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研究方法

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 38-67)

本章では,第1章で述べた3つの研究目的に対応する研究方法を設定した。研究方法は,

樹林化に関する関係書類調査,高速道路樹林の植物社会学的植生調査,並びに地域住民へ のアンケート調査を用いた。以下,それぞれの方法について述べる。

2-1 樹林化後25~30年経過した高速道路樹林の植生調査・光環境調査

本節では,高速道路会社が実施した,「平成23年度 樹林管理の環境影響に関する研究業 務」75),及び「平成 24 年度 樹林管理の環境影響に関する研究業務」76)の報告書を基に,

研究目的「①樹林化による高速道路樹林の整備効果を明らかにすること」に対応するため の植生調査および光環境調査について述べる。

調査路線の概要,調査地の設定,植生調査および光環境調査は以下のとおりである。

2-1-1 調査路線の概要

一般的に樹林化は高速道路の供用直前に実施する。日本で最も古い高速道路の名神高速 道路 栗東IC~尼崎IC間(1963 年供用)は,調査を計画した2012年時点で約50年を 経過した。調査対象路線は,高速道路樹林の生物多様性への影響に関して,高速道路会社 が植物社会学的な植生調査を実施した,樹林化後25~30年経過した長崎自動車道の高速 道路樹林を,経過年数の標準的な高速道路樹林と考え研究対象に選定した。

調査路線の長崎自動車道は鳥栖IC~長崎ICの区間からなる。現地調査を実施した区間 は,2012年時点で,供用後25~30年を経過した鳥栖IC~佐賀大和IC(1985年3月供 用)及び佐賀大和IC~多久IC(1987年3月供用)である(図-2-1-1-1)。鳥栖第二IC~

多久IC間の平均区間交通量は平成28年度で34,505台/日である7)

当該路線は佐賀県の佐賀平野北東部,佐賀県北部の脊振山系南端に位置し,標高300 m 以下の丘陵地及び低海抜地を交互に横断する。地質は,丘陵地は花崗岩類,低海抜地は沖 積層・洪積層の未固結堆積物からなる77)

気候は,九州地方では内陸型気候にあり,年平均気温は16.5 ℃,最寒月の月平均気温

37

は5.4 ℃,最暖月の平均気温は27.8 ℃と比較的温暖な地域にある。暖かさの指数WIは

137.7,寒さの指数CIは0である。年間降水量は1,870 mmを超える78)

植生帯 79)はヤブツバキクラス域にあり,丘陵地の現存植生 80)はスギ・ヒノキ・サワラ の植林地と常緑果樹園が大半を占め ,わずかにシイ・カシ萌芽林が点在する。低海抜地 は市街地と水田雑草群落で構成される。

38

図-2-1-1-1 調査路線及び調査地位置図81) Fig.2-1-1-1 Target route and investigation areas

8

鳥栖 IC 22,23

26,27 周辺林:○自然林;(林内)No.18,20,22(林縁)No.19,21,23

高速道路樹林:●常緑広葉樹林;No.1~8,15,17

■混交林 ; No.9~13

※No.14,16は間伐作業実施により調査対象外としたため未記載 3 4

5 6

7

9

10

11 12

13

15

18,19 20,21

24,25

28,29

△人工林;(林内)No.24,26,28(林縁)No.25,27,29

1 東脊振 IC 2

至)太宰府IC

至)久留米IC 至)佐賀大和IC

鳥栖 JCT

至)多久IC 17

佐賀大和 IC

39 2-1-2 調査地の設定および調査期間

調査地の設定は,高速道路樹林が常緑広葉樹を主体とする植生帯に位置することを考慮 し選定した(表-2-1-2-1,図-2-1-2-1~図-2-1-2-7)。常緑広葉樹林タイプ10地点,混交林 タイプ5 地点とし,計 15地点選定した。周辺林は,樹林タイプ毎に3 地点とし,計 12 地点選定した。これらの調査地において,2011年9月~2012 年8月にかけて植生調査,

並びに下層植生の光環境調査を行った。

高速道路樹林は,高速道路のボックスカルバートや橋梁・トンネルにより区切られた盛 土のり面を1調査地とし,調査面積は平均約1,400 m2(最小660 m2,最大3,520 m2)と なった。周辺林の調査面積は,林内タイプは,高速道路樹林と同規模程度の平均約1,300 m2

(最小900 m2,最大1,875 m2),林縁タイプは,その半分程度の平均約600 m2(最小400

m2,最大1,000 m2)とし,隣接する林内タイプと林縁タイプの調査地の合計面積を1,000

~2,000 m2内で設定した。

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表-2-1-2-1 調査地概要

Table2-1-2-1 Outline of investigation areas 調査地

No. 調査地名 調査地

面積(m2 調査地概要

1 常緑広葉樹林 975 1985.3 供用,長崎自動車道 KP14.237~14.41(下)

2 常緑広葉樹林 975 1985.3 供用,長崎自動車道 KP14.405~14.23(上)

3 常緑広葉樹林 1,150 1985.3 供用,長崎自動車道 KP13.31~13.8(下)

4 常緑広葉樹林 2,220 1985.3 供用,長崎自動車道 KP12.447~13.01(下)

5 常緑広葉樹林 1,250 1985.3 供用,長崎自動車道 KP10.5~10.32(上)

6 常緑広葉樹林 975 1985.3 供用,長崎自動車道 KP8.926~8.746(上)

7 常緑広葉樹林 963 1985.3 供用,長崎自動車道 KP4.73~4.918(下)

8 常緑広葉樹林 2,125 1985.3 供用,長崎自動車道 KP4.085~4.48(下)

9 混交林 1,750 1985.3 供用,長崎自動車道 東脊振 IC KP14.9(下)

10 混交林 688 1985.3 供用,長崎自動車道 KP11.535~11.37(上)

11 混交林 1,763 1985.3 供用,長崎自動車道 KP8.75~8.95(下)

12 混交林 1,260 1985.3 供用,長崎自動車道 KP7.699~7.519(上)

13 混交林 3,300 1985.3 供用,長崎自動車道 KP6.691~6.105(上)

14 調査対象外 2,100 1985.3 供用,長崎自動車道 KP15~15.4(下)

間伐作業実施のため調査対象外。

15 常緑広葉樹林 900 1985.3 供用,長崎自動車道 KP15~15.4(下)

16 調査対象外 1,300 1987.3 供用,長崎自動車道 KP29.483~29.93(下)

間伐作業実施のため調査対象外。

17 常緑広葉樹林 845 1987.3 供用,長崎自動車道 KP29.483~29.93(下)

18,19 鎮西山 林内:1,200 林縁:1,200

上峰町。登山道沿い民有林。頂上部(202m)に展望所あり。上峰 町の公園「鎮西山いこいの森」あり。

20,21 朝日山 林内:1,625 林縁:1,875

鳥栖市村田町。山腹の園路脇。平野の孤立残丘。頂上(132.9m)

に朝日山宮地嶽神社が鎮座。一帯は公園として利用され展望所 あり。隣接地はゴルフ場。

22,23 田代公園 林内:1,000 林縁: 900

鳥栖市柚比町。公園に隣接する天満宮の裏山社寺林。公園

(7.2ha)には遊具や花見場所あり。隣接造成地は研究所。

24,25 御手洗の滝 林内: 500 林縁: 560

鳥栖市立石町。御手水の滝キャンプ場駐車場に入る前の林道沿 いの大石谷国有林(スギ植林地)

26,27 河内ダム 林内: 600 林縁: 500

鳥栖市河内町。河内ダム(1971 年竣工)のダム湖周回道路沿い の二次林(ヒノキ植林地)

28,29 群石山 林内:1,000 林縁: 400

長崎自動車道の下り線側(南側)に隣接する牛原香椎宮北側の 民有林(ヒノキ植林地)

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調査地 No.1,2(高速道路樹林:常緑広葉樹林)

調査地 No.3(高速道路樹林:常緑広葉樹林)

調査地 No.4(高速道路樹林:常緑広葉樹林)

図-2-1-2-1 調査地詳細位置図(No.1~4)

Fig.2-1-2-1 Detailed location map of investigation areas (No.1~4)

KP14.0 KP13.9 KP13.8 KP13.7

No.3

No.4

KP12.5 KP12.4 KP12.6

KP12.7

KP14.4 KP14.2 KP14.1

No.2

No.1 KP14.3

42

調査地 No.5(高速道路樹林:常緑広葉樹林)

調査地 No.6(高速道路樹林:常緑広葉樹林)

調査地 No.7(高速道路樹林:常緑広葉樹林)

図-2-1-2-2 調査地詳細位置図(No.5~7)

Fig.2-1-2-2 Detailed location map of investigation areas (No.5~7)

KP9.0 KP8.9 KP8.8 KP8.7

No.6

KP10.4 KP10.3 KP10.2 No.5

KP10.5

No.7 KP4.8

KP4.9 KP5.0

43

調査地 No.8(高速道路樹林:常緑広葉樹林)

調査地 No.9(高速道路樹林:混交林)

調査地 No.10(高速道路樹林:混交林)

図-2-1-2-3 調査地詳細位置図(No.8~10)

Fig.2-1-2-3 Detailed location map of investigation areas (No.8~10)

KP4.4 KP4.3 KP4.2

KP4.5

No.8

KP15.0 KP14.9 KP14.8 KP14.7

No.9

KP14.6

No.10

KP11.3 KP11.4

KP11.5 KP11.2

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調査地 No.11(高速道路樹林:混交林)

調査地 No.12(高速道路樹林:混交林)

調査地 No.13(高速道路樹林:混交林)

図-2-1-2-4 調査地詳細位置図(No.11~13)

Fig.2-1-2-4 Detailed location map of investigation areas (No.11~13) KP8.8 KP8.7

KP8.9

No.11

KP7.8 KP7.7 KP7.6 KP7.5

No.12

KP6.4 KP6.5

KP6.6 KP6.3 KP6.2

No.13

45

調査地 No.15(高速道路樹林:常緑広葉樹林)

調査地 No.17(高速道路樹林:常緑広葉樹林)

図-2-1-2-5 調査地詳細位置図(No.15,17)

Fig.2-1-2-5 Detailed location map of investigation areas (No.15, 17) No.17

KP29.3 KP29.2 KP29.1 KP29.0

KP15.1 KP15.0 KP14.9 KP14.8

No.15

KP14.7

46 No.22

No.23

調査地 No.18,19(周辺林(自然林):鎮西山)

調査地 No.20,21(周辺林(自然林):朝日山)

調査地 No.22,23(周辺林(自然林):田代公園)

図-2-1-2-6 調査地詳細位置図(No.18~23)

Fig.2-1-2-6 Detailed location map of investigation areas (No.18~23) No.19

No.18

No.21

No.20

47

調査地 No.24,25(周辺林(人工林):御手洗の滝)

調査地 No.26,27(周辺林(人工林):河内ダム)

調査地 No.28,29(周辺林(人工林):群石山)

図-2-1-2-7 調査地詳細位置図(No.24~29)

Fig.2-1-2-7 Detailed location map of investigation areas (No.24~29) No.26

No.27 No.25

No.24

No.28

No.29

48 2-1-3 植生調査

調査地内の植物種の侵入状況を把握するため,出現種の階層,被度,群度の植生調査 を行った。また,調査地内に,斜面下端を起点とし,斜面上方に向かう幅5.0 mのベル トトランセクト調査区(以下,「帯状調査区」という)を設定した。帯状調査区内には,

5.0 m×5.0 mのコドラート区画を,起点側より連続して設置し,代表種の階層,被度,

群度,群落高の記録を行った。

加えて,帯状調査区では植生断面図(図-2-1-3-1)を作成し,群落配置と植物種の位置 を,工事完成図(図-2-1-3-2),管理台帳と比較し,植物種の出現由来を確認した。

調査頻度は,草本類の季節による種数,被度,群度,群落高の変化を記録するため,

2011年秋季(9‐11月),冬季(12‐2月)及び2012年春季(3‐5月),夏季(6‐8月)

の各季1回,計4回に渡り調査地全体の植生調査を実施した。帯状調査区の植生調査お よび植生断面図の作成は秋季に1回実施した。

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図-2-1-3-1 植生断面図の作成例(調査地No.1)

Fig.2-1-3-1 Example of cross section with vegetation (No.1)

図-2-1-3-2 植栽の基本平面図例(調査地No.6当初植栽)

Fig.2-1-3-2 Example of planting design (No.6: initial planting) 樹種 樹高(cm

記号

落葉高木 常緑高木

H=300~350 H=350

*1.この部分の列数は道路横断方向ののり長に合せ増減。

シラカシ シラカシ シラカシ アラカシ

のり尻

2,500

*1

クズ

アラカシ 草刈範囲

クズ(枯)

18 15 10 5 0(m) のり肩

側道 本線

2,500 2,500 2,500 2,500 5,000 5,000

2,0002,0002,5001,000

50 2-1-4 光環境調査

林床の光環境による植生の違いについて,相対照度と開空率の調査によって比較した。

相対照度は,データロガー(Onset社 水中用温度計測データロガーUA‐002‐64)を,

各調査地に1ヶ所と対照調査地の樹林タイプ毎に1ヶ所,帯状調査区の中央部に設置し 測定した(図-2-1-4-1)。樹林内の照度測定は調査地の中央部に高さ約1.0 mの位置に木 杭を設置し,その頂部にデータロガーを設置した。樹林外部の照度測定は,調査地の境 界部の遮蔽物が無い場所にデータロガーを設置した。測定日時は,2012年6月6日~2012 年8月27日の期間に9:00,12:00,15:00の1日3回実施した。

開空率は,カメラ(Nikon D40),魚眼レンズ(SIGMA 4.5mmF2.8 EX DC CIRCULAR

FISHEYE)によりを用いて全天写真を撮影した(図-2-1-4-2)。撮影は,2012 年 6 月の

曇天時もしくは太陽の写りこまない時間帯(朝方または,夕方)に行い,カメラを1.3 m の高さに水平に設置し,カメラの上部が北を向くように撮影した。

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