6 社会的責任の中核主題に関する手引
6.7 消費者課題
6.7.1 消費者課題の概要 6.7.1.1 組織と消費者課題
製品及びサービスを顧客だけでなく消費者にも提供する組織は,これらの消費者及び顧客に対して責任を負う。
商業的目的で製品及びサービスを購入する顧客に深く関係する課題については6.6項で取り上げている。この項で は,個人的目的で製品及びサービスを購入する者(消費者)に深く関係する課題を取り扱う。ただし,6.6項及び この項の特定の部分は,顧客又は消費者のいずれかに関係している。
組織の責任には,教育及び正確な情報の提供,公正,透明,有用なマーケティング情報及び契約プロセスの使用,
並びに持続可能な消費の促進が含まれる。設計,製造,流通,情報提供,支援サービス及びリコール手続きを通 じ,製品及びサービスの使用による危険性を最小限に抑えることも責任の一つである。多くの組織は,個人情報 の収集又は処理を行っており,かかる情報の安全及び消費者のプライバシーを保護する責任を負っている。
この項の原則は,消費者に奉仕するという役割に関してすべての組織に適用されるが,組織の種類(民間企業,
公益サービス又はその他の種類)並びに状況によって,課題の関連性は全く異なる場合がある。組織は,自らが 提供する製品及びサービス,並びに使用,修理及び廃棄などに関する情報提供を通じて,持続可能な消費及び持 続可能な開発に貢献する重要な機会を与えられている。
6.7.1.2 消費者課題と社会的責任
社会的責任を巡り消費者に関係する課題は,公正なマーケティング慣行,安全衛生の確保,持続可能な消費,争 議解決及び救済,データ及びプライバシーの保護,主要製品及びサービスへのアクセス,並びに教育と関係して いる。国連消費者保護ガイドラインには,消費者課題及び持続可能な消費に関する基本情報が示されている(ボ ックス11参照)。
ボックス11 – 国連消費者保護ガイドライン
国連消費者保護ガイドラインは,消費者保護の領域における最も重要な国際公文書である。国連総会は 1985年に全会一致でこの文書を採択した。1999年にガイドラインは拡充され,持続可能な消費に関する条 項が盛り込まれた。このガイドラインは,国家に対し,安全衛生に対する危険から消費者を保護すること,
消費者の経済的利益を保護し,推進すること,消費者が情報を得た上で選択を行えるようにすること,消 費者教育を提供すること,効果的な消費者救済を提供すること,持続可能な消費パターンを推進すること,
及び消費者団体結成の自由を保証することを求めている。[116]
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51 6.7.2 原則及び考慮点
6.7.2.1 原則
消費者に対する社会的に責任ある慣行の指針となる原則は,次のように多数ある。
― 原則は,国連消費者保護ガイドライン[116]を支える消費者の8つの権利に基づく。これらのガイドラインは,
国家に対する文書だが,消費者保護の基本的重要性に関して手引を提供する内容でもあるので,組織が消費 者課題を分析する際に有用である。これらの原則は次の権利を認めている。
― 生活に必須のものが満たされる権利 基本的で不可欠な製品及びサービス,十分な食糧,衣類,住居,
医療,教育,水及び公衆衛生を入手する権利。
― 安全の権利 健康又は生命の危険を伴う製造工程,製品及びサービスから保護される権利。
― 知らされる権利 情報を得た上で選択を行うために必要な事実を与えられ,不正な又は虚偽的な広告 又は表示から保護される権利。
― 選択する権利 満足のいく品質であることが保証され,競争価格で提供される一連の製品及びサービ スの中から選択できる権利。
― 意見が聞き入れられる権利 政府の政策立案及び実施の過程で,並びに製品及びサービスの開発過程 において,消費者の利益が表明される権利。
― 救済される権利 不当表示,粗悪品,不満足なサービスの損害賠償を含め,正当な要求が公正に解決 される権利。
― 消費者教育を受ける権利 基本的な消費者の権利及び責任,並びにそれに基づく行動のあり方を認識 しつつ,製品及びサービスに関して情報を得たうえで,自信を持って選択を行うために必要な知識及び 技能を習得する権利。
― 健全な生活環境の権利 現世代及び次世代の快適な暮らしが脅かされることのない環境の中で,生活 し,労働する権利。
― 追加原則
― プライバシーの尊重 世界人権宣言第12条に基づく[117]。何人も,自らのプライバシー,家族,家庭,
又は通信に対する恣意的な干渉,又は自らの名誉及び信用に対する攻撃を受けない。また,すべての 人間が,このような干渉又は攻撃に対して法の保護を受ける権利を有する。
― 予防的アプローチ 環境と開発に関するリオ宣言[119] ,並びにその後の宣言及び合意[109][131][94]に基づ く。これらの宣言及び合意は,環境又は人間の健康に対する重大な害又は不可逆的な害が生じる恐れ がある場合,十分な科学的確実性がないことを理由にして環境劣化又は健康被害の予防策を先延ばし にすべきでないとする考え方を前進させたものである。
― 男女の平等及び女性の社会的地位の向上 世界人権宣言(ボックス2及び6参照),並びにミレニア ム開発目標(ボックス13参照)に基づく。消費者課題を分析し,男女性差についての固定観念を断ち
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52 切るにあたってよりどころとなる追加的根拠(ボックス11も参照のこと)。
― ユニバーサルデザインの推進 できる限りの範囲で,翻案又は特殊設計の必要性を伴うことなく,
あらゆる人々が使用できる製品及び環境の設計。ユニバーサルデザインの7原則は,公平な使用への配 慮,使用における柔軟性の確保,簡単で明解な使用法の追求,あらゆる知覚による情報への配慮,事 故の防止及び誤作動への受容,身体的負担の軽減,並びに使いやすい使用空間及び条件の確保である。
[15]
6.7.2.2 考慮点
生活に必須のものが満たされる権利を保証する基本的責任は国にあるが,組織もまたこの権利の実現に貢献する ことができる。特に,国が人々の生活に必須のものを十分に満たせない地域においては,組織の活動が人々の生 活に必須のものを満たす能力に及ぼす影響に細心の注意を払うべきである。また,組織は,生活に必須のものを 満たす人々の能力を脅かすような行動を避けるべきである。
弱者である消費者(6.3.7.8項を参照)は,特別な配慮をもって取り扱う必要がある。弱者である消費者には特別 なニーズがある。これは,消費者が自らの権利及び責任について無知であるため,又は自らの知識に基づいて行 動できないためである。また,消費者は,製品又はサービスに付随する潜在的リスクに気付かない場合,又は潜 在的リスクを評価できない場合,又はマーケティングのターゲットになったときにバランスのとれた判断ができ ない場合がある。
6.7.3 消費者課題 1:公正なマーケティング,事実に即した偏りのない情報,及び公正な契約慣行 6.7.3.1 課題の説明
公正なマーケティング,事実に即した偏りのない情報,及び公正な契約慣行を通じて,消費者が理解できるよう な形で製品及びサービスに関する情報が提供される。これにより,消費者が購買に関して情報を得た上で決定を 下したり,異なる製品及びサービスの特徴を比べたりできるようになる。公正な契約プロセスの目標は,供給者 及び消費者双方の正当な利益を保護し,当事者間の交渉力の不均衡を克服することである。責任あるマーケティ ングを行うためには,ライフサイクル及びバリューチェーン全体における社会的影響及び環境的影響に関する情 報の提供が必要となる。供給業者によって提供される製品及びサービスの詳細情報は,消費者が容易に入手でき る唯一のデータである可能性があるため,この情報は購買の意思決定において重要な役割を果たす。不公正,不 完全又は虚偽的なマーケティング及び情報は,消費者のニーズを満たしていない製品及びサービスの購入という 結果をもたらし,資金,資源及び時間の浪費[86][88]につながる可能性があるだけでなく,消費者又は環境を害する 恐れもある。
6.7.3.2 関連する行動及び期待
消費者とコミュニケーションをとる際に,組織は次を実施すべきである。
― 重大な情報の省略を含め,欺瞞的,虚偽的,詐欺的又は不公正な慣行に関与しない。
― 宣伝及びマーケティングの内容を明確にする。
― 総価格及び税金,製品及びサービスの諸条件,並びに使用に際して必要な付属品及び配送費を隠すことなく 開示する。消費者金融を提供する際には,分割払いに必要な全費用,支払金額,支払回数,支払期日のみな らず,実質年利子率及び平均利率(APR)の詳細を提示する。
― 要求に応じて,根拠となる事実及び情報を提示することにより,要求又は主張を立証する。