7 組織全体に社会的責任を取り入れるための手引
7.5 社会的責任に関するコミュニケーション
7.5.1 社会的責任におけるコミュニケーションの役割
社会的責任に関する多くの実践的活動には,何らかの形で内部及び外部とのコミュニケーションが必要である。
コミュニケーションは,次のような社会的責任のさまざまな機能に欠かすことができない。
― 説明責任及び透明性を示す機能。
― ステークホルダーとの対話への参加及び対話の場の創出を後押しする機能。
― 社会的責任に関係する情報の開示に関する法的要求事項及びその他の要求事項に対応する機能。
― 組織が社会的責任に対する責務をどのように果たし,ステークホルダーの利害及び社会全体の期待にどのよ うに対応しているかを示す機能。
― 組織内外で,社会的責任に関する組織の戦略及び目的,計画,パフォーマンス並びに問題点についての認識 を深める機能。
― 時間の経過に伴う影響の変化の詳細を含め,組織の活動,製品及びサービスがもたらす影響についての情報 を提供する機能。
― 従業員その他の者を社会的責任に関する組織の活動に参加させ,動機付けを与えられるよう手助けする機能。
― 同業組織との比較を円滑化する機能。それによって,社会的責任に関するパフォーマンスの改善が促される 場合がある。
― 組織に対するステークホルダーの信頼を高めるため,責任ある行動,開放性,誠実さ及び説明責任に関する 組織の評価を高める機能。
7.5.2 社会的責任に関する情報の特性 社会的責任に関係する情報に求められる条件:
― 完全であること 情報は,社会的責任に関係するすべての重要な活動及び影響を網羅すべきである。
― 理解しやすいこと 情報は,コミュニケーションに関与する人々の知識,並びに文化的背景,社会的背景,
教育的背景及び経済的背景を考慮した上で提供されるべきである。使用する言語及び編成の方法を含めた資 料の記述方法は,その情報を受け取るであろうステークホルダーが理解できるものであるべきである。
― 敏感であること 情報はステークホルダーの関心に敏感であるべきである。
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― 正確であること 情報は事実に基づき正確であるべきである。また,その目的に役立ち,目的に適うよう十 分詳細であるべきである。
― バランスが取れていること 情報はバランスが取れ,公正であるべきである。また,組織の活動の影響に関 する否定的な情報を省くべきでない。
― タイムリーであること 古い情報は誤解を招く恐れがある。情報が特定期間の活動に関する内容である場合,
対象期間を明示することにより,ステークホルダーは,組織のパフォーマンスを過去のパフォーマンス及び 他の組織のパフォーマンスと比較することができる。
― 入手可能であること 特定の課題に関する情報を,関係するステークホルダーに開示すべきである。
7.5.3 社会的責任に関するコミュニケーションの種類
社会的責任に関するコミュニケーションには,さまざまな種類がある。例えば,次のような例が挙げられる。
― ステークホルダーとの会合又は対話。
― 社会的責任に関する特定の課題又はプロジェクトについてのステークホルダーとのコミュニケーション。可 能かつ妥当な場合は,ステークホルダーとの対話をコミュニケーションに含めるべきである。
― 社会的責任及び関連活動に関する一般的な意識向上を目的とした組織のマネジメント及び従業員とのコミュ ニケーション。このようなコミュニケーションは,一般に対話を含めた場合が最も有効である。
― 組織全体に社会的責任を取り入れることに重点を置いたチーム活動。
― 活動,製品及びサービスの社会的責任に関わる主張についてのステークホルダーとのコミュニケーション。
こうした主張は,内部のレビュー及び保証によって検証可能である。信頼性を高めるため,これらの主張を 外部の保証によって確認してもよい。コミュニケーションには,ステークホルダーへのフィードバックの機 会を適宜含めるべきである。
― 社会的責任に関係する調達の要求事項に関する供給業者とのコミュニケーション。
― 社会的責任に影響を及ぼす緊急事態に関する市民へのコミュニケーション。緊急事態が起きるまでは,意識 向上及び準備態勢の強化にコミュニケーションの目的を置くべきである。緊急事態発生中は,ステークホル ダーへの連絡を絶やさず,適切な措置に関する情報を提供すべきである。
― 製品表示,製品情報その他の消費者情報など,製品に関連するコミュニケーション。フィードバックの機会 を設けることで,こうした形態のコミュニケーションは改善される可能性がある。
― 同業組織をターゲットとして,雑誌又はニュースレターに掲載する社会的責任の側面に関する記事。
― 社会的側面のある側面を広めることを目的とした広告又はその他の声明。
― 政府機関又は市民からの照会に対する提出物。
― ステークホルダーへのフィードバックの機会を伴う定期的な公開報告(ボックス15参照)。
コミュニケーションに利用可能な方法及び媒体は多数存在する。これらの方法及び媒体には,会合,公開イベン ト,討論会,報告書,ニュースレター,雑誌,ポスター,広告,手紙,ボイスメール,ライブパフォーマンス,
ビデオ,ウェブサイト,ポッドキャスト(インターネットによる音声放送),ブログ(ウェブサイトでの対話),
製品挿入物及びラベルが含まれる。プレスリリース,インタビュー,論説及び記事を使い,メディアを通じてコ ミュニケーションを取ることも可能である。
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75 ボックス15 – 社会的責任に関する報告
組織は,影響を受けるステークホルダーに対し,社会的責任に関する組織のパフォーマンスを,適切な間 隔で報告すべきである。ステークホルダーに対して,社会的責任に関するパフォーマンスを定期的に報告 する組織が増えている。ステークホルダーへの報告は,ステークホルダーとの会合,一定期間にわたる組 織の社会的責任関連活動について述べた手紙,ウェブサイトでの情報提供及び社会的責任についての定期 報告書など,さまざまな方法で行うことができる。
組織は,ステークホルダーへの報告を行うにあたり,社会的責任の中核主題及び関連課題に関する組織の 目的及びパフォーマンスについての情報を含めるべきである。組織は,社会的責任に関する組織の報告に ステークホルダーがいつ,どのように関与してきたかを明示すべきである。
組織は,達成事項及び不足事項,並びに不足事項の解決方法を含め,社会的責任に関するパフォーマンス を公正に,かつ網羅的に示すべきである。
組織は,活動全体を一度に網羅しても,特定の場所又は現場における活動についてそれぞれ別途に報告し てもよい。コミュニティの集団は,組織全体に関する報告より,特定の場所に関する狭い範囲の報告のほ うが有益だと考えることが多い。
社会的責任に関する報告書の発表は,社会的責任に関する組織の活動の重要な側面になりうる。組織が社 会的責任に関する報告書を作成するにあたっては,次の考慮点を念頭に置くべきである。
― 組織の報告書の範囲及び規模は,組織の規模及び性質に合わせるべきである。
― 組織がこのような報告にどの程度の経験を有するかによって,報告書の詳細度は変化する可能性があ る。組織が,いくつかの主要な主題のみを取り扱った限定的な報告書から取組みを開始し,次年度以 降に,経験を得て,より幅広い報告書のよりどころとなる十分なデータを入手した時点で,報告書の 範囲を広げる場合もある。
― 報告書では,取り扱われる課題について組織がどのように決定を下したか,またこれらの課題にどの ように取り組むかを示すべきである。
― 報告書では,より幅広い持続可能性を背景に,組織の業務上のパフォーマンス,製品及びサービスに ついて記述すべきである。
― 報告書は,組織の性質及びステークホルダーのニーズに応じて,さまざまな形で作成することができ る。報告書の形態には,報告書の電子的提供,ウェブベースの対話式バージョン又はハードコピーが 含まれる場合がある。また,独立した文書又は組織の年次報告書の一部とすることもできる。
社会的責任に関する報告についての追加的情報は,附属書Aの報告に関するイニシアチブ及びツール(グ ローバルレベル,各国レベル又は特定部門のレベルで)より入手することができる(7.8項 社会的責任に 関するイニシアチブ評価についての手引 も併せて参照)。
7.5.4 社会的責任に関するコミュニケーションについてのステークホルダーとの対話
組織は,ステークホルダーとの対話を通じて,ステークホルダーの見解について直接的な情報を受け取り,交換 できるという便益を享受することができる。組織は,ステークホルダーとの対話を目指すことにより,
― コミュニケーションの内容,媒体,頻度及び範囲を必要に応じて改善できるよう,その適切性及び有効性を 評価すべきである。