第 4 章 自治体間協力による人的支援の評価構造モデルの検証-受援自治体データ
4.2 研究の結果
4.2.1 人的支援に関する全体的評価感尺度
人的支援の全体的評価感を測る 6 項目について,それらの総合的指標を設定するために,
主成分分析を行った.その結果は,6 項目は 1 つの成分に集約されることがわかった.表 18 で示されるとおり,固有値が大きく,また,寄与率が 5 割を超えており,さらに,第 1 主成分の 6 項目はいずれも正の重みを示していることから,第 1 主成分は総合的な「全体 的評価感」と解釈することができる.この成分を人的支援の全体的評価感を測る潜在的変 数として,その主成分得点をもって人的支援の全体的評価感尺度とした.
4.2.2 支援力を測定する要因の尺度化
支援力を測定する要因の尺度をつぎのように求めた.まず,回答総数が少ないために,
前述の支援力を測定する 8 つの要因ごとに,それぞれの要因に対応する指標の平均値を求 めた.ついで,8 つの要因の総合的指標を設定するために,主成分分析を行った.その結果 は, 8 項目は 1 つの成分に集約されることがわかった.表 19 で示されるとおり,固有値が 大きく,また,寄与率が 6 割弱で,さらに,第 1 主成分の 8 項目はいずれも正の重みを示 していることから,第 1 主成分は総合的な「支援力」と解釈することができる.この成分 を支援力を測る潜在的変数として,その主成分得点をもって支援力の要因尺度とした.
4.2.3 受援力を測定する要因の尺度化
受援力を測る 13 項目について,それらの総合的指標を設定するために,主成分分析を行 った.その結果は,13 項目は 1 つの成分に集約されることがわかった.表 20 で示される とおり,固有値が大きく,また,寄与率が 6 割を超えており,さらに,第 1 主成分の 13 項目はいずれも正の重みを示していることから,第 1 主成分は総合的な「受援力」と解釈 することができる.この成分を受援力を測る潜在的変数として,その主成分得点をもって 受援力の要因尺度とした.
4.2.4 人的支援の全体的評価感を規定していた要因
70
支援力と受援力,および被災市町村とその行政機能の各被害が人的支援の全体的評価感 に対してどれほどの説明力があるのかを知るために,多変量解析の一手法である重回帰分 析を行った.
その重回帰分析の結果は,表 21 のとおりである.自由度調整済み決定係数(R2)は 0.753,
0.1%水準で有意である.標準偏回帰係数を見ると,支援力と総職員数に占める死亡・行方 不明職員数の比率は,1%水準で有意な値となっている.しかし,総人口数に占める死者・
行方不明者数の比率は,有意な値ではない.これは,許容度を見ると,総職員数に占める 死亡・行方不明職員数の比率と総人口数に占める死者・行方不明者数の比率それぞれの値 が 0.207,0.180 と低いことから,両者の間に多重共線性が発生しているためであると考え る.両者間の
Pearson
の積率相関係数を求めると,0.886 で非常に高い相関を示している.表 21 全体的評価感の重回帰分析の結果
そこで,多重共線性に対処するために,独立変数から総職員数に占める死亡・行方不明 職員数の比率か総人口数に占める死者・行方不明者数の比率かのいずれか一方を削除して,
重回帰分析を行った.
その結果は,表 22,表 23 のとおりである.まず,表 22 を見ると,自由度調整済み
R
2は 0.604,0.1%水準で有意である.標準偏回帰係数を見ると,支援力が有意な値(β=0.693,p<0.01),受援力が有意な値(β=0.338,p<0.1),総人口数に占める死者・行方不明者数 の比率が有意な値(β=0.399,p<0.05)となっている.また,表 23 を見ると,調整済み
R
2 は 0.741,0.1%水準で有意である.標準偏回帰係数を見ると,支援力が有意な値(β=0.674,p<0.001),受援力が有意な値(β=0.342,p<0.05),総職員数に占める死亡・行方不明職 員数の比率が有意な値(β=0.519,p<0.01)となっている.
標準化係 数
B 標準誤差 ベータ 許容度 VIF (定数) -.053 .191 - -
支援力 .637 .144 .637 4.435 .001 .665 1.504
受援力 .296 .149 .296 1.987 .067 .619 1.616
総職員数に 占める死 亡・行方不 明職員数の 比率
.109 .034 .816 3.167 .007 .207 4.833
総人口数に 占める死 者・行方不 明者数の比 率
-.153 .116 -.365 -1.320 .208 .180 5.557 調整済みR2=0.753
共線性の統計量 標準化されていない
係数
t 値 有意確率
71
表 22 全体的評価感の重回帰分析の結果
(表 21 から総職員数に占める死亡・行方不明職員数の比率を削除)
表 23 全体的評価感の重回帰分析の結果
(表 21 から総人口数に占める死者・行方不明数の比率を削除)
表 22 と表 23 それぞれの結果を比較すると,表 21 で示す 4 つの独立変数から総人口数に 占める死者・行方不明者数の比率の項目を削除した表 23 で示す重回帰式が,総職員数に占 める死亡・行方不明職員数の項目の比率を削除した表 22 で示す重回帰式よりも,調整済み
R
2は大きな値となっており,また,各独立変数はより有意となっている.このことは,被 災自治体の被害よりも,被災自治体の行政機能の被害の方が全体的評価感への説明力が大 きいことを示している,そこで,最終的には,支援力と受援力,および総職員数に占める 死亡・行方不明職員数の比率を独立変数とする表 23 で示す重回帰式を採択した.なお,許 容度とVIF
の値から多重共線性つまり独立変数間に強い相関関係が存在しないと考える.この重回帰式において,支援力の項は,回帰係数が正である.支援力が大きいほど,全 体的評価感が高くなることを表している.その有意水準は 0.1%であった.
受援力の項は,回帰係数が正である.受援力が大きいほど,全体的評価感が高くなるこ とを表している.その有意水準は 5%であった.
標準化係数
B 標準誤差 ベータ 許容度 VIF
(定数)
-.355 .209 - -
支援力
.693 .180 .693 3.841 .002 .675 1.481
受援力
.338 .188 .338 1.800 .092 .624 1.603
総人口数に 占める死 者・行方不 明者数の比 率
.167 .071 .399 2.343 .033 .757 1.320 調整済みR
2=0.604
標準化されていない係数
t 値 有意確率
共線性の統計量
標準化係数
B 標準誤差 ベータ 許容度 VIF (定数) -.240 .131 -
-支援力 .674 .144 .674 4.671 .000 .691 1.446
受援力 .342 .148 .342 2.310 .036 .655 1.526
総職員数に 占める死 亡・行方不 明職員数の 比率
.069 .017 .519 4.034 .001 .871 1.148
調整済みR2=0.741
標準化されていない係数
t 値 有意確率
共線性の統計量
72
総職員数に占める死亡・行方不明職員数の比率の項は,回帰係数が正である.行政機能 の被害が大きい自治体ほど,全体的評価感が高くなることを示している.その有意水準は 1%であった.陸前高田市や大槌町など行政機能が完全に麻痺した被災自治体は,初動期に,
自衛隊や岩手県などが本来は被災自治体が主体的に行う業務を担ったことに対して,最大 級の謝意を述べている(黒澤 2012).このことを反映して,全体的評価感に対して,被災 自治体の行政機能の被害が有意な正の値になったと考えられる.
各独立変数が全体的評価感にどれだけ強く影響を与えているのかについて,標準偏回帰 係数で見ると,総職員数に占める死亡・行方不明職員数の比率を統制しても,支援力と受 援力は大きな効果を持っていることがわかる.