本章では,第 1 章で示した主要な研究目的「②樹林作業を実施した高速道路樹林の植生 の特性を明らかにすること」に対応するため,第 2 章で設定した研究方法に基づき,大分 自動車道における樹林作業後の高速道路樹林の植生回復特性を明らかにした。この植生回 復特性の把握は,高速道路樹林の生物多様性に配慮した管理計画を検討するうえで,第 6 章における管理計画パターンの前提となるものである。
4-1 調査対象の高速道路樹林の建設・管理に関する履歴の整理
樹林作業前の調査地は,最大群落高さ12.0 mの林冠を形成し,林冠の構成種は常緑広葉 樹主体の樹林である。樹林化は高速道路建設時に行われ1990年3月にしゅん功した。
樹林作業実施以前の管理作業は,定期的な作業として,のり肩及びのり尻から幅2.0 m程 度を対象に,のり肩は夏季~秋季に,のり尻は秋季~冬季に,年 1 回の草刈を行うととも に,広葉系雑草を対象とした選択性の除草剤等を,薬剤の使用規定に準じて年1~3回散布 していた。
完成図94)を基に,各調査地の樹林化当初の種組成の整理を行った(表-4-1-1)。配植は2 タイプありサンゴジュ (Viburnum odoratissimum Ker Gawl. var. awabuki (K.Koch) Zabel),タブノキ(Machilus thunbergii Siebold et Zucc.)等の広葉樹(以下,「植栽種」
という)22種が,樹種特性に応じた設計規格(高木樹高2.5 m,高木の苗木樹高0.5 m,中
木樹高1.5 m,低木樹高0.5 m)により植栽されていた。植栽密度は1本/5.0 m2(2.0 m
×2.5 m)とし,道路横断方向ののり長が12.0 mを超える場合は,植栽密度1本/7.5 m2
(3.0 m×2.5 m)でのり尻側に苗木を植栽していた(図-4-1-1)。
91
A B C D E F G
サンゴジュ 17 20 23 14
タイサンボク 10(10) 24(24) 42(42) 20(20) 25(25) 58(58) タブノキ 6 12(4) 45(29) 12(8) 52(36) 22(16) 30(26)
マテバシイ 20(10) 59(50)
ヤマモモ 3 18(6) 24(16) 36(26)
ウバメガシ 6 4 10 5 9
キョウチクトウ 78 71 82 73 118 40
キンモクセイ 6 4 8 8
サザンカ 8 8 6 4
トウネズミモチ 6 4 8 4 4
ヤブツバキ 6 4 5
イロハモミジ 6 4 24(16) 10(6) 28(20) 18(12) 19(15) ナンキンハゼ 3 12(9) 12(8) 31(21) 13(9) 39(30)
ヤマボウシ 4 15 15 13
シモクレン 14 6 13
ハナカイドウ 6 4 8 8
ムクゲ 6 4 5
シナレンギョウ 170 114 225 120 228 156 120 ハコネウツギ 130 245 315 310
ハナゾノツクバネウツギ 200 200
ヒラドツツジ 100 40 100
ヤマブキ 174 120 285 138 249
計 431 710 942 888 540 792 957
常緑 中木 H=1.5 常緑 高木 H=2.5
調査地
常 緑 広 葉 樹
低木 H=0.5
樹林化時の規格
・樹種名
落 葉 広 葉 樹
落葉 高木 H=2.5 落葉 中木 H=1.5
表-4-1-1 各調査地の植栽種の本数
Table4-1-1 Number of planted trees in each investigation area
*( )内は苗木規格(樹高0.5 m)で植栽した内数
*
92
*1 のり面長さが12.0 mを超える場合の苗木の配植範囲
*2 のり肩に列植したキョウチクトウ(Nerium oleander L. var. indicum (Mill.) O.Deg. et Greenwell)の 配植は省略
図-4-1-1 樹林化実施の際の植栽タイプ90)
Fig. 4-1-1. Types of planting design for expressway forests 本線路肩
2.0 2.0 2.0 2.0
2.0 のり尻
2.0
Type-2
本線路肩 のり肩
2.5
2.0 2.0
*1
2.0 2.0 2.0
2.0 Type-1
2.5 のり肩
*1
のり尻 単位:m 常緑高木 落葉高木
低木 落葉中木 常緑苗木 落葉苗木 常緑中木
93 4-2 樹林作業の条件整理
林床の刈払い後に,樹高1.0 m以上を対象に毎木調査を行い,2015年6~9月に樹林作 業 を 実 施 し た 。 面 的 な 刈 込 の み 行 っ た 低 木 性 の 植 栽 種 シ ナ レ ン ギ ョ ウ (Forsythia viridissima Lindl.),ハナゾノツクバネウツギ(Abelia x grandiflora (Rovelli ex André) Rehder),ヒラドツツジ(Rhododendron x pulchrum Sweet),ヤマブキ(Kerria japonica
(L.) DC.)4種を除く樹林作業概要を整理した(表-4-2-1,表-4-2-2)。
(1)間伐作業方針
間伐作業は,間伐率30 %(調査地A,G),間伐率50 %(調査地B,C,D)を目標と し,以下の条件に該当する個体は優先的に伐採した。調査地E,Fは対照調査地として設定 し,通常の管理作業で行う,敷地境界から道路横断方向の幅2.0 mのみを伐採した。
・林冠に位置する樹高5.0 m以上の木本類
・アカメガシワ(Mallotus japonicus (L.f.) Müll.Arg.)やクスノキ(Cinnamomum camphora
(L.) J.Presl)など,伐採要望の高い高木性の侵入種
・のり肩から3.5 m以内の木本類
・低木性の植栽種を除く,のり尻から3.5 m以内の木本類
・縦排水溝から道路縦断方向2.0 m以内にある木本類
・ボックスカルバート出入口周囲の木本類 (2)高伐作業方針
高伐作業は,高伐後の目標樹高を5.0 mに設定し,間伐対象外となった樹高5.0 m以上 の個体を対象に,次の作業方針(以下,「高伐強度)という)に従って実施した。また,樹 林作業後は,樹林作業実施以前と同様の定期的作業を実施するとともに,のり面全体の状 況を確認しながらメダケ(Pleioblastus simonii (Carrière) Nakai)の刈払いや,伐採した クスノキ等の大径木の切株に,再萌芽抑止対策として薬剤塗布を実施した。
・調査地A,B:目標樹高を厳守した高伐
・調査地C:目標樹高±1.0 mの範囲内で高伐後の枝先端に葉を残すことを優先した高伐
94
・調査地D:目標樹高を目指すが高伐後の枝先端に葉を残すことを優先した高伐
・調査地E,F:高伐なし(対照調査地)
・調査地G:目標樹高を設定せず林冠からの突出枝のみを高伐
95
表-4-2-1 各調査地の樹林作業の概要
Table4-2-1 Summary of forest work in each investigation area 調査地名
(略称区分名*2)
上段:樹林作業本数
下段:作業本数割合(%)*1 調査地 本数
目標樹高 設定
のり面 伐採 高伐 合計 方位
A(目標厳守-30%区) 71 86 157 195
あり 北 36 44 80
B(目標厳守-50%区) 135 91 226 245
あり 北 55 37 92
C(目標±1.0m-50%区) 274 117 391 540
あり 北 51 21 72
D(枝葉優先-50%区) 181 138 319 359
あり 北 50 39 89
E(対照調査地) のり尻から幅2mのみ伐採 不明 なし 南 F(対照調査地) のり尻から幅2mのみ伐採 不明 なし 南 G(突出枝のみ-30%区) 79 157 236 236
なし 南 33 67 100
*1調査地本数に対する作業対象本数割合。
*2 略称区分名は,高伐方針・間伐率の順で記載
96
種名 伐
採 剪 定
伐 採
剪 定
伐 採
剪 定
伐 採
剪 定
伐 採
剪 定
サンゴジュ 1 30 0 17 2 0 23 0 0 15 0 0 0 0 0
タイサンボク 0 0 0 1 2 1 1 6 0 2 13 0 0 3 0
タブノキ 2 4 0 2 5 0 13 20 0 4 5 0 4 16 0
マテバシイ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 12 32 0
ヤマモモ 0 1 0 3 5 0 2 15 0 1 10 0 1 1 0
ウバメガシ 0 0 0 16 23 0 2 5 0 26 22 10 20 15 0
キョウチクトウ 18 7 7
キンモクセイ 0 15 0 0 3 0 3 1 0 0 0 0 0 0 0
サザンカ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0
トウネズミモチ 4 8 22 4 12 0 85 34 5 47 33 10 0 0 0
ヤブツバキ 0 0 0 3 2 12 3 1 1 0 0 0 0 0 0
イロハモミジ 0 1 16 1 1 0 3 16 143 1 12 20 3 5 0
ナンキンハゼ 0 2 0 8 2 0 6 5 0 9 19 0 11 30 0
ヤマボウシ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0
ハナカイドウ 0 1 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0
ムクゲ 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
ハコネウツギ 1 3 0 8 9 0 7 5 0 5 5 0 0 0 0
イヌツゲ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0
クスノキ 2 0 0 4 0 0 13 0 0 6 0 0 3 0 0
クロガネモチ 0 4 0 7 5 4 52 8 0 8 11 0 0 10 0
サカキ 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0
スダジイ 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0
ナワシログミ 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
ピラカンサ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 0 1 0 0
モチノキ 0 0 0 7 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0
アカメガシワ 3 0 0 0 0 0 16 0 0 27 0 0 5 0 0
アキグミ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0
イヌビワ 1 7 0 0 0 0 1 0 0 6 1 0 1 0 0
エゴノキ 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
エノキ 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0
カキノキ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0
コブシ 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 2 0 0 2 0
ヌルデ 9 0 0 16 1 0 1 0 0 3 0 0 2 7 0
ネムノキ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0 0 3 2 0
ハクモクレン 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0
ハゼノキ 29 8 0 26 15 0 34 0 0 12 2 0 6 28 0
ムクノキ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0
シュロ 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
計 71 86 38 135 91 19 274 117 149 181 138 40 79 157 0 侵
入 種
常 緑 広 葉 樹
落 葉 広 葉 樹 落 葉 広 葉 樹
G
調査地・作業種別 A B C D
常 緑 広 葉 植樹 栽 種
表-4-2-2 作業種別ごとの各樹種の対象本数
Table4-2-2 Number of trees of each tree species by work type
作業無
調査地凡例
A:目標厳守-30%区 B:目標厳守-30%区 C:目標±1.0m-50%区 D:枝葉優先-50%区 E:対照調査地 F:対照調査地 G:突出枝のみ-30%区
作業無
作業無 作業無
作業無
中木
侵入種 高木
植栽種 常緑広葉樹
低木
落葉広葉樹
高木 中木
落葉広葉樹常緑広葉樹
ヤシ
高伐 高伐 高伐
高伐 高伐
97 4-3 樹林作業後の植生と光環境の調査結果 4-3-1 階層構造と群落高さ
階層別の植生状況を把握するため,各調査地の樹冠の高さを基に,林冠を形成する最上 層を第1階層,第1階層に達しない樹高5.0 m以上のみで構成する群落を第2階層,樹高
1.5 m以上~5.0 m未満を主体とする群落を第3階層,樹高1.5 m未満で構成する最下層を
第4階層とし,4つの階層群落に整理区分した(表-4-3-1-1)。
この整理によって,樹林作業後の各調査地の階層構造の群落高さと階層構造の比較を 行った。
階層構造は,目標樹高を設定した調査地A~Dにおいて第2階層が消失し,高伐強度,
間伐率が共に高かった調査地B(目標厳守-50%区)は第 1階層も消失した。目標樹高を 設定しなかった調査地G(突出枝-30%区)は,対照調査地と同様に第1階層と第2階層 を有する階層構造であった。
群落高さは,間伐率50 %の調査地 B,C,D 間において,D(枝葉優先-50%区)>C
(目標±1.0 m-50%区)>B(目標厳守-50%区)の順に,高伐強度が高くなるにしたがっ て低くなった。また,同じ高伐方針の調査地 A,B 間において調査地 A(目標厳守-30%
区)より間伐率の高い調査地 B(目標厳守-50%区)が低くなった。樹林作業を行った調 査地(A,B,C,D,G)と対照調査地(E,F)との違いは明瞭ではなかった。
98
表-4-3-1-1 各調査地の階層高さ
Table4-3-1-1 Layer heights in each investigation area
A 目標厳守
-30%区
B 目標厳守
-50%区
C 目標±1.0m
-50%区
D 枝葉優先
-50%区
E 対照調査地
F 対照調査地
G 突出枝のみ
-30%区 第1階層 7.0~8.0 ― 7.0~9.0 7.0~10.0 8.0~11.0 7.0~9.0 9.0~12.0 第2階層 ― ― ― ― 5.0~8.0 5.0~7.0 5.0~ 9.0 第3階層 1.5~ 5.0 1.5~ 5.0 1.5~ 5.0 1.5~ 5.0 1.5~ 5.0 1.5~ 5.0 1.5~ 5.0 第4階層 ~1.5 ~1.5 ~1.5 ~1.5 ~1.5 ~1.5 ~1.5 階層
調査地
単位:m
99 4-3-2 出現種数と出現種数比率
対照調査地を含む全調査地の総出現種数は275種,類別では草本類が148種と最も多く,
続いて木本類,ツル性植物,シダ類,タケ類,ヤシ類の順となった(表-4-3-2-1)。類別の 出現種数順位は,各調査地単位とも同様であった。
各調査地の総出現種数は調査地G(突出枝のみ-30%区)が169種で最大であった。樹林 作業を行った調査地間では,総出現種数は高伐強度の高い方が減少し(A<B<C<D<G),
単位面積(1,000 m2)当たりでは増加する傾向であった。
帯状調査区内におけるコドラート単位の出現種数は,各調査地とものり尻から 5.0 m以 内のコドラート区画が最も多かった(図-4-3-2-1)。
類別植物種の出現種数の種組成比率は,対照調査地も含めいずれの調査地も同程度であ り,第3章の長崎自動車道の高速道路樹林より木本類は5~10%低く,草本類は15~20%
程度高かった(図-4-3-2-2)。
100
A B C D E F G 全体 樹林作業調査地 対照
調査地
木本類 33 41 44 43 41 34 49 73 69 45
草本類 68 61 74 74 71 69 87 148 133 97
ツル性植物 14 14 15 20 18 10 17 30 27 19
シダ類 7 8 11 9 8 4 13 20 19 8
タケ類 2 1 2 3 1 1 2 3 3 2
ヤシ類 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
種数計 125 126 147 150 140 119 169 275 252 172 盛土面積
(m2) 640 890 1,460 1,550 1,140 1,030 2,300 9,010 6,840 2,170 出現種数
/1,000m2 195 142 101 97 123 116 74 31 37 79 表-4-3-2-1 樹林作業後の調査地の出現種数
Table4-3-2-1 Number of plant species in each investigation area after work
図-4-3-2-1 各調査地のコドラート位置別の出現種数
Fig. 4-3-2-1 Number of classified plant species in each quadrat of investigation area 調査地凡例
A:目標厳守-30%区 B:目標厳守-30%区 C:目標±1.0m-50%区 D:枝葉優先-50%区 E:対照調査地 F:対照調査地 G:突出枝のみ-30%区
18 22 18 16 7
15 16 15 13 12 8
22 3 3
9 13
22 14
31 4
7 16
7 9 10
8 5
6 7
10 7
4 2
2 2
1 1 1 1 1 1
1 1 1
1 1
1 1 1
1
0 10 20 30 40 50 60
0-5 5-10 10-15 15-20 20-25 0-5 5-10 10-15 15-20 20-25 0-5 5-10 10-15 15-20 20-25
GFE
出現種数 出現種数
各調査地ののり尻からのコドラート位置
( m ) 17
15 3
18 19 12
18 20 16 11
22 12 9
27 8 7
27 21 22 16
12 8
5
11 9
4
8 6 8 6
2 3
2
4 5
1
2 3
2 1
1 1 1
1 1
0 10 20 30 40 50 60
0-5 5-10 10-15 15-20 20-25 0-5 5-10 10-15 15-20 20-25 0-5 5-10 10-15 15-20 20-25 0-5 5-10 10-15 15-20 20-25
DCBA
木本類 草本類 ツル性植物 シダ類 タケ類 ヤシ類
各調査地ののり尻からのコドラート位置
( m )
101
図-4-3-2-2 各調査地の類別植物種の出現種数比率
Fig. 4-3-2-2 Percentage of classified plant species in each investigation area
類別出現種数比率(%)
調査地
調査地凡例
A:目標厳守-30%区 B:目標厳守-30%区 C:目標±1.0m-50%区 D:枝葉優先-50%区 E:対照調査地 F:対照調査地 G:突出枝のみ-30%区