訪問インタビュー調査報告
訪問日時 平成19年8月29日(水)13:30〜15:00
場 所 パナソニックEVエナジー株式会社(湖西市境宿)
応対者 第1技術部
1.会社概要について
① 当社は1996年に自動車用ニッケル水素電池の開発,製造販売事業を行う会社として スタートした。
② 現時点での資本金は 30 億円で,資本比率はトヨタ自動車が 60%,松下電器産業が 46%,松下電池工業が4%である。従業員数は約1,300人(2007年3月現在)で,
ここ数年は指数関数的に増えている。2006年度の総売上は642億円,2007年度の計 画は885億円である。
③ 現在の事業内容は,HEV 用ニッケル水素電池とリチウムイオン電池の開発・製造・
販売である。定款上はBEV 用ニッケル水素電池も入っているが,現時点では補給用 に極めて少ない量の生産を行っているに過ぎない。
④ また,HEV用のECU等バッテリマネジメントユニットの開発体制も整えている。
⑤ 現在までは,ニッケル水素電池は本社(境宿)で生産,供給していたが,2007 年 3 月,近隣に大森工場を建設し,ニッケル水素電池の生産を開始している。全世界に向 けた生産をここ日本で行っている。今後の生産増強に向けては大森工場を拡張し,対 応していく予定である。現状では,海外展開の計画はない。
2.二次電池の開発体制,開発項目・開発内容について
2−1 二次電池の開発の概要
① 1996年にEV用ニッケル水素電池の開発で事業をスタートした。
② 1997年1月にEV用ニッケル水素電池EV-95(95Ah)の開発・量産を開始し,同年 10月にコミューターEV用ニッケル水素電池EV-28(28Ah)を開発した。
③ 1997年12月,プリウス用の円筒形ニッケル水素電池を開発し,量産を開始した。そ れ以降ホンダのハイブリッド車にも一部搭載されている。(図ⅩⅥ-1)
④ 2000年5月に角形電池にシフトし,HEV用樹脂ケース角形ニッケル水素電池(角形 第1世代)を開発した。
⑤ 次いで,2003 年7 月に,プリウスのフルモデルチェンジに合わせ,改良型樹脂ケー ス角形ニッケル水素電池(角形第2世代)を開発した。
⑥ 2005 年 2月には,ハリアーハイブリッドが発売されるタイミングでそれに搭載する 金属ケース角形ニッケル水素電池(角形第2.5世代)を開発した。
⑦ ニッケル水素電池については独自に開発しているが,リチウムイオン電池について は,親会社の開発に参画している。
図 XVI-1 HEV 用ニッケル水素電池の製品
2−2 BEV用二次電池の開発・生産について
① BEV用ニッケル水素電池については,2003年くらいまでは生産量が伸びていたが,
それ以降は補給用の極めて少ない生産量である。
② これまで国内外のメーカにBEV用ニッケル水素電池を提供した。米国のZEV規制へ の対応の変化等で,各社のEV開発は縮小され,各社とも生産をやめていると認識し ている。現在は,製造ラインも補給用電池の体制しか残していない。
HEV 用 Ni-MH 電地(モジュール)
2−3 HEV用二次電池の生産・供給について
① HEV用ニッケル水素電池は1997年から10年くらいで,累積100万台分生産した(図
ⅩⅥ-2)。2007年度は年産約50万台の計画である。
② HEV 用ニッケル水素電池の現状の生産能力約 50 万台/年に対して,市場から要求さ れている 100 万台/年の生産規模に対しては,今後これまで電池業界が経験したこと のない程の投資が必要となる。様々なリスクが考えられ,年産100万台というのは1 電池メーカにとって非常に厳しい挑戦である。
③ 電池コントロールユニットの設計,製造も当社は行っている。モジュールでの供給要 望はあるが,性能や品質を保証できないため,断っている。
図 XVI-2 HEV 用ニッケル水素電池の生産台数
2−4 これまでのHEV用二次電池の製品開発の経緯
① 2000年に開発した第1世代では6セルで出力が600〜800W,2003年に開発した第 2世代では1000Wと3割程度出力を向上させた(図ⅩⅥ-3)。第2.5世代(金属ケー ス)では6セルモジュールでは第2世代と同出力であるが,SUV 等のパワー重視の 車両にも対応できるように冷却性能を向上させ,さらに小型化を図っている。
② 搭載性については,初期の丸型から角形第1世代で13%程度体積を減らすことができ ている。また,角形第2世代では丸型に比べて33%,角形2.5世代(金属ケース)で
は同43%体積を減らしている(図ⅩⅥ-4)。
③ このように電池出力を向上させ,搭載数を減らすことによって,小型化,低コスト化 を図ってきたというのがこれまでの開発の流れである。しかし,現状では電圧を維持 するため,単純に電池搭載数を少なくできない状況になってきている。
④ 上記の現状に加え,6セルモジュールだけでは車種によっては搭載できない場合が生 じたため,金属ケースセルの開発に移ったという経緯である。
⑤ 第2.5世代(金属ケース)では,樹脂ケースにおいて強度確保のために必要だったデッ ドスペースなどを排除することができ,高さを19%削減した。また,単セル構造のた め,搭載する車両によって,モジュールのセル数や拘束の仕方などを変えることがで き,樹脂ケースの電池よりもフレキシビリティが高いという特長がある。
⑥ このように,第2.5世代(金属ケース)では,金属利用のため,重量当たりのエネル ギー密度や出力密度はやや落ちて価格的にも高くなったが,SUV 等の新型車両にも 対応できるように冷却性能を向上させ,小型化やフレキシビリティ向上によって搭載 性を向上させた。
⑦ 構造としては,第1世代では樹脂一体型で両端に端子を出した構造であったが,第2 世代では出力向上のため,セル間の溶接点数を増やすこと,また、抵抗低減のために 厚型の集電体を使う構造に変更した。また電池材料としては,正極/負極材料をより出 力を出すための材料に変え,さらに信頼性向上のため,新しいセパレータを用い,寿 命性能を確保した。
⑧ HEV 用二次電池への基本的な要求としては,小型軽量化,低コスト化,耐振動,全 世界の気温への対応がある。とにかく搭載してもらうために,この順序で対応してき た。しかし,ここ数年は,特にコストダウンへの要求が強くなっている。
⑨ 当社では,初期において円筒形電池を採用したが,その後角形に移行した。両者には それぞれメリットデメリットがある。円筒形電池は,電池そのものの強度は高いが,
繋ぐところが弱くなることが欠点となる。一方角形電池は,高出力設計が可能なこと,
積層しているため均一な電池特性を出しやすいこと,薄い角形にしているため冷却が 均一に行えるという特長がある。一方で,膨張などの問題もあるが,当社では拘束バ ンドを用いる構造とし,強度を確保している。
図 XVI-3 出力密度の比較
図 XVI-4 体積比較
2−5 HEV用二次電池の耐久性保証について
① 使用温度範囲はマイナス30℃〜50℃くらいである。
② 電池の保証期間については,原則として車両と同等保証となっている。ただし,これ は,車メーカが市場で保証しているものであって,当社と自動車メーカとの間には メーカによって様々な保証の取り決めのケースがある。当社はパックで供給している ため,電池パックが保証の単位となっている。
③ 電池は化学反応がベースとなっており,ある一定の環境の下で一定の使い方をしても らえれば車両の保証と同等の保証も可能であるが,実際には使い方により,その通り のコントロールができるとは限らない。そのため,どんな使い方をしても車両と同等 の保証ができるとは言えない。
④ 電池ECUでは,電池の電圧や電流,温度などを見て,SOCやパワーリミットなどを 算出し,車両側へ送信している。また,電池に異常があった場合のダイアグ情報とと もに,使うのを止めて欲しいといった電池診断情報を送っている。
2−6 ニッケル水素電池の今後の開発の方向性について
① 現在の開発の主眼は,低コスト化と信頼性向上である。ここ数年は大きな設計変更は していないが,市場情報などから信頼性の確保のための検討は継続して行っている。
今後の新しい電池開発のために,どのようにして信頼性を上げていけばよいか,どの ように検証を行っていったらよいかなどにここ1〜2年注力している。50万台/年,100 万台/年というように生産が大規模になると,信頼性が経営に与えるインパクトが大き くなるため,特に信頼性に主眼をおいた検証に注力している。
② コストダウンについては,量産だけではある程度の限界がある。初期のある程度まで は下がると思われるが,そこから先は,VE(Value Engineering)など意識を持った 生産体制や設計の見直し,物流などすべてを加味して最適化していかないと下がって いかない。今後そうした取り組みを行っていく予定である。
③ ニッケル水素電池でも,コストや信頼性に対する優先順位を下げれば出力密度を上げ ることは可能であるが,大量生産して安定した信頼性を確保するとなると容易ではな い。しかし,ニッケル水素電池は市場での実績も出てきているので,もう少し出力を 上げて体格を小さくすることが可能であれば,自動車メーカに喜んでもらえるかもし れない。
④ FCV用二次電池としては,現状のHEV用二次電池で対応可能だと思われる。