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コミュニティ参画及び開発

ドキュメント内 Microsoft Word - ISO_DIS_26000-Jrev2.doc (ページ 68-77)

6 社会的責任の中核主題に関する手引

6.8 コミュニティ参画及び開発

6.8.1 コミュニティ参画及び開発の概要

組織が自らの活動場所であるコミュニティと関係を持つことは,今日広く認められている。こうした関係の土台 になるのが,コミュニティ開発への貢献を目的としたコミュニティ参画である。コミュニティ参画は,単独での 参画であっても,公共の利益の向上に向けた連携を通じた参画であっても,市民社会の強化を後押しする。コミ ュニティ及びコミュニティの機関に敬意を払って関与する組織は,民主主義的で市民の立場に立った価値観を映 し出しながら,こうした価値観を強化する。

この項で述べる「コミュニティ」とは,住居集落又はその他の社会的集落が存在し,組織の所在地又は組織が影 響を及ぼす地域に物理的に近接する地域を指す。コミュニティを構成する地域及び集団は,状況によって,また 特に組織の影響の大きさ及び影響の性質によって異なる。ただし,この言葉は,より幅広い意味で定義され,理 解される場合がある。例えば,特定の問題に関しては「仮想の」コミュニティを意味することもある。

コミュニティ参画及び開発はともに,持続可能な開発に不可欠な要素である。

コミュニティ参画は,組織の活動が及ぼす影響という面で関わりのあるステークホルダーを特定し,これらのス テークホルダーに関与することだけにとどまらない。コミュニティの支援及びコミュニティとの一体化もまた,

コミュニティ参画に含まれる。特に,コミュニティ参画においては,コミュニティの価値観を認めることが必要 である。組織によるコミュニティ参画は,組織がコミュニティの中の一つのステークホルダーであり,コミュニ ティと共通の利害を共有しているという認識から生まれるべきである。

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59 コミュニティ開発に対する組織の寄与は,コミュニティの福祉の向上を後押しする。コミュニティ開発とは,広 義に解釈すれば,住民の生活の質を高めることである。コミュニティ開発は直線的なプロセスではない。加えて,

それは,ぶつかりあう多様な利害が存在する長期的なプロセスである。歴史的特性及び文化的特性が各コミュニ ティに独自性を与え,コミュニティの未来が抱く可能性に影響を及ぼしている。

すなわち,コミュニティ開発は,社会的特性,政治的特性,経済的特性及び文化的特性によってもたらされるも のであり,そこに関わる社会的な力の特徴によって左右される。コミュニティのステークホルダーは,(ときに 相反する)さまざまな利害を持つ可能性がある。共通の目標であるコミュニティの福祉を増進するためには,責 任を分かち合うことが必要である。

組織が貢献できるコミュニティ開発の重要分野として,経済活動及び技術開発の拡大及び多様化を通じた雇用創 出が挙げられる。組織は同時に,地域の経済開発活動を通じた富及び所得の創出,教育プログラム及び能力開発 プログラムの拡大,文化の保存,並びに公共医療サービスの提供などの社会的投資を通じても貢献することがで きる。コミュニティ開発には,コミュニティ,コミュニティの集団及び全体的な討議の場の制度的強化,文化プ ログラム,社会プログラム及び環境プログラム,並びに複数の機関が参加する地域のネットワークが含まれるこ とがある。

社会的投資は,組織が活動するコミュニティの開発に貢献する手段である。一般に,社会的投資は,組織の中核 事業活動の業績向上に関係する活動,又は業績向上を直接目指す活動ではなく,組織とコミュニティの関係を維 持し,深めることを目的とする活動である。

一般に,コミュニティ開発は,コミュニティの中の社会的な力が住民の参加を促す方向に強く働き,すべての市 民に差別なく平等な権利及び尊厳ある生活水準を求めたときに前進する。コミュニティ開発は,現在の関係を考 慮に入れ,権利の享受を妨げる障害を克服する,コミュニティ内部のプロセスである。コミュニティ開発は,社 会的に責任ある行動によって推進される。

(3.3.4項で述べた)慈善活動は,この項で述べる活動に代わるものではなく,それに代わることはできない。

6.8.2 原則及び考慮点 6.8.2.1 原則

組織は,4項で述べた社会的責任の原則に加え,次のようなコミュニティ参画及び開発に特有の原則を考慮に入れ るべきである。

― 組織は,コミュニティ参画及び開発を目指すにあたり,自らがコミュニティの一員であり,コミュニティと 切り離された存在ではないと考えるべきである。

― 組織は,コミュニティの構成員がコミュニティに関係する決定を下し,彼らが選択した方法でリソース及び 機会を最大化する道を追求する権利を認め,その権利を尊重すべきである。

― 組織は,コミュニティと交わるにあたってコミュニティの特性及び歴史を認め,これを尊重すべきである。

― 組織は,経験,リソース,活動を共有しながら連携して活動することの大切さを認識すべきである。

6.8.2.2 考慮点

コペンハーゲン宣言 [118]は,「貧困,失業及び社会的疎外をはじめとする深刻な社会問題に緊急に対処する必要 性」を指摘している。コペンハーゲン宣言及び行動計画は,貧困撲滅,完全に生産的で十分な報酬が与えられ,

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60 自由に選択できる雇用という目標,及び社会的統合の推進を,開発の最優先目標とすることを国際社会に誓った。

国連ミレニアム宣言には,達成の暁に,世界の主な開発課題の解決に寄与しうる目標が掲げられている(ボック ス13参照)。開発は基本的に公共政策によって主導,牽引されるべきだが,開発プロセスはあらゆる組織の寄与 に依存している,と国連ミレニアム宣言[114]は強調している。コミュニティ参画は,これらの目標の達成に地域レ ベルで貢献する。

ボックス13 – ミレニアム開発目標

ミレニアム開発目標(MDGs)[114]は,世界の主な開発課題に対応することを目的として2015年までに達 成すべき8つの目標である。MDGsは,ミレニアム宣言が掲げる行動及び目標から集められた。

8つのMDGsは次のとおりである。

1. 極度の貧困及び飢餓を撲滅する。

2. 初等教育の完全普及を達成する。

3. 男女の平等及び女性の地位向上を推進する。

4. 乳幼児死亡率を低減させる。

5. 妊産婦の健康を改善する。

6. HIV/AIDS,マラリアその他の疾病を撲滅する。

7. 環境的持続可能性を確保する。

8. 開発のためのグローバルパートナーシップを推進する。

MDGsは18の定量的目標に分類される。さらにこれらの目標は,48の指標によって測定される。

組織は,コミュニティと関わるにあたり,公共政策の支援を検討すべきである。これは,開発の優先順位に対す る共通のビジョン及び共通の理解,並びにパートナーシップを通じて持続可能な開発が推進されるという望まし い結果を最大化する機会である。

組織は,自らの利害を守り,利益を追求する目的で協力活動に参加したり,他者と関わりを持ったりすることが 多い。しかし,こうした同盟は,他の集団及び個人が同じ行動をとる権利を尊重することを建前として構成員の 利害を代弁すべきであり,常に法の支配及び民主主義的手続きの尊重を重視する形で進められるべきである。

コミュニティ参画及び開発の手法を決定する前に,組織はコミュニティへの潜在的影響を調査した上で,マイナ スの影響を緩和し,プラスの影響を最大化するための方法を計画すべきである。

組織は,コミュニティ参画計画及びコミュニティ開発計画の立案にあたり,幅広いステークホルダーと関わる機

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61 会を求めるべきである(4.5項,5.3項及び7項を参照)。さらに,社会的弱者,社会的に取り残された集団,被差 別集団,又は非主流集団を特定し,これらの集団と意見を交換することが重要である。

コミュニティ参画及び開発の最も重要な部分は,当該コミュニティ,並びに各組織がコミュニティにもたらす特 有の知識,リソース及び能力によって左右される。

組織の活動の中には,明らかにコミュニティ開発を意図するものもあれば,私的な目的を目指しながら,間接的 に全体的開発を促そうとするものもある。

コミュニティ参画の概念を組織の活動と一体化させることにより,組織はマイナスの影響を最小限に抑制又は回 避し,コミュニティ内におけるこれらの活動及び持続可能な開発の便益を最大化することができる。組織は,組 織が元々持っているスキルベースをコミュニティ参画のために活用することができる(ボックス14参照)。

ボックス14 – 組織本来の活動を通したコミュニティ開発への貢献 組織の本来の業務がコミュニティ開発に貢献できる事例には,次のようなものがある。

― 農機具を販売する組織は,農業技術に関する教育訓練を提供することができる。

― 連絡道路の建設を計画する組織は,計画段階でコミュニティを参加させ,その道路がコミュニティの ニーズも同時に満たせるようにするにはどうしたらよいかを明確化することができる(例えば,現地 農家が道路を利用できるようにするなど)。

― 労働組合は,加盟企業のネットワークを駆使し,優れた健康慣行についての情報を,より幅広いコミ ュニティに広めることができる。

― 水を大量に消費する企業が自社用浄水場を建設する場合には,同時に地域コミュニティにも清浄水を 供給することができる。

― 辺鄙な地域で活動する環境保護団体は,現地の商店及び生産者から,活動に必要な物資を購入するこ とができる。

― レクリエーションクラブは,近隣コミュニティの非識字成人を対象とした教育活動に,クラブの施設 を開放することができる。

組織は,コミュニティの生活に支障を生じ,コミュニティの社会的問題及び経済的問題を悪化させるだけでなく,

人権乱用の恐れが高まる可能性もある人道危機その他の状況に直面することがありうる(6.3.4項参照)。こうし た状況の例としては,食糧安全保障の非常事態,洪水,干ばつ,津波及び地震などの天災,住民の強制移転,並 びに武力紛争などが考えられる。

影響を受ける地域において事業活動を行う組織,パートナー又はその他のステークホルダーを持つ組織には,こ うした状況の緩和に貢献する根拠がある。また,これらの組織が,単なる博愛心から貢献したいと願うこともあ りうる。組織は,災害救助から復興活動に至るまで,さまざまな形で貢献することができる。いずれの場合も,

その状況のもとで最も弱い立場にある人,並びに女性及び子供など,住民全体の中で最も弱い立場にある人に対 して特に注意を払いながら,苦しむ人々に救いの手を差し伸べるべきである。すべての被害者の尊厳及び権利が 尊重され,支持されるべきである。

危機的状況においては,調和のとれた対応を行うことが大切である。したがって,公的機関,並びに場合によっ ては国際的な人道主義的組織及びその他の関連団体と協力することが重要となる。

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