6 社会的責任の中核主題に関する手引
6.6 公正な事業慣行
6.6.1 公正な事業慣行の概要 6.6.1.1 組織と公正な事業慣行
公正な事業慣行は,組織が他の組織及び個人と取引を行う際の倫理的な行動に関係することがらである。このよ うな関係には,組織と組織の関係,組織とそのパートナー,供給業者,請負業者及び競合他社,並びにその組織
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47 がメンバーとして加わっている団体との関係のみならず,組織と政府機関との関係も含まれる。
公正な事業慣行に関する問題は,汚職防止,公的領域への責任ある関与,公正な競争,他の組織との関係におけ る社会的に責任ある行動,及び財産権の尊重の分野で生じる。
6.6.1.2 公正な事業慣行と社会的責任
社会的責任の分野において,公正な事業慣行は,組織が望ましい結果を出すために他の組織との関係をどのよう に利用するかに関係する。望ましい結果は,組織の影響力の及ぶ範囲全体でリーダーシップを発揮することや,
社会的責任をより幅広く受け入れることなどを通じて実現することができる。
6.6.2 原則及び考慮点
組織と組織の間に合法的かつ生産的な関係を構築し,維持するためには,倫理的に正しく行動することが不可欠 である。したがって,倫理的な行動基準の順守,促進及び推奨は,すべての公正な事業慣行の基礎をなす。汚職 防止及び責任ある政治的関与は,法の支配の尊重,倫理的基準の順守,説明責任及び透明性にかかっている。公 正な競争及び財産権の尊重は,組織が互いに誠実に,公平に,また高潔性をもって取引を行わない限り不可能で ある。
6.6.3 公正な事業慣行に関する課題 1:汚職防止 6.6.3.1 課題の説明
汚職とは,私的な利益を得るために与えられた権限を乱用することである。汚職はさまざまな形で行われる。汚 職の例としては,公務員に対する,又は公務員による贈収賄(賄賂の要求,提供又は受領),民間部門における 贈収賄,利益相反,詐欺行為,マネーロンダリング及び不正商取引などが挙げられる。
汚職は,組織の倫理的評価を損なう。また,組織が民事処分及び行政処分を下されたり,刑事訴追されたりする こともありうる。汚職は,人権侵害,政治的プロセスの崩壊及び環境への害を引き起こす恐れがある。また,競 争,富の配分及び経済成長を歪める可能性もある [85] [95]。
6.6.3.2 関連する行動及び期待
汚職及び贈収賄を防止するため,組織は次を実施すべきである。
― 汚職の危険性を認識し,汚職,贈収賄及び強要を防止するための方針及び対策を実施,適用,改善する。
― トップが汚職防止の模範となり,汚職防止に関する方針の実施を表明し,奨励し,監督する。
― 組織の従業員及び代表が,贈収賄及び汚職の根絶に取り組むにあたってこれを後押しし,取組みの進展を促 すための奨励策を提供する。
― 汚職及びその防止策について組織の従業員及び代表を教育し,意識を高める。
― 組織の従業員及び代表の報酬が妥当であり,合法的な業務に対してのみ支払われていることを確認する。
― 汚職防止のための効果的な内部統制システムを確立し,維持する。
― 報復を恐れることなく報告が行えるようなメカニズムを採用することにより,組織の従業員,パートナー,
代表及び供給業者に対して組織の方針に対する違反を報告するよう促す。
― 刑法に抵触する行為については,関係する法執行機関に届け出る。
― 組織が取引関係を持つ相手に感化を与え,同様の汚職防止策を導入させることにより,汚職の防止に努める。
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48 6.6.4 公正な事業慣行に関する課題 2:責任ある政治的関与
6.6.4.1 課題の説明
組織は,公的な政治プロセスを支援し,社会全体の利益になる公共政策の策定を促すことができる。組織は,過 度の影響力を行使することを禁じ,公的な政治プロセスを阻害する恐れのある不正操作,脅迫及び強制などの行 為を避けるべきである。
6.6.4.2 関連する行動及び期待 組織は,次を実施すべきである。
― 責任ある政治的関与及び貢献,並びに利益相反への対処方法について,組織の従業員及び代表を教育し,意 識を高める。
― ロビー活動,政治献金及び政治的関与に関連する方針及び活動に関して透明性を維持する。
― 組織の代表として意見を述べることを職務として雇用される者の活動を管理するための方針及び指針を定め,
実施する。
― 特定の立場に有利になるように政策立案者を誘導することを目的とした政治献金を行わない。
― 誤った情報,不当表示,威嚇又は強制を伴う活動を禁止する。
6.6.5 公正な事業慣行に関する課題 3:公正な競争 6.6.5.1 課題の説明
公正かつ広範な競争は,イノベーションを促進し,効率を高め,製品及びサービスのコストを抑制し,あらゆる 組織に平等な機会を与えるとともに,新しい製品又はプロセス,若しくは改良された製品又はプロセスの開発を 促し,長期的に経済成長を促し,生活水準を高める。反競争的行為は,ステークホルダーが抱く組織への信頼を 傷付ける恐れがある。また,法的な問題を引き起こす可能性もある。
組織が,反競争的行為への関与を拒否すれば,そうした行為が許されないような環境の構築に貢献することがで きる。そして,それはすべての者にとって有益である。
反競争的行為は,さまざまな形で行われる。例えば,関係者が共謀して同じ製品又はサービスを同じ価格で販売 する価格協定,関係者が共謀して競争入札を操作する談合,競争相手を市場から追い出し,競争相手に不当な制 裁を科す目的で,製品又はサービスをきわめて安い価格で販売する略奪的価格形成などが挙げられる。
6.6.5.2 関連する行動及び期待
公正な競争を促すため,組織は次を実施すべきである。
― 競争法規に即したやり方で活動し,関係当局に協力する。
― 反競争的行為への関与又は共謀を防止するための手続き及びその他の防止策を定める。
― 競争法の順守及び公正な競争の重要性について,従業員の意識を高める。
― 反トラスト策及び反ダンピング策,並びに競争を促す公共政策を支援する。
― 組織が操業する社会的背景に配慮し,貧困などの社会的状況を利用して競争上の優位性を不当に享受するこ とを避ける。
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49 6.6.6 公正な事業慣行に関する課題 4:影響力の範囲における社会的責任の推進
6.6.6.1 課題の説明
公的機関を含め,組織は調達及び購入の意思決定を通じて,他の組織に影響を及ぼすことができる。組織は,バ リューチェーンに沿ってリーダーシップ及び指導力を発揮することによって,社会的責任の原則及び慣行の導入 及び支援を促すことができる。
組織は,自らの調達及び購入に関する意思決定が他の組織にもたらす潜在的影響又は意図しない結果を考慮し,
悪影響が及ばないように,又は悪影響を最小限に抑えるようにしかるべく配慮すべきである。同時に,組織は社 会的に責任ある製品及びサービスの需要を喚起することができる。これらの行為は,法規を実施し,執行すると いう当局の役割に取って代わるものと見なされるべきでない。
バリューチェーンに含まれるすべての組織が,法規を順守する責任,並びに自らが社会及び環境に及ぼす影響に 対する責任を負う。
6.6.6.2 関連する行動及び期待
影響力の範囲で社会的責任を推進するため,組織は次を実施すべきである。
― 社会的責任に関する目的との整合性を高めるため,購入,流通及び契約に関する方針及び慣行に,安全衛生 を含めた倫理的基準,社会的基準,環境的基準及び男女の平等に関する基準を取り入れる。
― 他の組織に対し,同様の方針を導入するよう促す。ただし,その過程で反競争的行為を行わない。
― 社会的責任に対する組織の関与の表明が損なわれることを防ぐため,関係を持つ相手の組織について,しか るべき適切な調査及びモニタリングを実施する。
― 社会的に責任ある目的を達成するため,社会的責任及びベストプラクティスの問題について意識向上を図る こと,並びに追加支援(技術支援,能力開発又はその他のリソース)を提供することなどを含め,中小規模 の組織への支援提供を適宜検討する。
― 社会的責任の原則及び課題について,組織が関係する相手組織の意識向上に積極的に参加する。
― 社会的に責任ある目的を達成するため,可能な限り,バリューチェーンにおける組織の能力を高めるなど,
バリューチェーン全体で社会的に責任ある慣行を実施することの費用及び便益が公正にかつ実践的に処理さ れるよう取り計らう。
6.6.7 公正な事業慣行に関する課題 5:財産権の尊重 6.6.7.1 課題の説明
財産権は,物質的財産及び知的財産の両方を網羅し,土地所有権,その他の物的資産の所有権,著作権,特許,
資金,道徳的権利及びその他権利を包含する。同時に,財産権には,先住民族などの特別な集団が持つ伝統的知 識,又は従業員若しくはその他の者の知的財産といったより幅広い財産請求権への配慮が含まれる。
財産権の認識は,創造性を高め,発明を促すばかりでなく,投資,並びに経済的安全及び物理的安全を高める。
6.6.7.2 関連する行動及び期待