第 4 章 自治体間協力による人的支援の評価構造モデルの検証-受援自治体データ
4.1 研究の方法
4.1.1 調査フレームの作成
前章で検証されたモデルをもとに,調査フレームを作成した.従属変数としての人的支 援の全体的評価感を測る要因は,①迅速な支援,②自己完結型の支援,③大規模な震災の 経験や教訓を生かした支援,④専門知識や経験を生かした支援,⑤被災地のニーズや被災 状況を踏まえた支援,⑥被災自治体の職員や被災された市民に配慮した支援である.
人的支援の全体的評価感に影響を及ぼす独立変数としての支援力と受援力について,そ れぞれの測定要因はつぎのとおりである.まず,支援力を測定する要因は,①情報処理活 動,②資源管理,③業務マニュアル整備や研修・訓練,④他の支援団体との連携,⑤派遣 チームの体制整備,⑥後方支援体制の整備,⑦全国レベルの支援の枠組みづくり,⑧被災 地での信頼関係の構築,の 8 つの項目である.また,受援力を測定する要因は,①平常時 からの情報処理活動,②支援受け入れ体制の整備,③支援を受け入れるための環境づくり,
の 3 つの項目である .
以上の支援力や受援力を独立変数とするとともに,被災市町村とその行政機能の各被害 を独立変数として追加して,従属変数としての人的支援の全体的評価感を規定するという 調査フレームを作成した.被災市町村とその行政機能の各被害の代理指標は,総人口数に
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占める死者・行方不明者数の比率と総職員数に占める死亡・行方不明職員数の比率である.
図 12 調査フレーム
4.1.2 調査方法
4.1.2.1 調査の概要
受援のあった被災自治体の立場から見た人的支援の実態を把握するために,人的支援を 受けた市町村を対象として,インタビュー調査とつぎの項で示す質問紙による社会調査を 実施した.インタビュー調査の主な質問項目は以下のとおりである.①支援を受けた活動,
②支援を受ける体制とその対応,③支援活動の成果,④人的支援のあり方を検討する上で 考慮すべき課題,⑤課題解決のための方策である.また,調査日,調査対象先,支援活動 内容に関しては,表 16 に示すとおりである.
表 16 インタビュー調査(2011 年実施)の概要
人的支援の
全体的評価感①迅速な支援
②自己完結型の支援
③大規模な震災の経験や 教訓を生かした支援
④専門知識や経験を生か した支援
⑤被災地のニーズや被災 状況を踏まえた支援
⑥被災自治体の職員や被 災された市民に配慮し た支援
支援力
①情報処理活動
②資源管理
③業務マニュアル整備や 研修・訓練
④他の支援団体との連携
⑤派遣チームの体制整備
⑥後方支援体制の整備
⑦全国レベルの支援の枠 組みづくり
⑧被災地での信頼関係の 構築
受援力
①平常時からの情報処理 活動
②支援受け入れ体制の整 備
③支援を受け入れるため の環境づくり
被災市町村の被害・被災市町村の行政機能の被害
調査日 調査対象先 支援活動内容 12月15日 大槌町水道事業所 水道給水・復旧 12月16日 名取市社会福祉協議会 ボランティアセンター 12月21日 名取市総務部・震災復興部 総合調整
12月21日 仙台市災害対策本部 総合調整 12月21日 仙台市若林区役所 避難所運営 12月21日 仙台市宮城野区役所 り災証明調査 12月22日 陸前高田市民生部健康推進課 保健衛生 12月22日 陸前高田市水道事業所 水道給水・復旧
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4.1.2.2 質問紙による社会調査の概要調査対象地域は,当初,被災が甚大であった岩手県・宮城県・福島県とした.この 3 県 の中で,初動期・応急対応期に職員派遣を受けた市町村を調査対象団体として選定した.
調査対象団体の選定にあたって,前述の様々な職員派遣のスキームすべてを網羅して職員 派遣を受けた市町村を把握したリストがなかった.そこで,全国市長会及び全国町村会と総 務省,被災県との協力による職員派遣のスキームで,2011 年 3 月 30 日・6 月 10 日付要請 に係る職員派遣の決定した被災市町村を調査対象団体として選定することとした.調査対 象の団体数は,47 市町村である(本田敏明 2012).
調査手法は郵送自記入・郵送回収方法であり,調査期間は 2013 年 1 月 21 日に調査票の 発送を開始し,5 月 15 日に回収を締め切った.回収率は,48.9%(23 団体)であった.福 島県の大半の市町村から回収することができなかった.これは,福島県の被災市町村では,
災害対応の進捗状況との関係で,まだ,被災後の人的支援を振り返る余裕がないためであ ると推察した.このことを考慮して,福島県の被災市町村には,回答の督促をせず,今回 の調査対象地域から福島県を外すこととした.そのため,最終的には,調査対象地域は,
岩手県と宮城県の 2 県とした.両県からの回収総数は 19 団体で,回収率は 70.4%となった.
回答のあった被災自治体の基本情報は,表 17 のとおりである.震災直前の人口規模は,
「3万人~10 万人未満」が 47.4%で最も多く,ついで「3 万人未満」36.8%,「10 万人以 上」15.8%の順となっている.また,震災直前の総職員数を見ると,「200 人~600 人未満」
が 52.6%で最も多く,ついで「200 人未満」26.3%,「600 人以上」21.1%となっている.
さらに,被災状況について,死者・行方不明者数を見ると,「1,000 名以上」が 31.6%で 最も多く,ついで「100 名未満」・「500~1,000 名未満」26.3%,「100~500 名未満」15.8%
となっている.また,震災直前の総職員数に占める死亡・行方不明職員数の比率は,「1%
未満」が 68.4%にととどまり,一方「10%以上」が 15.8%にも及んでいる.
図 13 受け入れた支援業務
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表 17 回答のあった被災自治体の基本情報
(出典)人口:総務省統計局「平成 22 年国勢調査」,総職員数:総務省「地方公共団体定数管理調査
(平成 22 年 4 月 1 日)」,死者・行方不明者:岩手県(2013)・宮城県(2013)をもとに作成 受け入れた支援業務は,「り災証明発行」が 78.9%で最も多く,ついで「保健衛生」
73.7%,「避難所運営支援」・「下水道施設復旧」・「給水・水道復旧」63.2%となってい る.この結果は,支援側を調査した黒田洋司他(2011)の結果に概ね対応している(図 13 参照).
前述の人的支援の全体的評価感や,支援力,受援力それぞれの測定要因をもとに,質問紙 による社会調査では,表 18,表 19,表 20 に示すとおり,それぞれの指標として,人的支 援の全体的評価感 6 項目,支援力 32 項目,受援力 13 項目を作成した.各項目の回答は,
「そう思う 5」「ややそう思う 4」「どちらでもない 3」「あまりそう思わない 2」「そう 思わない 1」の 5 段階評価とした.
表 18 全体的評価の項目一覧
震災直前 の総人口数 (人)
震災直前 の総職員数 (人)
死者・
行方 不明者数(人)
総職員数に占 める死亡・行 方不明職員数 の比率(%)
宮古市 59,430 481 514 0.00
大船渡市 40,737 269 420 0.24
久慈市 36,872 271 4 0.00
一関市 42,633 845 0 0.00
陸前高田市 23,300 185 1,773 23.05 釜石市 39,574 298 1,040 0.95 大槌町 15,276 85 1,239 24.26
山田町 18,617 129 753 1.09
岩泉町 10,804 132 7 0.00
田野畑村 3,843 48 29 0.00
仙台市 1,045,986 4,141 684 0.02 石巻市 160,826 1,033 3,715 2.69
名取市 73,134 318 952 0.67
多賀城市 63,060 317 188 0.00
東松島市 42,903 260 1,089 0.00
亘理町 34,845 197 269 0.37
山元町 16,704 118 698 2.34
利府町 33,994 164 3 0.00
南三陸町 17,429 177 819 10.23 岩手県
宮城県
要因 番号 質問内容 第1主成分
①迅速な支援 問53 迅速な支援であった。 0.801
②自己完結型の支援 問54 被災地に負担をかけない(自己完結型の)支援であった。 0.242
③大規模な震災の経験や
教訓を生かした支援 問55 これまでの大規模な震災の経験や教訓を生かした支援であった。 0.781
④専門知識や経験を生かした支援 問56 専門知識や経験を生かした支援であった。 0.803
⑤被災地のニーズや被災状況を
踏まえた支援 問57 被災地のニーズや被災状況を踏まえた支援であった。 0.765
⑥被災自治体の職員や,
被災された市民に配慮した支援 問58 被災自治体の職員や、被災された市民に配慮した支援であった。 0.731
固有値 3.076
寄与率(%) 51.262
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表 19 支援力を測定する各要因の項目一覧
表 20 受援力を測定する各要因の項目一覧
4.1.3 手続き
まず,従属変数である人的支援の全体的評価感や,独立変数である支援力,受援力につ いて,それぞれ尺度づくりを行う.つぎに,従属変数としての全体的評価感と,独立変数 としての支援力・受援力,および被災市町村とその行政機能の各被害との関係を重回帰分 析で検証する.なお,回答総数が少ないため,項目で無回答となっているものについては,
要因 番号 質問内容 第1主成分
①情報処理活動 問27 派遣チームは事前に、活動場所に関する情報を収集していた。 0.832
問28 派遣チームは、活動地において、十分な情報収集ができていた。
問29 派遣チーム内で情報共有が図られていた。
問30 派遣チームは、収集した情報の記録や整理をスムーズに行っていた。
問31 派遣チームは、積極的な情報発信ができていた。
問32 派遣チームは、情報収集・整理・共有・発信に必要な情報機器を備えていた。
問33 派遣チームは、情報収集・整理・共有・発信に必要な情報機器を有効に活用できていた。
問34 派遣チームは、事前のオリエンテーションで、現地の状況や活動内容などの概要について把握できていた。
問35 派遣チーム内で事務引継ぎをスムーズに行っていた。
②資源管理 問23 派遣元自治体は、貴自治体までの交通手段を確保できていた。 0.855
問24 派遣チームは、活動に必要な物資を事前に準備していた。
問25 派遣チームは、必要な物資の現地調達をスムーズに行っていた。
問42 派遣チームは、健康・安全管理面の配慮を行っていた。
問43 派遣チームは、活動に適した場所に、宿泊場所を確保していた。
問26 派遣チームは、派遣元自治体で策定していた災害支援に関する業務マニュアルを活用していた。 0.719 問52 派遣チームは、災害派遣に関する研修・訓練を実施していた。
問44 派遣チームは他自治体からの派遣チームと連携して活動していた。 0.493
問45 派遣チームは自衛隊と連携して活動していた。
問46 派遣チームはNPOと連携して活動していた。
問47 派遣チームは民間機関(NPO以外)と連携して活動していた。
問21 派遣チームの職員の意識やモチベーションは高かった。 0.798
問22 派遣チームの職員の人選・派遣場所・内容・時期は適切だった。
問36 派遣チームの人員構成は適切だった。
問37 派遣チームの指揮命令系統は明確であった。
問41 派遣期間は適切だった。
問38 派遣元自治体は、組織的な後方支援体制を整えていた。 0.828
問39 派遣元自治体の後方支援体制はうまく機能していた。
問40 派遣元自治体では、災害支援活動の内容に関する局内・職員間の情報共有が図られていた。
問49 派遣の根拠が明確だった。 0.793
問50 派遣チームの任務が明確であった。
問51 支援や活動における財政措置について、派遣元自治体はきちんと理解していた。
⑧被災地での信頼
関係の構築 問48 派遣チームは、被災地の方の共感が得られ、信頼関係を築いていた。 0.765
固有値 4.721
寄与率(%) 59.007
⑦全国レベルの支 援の枠組みづくり
③業務マニュアル 整備や研修・訓練
④他の支援団体と の連携
⑤派遣チームの体 制整備
⑥後方支援体制の 整備
要因 番号 質問内容 第1主成分
①平常時からの情報処理活動 問60 支援制度について平常時から情報を収集していた。 0.842
問61 り災証明発行等、災害発生時に必要な業務マニュアルの整備・見直しや、実践研修を実施していた。 0.847
問62 派遣チームのために、資料や地図等平常時から備えていた。 0.767
問63 本庁と出先機関との応援体制を確立していた。 0.710
問64 派遣チームとの情報共有につとめた。 0.846
問65 全般的にうまくいった。 0.796
②支援受け入れ体制の整備 問66 応援受入れ体制を整備した。 0.815
問67 派遣チームに対する指揮命令系統を確立した。 0.837
問68 受援計画を策定していた。 0.742
問69 全般的にうまくいった。 0.845
③支援を受け入れるための環境づくり 問70 派遣チームを受入れる場所(部屋や事務スペース)を確保していた。 0.709
問71 派遣チームと、ペア体制で行動した。 0.740
問72 全般的にうまくいった。 0.869
固有値 8.305
寄与率(%) 63.888