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代男性。20XX 年 12 月に右下顎部の腫脹あり,近医歯科を受診して経過をみていたが症 状改善せず,当院歯科口腔外科に紹介された。画像検索で縦隔炎が疑われたため当科紹介,即日入院

ドキュメント内 一般演題 (ページ 48-60)

となった。入院時血液検査で CRP 36.11 と炎症反応高値を認め,造影 CT にて右顎下部から縦隔まで に及ぶ air を伴う被包化された膿瘍を認めた。DNM の診断で,頸部アプローチにより顎下部・縦隔ド レナージを施行した。右顎下部にペンローズドレーンを 2 本,右頸部から縦隔にかけてサンプチュー ブ を 1 本 留 置 し,SBT/ABPC 12 g + MNZ 1500 mg/day で 治 療 を 開 始 し た。 細 菌 培 養 は Prevotella buccae,Streptcoccus intermedius が検出された。抗菌薬および創部の洗浄で症状は改善し,第 9 病日に サンプチューブ抜去,第 12 病日にペンローズドレーン抜去に至った。造影 CT で縦隔内膿瘍の消失 を確認後,第 22 病日に退院となった。その後,再発所見なく経過している。

第8回日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会 総会・学術講演会 プログラム・抄録集より転用

©2020 Japan Society for Infection and Aerosol in Otorhinolaryngology

第 8 回日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会 総会・学術講演会 一般演題

日耳鼻感染症エアロゾル会誌 8(4): 350–351, 2020

第 8 回日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会 総会・学術講演会 一般演題 35

扁桃周囲膿瘍から波及した食道粘膜下膿瘍の症例

吉永 和弘,渡辺 哲生,平岡 晃太,鈴木 正志

大分大学医学部,耳鼻咽頭科・頭頸部外科

Case report

Kazuhiro Yoshinaga, Tetsuo Watanabe, Kota Hiraoka, Masashi Suzuki

Department of Otolaryngology Head and Neck Surgery, Oita University School of Medicine

1

.はじめに

扁桃周囲膿瘍は耳鼻咽喉科の日常診療でしばしば,

遭遇する急性炎症疾患である。食道粘膜下膿瘍は報告 の少ない非常にまれな疾患である。今回われわれは扁 桃周囲膿瘍から波及した食道粘膜下膿瘍の症例を経験 したので文献的考察を加えて報告する。

2

.症例

症例:83歳 女性 主訴:咽頭痛,発熱

既往歴:胃癌(2003年 幽門側胃切除術),膵管乳頭 粘液性腫瘍

アレルギー:造影剤アレルギーあり

現病歴:X–10日より発熱,咽頭痛に対して前医で抗 菌薬点滴による入院加療が行われていたが,症状は改 善しなかった。X–1日に咽頭痛は軽度改善傾向であっ たが,X日に再増悪し,頚部単純CT検査,経鼻内視鏡 検査を施行され頚部膿瘍,喉頭浮腫を疑われ同日当科 転院搬送となった。

入院時現症:体温35.9°C,HR 85/分,BP 115/63 mmHg,

呼吸数18/分,SpO2 98%(room air)

両側口蓋扁桃の発赤は軽度で,咽喉ファイバー上は 左中咽頭側壁より排膿,左披裂部の浮腫を認めたが,

気道は保たれていた(図1)。左頚部は軽度発赤,圧痛を 認めた。血液検査上は,WBC 14060/μL,CRP 26.28 mg/dL と炎症反応高値であった。

経過:造影剤アレルギーの既往があるため,単純頸 胸部CT検査を行い,左扁桃周囲に膿瘍形成を疑う低 吸収域を認めた。また,左中咽頭側壁〜左傍咽頭間隙 に低吸収域の像があり,椎前部,食道周囲にも均一の 低吸収域を認め上部食道まで連続していた(図2)。撮 像範囲にはガス産生像,free airは認めなった。左扁桃 周囲膿瘍による下咽頭〜上部食道への炎症波及,粘膜

浮腫が考えられ,待機的に上部消化管内視鏡検査の方 針となった。

SBT/AMPCによる抗菌薬投与行い炎症反応は改善傾向

であったが,入院後4日目に左披裂部浮腫の増悪(図3)

に加え,発熱,咽頭痛といった臨床症状も軽度増悪認 めたため,頸胸部造影CTの方針となった。造影剤ア レルギーのためPSLを内服し施行した。左扁桃周囲に

1 入院時喉頭ファイバー所見

2 入院時単純CT

扁桃周囲膿瘍から波及した食道粘膜下膿瘍の症例

吉永 和弘,渡辺 哲生,平岡 晃太,鈴木 正志

大分大学医学部,耳鼻咽頭科・頭頸部外科

Case report

Kazuhiro Yoshinaga, Tetsuo Watanabe, Kota Hiraoka, Masashi Suzuki

Department of Otolaryngology Head and Neck Surgery, Oita University School of Medicine

1

.はじめに

扁桃周囲膿瘍は耳鼻咽喉科の日常診療でしばしば,

遭遇する急性炎症疾患である。食道粘膜下膿瘍は報告 の少ない非常にまれな疾患である。今回われわれは扁 桃周囲膿瘍から波及した食道粘膜下膿瘍の症例を経験 したので文献的考察を加えて報告する。

2

.症例

症例:83歳 女性 主訴:咽頭痛,発熱

既往歴:胃癌(2003年 幽門側胃切除術),膵管乳頭 粘液性腫瘍

アレルギー:造影剤アレルギーあり

現病歴:X–10日より発熱,咽頭痛に対して前医で抗 菌薬点滴による入院加療が行われていたが,症状は改 善しなかった。X–1日に咽頭痛は軽度改善傾向であっ たが,X日に再増悪し,頚部単純CT検査,経鼻内視鏡 検査を施行され頚部膿瘍,喉頭浮腫を疑われ同日当科 転院搬送となった。

入院時現症:体温35.9°C,HR 85/分,BP 115/63 mmHg,

呼吸数18/分,SpO2 98%(room air)

両側口蓋扁桃の発赤は軽度で,咽喉ファイバー上は 左中咽頭側壁より排膿,左披裂部の浮腫を認めたが,

気道は保たれていた(図1)。左頚部は軽度発赤,圧痛を 認めた。血液検査上は,WBC 14060/μL,CRP 26.28 mg/dL と炎症反応高値であった。

経過:造影剤アレルギーの既往があるため,単純頸 胸部CT検査を行い,左扁桃周囲に膿瘍形成を疑う低 吸収域を認めた。また,左中咽頭側壁〜左傍咽頭間隙 に低吸収域の像があり,椎前部,食道周囲にも均一の 低吸収域を認め上部食道まで連続していた(図2)。撮 像範囲にはガス産生像,free airは認めなった。左扁桃 周囲膿瘍による下咽頭〜上部食道への炎症波及,粘膜

浮腫が考えられ,待機的に上部消化管内視鏡検査の方 針となった。

SBT/AMPCによる抗菌薬投与行い炎症反応は改善傾向

であったが,入院後4日目に左披裂部浮腫の増悪(図3)

に加え,発熱,咽頭痛といった臨床症状も軽度増悪認 めたため,頸胸部造影CTの方針となった。造影剤ア レルギーのためPSLを内服し施行した。左扁桃周囲に

1 入院時喉頭ファイバー所見

2 入院時単純CT

中心が低吸収域で辺縁が高吸収域の膿瘍形成を疑う像 を認めた。中咽頭〜下咽頭レベルでは膿瘍腔は自壊し ており,膿瘍空は傍咽頭間隙から咽頭粘膜間隙,咽頭 後間隙に連続し,上部食道の高さの椎前部,食道周囲 に認め食道周囲膿瘍が疑れた(図4)。緊急上部消化管 内視鏡検査を施行し,下咽頭に瘻孔開口部と膿性排液 を認めた。食道入口部〜頚部食道にかけて左側壁側の 圧排も認めた。同部位の超音波内視鏡検査では粘膜内 に液体貯留あり,食道粘膜下膿瘍の診断となった(図 5)。下咽頭の瘻孔開口部より排膿があり,これまで

CRP,WBCともに軽快傾向であることから上部消化管

内視鏡下の外科的切開は行わず抗菌薬での治療継続の 方針となった。その後,入院8日目には左披裂部の浮 腫は改善し,血液データ上も炎症反応改善認めたため 抗菌薬内服へ変更し退院の方針となった。退院後は近 医耳鼻科へ紹介し,喉頭ファイバーや頸胸部CT検査 で径観察行ったが,喉頭から上部食道の浮腫はさらに 改善し,その後も症状再燃は認めていない。

3

.考察

食道粘膜下膿瘍は,本邦でも10数例と報告の少ない 稀な疾患である。鑑別疾患としては,縦隔膿瘍や食道 穿孔 2)との鑑別が重要である 1,2)

食道粘膜下膿瘍と縦隔膿瘍は排膿時の切開部位が異 なるが,外切開を行った後に排膿認めず,診断に難渋 した食道粘膜下膿瘍の報告もあり両疾患の鑑別は必須 であると考える。縦隔膿瘍との鑑別としては,造影CT 検査で食道粘膜下膿瘍は縦隔膿瘍と比較し膿瘍腔が限 局的であり,境界明瞭であるという鑑別点がある。

また,食道粘膜下膿瘍において嫌気性菌によるガス 産生を認める際は食道穿孔との鑑別も重要である。食 道穿孔に対する上部消化管内視鏡検査は病態を悪化さ せるため早期には行わないほうが良いとの報告があり,

嚥下造影検査が鑑別に有用である 2)。本症例では,造 影CT上,膿瘍は食道粘膜下に留まっており,ガス産 生像,free airを認めなかったため,加えて上部消化管 内視鏡検査,超音波内視鏡検査を行うことで診断,治 療が的確に行えたと考えられる。

また,食道粘膜下膿瘍の治療は,外切開や内視鏡的

なドレナージの報告もあるが,近年では抗菌薬による 保存的治療で軽快する例も報告されている 3)。本症例 は保存的加療で軽快したが,症状改善しない場合は内 視鏡下での粘膜切開も考慮しうると考えられた。

4

.まとめ

扁桃周囲膿瘍から波及した食道粘膜下膿瘍の症例を 経験した。食道粘膜下膿瘍の診断は造影CTが有用で あると諸家の報告にあるが,加えて上部消化管内視鏡 検査,超音波内視鏡検査が有用であった。

本症例では,扁桃周囲膿瘍は自壊し,排膿を認めて おり,食道粘膜下のみに炎症がとどまったために抗菌 薬での保存的加療を行い軽快したと考えられた。

参考文献

1) 野村文敬,立石優美子,角 卓郎,他.縦隔膿瘍と鑑別を要 した食道粘膜下膿瘍の1例.日本気管食道科学会会報 2017;

68: 314–319.

2) 山内麻由,槇 大輔,飯島宏章,他.診断に難渋した食道粘 膜下膿瘍の1例.日本気管食道科学会会報2019; 70: 376–

382.

3) 井上麻美,岡本康太郎,永尾 光,他.扁桃周囲膿瘍から波 及した食道粘膜下膿瘍の1例.日本耳鼻咽喉科学会会報2016;

119: 962–966.

3 入院4日目 喉頭ファイバー所見

4 頸胸部造影CT

5 上部消化管内視鏡検査,超音波内視鏡検査

ドキュメント内 一般演題 (ページ 48-60)