害に対する社会学的関心は,コミュニティレベルや個人レベル,組織レベルの 3 つの レベルに分けられる(野田 1997).本研究では,この中で組織レベルに関心をもつ.前述 のとおり,災害後の初動・応急期における効果的な人的支援活動に向けて,どのような組 織や組織間関係を設計すべきかといった実用的見地に研究の焦点をあてる.