XVII. 大阪水素ステーション / 関西空港水素ステーション
3. 発表内容
3−1 基調講演:各国燃料電池政策のトップが語る今後の展望と戦略
(1) 広がる代替エネルギー 〜これからのエネルギーにおける水素の役割〜
発表者:United States Department of Energy(DOE), Energy Efficiency and Renewable Energy, Chief Operating Officer, Paul Dickerson
基調講演の最初として,米国 DOE におけるこれからのエネルギー戦略における水素 の役割についてEEREのPaul Dickerson氏から講演があった。講演では,2030年まで の全世界の一次エネルギー別エネルギー需要の見通しや,CO2排出量の見通し,米国に おける石油の海外依存度などが示され,米国におけるEEREが実施している水素・燃料 電池に関する取り組みについての紹介が行われた。
その概要は以下のとおりである。
現在,米国における水素・燃料電池に関する取組の政策的裏付けとして,以下のイニ シアティブがある。
① 水素・燃料電池イニシアティブ(2003年1月)
② 先進エネルギーイニシアティブ(2006年2月)
③ ハワイクリーンエネルギーイニシアティブ(2008年1月)
・ハワイにおけるエネルギー供給量を,再生可能エネルギーの使用やエネルギー効率 の改善によって2030までに少なくとも現状の70%とするための道筋をつける
・ハワイの石油消費量とGHG排出量を削減する
・前例のないスケールでの再生可能エネルギー利用に関する信頼性の実証 等
これらを受けたEEREのプログラムは,実証試験,応用研究開発,基礎研究を分野に わたって計画されており,相互に連携させながら進められている。
燃料電池に関する研究開発では,電解質膜,触媒および触媒担体,水輸送,構造解析 などの分野において進められており,第一に自動車用 FC に関する研究開発,第二に定 置用やその他自動車以外の分野におけるFCの研究開発がターゲットとなっている。
自動車用 FCの分野では,コスト目標を2010年までに$45/kW(大量生産時,以下 同様),2015年までに$30/kWと置いており,2002年には$275/kWであったものが 現状で$94/kWと,全体の3/4程度の道のりまで来ている。また,スタックの耐久性 に関しては,2015年の5000時間の目標に対して,2006年現在で2000時間程度に達し ている。
FCVの商用化に向けては,クライスラー社が約100台FCVを導入し,GMでは2011 年までに100台を商用化し,ホンダは2008年にリースを開始,2018年に商用化を予定 している。また,大手エネルギー会社は,こうしたFCVを支えるため,水素ステーショ
ンの建設を進めていく予定である。
(2) 燃料電池に関する取組の現状と今後の戦略
発表者:経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー対策課 燃料電池推進室長 遠藤 健太郎
経済産業省の遠藤燃料電池推進室長から,わが国における燃料電池に関する取り組み の現状と今後の戦略についての講演があった。とくに定置用燃料電池の市場導入に向け た取り組みと,燃料電池車(FCV)の開発・実証と水素インフラに整備に関する取り組 み状況,ならびにブレークスルーを目指した技術開発とそのための環境整備についての 取り組みについての紹介があった。
その概要は,以下のとおりである。
日本では,世界初の取り組みとして,2008年度まで1kW級家庭用PEFCシステムの 大規模実証事業を継続して実施している。1台50万円の目標に向けて,これまで周辺機 器のコスト削減プロジェクトなどの取り組みを行ってきた。2006 年度末で合計 1,257 サイト,2007年度末では2,187サイトとなり,2008年にはこれに1000〜1300サイト 上乗せすることが計画されている。2009年度からは商業化フェーズとして,国としてど のような支援ができるのかを検討しているところである。こうした実証試験によって,
世帯の平均で火力発電電力を用いた場合と比較して1次エネルギー削減率は14%,CO2
排出量は27%削減できることが分かった。また,2007年度からはSOFCに関する実証
研究がスタートしている。
2007年5月に公表された「次世代自動車用燃料イニシアティブ」における,①バッテ リー,②水素・燃料電池,③クリーンディーゼル,④バイオ燃料,⑤ITの活用という5 つの戦略の中に,水素・燃料電池は位置づけられている。
また,安部元首相が提唱した「クールアース50」を目指した新たな技術革新のロード マップである「Cool Earth-エネルギー革新技術計画」を2008年3月の公表に向けて作 成中である。この中でも燃料電池車は重点的に取り組むべきエネルギー革新技術として 位置づけられている。
現在JHFCプロジェクトにおいてFCVの実証試験を実施中であり,今までの取り組 みの中で,FCV のWtW の総合効率を算出し,その結果,FCV は現行車に対して大き な効率改善のポテンシャルを有することが明らかとなった。
平成20年度の燃料電池関連予算のポイントとしては,FCに関する基礎研究プロジェ クトであるFC-Cubic,HYDROGENIUS,HYDROSTARに関する予算措置が挙げられ る。規制の見直しに関しては, 2005年3月末までに初期段階での水素・FCVに関する 規制の見直しが終了している。
(3) ヨーロッパおよびドイツにおける燃料電池開発計画
発表者:NOW National Organization Hydrogen and Fuel Cells Technologies, Managing Director, Klaus Bonhoff
欧州やドイツにおける燃料電池開発計画について NOW National Organization Hydrogen and Fuel Cells TechnologiesのKlaus Bonhoff氏より,主に欧州におけるThe European Joint Technology Initiative(JTI)やドイツにおけるthe German National Innovation Programme(NIP)についての講演があった。
その概要は以下のとおりである。
現状における水素・燃料電池の技術水準に関しては,成功裏に実証プロジェクトが進 行しており,いくつかのシステムは商業化間近に至っている。ほとんどのアプリケーショ ンにおいて,今後コストの削減に向けた研究開発が必要とされている。実証試験では,
技術有効性の検証と商業化に向けた市場の準備が必要とされている。産業界,政府,研 究機関は協力して水素・燃料電池技術の成功に向けて取り組んでいかなければならない。
フランクフルトにおけるZero Regio プロジェクトでは,副生水素を用いた水素ステー ションを2006年から稼働している。35MPa,70MPaの圧縮水素および液体水素を供給 する。ステーションにはイオン液体を用いた新しいタイプのコンプレッサが設置されて いる。
カーメーカの取り組みとして,まずGMの最新FCVであるシボレーEquinoxは,最 高速度が160km/h,4.5kgの水素を搭載し,航続距離は320kmである。一方,Daimler では,2010年には第二世代のFCVを発表する予定であり,2013年には第3+4世代の FCVが予定されている。このモデルはコストを削減して市場への初期導入型のFCVと なる予定である。さらに2020年には第5世代のFCVを投入する予定であり,これは大 量生産製品となる予定である。
こうした取 り組みをサ ポートする 政府の取り 組みとして ,The European Joint Technology Initiative(JTI)やthe German National Innovation Programme(NIP)
が水素・燃料電池の市場化の準備のために創設された。これらは,資金調達プログラム である。
現在のJTIは,2005年から2008年までで終了し,新たなJTIプログラムが2008年 より開始される。2008-2013の期間で全予算は4億5千ユーロである。このプロジェク トは,① 水素車両・インフラ技術開発,② 持続可能な水素の供給,③ 定置用および発 電用FC技術開発,④ 初期市場化のためのFC技術開発,の4分野に区分される。
ドイツ政府は,水素・燃料電池の市場化に向けた研究開発に 2007〜2016 年の間に 5 億ユーロを追加的に投入する。このNIPプログラムは,インフラを含む水素利用輸送部 門,家庭用・定置用,産業用コジェネレーション,特殊用途をカバーする。
3−2 特別講演:燃料電池自動車のための水素貯蔵 〜課題と開発動向〜
発表者:Los Alamos National Laboratory, Institute for Hydrogen and Fuel Cell Research, Alternative Energy and Infrastructure, Program Director, William Tumas
省エネ・大容量の車両への水素貯蔵と高耐久・安価な燃料電池の実現がFCVの実用化 拡大の鍵となる。米エネルギー省(DOE)化学的水素貯蔵センターを中心にさまざまな 開発の最新状況についての講演があった。概要は以下のとおりである。
DOEの水素貯蔵プロジェクトの目標値は,重量%だけではなくて,扱いやすさや安全 性,環境性などいろいろな項目に渡っている。このプログラムものFY09予算は,$59M となっており,年々増加している。このプログラムでは,3 つの主要カテゴリーで研究 が進んでいる。
9 Reversible metal hydrides(再生可能な金属ハイドライド)
9 Adsorbent materials(吸着材料)
9 Chemical hydrogen storage(ケミカルハイドライド)
DOEの化学的水素貯蔵センターでは,国内外の研究機関,大学と共に,車載用ケミ カル水素貯蔵システムについて,材料や触媒,新コンセプトの開発,技術解析を用い たコンセプトおよびシステム評価,寿命の延長と水素1kg貯蔵のデモンストレートと いったことを行っている。
3−3 FC7:燃料電池自動車実用化の最前線 〜水素経済社会へのキーテクノロジー〜
(1) Hondaにおける燃料電池自動車開発の取り組み
発表者:(株)本田技術研究所 四輪開発センター 第一技術開発室 第2ブロック シニアマネージャー 新村 光一
HONDAにおける燃料電池車(FCV)開発の取り組みに関する講演として,HONDA
はFCが次世代の究極のパワープラントであるという認識の下で,天然ガスを燃料に家 庭における電力と給湯,FCVへの水素供給を行うトリジェネシステムであるホームエネ ルギーステーション(HES)関する研究開発と,FCVに関する研究開発の取組状況につ いての発表があった。とくにFCVの開発状況に関する概要は以下のとおりである。
FCVの商品化に向けた課題は,①車両出力密度の改善,②燃費/航続距離の改善,③ コスト削減と④耐久性向上であり,現状ではコスト削減と耐久性の向上に課題は絞られ てきた。
現在までの取り組みによって,車両出力密度は大幅に改善されてきており,とくに発