第 3 章 有機染料水の磁気シーディング 実験実験
3.1 諸言
3.2.2 磁性粒子
本研究では磁性活性炭を用いるので、磁気シーディングとして表面吸着法を試みた。表 面吸着法では、強磁性粒子の表面に高い吸着率で染料分子を吸着させることが重要であ り、そのためには、良好な分散性を持ち、比表面積の大きい強磁性粒子が必要となる。本 実験では、これらの観点から複数の強磁性粒子について予備実験を行い、その結果、少 量で吸着率が最も高かった磁性活性炭(MAC: MSエンジニアリング、以降MAC)を用 いた。MACは、有機物を効率よく吸着する活性炭にマグネタイトを物理的、化学的に結 合させたものである[51]。図3.3にMACの光学顕微鏡像を、図3.4に走査型電子顕微鏡
(SEM)像を示す。光学顕微鏡では、蒸留水に懸濁させた状態で観察した。SEM像は、MS
エンジニアリング福西氏より提供された。
図3.3: MACの光学顕微鏡像
図3.4: MACのSEM像
また、MACと比較するために、方らが染料排水処理に用いた強磁性粒子である機能性 ナノ鉄粒子(RNIP:戸田工業 、以降RNIP)を用いた[52]。RNIPは、α−Feをコアとし、
Fe3O4をシェルとするコア・シェル構造を有する平均粒径70 nmの粒子であり、鉄の酸化
反応に伴う強い還元性を持つが、有害金属を含まないため、2次汚染を引き起こす可能性 がない[53]。図3.5に光学顕微鏡像を、図3.6に走査型電子顕微鏡像を示す。
図3.5: RNIPの光学顕微鏡像 図3.6: RNIPのSEM像
光学顕微鏡は、MACと同様に蒸留水に懸濁させた状態で観察したがRNIPの凝集体が 観察された。SEM像は、戸田工業のHP(http:// www.todakogyo.co.jp)より引用した。光学 顕微鏡は、OLYMPUS IX50(オリンパス 、東洋大学生命科学部清水範夫研究室)を使 用した。
3.2.3 飽和磁化、ゼータ電位、粒子径
VSMを用いて、飽和磁化を測定した。さらに、ゼータ電位、粒子径をゼータ電位・粒 子径・分子量測定装置Zetasizer Nano-ZS(シスメックス 、東洋大学生命科学部井上明研 究室)を用いて測定した。
MACは、10 kOe(1 T)で飽和し、0.0919 emu/gの飽和磁化(体積磁化率:1.2×10−4)を示 した。RNIPは、8 kOe(0.8 T)で飽和し、0.0646 emu/gの飽和磁化(体積磁化率:5.3×10−4) を示した。体積磁化率は、RNIPの方が高いことがわかった。
ゼータ電位は、pH3,5,7,10について測定した。粒子径は、pH 7で測定した。MACのpH 7におけるゼータ電位は、-4.0 mV、粒子径は849 nmであった。一方、RNIPのpH 7にお けるゼータ電位は、21.6mV、粒子径は799 nmであった。RNIPは戸田工業のデータでは、
粒子径70 nmであるが、凝集しやすく上記の結果となった。
殆どの液体はイオンを含んでいる。イオンとは正にあるいは負に帯電した物質で、帯電 した粒子を液体中に懸濁させると逆に帯電した液中イオンが粒子表面に引き寄せられる。
粒子の表面に近いイオンは強く引き付けられ、遠いイオンはゆるく引かれ、拡散層とよば れる層を形成する。拡散層内には概念的な境界があり、それより内部のイオンは粒子が液 中で移動した時に粒子とともに移動するが、境界より外側のイオンはもとの場所に留ま
る。この境界を滑り面と呼んでいる。滑り面における電位をゼータ電位と呼ぶ。ゼータ電 位の大きさは安定性の指標となる。分散体中の全ての粒子が大きい正(または負)のゼー タ電位を持っていれば、それらは互いに反発して粒子同士が凝集する傾向を示さない。安 定な分散系と不安定な分散系の一般的境目は、+30 mVまたは-30 mV程度である。MAC のpH 7におけるゼータ電位は、-4.0 mV、RNIPのpH 7におけるゼータ電位は、21.6 mV であった。従って、MACの等電点はpH 7より低く、RNIPの等電点はpH 8以上であると 推定される。
MACとRNIPの磁化曲線をそれぞれ、図3.7、図3.8に示す。
図3.7: MACの磁化曲線
図3.8: RNIPの磁化曲線
MACのpHによるゼータ電位の変化を図3.9に、RNIPのpHによるゼータ電位の変化 を図3.10に示す。
図3.9: pHによるゼータ電位の変化(MAC)
図3.10: pHによるゼータ電位の変化(RNIP)
MACのpH7における粒子径の分布を図3.11に、RNIPのpH7における粒子径の分布を 図3.12に示す。
図3.11: 粒子径の分布(MAC)
図3.12: 粒子径の分布(RNIP)