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金融危機後の最近の議論においては、ネッティング条項の「誤った」発動を制限するために、金融機 関について「秩序ある処理」手続が開始したような場合にネッティング条項の発動を一時停止する旨の

551 外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ・前掲注(522)5頁参照。

552 外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ・前掲注(522)10-11頁。また、現物決済のトランザクションについては

「その債権・債務は同種の目的のものであること」という相殺契約の要件を満たさないのではないかという議論に関して は、クローズアウト・ネッティング条項は取引の終了を規定しかつ損害額の予定をして相手方に対してその請求権を付与 していると解することができるから、現物決済のトランザクションについても当該要件を満たすものと考えられている(同 意見書10-11頁)

立法等の手当てがされるべきことが提言され553、日本でも、金融機関全体を対象とした上述の

FSB

によ る「主要な特性」(1篇

3

1

参照)を受け、平成

25

年の預金保険法を改正し(契約の解除等の効力に ついては、同年改正後の預金保険法

137

条の

3)

554、「主要な特性」の主要な部分を国内法化し555、金融 庁が破綻処理当局に該当し、預金保険機構が実際の破綻処理の実務を行う機関となっている。

553 例えば、ISDAは、プロトコル対象契約の当事者が、特定の金融会社に適用される特別破綻処理制度のクロスボーダーの

適用を契約上認識するために当該各プロトコル対象契約の条項を修正することを可能とし、米国破産法に基づく特定の金 融会社の破綻処理を推進するために、「ISDA 2018年版米国破綻処理におけるステイ・プロトコル」を公表した。当該プロ トコルを批准すると、CCP、、、

が当事者である、、、、、、、

等の「除外契約」以外、、、、、、、、、、

の批准当事者とアメリカ法(米国連邦預金保険公社(FDI

C)規制、FRB規制、米国通貨監督庁(OCC)規制)による「規制対象組織」との間の「プロトコル対象契約」について、そ

の条項に拘束されることになる。そのうち、特定破綻処理制度(フランス特別破綻処理制度、ドイツ特別破綻処理制度、

日本特別破綻処理制度、、、、、、、、、、

(リング・フェンシング規定(ring fencing rules: この各部門での資金の出入りを明確に区分け して、各業務間の融通をできなくすること、別会社化とも呼ぶ)を除く、預金保険法(昭和46年法律第34号、その後の 改正を含む)及び施行規制及び措置(随時改正される場合がある)の規定)、スイス特別破綻処理制度、英国特別破綻処理 制度、米国特別破綻処理制度(OLAおよびFDIA = Federal Deposit Insurance Act)に基づく破綻処理の対象になった場 合における「デフォルト権」、、、、、、、、

(契約に基づくか否かを問わず、当該契約又は取引を清算、終了、解約、制限又は期限前終了 し、これらにおいて支払うべき金額を相殺又はネッティングし(同一日における支払のネッティングに関連する権利を除 く。、担保若しくはその他の信用補完又はこれらに関連する資産に関する救済権を行使し(資産の売買を含む)、これらに 基づく又は関する支払又は引渡を要求し(担保又は証拠金の価値の変動又は経済的エクスポージャーの金額の変動のみに 起因する契約条項の権利又は作用を除く)、これらに基づく支払又は履行を停止、延期又は繰り延べし、これらに基づく当 事者の義務を修正する当事者の権利又は類似の権利など)の行使および米国倒産手続(債権者保護措置)における「デフ ォルト権」の行使制限(破綻処理に基づくデフォルト権は、場合によっては行政機関の裁量に基づき、破綻した金融会社 との対象契約及び対象信用補完に関して、一時的又は恒久的に留保され、取り消され、失効し又は制限され、またその可、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

能性がある、、、、、

こと(いわゆる「クローズアウト・ステイ」。ただし、契約に基づくか否かを問わず、当該対象契約に基づいて 記録された取引に関連する債務(関連する信用補完の取り決めから生じる債務を含む)及び対象信用補完(関連する信用 補完の取り決めから生じる債務を含む)に関連する債務をネッティング又は相殺する全ての権、、、、、、、、、、、、、、、、

利は、引き続き完全に有効、、、、、、、、、、、、

である、、、

)などを定めている(傍点筆者)。その詳細につき、ISDA「2018年版米国破綻処理におけるステイ・プロトコル(2 018731日)(https://www.isda.org/a/wGvEE/A37107925-v5.0-ISDA-2018-Stay-Protocol_Jtran_final.pdf)参照。

554 当条により、内閣総理大臣は、金融危機対応会議の議を経て、預金保険法1021項の認定に係る金融機関又は特定認

定に係る金融機関等について、当該金融機関等が締結した金融契約中、当該金融機関等が当局の管理となったこと等(「関 連措置等」(同法137条の31項))を理由として、契約の早期解約等(「特定解除等」(同条2項))を規定する条項、す なわち契約の終了又は解除、契約を解約する権利の発生、契約に係る債権に係る期限の利益の喪失、契約に係る取引に係 る一括清算法26項に規定する一括清算その他これらに類するものとして内閣府令・財務省令で定めるものをいう)に ついては、日本金融システムの著しい混乱が生ずるおそれを回避するために必要な措置が講じられるために必要な期間と して内閣総理大臣が定めた期間(「措置実施期間」(同条1項))中は、その効力を有しないこととする決定ができる(同条 1 項)。その趣旨は、多数のデリバティブ契約等の金融契約を締結している金融機関に対して秩序ある処理を行う場合に、

早期解約条項等に基づきデリバティブ契約等の金融契約が一斉に解約され、一括清算がなされると、ヘッジ取引等を行っ ている相手方にも影響が及び、金融市場の不安定化につながる可能性があることから、金融契約上の早期解約条項等の効 力を制限するものである。金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ「金融システ ム安定等に資する銀行規制等の見直しについて(平成25125日)」(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/to sin/20130128-1/01.pdf)11-12頁参照。なお、このような規定の必要性は、FSBによる「主要な特性」§4.3及びI-Anne x 4で提唱されている。See FSB, supra note 170, at 10, 43-50. なお、そのⅡ(部門別ガイドライン)-Annex 1: Reso lution of Financial Market Infrastructures (FMIs) and FMI Participantsという付属文書では、それぞれ「FMIの破 綻処理」(パート1)と「FMI参加者の破綻処理」(パート2)を詳しく定めている。

また、措置実施期間中は、当該金融契約には破産法58条(他の倒産法で準用する場合も含む)は適用されず(同条5項) 一括清算法の一括清算事由は生じなかったものと擬制される(同条6項)。なお、早期解約条項等の効力の制限は、秩序あ る処理のために、契約上の効果を制限するものであり、その周知を図る必要があることから、決定を行った旨及び措置実 施期間を官報公告するとともに、当該金融機関等及びその相手方等への通知が必要である(同条4項)

以上の記述につき、村松教隆「預金保険法の一部改正の概要」預金保険研究16号(2014)7-8頁参照。

555 これは、市場型のシステミック・リスクに対して、金融市場への影響を回避する必要がある場合、資本注入、流動性供

給、資金援助といった措置を講じるものであり、対象となる機関は、預金保険法126条の2(金融機関の秩序ある処理)個 別に列挙(金融持株会社、銀行、証券会社、保険会社、証券金融会社等)されているほか、「その他我が国の金融システム において重要で地位を占める者として政令で定める者」として政令で指定(短資会社)されていた。他方で、FMIについて は、同改正では対象とされなかった。今後の動向が注目される。羽渕・前掲注(73)228-229頁。

CCP

は、金融システムにおいて非常に重要な役割を果たしており、その破綻は金融システムに深刻な 混乱を起こしうるため、ストレス時にあっても、とりわけその重要な清算サービスを提供している

CCP

1

つしかない場合や当該

CCP

の重要サービスを別の

CCP

へ迅速に移管すること(実際、多くの市場で は、かような移管などが再建策として現実的ではない)に実務上の重大な問題がある場合には、機能継 続のために公的資金の利用を期待するのにかわり、頑健な再建計画を策定し、円滑な再建を行って

CCP

の重要な清算サービスの継続が非常に重要である556。また、CCPのリスク管理と再建計画の関係をみる と、金融システム上重要な

FMI

は、FMI原則を遵守するために頑健で包括的なリスク管理実務を保持す べきであり、FMIの再建計画は、こうしたリスク管理の一部をなすものであり、FMIの頑健性をさらに 高め、ストレス時においても

FMI

が機能を継続できるという信頼を市場に与える557

かような背景の下で、CCPそれ自体の破綻処理については、2017年

7

5

日に、FSBは「清算機関(C

CP)の破綻処理及び破綻処理計画に係るガイダンス(原題:Guidance on Central Counterparty Resol ution and Resolution Planning)」

558を、CPMIは「CCPの強靭性および再建:FMI原則に関する追加ガ イダンス(原題:Resilience of Central Counterparties (CCPs): Further Guidance on the PFMI)」 および「FMIの再建(2017年改訂版)(原題:Recovery of Financial Market Infrastructures)」を公 表した。また、FSB、CPMIと

IOSCO

は、同日、「清算集中における相互依存性の分析(原題:Analysis o

f Central Clearing Interdependencies)

」及び

2015

CCP

作業計画(以上の報告書と作業計画の詳細 は、1篇

3

1

参照)の進捗状況に関する「清算機関の強靭性、再建及び破綻処理可能性の強化のため の共同作業計画の実施に関する報告書(原題:Chairs’ Report on the Implementation of the Joint

Workplan for Strengthening the Resilience, Recovery and Resolvability of Central Counterpar

ties)

」をも公表した。その最後の報告書では、作業計画の下で公表されたさまざまなガイダンスとレ

ポート、および複数の法域におけるシステミックに重要な

CCP(以下「SI>1」という。注 155

も参照)

のための危機管理グループ(CMG)の設立を強調し、次段階で次のような行動を着手する。それは、①C

CP

の強靭性と再建に関する

FMI

原則の実施状況の継続的な監視および

CCP

の監督ストレス・テストに関 する枠組みの最終化、②(ⅰ)母国法域を含む「SI>1」の

CCP

ための

CMG

の確立および協力協定の採 択、(ⅱ)破綻処理を支えるための財源、および破綻処理における

CCP

の公平性の取り扱いへの更なる 取組みの下で、FSBの「清算機関の破綻処理及び破綻処理計画に係るガイダンス」に関する期待と一致 する「主要な特性」の実施、③主要な調査結果が長期にわたって安定しているかどうかを評価するため の、中央清算の相互依存関係の追加分析、④危機後の改革の相互作用から生じた清算集中に対しるイン

556 羽渕・前掲注(73)202頁参照。

557 羽渕・前掲注(73)203頁。

558 FSBの説明によると、破綻処理の目的、破綻処理当局の権限、破綻処理の開始の決定につながる指標、危機管理グルー プ (CMG)の設置と運営などの点で、当ガイダンスはFSBによる「主要な特性」とそのAnnex(注554参照)を補足するも のであり、両文書にとってかわることや、両文書を上書きすることを意図したものではない。また、その両文書に記載さ れているすべての点についてカバーしているわけではないが、両文書に記載があるが当ガイダンスに記載がない事項が、

CCPの破綻処理について妥当しないというわけではないとされている。See FSB, supra note 171.

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