第 3 章 界面ナノバブルのピニング
3.3. 界面ナノバブルのピニングの定量的な評価
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ピニングが強く働くような基板上では三相界線が動きづらくなるため CAH は大きくな り,弱く働く場合ではCAHは小さくなる.したがって,CAHの評価はピニングの間接的な 評価と同義である.しかしながら,界面ナノバブルの三相界線が前進・後退する際の接触角 を測る術は未だに存在しないため,CAHによる界面ナノバブルのピニングの評価は難しい.
そのため,界面ナノバブルのピニングの評価には異なる手法を用いる必要がある.
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Figure 3.3 Topographical PF-QNM images (5 × 5 μm) of HOPG/water interfacial nanobubbles. The images were obtained at (a) 45 min, (b) 90 min, (c) 150 min, (d) 150 min (adhesion image), (e) 180 min, and (f) 230 min after solvent exchange with a setpoint of 903 pN, 770 pN, 2.62 nN, 2.62 nN, 462 pN, and 462 pN, respectively. The white circles, marked as (1), (2), and (3) indicate shrinking nanobubbles. The blue circles marked as (4), (5), and (6) indicate the bubbles whose footprint radius increased. The white lines in (f) indicate the positions of the steps on the HOPG surface. The broken lines marked as (i), (ii), and (iii) indicate the spherical and neck regions of a coalesced nanobuble.
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Figure 3.3 は PFT モードで計測した同じ領域での HOPG/純水界面ナノバブルの画像であ
る.画像はそれぞれ,溶媒交換法の終了時から(a) 45 min,(b) 90 min,(c, d) 150 min,(e) 180
min,(f) 230 min後に取得している.計測時のプリセット値(探針の最大押し込み強さ)はそれ
ぞれ(a) 903 pN,(b) 770 pN,(c, d) 2.62 nN,(e) 462 pN,(f) 462 pNである.これらの計測とは 別に,(a)と(b)の間である75 min後にもプリセット値1.92 nNで計測している.75 minと(c,
d) 150 minの計測は1.92 nNと2.62 nNという強い力で計測している一方,それ以外の計測
はすべて1 nN以下の弱い力で計測している.
Figure 3.3(a)を見ると,フットプリント直径が100-700 nmの半球状ナノバブルが多数生成
されている.しかしながら,75分後の強い力での計測を挟んだ後に取得したFigure 3.3(b)で は,いくつかの界面ナノバブルがいびつな形状に変化していた.また白枠で示しているよう に,合体してダンベルのような形状を示すナノバブルも観察された.強い力で計測した
Figure 3.3(c, d)のうち,高さ像の(c)では界面ナノバブルは観測されず,HOPG表面のステッ
プのみが見えている.しかし吸着像の(d)では,より変形した界面ナノバブルの存在が検知 されている.このことから,強い力で計測した場合は界面ナノバブルを完全に押しつぶして しまい,その下にあるHOPG 表面まで探針が到達しているのだと考えられる.強い力で計 測した際に界面ナノバブルが高さ像で見えなくなる現象は先行研究でも報告されている
(Figure 1.19)[106].その後,弱い力で計測したFigure 3.3(e)では再び界面ナノバブルが現れた
が,その変形・合体はFigure 3.3(b)に比べて明らかに進行していた.その後,弱い力で続け て計測したFigure 3.3(f)では,界面ナノバブルの変形・合体の進行は見られなかった.した がって,本計測で見られたナノバブルの変形・合体は経時変化によるものではなく,強い力 での計測によって促されたものであると考えられる.
Figure 3.3(f)の白線は,HOPG 表面のステップ構造を示している.全ての界面ナノバブル
は明らかにこのステップ構造を避けて存在していることがわかる.1.2.1.1節で述べた通り,
このステップ構造はテラス領域に比べて親水性を示す.そのため,気相である界面ナノバブ ルはステップ構造を避けて配置・変形していると考えられる.
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Figure 3.4 Scatter plot of the pinning force as a function of footprint radius. The pinning forces were calculated from Equation (3.3).
Figure 3.4は,式(3.3)を用いてFigure 3.3(a), (b), (e)における界面ナノバブルのピニングフ ォースを計測し,フットプリント半径に対してプロットしたものである.マクロスケールの 接触角と気液界面張力はそれぞれ𝜃 = 89°,𝛾 = 72 mN/mを用いている[122].フットプ リント半径が 10 nm 程度まで小さな界面ナノバブルにおいても,その気液界面張力はマク ロスケールの値とほとんど変わらないことが実験によって報告されている[73].(a) 45 minの プロットを見ると,界面ナノバブルのフットプリント半径が大きくなるにつれてピニング フォースが小さくなる傾向が見られる.Figure 3.2および式(3.3)から,ピニングフォースの 減少は液相側の接触角の減少と同義であることがわかる.したがって,この結果は界面ナノ バブルの接触角がフットプリント半径に依存しており,フットプリント半径が大きいナノ バブルほど小さな接触角を持つことを意味している.同様の傾向は,多くの先行研究で報告 されている[30,44,45,58].しかしながら,強い力で圧し潰された後に計測した(b) 90 min お よび(e) 180 minのプロットでは,その依存性が明らかに弱くなっている.つまり,押しつぶ された後の界面ナノバブルの接触角はそのフットプリント半径によらず一定になっている.
これは,強い力で圧し潰されることで平坦になった形状を維持しようと,小さなフットプリ ント半径だけでなく大きなフットプリント半径の界面ナノバブルにもピニングフォースが 三相界線に強く働いたことを意味している.Figure 3.5にピニングフォースによる界面ナノ バブルの形状変化の維持に関する模式図を示す.
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Figure 3.5 Change of the shape of small and large interfacial nanobubbles due to scanning with strong load forces. The deformed shape is kept due to strong pinning force. Some scale is not correct for clarity.
Figure 3.4から分かる通り,強い力でスキャンされた後の界面ナノバブルはピニングフォ
ースが変化し,(e) 180 minにおいてはそのフットプリント半径によらず70.5 mN/m付近で 一定となった.この値は,HOPG/純水界面におけるナノスケールのピニングフォースの最大 値であると考えられる.前述した通り,三相界線のピニングは基板表面の構造的・化学的不 均一に由来する.HOPG 表面ではステップ構造を除いたテラス領域はサブナノオーダーで 平滑であるため,局所的な表面の不均一は無視できると考えられる.したがって,HOPG/純 水界面におけるピニングフォースの最大値は,テラス領域の全域で同一の値を示すはずで あり,Figure 3.4における(e) 180 minのプロット結果とよく一致している.