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症例

ドキュメント内 一般演題 (ページ 45-48)

佐藤 将盛,中村 真浩,小島 雅貴,塩澤 晃人,肥後隆三郎

順天堂大学医学部附属浦安病院 耳鼻咽喉・頭頸科

A case of deep cervical abscess that developed after TEE

Masamori Sato, Masahiro Nakamura, Masataka Kojima, Akihito Shiozawa, Ryuzaburo Higo

Juntendo University School of medicine Urayasu Hospital Otorhinolaryngology

1

.はじめに

Hyung Yoon Kimらによると,経食道超音波検査(TEE)

関連の合併症の発生率は0.2%から0.5%であり,死亡

率は0.01%未満との報告があり,致命傷になりうるの

はTEEプローブの挿入による下咽頭および食道の穿孔 を伴う感染症である。米国ではTEEで下咽頭穿孔と なった症例は7件報告されており,そのうち手術加療 に至った症例は4件である。

今回我々は,経食道心エコー契機で発症した深頸部 膿瘍の1例を経験したので報告する。

2

.症例 73歳男性 主訴:咽頭痛

現病歴:来院3日前の経食道心臓音波検査施行後か ら咽頭違和感が持続。来院当日朝に咽頭痛が増強し,

呼吸困難感も出現したため当院耳鼻咽喉科外来を受診 した。

既往歴:心房細動,前立腺癌,白内障 家族歴:特になし

アレルギー歴:特になし

入院時身体所見:食事摂取不良,倦怠感,38.5度の 発熱に加えSpO2:94%(RA)と,酸素化の悪化傾向あり。

頸部全周性に皮膚発赤・腫脹があり,頸部伸展困難,

含み声を認める。

喉頭内視鏡所見:咽喉頭全周性に発赤・腫脹,気道 狭窄傾向,痰・膿貯留を認める(図1)。

頸胸部単純CT:右側副咽頭間隙に低吸収域,右側優 位にガス産生と考える含気を認める(図2)。

血液生化学所見:アルブミン低下,肝機能一部上昇 に加え,脱水所見と著名な炎症反応上昇を認める。

診断:気道狭窄のある深頸部膿瘍

緊急で気管切開・膿瘍ドレナージ術施行した。

手術所見:経口挿管・全身麻酔下に胸骨切痕2横指

頭側で15 cmの襟状切開を施行し結合織を剥離,前頸

筋群を焼灼し切離したが,抗凝固薬内服と炎症による 出血傾向と壊死組織を認め,筋組織も挫滅組織を認めた。

深部にかけて組織の境界が不鮮明であり,前頸筋群 を横切開で切離・甲状腺も正中で両側へ切離した。周 囲組織・筋からは間隙より排膿を認め,強い嫌気臭を 確認した。右側頭側深部にかけてairspace確認したた め,同部位にペンローズドレーンを留置した。気管の 切 離 部(第1–2気 管 輪) に て 中 気 管 切 開 を 施 行 し,

8.0 mmの単回使用気切チューブを挿入した。創部は粗

に縫合し,連日洗浄できる状態としてガーゼ縫合し,

手術終了とした。出血70 ml(1 hr 6 min)(図3)

1

2

経食道心臓超音波検査施行後に発症した深頸部膿瘍の 1 症例

佐藤 将盛,中村 真浩,小島 雅貴,塩澤 晃人,肥後隆三郎

順天堂大学医学部附属浦安病院 耳鼻咽喉・頭頸科

A case of deep cervical abscess that developed after TEE

Masamori Sato, Masahiro Nakamura, Masataka Kojima, Akihito Shiozawa, Ryuzaburo Higo

Juntendo University School of medicine Urayasu Hospital Otorhinolaryngology

1

.はじめに

Hyung Yoon Kimらによると,経食道超音波検査(TEE)

関連の合併症の発生率は0.2%から0.5%であり,死亡

率は0.01%未満との報告があり,致命傷になりうるの

はTEEプローブの挿入による下咽頭および食道の穿孔 を伴う感染症である。米国ではTEEで下咽頭穿孔と なった症例は7件報告されており,そのうち手術加療 に至った症例は4件である。

今回我々は,経食道心エコー契機で発症した深頸部 膿瘍の1例を経験したので報告する。

2

.症例 73歳男性 主訴:咽頭痛

現病歴:来院3日前の経食道心臓音波検査施行後か ら咽頭違和感が持続。来院当日朝に咽頭痛が増強し,

呼吸困難感も出現したため当院耳鼻咽喉科外来を受診 した。

既往歴:心房細動,前立腺癌,白内障 家族歴:特になし

アレルギー歴:特になし

入院時身体所見:食事摂取不良,倦怠感,38.5度の 発熱に加えSpO2:94%(RA)と,酸素化の悪化傾向あり。

頸部全周性に皮膚発赤・腫脹があり,頸部伸展困難,

含み声を認める。

喉頭内視鏡所見:咽喉頭全周性に発赤・腫脹,気道 狭窄傾向,痰・膿貯留を認める(図1)。

頸胸部単純CT:右側副咽頭間隙に低吸収域,右側優 位にガス産生と考える含気を認める(図2)。

血液生化学所見:アルブミン低下,肝機能一部上昇 に加え,脱水所見と著名な炎症反応上昇を認める。

診断:気道狭窄のある深頸部膿瘍

緊急で気管切開・膿瘍ドレナージ術施行した。

手術所見:経口挿管・全身麻酔下に胸骨切痕2横指

頭側で15 cmの襟状切開を施行し結合織を剥離,前頸

筋群を焼灼し切離したが,抗凝固薬内服と炎症による 出血傾向と壊死組織を認め,筋組織も挫滅組織を認めた。

深部にかけて組織の境界が不鮮明であり,前頸筋群 を横切開で切離・甲状腺も正中で両側へ切離した。周 囲組織・筋からは間隙より排膿を認め,強い嫌気臭を 確認した。右側頭側深部にかけてairspace確認したた め,同部位にペンローズドレーンを留置した。気管の 切 離 部(第1–2気 管 輪) に て 中 気 管 切 開 を 施 行 し,

8.0 mmの単回使用気切チューブを挿入した。創部は粗

に縫合し,連日洗浄できる状態としてガーゼ縫合し,

手術終了とした。出血70 ml(1 hr 6 min)(図3)

1

2

細菌培養検査(創部):

Provotella species(嫌気性Gram陰性桿菌)

Corynebacterium species(Gram陽性桿菌)

3

.経過

術後2日目の頸胸部造影CTでは,含気改善傾向だが,

甲状腺右葉(内蔵間隙感染)への炎症波及所見を認め,

下咽頭梨状陥凹穿孔・食道穿孔などによる可能性など 鑑別を要した。

術後8日目に1回目の嚥下造影にてleakがないこと を確認し,経管チューブを挿入,GFO開始とした。術 後9日目の頸胸部造影CTで改善傾向を確認し,同日抗 生剤をMEPM:1g q8hからSBT/ABPC:3g q6hへ deescalationした。術後16日に再度嚥下造影を施行し leakがないことを改めて確認した(図4)。

術後17日に気切チューブ抜去,術後21日目に経管 チューブ・ペンローズドレーンを抜去し,経口摂取開 始とした。術後30日に上部消化管内視鏡検査で咽喉 頭・食道に穿孔がないことを確認した。

その後気管孔の縮小傾向をもって第36病日に退院と した。

4

.結果

創部からの細菌培養検査結果では,嫌気性菌が検出 されており,成人の深頸部膿瘍と矛盾しない。又,嚥 下透視造影検査において造影剤のleakは認めていない が,発症直後に検査を施行しておらず,発症直後は穿 孔していた可能性も考えられる。造影CTでは,甲状 腺内に炎症波及所見あり筋膜間隙・内臓間隙までの感 染が考えられる。担癌状態における免疫低下やTEE施 行直後からである発症時期を踏まえ,医原性による咽 喉頭感染や裂傷・穿孔を生じたことで罹患したと考え られた。

5

.考察

Eichhornらによると,TEE(医原性)穿孔の危険因 子は,胃食道の病理(憩室,食道狭窄または腫瘤性病 変胸部放射線加療歴あり),解剖学的構造(気管食道瘻 または閉鎖症),抵抗性,高齢患者の4つであるが,今 回は,抵抗性と高齢患者が該当すると考えられた。

TEE施行後に頸部痛,嚥下障害,発熱,呼吸困難な どの症状を訴える場合,喉頭内視鏡検査およびCTで の評価が必須である 8)

Hyung Yoon Kimらによると,TEEによる咽喉頭感染 予防の為に,検査施行時に適切な意識下鎮静と局所麻 酔,嘔吐反射と輪状咽頭痙攣を軽減,喉頭の盲目損傷 を最小限にするために直接喉頭鏡を使用,明視下にプ ローブを通過させることを推奨している 6)

今回,医原性の深頸部膿瘍にて外科的加療を施行し た症例を経験した。重篤な深頸部膿瘍をきたす症例で は,穿孔病変を生じる可能性を常に視野に入れて加療 に当たるべきである 7)

穿孔や梨状窩瘻などの確認のため,嚥下造影は可能 であれば発症後すぐに施行すべきだが,緊急疾患なの でまず現場でなかなかできるものではない為,まずは 耳鼻咽喉科へコンサルトを早急に依頼することが重要 である。

参考文献

1) 池宮城秀崇,森 牧子,塩野 理,他:Streptococcus pyogenes による深頸部膿瘍をきたした成人男性の1例.頭頸部外科 2018; 28: 69–73.

2) 日高浩史,小澤大樹:深頸部膿瘍の病態と取り扱い.耳鼻 咽喉科展望2018; 61: 190–201.

3) 宇都宮敏生,八木正夫,岩井 大,他:気管切開術を要した 深頸部膿瘍症例の検討.頭頸部外科2016; 26: 13–17.

4) 渡辺哲生:解剖から見た扁桃周囲膿瘍・深頸部膿瘍.口 腔・咽頭科2016; 29: 9–17.

5) 相澤直孝,土屋昭夫,高橋 姿:食道穿孔を伴う深頸部感 染症の2症例.口腔・咽頭科2013; 26: 149–154.

6) Kim HY, Lee S-C, Park SJ, et al.: A Rare Case of Iatrogenic Deep Neck Infection Secondary to Hypopharyngeal Injury Caused by the Transesophageal Echocardiography. J Cardiovasc Ultrasound 2015; 23(3): 181–185.

7) Lenzi R, Matteucci J, Fusco C, et al.: Iatrogenic Deep Neck Infection Secondary to Transesophageal Echocardiography. Ear Nose Throat J 2019; 98: 547–548.

8) Eichhorn KW, Bley TA, Ridder GJ. Unerkannte Hypopharynx-perforation mit tiefem Halsabszess und Mediastinitis infolge transösophagealer Echokardiographie. HNO 2003; 51(11):

903–907.

 図3      図4

日耳鼻感染症エアロゾル会誌 8(4): 348, 2020

©2020 Japan Society for Infection and Aerosol in Otorhinolaryngology

第 8 回日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会 総会・学術講演会 一般演題 第 8 回日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会 総会・学術講演会 一般演題 33

頸部の広範な皮膚壊死をきたした深頸部膿瘍の一例

久保田 瑛進

1

,石田 芳也

1

,和田 哲治

1

,原渕 保明

2

1北見赤十字病院 頭頸部・耳鼻咽喉科

2旭川医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

【はじめに】頸部には筋膜に区切られた間隙が複数存在し,それぞれに交通を有し,一部は縦隔に まで連続する。これらの間隙に膿瘍を形成した場合,間隙間を経由して広範囲に炎症が波及する可能 性があり,さらには致死的な降下性縦隔炎に進展する可能性がある。今回我々は歯性感染症よる深頸 部膿瘍を形成し,さらに前頸部皮膚に広範な壊死をきたした症例を経験したので,当科における過去 の深頸部膿瘍例と合わせて,若干の文献的考察を加え報告する。

【症例提示】52 歳男性,当院受診の 2 週間ほど前に右下顎の齲歯に対して抜歯術を施行された。そ の後,下顎部の腫脹を自覚したため,当院受診の 5 日前に前医の耳鼻咽喉科病院を受診した。下顎部 から前頸部にいたる腫脹を認め,頸部膿瘍の診断で即日入院し抗菌薬加療を行なったが改善がないた め当科に紹介となった。当科受診時には頸部に広範囲な膿瘍形成を認めた。また前頸部の皮膚は壊死 して皮膚欠損を伴っており,左下咽頭に瘻孔も形成していた。ただちに全身麻酔下に膿瘍の切開排膿,

気管切開術を施行し膿瘍腔にドレーンを挿入した。前頸部の皮膚は広範に壊死していたためデブリー ドマンを施行したが,広範な皮膚欠損を生じた。術後は抗菌薬投与および連日洗浄を施行し,感染を 制御することで,咽頭瘻孔は自然閉鎖された。炎症の鎮静化を待って形成外科にて前頸部の皮膚欠損 に対して大腿より皮膚移植を行い,第 42 病日に退院可能となった。

【考察】過去 10 年間での当科における深頸部膿瘍症例をまとめ臨床的特徴を検討した。当院で加療 した症例は 24 例(男性 17 例,女性 7 例)で平均年齢は 56 歳(1 歳–83 歳)であった。入院期間の平 均は 20 日(7 日–45 日)で死亡例はなかった。気管切開を施行した症例は 6 例で,歯性感染症に起因 する症例が多く,起因菌は Streptcoccus 属が多かった。今回我々は当科における深頸部膿瘍症例に対 して検討を行い,本症例の結果と合わせて考察し報告する。

第8回日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会 総会・学術講演会 プログラム・抄録集より転用

ドキュメント内 一般演題 (ページ 45-48)