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研究 6.達成動機が生きがい,社会参加,役割意識,自己効力感,

1節 背 景

研 究 2 から 5 は ,横 断 的調 査 によ っ て達 成 動機 に 関連 す る要 因 の影 響 を検 討 し てき た.

これ ら の研 究 の限 界 は, 構 造 的関 係 性の 検 討が でき て も, 因 果推 論 の検 討 が でき な いと こ ろに あ る.した が って 研 究 6で は,地 域在 住 高齢 者を 対 象に 6ヶ月 間 の縦 断 的 調査 を 行い , 達成 動 機が 生 きが い ,社 会 参 加, 役 割意 識 ,自 己効 力 感, 身 体機 能 に与 え る 影響 を 明ら か にす る .

介 護 予防 事 業は ,高 齢 者が 生 き生 き と生 活 し ,健 康寿 命 を延 長 する た めに 重 要で あ る 4). 高齢 者 の健 康 に関 す る先 行 研究 で は ,健康 や 幸 福感 の 指標 で あ る HRQOL に 対し て ,歩 行 速度 や 活動 能 力な ど とい っ た 身体 機 能は 肯 定的 な相 関 や影 響 を示 し ,一 方 で 心理 的 や健 康 的 な ス ト レ ス は 否定 的 な 影 響 を 生 じ さ せ て い る こ と が 明 ら か とな っ て い る 1 0 3-1 0 5). ま た,

地域 在 住高 齢 者で も 外出 頻 度や 歩 行 能力 の 維持・向 上 が HRQOLの 良 好な 状 態と 関 連が あ り ,肯 定 的な 影 響を 与 え るこ と が明 ら かと な っ た 42- 4 4).さら に 社会 参 加は ,外 出 頻度 や 歩 行能 力 と関 連 があ り ,構 造 的 関係 性 の検 討 では ,社 会 参加 や 歩行 能 力の 高 さ が外 出 頻度 を 促 す効 果 が あ るこ と が 明 らか と な っ て い る 1 0 6). つま り , 高 齢者 の 健 康 寿命 の 維 持 ・向 上 は, 歩 行能 力 や社 会 参加 の 状 態が 良 好だ と ,定 期的 な 運動 習 慣や 外 出機 会 の 増加 に つな が りや す いと 考 えら れ る .加え て ,本論 文 の研 究 2や 研 究 4の知 見 から ,地 域在 住 高 齢者 に おい て 達成 動 機が 社 会参 加 や HRQOLに 対 し て肯 定 的な 影 響を 与 えて お り,生 きが い や役 割意 識 を高 め る効 果 があ る こと も 明 らか と なっ た.それ ら の概 念 は 自宅 内 での 役 割よ り も,

社会 と つな が れる よ うな 役 割と 関 連 が強 い こと も明 ら かと な った . また 研 究 3で は ,地 域 在住 高 齢者 の 達成 動 機が , 自 己効 力 感を 高 め, 絶望 感 を緩 和 する 効 果が あ る こと が 明ら か とな っ た.

し か し, こ れら の 達成 動 機 によ る 影響 は 横断 的調 査 によ っ て 行 わ れて お り ,検 討 した 変 数間 の 構造 的 関係 性 や対 象 者 集団 で の全 体 的な 傾向 に 対す る 知見 で ある . ま た, 達 成動 機 や HRQOL, 生き が い など の 筆者 ら の研 究 で用 いた 概 念は 自 記式 質 問紙 に よる 主 観 的評 価 を基 に して い る. リ ハビ リ テ ーシ ョ ンの 支 援で は各 個 人へ の 個別 の アプ ロ ー チが 主 であ る ため , 対象 者 全体 の 傾向 だ け でな く ,ア プ ロー チに よ って 効 果が 期 待さ れ る 対象 者 個人 に よる 変 化も 生 じる こ とが 予 測 され る が , 時 系列 を伴 う 因果 関 係や 対 象者 個 人 の傾 向 に対 し て達 成 動機 が 与え る 影響 に つい て は 明ら か とな って い ない .

本 研 究の 目 的は , 地域 在 住 高齢 者 に対 し て縦 断的 調 査を 行 い, 個 人内 の 変 化と 対 象者 全 体の 傾 向を 踏 まえ た 階層 的 デ ータ に よっ て ,地 域在 住 高齢 者 の 達 成 動機 が 生 きが い ,社 会 参加 , 役割 意 識, 自 己効 力 感 ,身 体 機能 な どに 与え る 影響 に つい て 明ら か に する こ とと し た. 本 研究 の 意義 は ,達 成 動 機と 生 きが い ,役 割の 獲 得, 社 会参 加 , 自 己 効 力感 , 身体 機 能な ど の因 果 推論 が 可能 に な るこ と , 個 人 の変 化と 対 象者 全 体の 傾 向を 理 解 でき る よう に

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なる こ と, に あっ た .

2節 方 法

研 究 期間 は 平 成 26年 3月 から 12月で ,研 究内 容 の提 示 と同 意 書の 記 載に 承 諾 の上 ,署 名の 得 られ た 者に 研 究者 , 又 は研 究 協力 者 が対 象者 に 調査 用 紙を 配 布し , 調 査用 紙 への 回 答と 同 時期 に 身体 機 能の 計 測を 行 っ た .

1項 対 象 者

対 象 者は , デイ サ ービ ス を 利用 す る地 域 在住 高齢 者 とし た .同 意 の得 ら れ た対 象 者に 対 して ,3時 点(初 回 ,初 回 か ら 3ヶ 月 後 ,初 回 か ら6ヶ 月 後)で の縦 断 的 調査 を 実施 し た.

対象 者 の除 外 基準 は ,研 究 3で 示し た 内容 に 加え ,3時点 で の調 査 が困 難 な者 と した .

2項 調 査 用 紙 1) フ ェ イ ス シ ー ト

フ ェ イス シ ート で は, 性 別 ,年 齢 ,主 病 名, 介護 度 ,外 出 頻度 , 趣味 の 数 を収 集 した . 外出 頻 度は 研 究 2と同 様 ,経済 的 ゆと り は研 究 3と 同 様 ,趣味 の 数は 研 究 4と 同 様で あ っ た.

ま た ,身 体 機能 は ,握 力 と Timed Up & Go(以 下 ,TUG)と 10m歩 行 速度 ( 以下 , 歩 行速 度 )を 研 究者 , ある い は 研究 協 力者 が 計測 した . 握力 は 立位 , 又は 座 位 で測 定 する 側 の 上肢 を 真 下 に下 ろ し , 肘関 節 を 伸 展 させ た 状 態で 測 定 し た 10 7). 測 定 器具 は ス メ ドレ ー 式の デ ジタ ル ,又 は アナ ロ グの 握 力計 を 使用 し ,左 右 2回ず つ 測定 し た上 で 記録 の 良い 上 肢側 の 2回 の平 均 値を 算 出し た .TUG は 椅子 から 立 ち上 が り 3m を 往復 し て椅 子 に座 る ま での 速 さの 評 価で ,転 倒を 起 こし や すい 高 齢者 の基 準 とし て 13.5秒 以上 の カッ ト オ フ値 が 設定 さ れて い る 10 8).歩 行 速度 は , 施設 内 で普 段行 っ てい る 歩行 状 態( 独 歩,T 字 杖, 歩 行器 な ど) で 実施 し ,助 走 路( 測 定 区間 の 前 後 3m) を 含め た 約 16m( 直 線歩 行 路) を 歩 行し , 定常 歩 行と み なせ る 10mの 所要 時 間を スト ッ プウ ォ ッチ で 計測 し た 10 9)

2)SAMR

研 究 3と 同様 で あっ た .

3)SOPI

研 究 2と 同様 で あっ た .

4)K-1式 ス ケ ー ル

研 究 4と 同様 で あっ た .

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5) 役 割 意 識

研 究 4と 同様 で あっ た .

6)GSES

研 究 3と 同様 で あっ た .

3項 分 析 方 法

統 計 解析 に は ,記 述 統計 量 の算 出 と正 規 性の 検定 に IBM SPSS Statistics 22,項目 妥 当 性 に Exametrika version5.3, マ ル チ レ ベ ル 相 関 分 析 と 因 果 推 論 の 事 前 分 析 に HAD version14, 因 果 推 論 の 事 前 分 析 と マ ル チ レ ベ ル 構 造 方 程 式 モ デ リ ン グ (MultiLevel Structural Equation Modeling;以 下 ,MLSEM)に Mplus 7.2を 使 用し た .

1) 記 述 統 計 量 の 算出 と 正 規 性 の 検定

3時 点 間で の 調査 用 紙で 使 用し たSAMR,K-1式ス ケ ール ,SOPI,GSESの 各項 目 と 尺 度合 計 得点 や サマ リ ース コ ア,下 位尺 度 合計 得 点と 外 出頻 度 ,役 割 の数 ,趣味 の 数,握力 , TUG,歩 行速 度 につ い て平 均 値 と SD,歪度 ,尖度 ,正 規性 の 検定(Kolmogorov-Smirnov 検定 ) を算 出 した .

2)2変 量 間 の マ ル チレ ベ ル 相 関 分 析

マ ル チレ ベ ル分 析 とは , 集 団に 個 人が 所 属し てい る よう な 階層 デ ータ に 適 した 分 析で あ る 110).階層 デ ー タを 分 析す る 場合 ,集団 内 の 相関 を 考慮 し なけ れ ば第 1 種の 過 誤 確率( 本 当は 差 がな く ても , 差が あ る と判 断 して し まう 分析 で の間 違 い) が 増大 す る とい う 問題 点

が ある 110 )ため , そ れ に 対処 す る た め に マル チ レ ベ ル分 析 を 用 い る必 要 が あ る . この 分 析

は, 集 団内 の 相関 を 考慮 し , デー タ の特 徴 に適 した 分 析で あ るた め ,よ り 正 確な 結 果の 推 定値 を 算出 す るこ と がで き る. 本 研 究で は ,3 時点 での 3 回 分 の評 価 結果 が 個 人と い う集 団内 の デー タ と考 え られ る た め個 人 内と し ,集 団間 の デー タ は対 象 者全 体 の 傾向 と 考え ら れ る た め 個 人 間 と し た . 個 人 内 と 個 人 間 の そ れ ぞ れ の 相 関 係 数 に つ い て 分 析 す る た め , SAMR や K-1 式ス ケ ール ,SOPI,GSES の尺 度合 計 得点 や サマ リ ース コ アと 役 割 の総 数 や外 出 頻度 ,趣味 の 数,握力 ,TUG,歩 行 速度 との 相 関に つ いて マ ルチ レ ベル 相 関 分析 で 算出 し た. 相 関の 強 さは 研 究 2と同 様 の基 準 で判 断 した .

3) 対 象 者 内 , 対 象者 間 で の 階 層 デー タ を 用 いた 因 果 推 論 の 分 析

6ヶ月 間 の縦 断 的デ ー タを 用 い てMLSEMを 実施 し た( 推定 法 はMLR).MLSEM とは , 集団 に 個人 が 所属 し てい る よ うな 階 層デ ー タを 用い て ,集 団 内の 分 散( 級 内 分散 ) と集 団

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間の 分 散( 級 間分 散 )の 構 造 方程 式 モデ リ ング を実 施 し, い ずれ の 影響 に つ いて も 検討 す るこ と がで き る手 法 であ る 11 0).MLSEM は, 通常 の マル チ レベ ル 分析 の 上位 モ デ ル に 該 当し ,SEMの 特 性を 活 かし て よ り柔 軟 な統 計 モデ リ ング が 可能 で ある .本研 究 では ,3時 点で の 3回 分の 評 価結 果 が個 人 とい う 集団 内 のデ ー タで あ り,個人 内 の影 響 と個 人 間の 影 響に つ いて 検 討す る こと と した .なお ,MLSEMの分 析 には 観 察変 数 のみ を 使用 す る ため , SAMR や SOPI,K-1 式 スケ ー ル,GSES は尺 度の 合 計得 点 かサ マ リー ス コア , 介 護度 , 役割 の 総数 , 外出 頻 度, 趣 味の 数 , 握力 , 歩行 速度 ,TUGの デー タ を 分析 に 用い た .

23 研 究 6: 仮 説 モ デ ル1

注 1)SAMRmと は ,各 個 人 の 3時 点 にお け る SAMR の尺 度 合計 得 点の 平 均を 表 す.

注 2)SAMR,SOPI,K-1 式 スケ ー ル,GSESはそ れ ぞれ の 尺度 合 計得 点 ,ま た は サマ リ ース コ アを 表 す.

SOPI

SAMRm

K-1 式 GSES 外出 役割 握力 歩行速度 T UG

K-1 式

SOPI GSES 外出 役割 握力 歩行速度 TUG

SAMR K-1 式

SOPI GSES 外出 役割 握力 歩行速度 TUG

個人間

個人内

介護度 趣味

介護度 趣味

介護度 趣味

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MLSEM を実 施 する 際 に は,本 研 究の デ ータ が MLSEM を 適用 す る前 提 を統 計 的に 満 た して い るか を 確認 す るた め の 事前 分 析が 必 要と なる . その た め, 級 間分 散 と 級内 相 関係 数

(Intra-class Correlation Coefficient;以下 ICC1)の 確 認 ,Design Effect(以 下 ,DEFF)

の確 認 ,各 変 数の 集 団平 均 の信 頼 性 (以 下 ,ICC2)の 確 認を 行 っ た 11 0).MLSEM を 実施 する こ とが で きる 事 前分 布 の基 準 は ,級 間 分散 の p値 が 有意 水 準5% 未 満,ICC1 が研 究2 の相 関 係数 と 同様 の 基準 と し て 0.2以上 の 弱い 相関 が ある と し た 11 0).DEFF { 算出 方 法:

1 + (個 人 内の 測 定回 数-1) × ICC1}は ,ICC1に対 し て集 団 のサ ン プル サ イズ ( 本 研究 で は個 人 の測 定 回数 )を 重 み付 け した 値 であ り ,DEFFが 2を 超 え ると MLSEMが 推 奨さ れ

11 0).ICC2{算 出 方法 :(個人 内 の測 定 回数× ICC1) ÷ DEFF} は内 的 一貫 性 の指 標 と

同義 で あり ,個 人間 の 推定 値 に測 定 誤差 が 生じ てい な いか を 検討 す る基 準 であ り ,0.70以 上が 望 まし く ,0.60 未満 だ と推 定 値に バ イ ア スが 生 じる 可 能性 が ある が ,集団 内 の人 数 が 大き く なる ほ どそ の 値が 高 くな る と いう 特 徴が あ る 5 5, 11 0)

MLSEM で は ,2 つ の仮 説 モデ ル に対 し て 分 析を 行 った . 最初 の 仮説 モ デル 1は, 達 成 動機 か ら直 接 的に 各 変数 に 与え る 影 響を 検 討す る も の であ る( 図 23).仮 説モ デ ル 1には , 級 間 分 散 の 説 明 変 数 に 各 個 人 の 3 時 点 に お け る SAMR の 尺 度 合 計 得 点 の 平 均 (SAMR mean;以 下 ,SAMRm)を 投 入し た .ま た ,説 明変 数 の級 内 分散 と 級間 分 散を 分 け るた め に行 う 処理 と して ,SAMRの 尺度 合 計得 点 の各 変数 か らそ の 平均 値 の差 を とる 中 心 化を 行 った . その 上 で,SAMRから SOPI や K-1 式 スケ ー ル,GSES,役 割 の総 数 ,外 出 頻度 , 趣味 の 数,握力 ,歩行 速 度,TUG に パ スを 引 くモ デ ルを 個 人内 ,個人 間 のそ れ ぞれ で 検討 した .

次 の 仮説 モ デ ル 2は, 達 成動 機 と 生き が い ,社 会参 加, 役割 意 識, 自己 効 力感 ,身 体 機 能な ど との 関 係性 に つい て 検証 す る 内容 を 設定 した( 図 24).研 究 3や 研 究 4の結 果 から , 達成 動 機は 自 己効 力 感, 生 き がい , 社会 参 加, 役割 意 識に 肯 定的 な 影響 を 与 える と 予測 さ れた( 図 24の ①).同 様 に,社会 参 加や 役 割 意識 が ,生 き がい に 肯定 的 な影 響 を与 え るこ とも 予 測さ れ た( 図 24の ②).社 会 参加 や 歩行 能力 の 高さ が 外出 頻 度を 促 すこ と が 明ら か とな っ てい る 1 06)た め,社 会 参加 や TUG,歩行 速度 が 外出 頻 度に 影 響す る こと も 予 測さ れ た( 図 24の ③).また ,達 成 動機 や 社会 参 加 の満 足 感が 高 いと ,定期 的 な運 動 習慣 や 活動 量の 増 加と な るた め ,全 身 の筋 力 量 とも 関 連の ある 握 力 や TUG,歩 行 速度 を 高め ,役割 や 趣味 を 行う 機 会に も 影響 が ある と 考 えら れ た( 図 24の ④).さ らに ,自 己 効力 感 が高 ま る と実 際 に行 動 を行 う 際の 自 信や き っ かけ と なり ,社 会参 加 や生 き が いを 促 すこ と にも な る.

役割 や 社会 参 加が 生 きが い に 影響 す る の と 同様 に, 趣 味や 外 出頻 度 も生 き が いに 肯 定的 な 影響 を 与え る 可能 性 があ る と考 え ら れた ( 図 24の⑤ ).