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地域住民の高速道路樹林に対する認識特性

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 124-143)

本章では,第 1 章で示した主要な研究目的「③地域住民の高速道路樹林に対する認識特 性を明らかにすること」に対応するため,第 2 章で設定した研究方法に基づき,長崎自動 車道の高速道路樹林の沿線の地域住民を年代や居住地区から高速道路樹林までの直線距離 に分類したうえで,アンケート調査から地域住民の高速道路樹林に対する認識特性を把握 した。この,地域住民の高速道路樹林に対する認識特性の把握は,高速道路樹林の管理計 画を検討するうえで第6章の前提条件となるものである。

5-1 調査回答者の属性

本節では,回答者の属性を整理した(表-5-1-1,表-5-1-2,図-5-1-1,図-5-1-2)。佐賀市 の人口推計102)と比較すると男女比率はやや男性が高かった。年齢層は,10~30代は低く,

50~70代の割合が高かった。職業は,自宅中心の生活となる無職及び主婦(主夫)が合せ

て39.0 %で最も多く,続いて,勤務先での屋内作業が多くなると思われる会社員,公務員,

教員,専門職は合せて 37.0 %であった。また,高速道路沿線の農地で働く農業従事者は,

高速道路樹林に関心が高いと思われたものの,回答者数の割合は 2.0 %であった。回答者 の居住地区は,高速道路から南の佐賀駅方面に向かうに従い多くなり,居住年数は20年以

上が55.0 %と最も多かった。

距離別に整理した地区単位の回答者数は,概ね分散した(図-5-1-3)。ただし,配布先の 居住者が別の居住地に住む親類等に渡し,配布対象外の地区から回答したと思われる調査 票があった。本研究では,配布対象外であっても佐賀市内の回答は,属性以外の全ての項 目を記入した調査票に限り集計対象としたため,高速道路から7.0kmを超える遠方の回答 が少数ながら計上された。

123

表-5-1-1 佐賀市内に居住のアンケート回答者属性 Table5-1-1 Attribute of respondents in Saga City

男性 女性 合計*1

人数 男女比率 人数 男女比率 人数 年代比率 10 代 0.0% 1 100.0% 1 0.1%

20 代 13 39.4% 20 60.6% 33 3.3%

30 代 32 35.2% 59 64.8% 91 9.0%

40 代 60 40.8% 87 59.2% 147 14.5%

50 代 98 52.7% 88 47.3% 186 18.3%

60 代 147 57.9% 107 42.1% 254 25.0%

70 代 140 67.3% 67 32.2% 208 20.5%

80 代以上 64 71.1% 26 28.9% 90 8.9%

不明 3 50.0% 2 33.3% 6 0.6%

合計 557 54.9% 457 45.1% 1,016 100.0%

*1.70代および年代不明者に性別不明者がそれぞれ1名おり,合計のみに計上

表-5-1-2 人口推計 市町村別・年齢別(H29.10)佐賀市102)

Table5-1-2 Estimate of population according to age and municipality in Saga City (Oct., 2017)

男性 女性 合計

人数 男女比率 人数 男女比率 人数 年代比率 10 代 11,924 51.2% 11,376 48.8% 23,300 10.9%

20 代 11,337 49.1% 11,730 50.9% 23,067 10.8%

30 代 13,213 49.0% 13,737 51.0% 26,950 12.6%

40 代 15,160 48.6% 16,039 51.4% 31,199 14.6%

50 代 13,823 47.7% 15,130 52.3% 28,953 13.5%

60 代 15,877 47.8% 17,352 52.2% 33,229 15.5%

70 代 10,618 43.6% 13,745 56.4% 24,363 11.4%

80 代以上 7,165 33.9% 13,953 66.1% 21,118 9.9%

不明 1,274 57.7% 935 42.3% 2,209 1.0%

合計 100,391 46.8% 113,997 53.2% 214,388 100.0%

124

図-5-1-1 回答者の居住年数

Fig.5-1-1 Length of residence of respondents

図-5-1-2 回答者の年代別職業

Fig.5-1-2 Occupation according to generation of respondents

9%

10%

14%

20%

17%

15%

29%

16%

9%

8%

32%

42%

30%

2%

17%

25%

0.4%

3%

4%

2%

3%

8%

10%

6%

8%

7%

3%

1%

3%

3%

1%

1%

0.3%

1%

6%

14%

15%

2%

11%

18%

1%

1%

14%

60%

50%

24%

1%

3%

3%

17%

2%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

29歳未満 30-40代 50-60代 70代以上 不明 全体

専業主婦・主夫 公務員 会社員

農業 自営業(農業以外) 専門職

教員 パート・アルバイト 学生

無職 その他

1年未満 3%

1~5年未満 16%

5~10年未満 9%

10~20年未満 16%

20年以上 55%

不明 1%

125

図-5-1-3 回答者の居住地区から高速道路までの距離 Fig.5-1-3 Distance to expressway from district of respondents

高速道路までの最短距離(km) 67

144

0

262

24

176

296

37

10

0 100 200 300

0-1 1-2 2-3 3-4 4-5 5-6 6-7 7-8

8-126 5-2 高速道路の利用状況および視認状況

高速道路の利用,並びに高速道路外観の視認状況などの接触度合いを確認した。高速道 路の利用は,年1回程度の利用が最も多く50.0 %を占め,利用目的は観光(31.0 %)と余 暇活動(29.0 %)が上位であった(図-5-2-1,図-5-2-2)。高速道路外部からの高速道路の 視認頻度は,月1回(37.0 %)が最も高く,次いで週1回(22.0 %),年1回(20.0 %)

となり,地域住民の視認する機会は,高速道路を利用する機会よりも高いことが明らかに なった(図-5-2-3)。

127

図-5-2-1 高速道路の利用頻度 Fig.5-2-1 Use frequency of expressway

毎日

1% 1回/週 6%

1回/月 25%

1回/年 50%

1回/年未満 14%

利用したことない 4%

128

図-5-2-2 高速道路の利用頻度および目的 Fig.5-2-2 Frequency and purpose of expressway use

図-5-2-3 高速道路利用頻度別の外部からの視認頻度

Fig.5-2-3 Frequency of visual perception from surrounding area of expressway

高速道路利用頻度別の外部からの視認頻度(%)

54%

10%

11%

8%

14%

13%

10%

8%

57%

28%

19%

8%

15%

22%

23%

22%

49%

39%

22%

15%

37%

15%

9%

6%

28%

24%

13%

20%

2%

4%

23%

15%

6%

1%

4%

4%

9%

28%

5%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

毎日 1回/週 1回/月 1回/年 1回/年未満 利用したことない 全体

毎日 1回/週 1回/月 1回/年 1回/年未満 見たことない

38%

18%

2%

2%

23%

12%

5%

0.2%

2%

15%

51%

17%

5%

3%

11%

3%

19%

38%

47%

31%

8%

6%

15%

14%

5%

12%

6%

34%

33%

26%

29%

4%

8%

9%

12%

9%

15%

0.4%

0.4%

7%

5%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

毎日 1回/週 1回/月 1回/年 1回/年未満 全体

通勤・通学 仕事(輸送) 仕事 観光

買物 余暇 その他 利用しない

高速道路の利用頻度別の利用目的(%)

129 5-3 高速道路樹林の認識状況と印象評価

高 速 道 路 を 外 部 か ら 視 認 す る 際 の 活 動 内 容 は 比 較 的 分 散 し て い た が , 余 暇 活 動

(26.0 %)・買物(15.0 %)・仕事での移動(14.0 %)の3項目で全体の55.0 %を占め た(図-5-3-1)。したがって,日常的な生活の外出行動で視認していることが明らかになっ た。

視認対象は橋梁・高架橋の構造物(36.0 %)が最も高く,次いで盛土のり面(31.0 %)

であった(図-5-3-2)。高速道路樹林の認知度は,「知っている」と「知っているが見たこと はない」の回答が合せて約70.0 %あり,高速道路樹林の整備が広く知られていることが分 かった(図-5-3-3)。

高速道路樹林に対する認識を,5段階のSD法によって,安心感,清潔感,明るさの3項目 について調査した。各項目の肯定的評価を肯定側(選択肢1・2),否定的評価を否定側(選 択肢4・5)として整理した。肯定側の評価をした回答(35.0~40.0 %)は,マイナス側の 評価をした回答(14.0~22.0 %)より高かった。また,両端(選択肢1又は5)を選択した 回答の比較でも,肯定側(選択肢1:12.0~14.0 %)は,否定側(選択肢5:2.0~3.0 %)

より高かった。

居住地区までの距離区分による評価の違いは,最も遠い地区(8.0 ㎞以上)を除き,大き な差はなかった。最も遠い地区は回答数10人(全回答数の1.0 %未満)であり,肯定側の 評価が他地区より高まる傾向であった(図-5-3-4,図-5-3-5,図-5-3-6)。

年齢別では,年齢が上がるほど中間評価を選択する回答が多かった(図-5-3-7,図-5-3-8,

図-5-3-9)。また,20代以下の回答は肯定的な評価を選択する割合が高く,それ以上の年齢 層は概ね同じ評価割合であった。

130

図-5-3-1 外部からの高速道路視認時の行動

Fig.5-3-1 Activity at visual perception of expressway from surrounding area

図-5-3-2 外部からの高速道路視認対象

Fig.5-3-2 Visually perceived object of expressway structure from surrounding area

図-5-3-3 高速道路樹林の認知状況 Fig.5-3-3 Recognition of expressway forest

知っている 66%

知っているが 見たことない

3%

知らない 24%

分からない 5%

無回答 2%

橋梁・高架橋 36%

C-Box 16%

盛土のり面 31%

切土のり面 13%

その他 4%

(1通勤・通学 6% (2送迎

4%

(3仕事の移動 14%

(4農作業 2%

(5職場 1%

(6家滞在 4%

(7散歩 4%

(8買物 15%

(9観光 20%

(10余暇活動 26%

(11その他 4%

131

居住地区から高速道路樹林までの距離(km)

図-5-3-4 居住地区までの距離区分ごとの高速道路樹林印象(明るさ)

Fig.5-3-4 Impression of expressway forest by distance to residence (Brightness)

居住地区から高速道路樹林までの距離(km)

図-5-3-5 居住地区までの距離区分ごとの高速道路樹林印象(清潔感)

Fig.5-3-5 Impression of expressway forest by distance to residence (Cleanliness)

居住地区から高速道路樹林までの距離(km)

図-5-3-6 居住地区までの距離区分ごとの高速道路樹林印象(安心感)

Fig.5-3-6 Impression of expressway forest by distance to residence (Safety)

7% 10% 16% 13% 13% 14% 11%

22% 22% 40%

22% 33% 30% 26% 30%

20%

57% 51%

51% 42% 48% 50% 46%

40%

9% 14% 10% 13% 10% 9% 11%

4% 2% 1% 1% 2% 3%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0-1 1-2 2-3 3-4 4-5 5-6 6-7 7-8

8-1 2 3 4 5

整っている・きれい

潤いある・安らぐ 怖い・落ち着かない

7% 9% 14% 13% 12% 13% 11%

19% 18% 40%

23%

13%

28% 25%

41%

49% 45% 20%

42%

54%

39% 40%

30% 20%

18% 22%

18% 21% 20% 20% 16%

10%

6% 6%

3% 1% 2% 3%

10%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0-1 1-2 2-3 3-4 4-5 5-6 6-7 7-8 8-1 2 3 4 5

6% 10% 16%

8% 16% 14% 11%

21% 19% 30%

25% 38% 29%

24% 32%

20%

52% 51%

44%

46% 45%

49% 38%

40%

19% 17% 13%

8% 9% 10%

14%

10%

1% 3% 3% 1% 3%

5%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0-1 1-2 2-3 3-4 4-5 5-6 6-7 7-8

8-1 2 3 4 5

暗い・鬱陶しい

雑然とした・汚い

明るい・清々しい

132

明るい・清々しい ⇔ 暗い・鬱陶しい

図-5-3-7 高速道路樹林の明るさに関する世代間印象

Fig.5-3-7 Impression of expressway forest by generation (Brightness)

整っている・きれい ⇔ 雑然とした・汚い

図-5-3-8 高速道路樹林の清潔感に関する世代間印象

Fig.5-3-8 Impression of expressway forest by generation (Cleanliness)

潤いある・安らぐ ⇔ 怖い・落ち着かない

図-5-3-9 高速道路樹林の安心感に関する世代間印象

Fig.5-3-9 Impression of expressway forest by generation (Safety)

21%

10%

13%

16%

13%

29%

25%

26%

22%

17%

25%

35%

51%

50%

52%

50%

50%

12%

13%

10%

8%

33%

10%

3%

1%

2%

2%

2%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

29歳未満 30-40代 50-60代 70-80代 不明 全体

26%

13%

9%

14%

17%

12%

29%

26%

24%

22%

24%

18%

36%

42%

47%

33%

41%

24%

21%

21%

14%

50%

19%

3%

4%

3%

2%

3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

29歳未満 30-40代 50-60代 70-80代 不明 全体

24%

12%

13%

16%

14%

21%

24%

24%

27%

33%

25%

38%

42%

48%

49%

33%

47%

15%

18%

13%

6%

17%

12%

3%

3%

2%

1%

17%

2%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

29歳未満 30-40代 50-60代 70-80代 不明

全体 1 2 3 4 5

1 2 3 4 5

1 2 3 4 5 明るさに対する印象度(%)

清潔感に対する印象度(%)

安心感に対する印象度(%)

133 5-4 高速道路樹林の機能に対する評価

高速道路樹林は高速道路会社が整備した設計要領に基づいて,多様な機能を設定してい る。これらの設定した機能が,樹林化後25~30年を経過した状態において,地域住民にど のように評価されているかを確認した。

高速道路会社が,高速道路の建設時に配慮する「景観」,「文化」,「教育」,「自然環境・

生物多様性保全」,「農耕地の病害虫の蔓延防止に対する効果」,「居住環境」の 6 項目につ いて,高速道路樹林の周辺地域に及ぼすと考えられる影響項目として設定し,評価を行っ てもらった。

6項目それぞれにおいて「良い」と評価する回答は「悪い」とした評価した度合いを上回っ た(図-5-4-1)。特に期待の高かった項目は「景観」であり,次いで「居住環境」と「自然 環境・生物多様性保全」がほぼ同等に評価された。したがって,地域住民において,人に とっての生活環境と自然環境の充実は,同じ評価軸であることを示唆した。また,最も「良 い」評価の低かった項目は「農耕地の病害虫の蔓延防止に対する効果」であった。農耕地 の病害虫の蔓延防止については,「分からない」の度合いが評価項目の中で最も高く,高速 道路樹林の機能について理解が進んでいない可能性を示唆した。

続いて,生物多様性保全を前提に,高速道路会社の実施する樹林整備や管理作業に対す る評価を調査した(図-5-4-2)。植樹,草刈,剪定は,回答の過半数が実施すべきと回答し た。一方,自然に任せた管理や全伐採といった極端な管理計画は,実施すべき作業と思わ ないことが明らかになった。

134 51%

49%

48%

38%

6%

4%

39%

38%

32%

28%

30%

30%

6%

11%

22%

13%

9%

10%

10%

15%

25%

27%

16%

6%

1%

6%

6%

5%

20%

24%

5%

13%

1%

2%

2%

2%

28%

22%

2%

31%

6%

5%

5%

10%

15%

13%

16%

植樹 草刈 剪定 間伐 伐採(皆伐)

放置管理 外来種駆除 その他

良い どちらかと言えばよい どちらともいえない

どちらかと言えば悪い 悪い 分からない

図-5-4-1 高速道路樹林の沿道環境への影響に対する評価 Fig.5-4-1 Evaluation of influence to environment of expressway forest

図-5-4-2 生物多様性を踏まえた高速道路樹林整備および樹林作業等に対する評価 Fig.5-4-2 Evaluation of planting trees and maintenance methods cosidering

biodiversity

高速道路樹林の沿道環境への影響に対する評価(%)

27%

6%

24%

14%

13%

38%

43%

41%

16%

41%

25%

28%

41%

18%

18%

39%

19%

36%

34%

12%

5%

2%

6%

3%

1%

2%

3%

13%

1%

2%

1%

0.5%

0.5%

1%

18%

11%

31%

11%

24%

22%

5%

5%

居住環境 農耕地の病害虫蔓延防除 自然環境・生物多様性保全 教育 文化 景観 その他

良い どちらかと言えばよい どちらともいえない

どちらかと言えば悪い 悪い 分からない

生物多様性を踏まえた高速道路樹林整備及び樹林作業高速道路樹林の沿道環境への影響項目

生物多様性を踏まえた高速道路樹林整備及び樹林作業 に対する評価(%)

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