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1) 井戸内貯留水のモニタリング

4.4.3 環境負荷の低減

低濃度汚染サイトでの実績として、1枚のスリットに注入する薬剤量は、毎分70Lの噴射量 で20秒間の投入としたことから、23 L/ 枚となる。スリット直径を2.5 mとしてその平面積は 4.9 m2となる。

このことから図4.26に示すように、薬剤注入厚さは平均で5 mm(0.023 m3 / 4.9 m2=0.005 m)

となり、30cmのスリット離隔の0.017倍(5mm/300mm)であり、注入率として1.7%の微量な 添加量となっている。

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新規開発技術はこのように浄化促進剤を地中に微量に投入するものであり、地中への異物添 加量を極力抑えたものとなっている。

地盤の泥濘化を発生させないことと併せて、新規開発技術は環境低負荷型の技術となってい る。

図 4.26 開発技術の全体像 水素徐放剤注入

水素拡散範囲 [ 浄化範囲 ]

ウォータージェット地盤切削径:25 m

調整可能

浄化促進剤注入厚(例):5 mm (少量の薬剤添加)

[地中への異物添加量微量]

スリット離隔:0.10. 5 m

調整可能

スリット厚:23 cm

(薄層状に清水で地盤切削)

[地盤全体の泥濘化なし] 施工能率

[噴射攪拌方式の2倍以上]

91 [ 参考文献 ]

1) 伊勢孝太郎, 須藤孝一, 井上千弘: 嫌気性細菌群によるトリクロロエチレン脱塩素反応中

におけるメタン生成細菌の影響, 環境バイオテクノロジー学会誌, Vol.10, No.2, pp.105-108, 2010.

2) Yoshikawa, M., Zhang, M. and Toyota, K.: Integrated anaerobic-aerobic biodegradation of multiple contaminants including chlorinated ethylenes, benzene, toluene and di-chloromethane, Water Air Soil Pollute., Vol. 228, No. 1, pp. 1-13, 2017.

3) 吉川美穂, 張銘, 栗栖太, 豊田 剛己: 嫌気・好気連続処理におけるトルエン,ベンゼン及 びジクロロメタンの好気分解微生物の安定同位体プローブ法による同定, 土木学会論文集 G(環境), Vol.74, No.3, 117-125, 2018.

92 第5章 結論

本論文は、VOCsの内、塩素化エチレン類により汚染された難透水層を浄化する融合技術の 開発に関しての研究成果をまとめたものである。

開発技術は、バイオレメディエーションに分類されるものであり、地中微生物を活性化させ る目的で水素徐放剤をウォータージェット技術で地中に薄層状に投入するものである。

難透水層の浄化に関しては、従来の技術は浄化効果の観点から適用困難、もしくはコストや 地盤の泥濘化の問題があり、適用性に難があったが、新規技術はこの問題を解決した。

開発技術を構成する理論的根拠が水素の分子拡散をベースにしていることから、これに関す る基礎研究内容とその成果を述べ、さらに複数の浄化モデルを構築してコスト試算等を行い、

新規施工方式(スリット注入方式)の優位性を確認した。

これらの基礎研究の成果をもとに、2つの実汚染サイトにおいて試験工事を行って浄化効果 を確認して技術の有効性を実証し、さらに施工性向上のため行った手法の有効性を実証した。

結論を以下に総括する。

第1章 序論

土壌・地下水汚染の現状と汚染対策について述べ、VOCsの汚染に関しては原位置浄化の需 要があるものの、既存の浄化技術に課題があることを示した。また、研究の基本となる嫌気性 微生物によるVOCs分解のメカニズム、さらにウォータージェット技術を地盤切削に用いた場 合の基本的な考え方について述べ、開発の基礎となる技術内容について説明し、本開発の目的 を明確にした。

第2章 既存の浄化技術と新規開発技術

本章の前半では、本研究の施工技術の基礎となるウォータージェットで浄化剤を地中にて攪 拌噴射する方式の利点と問題点を述べ、さらにこの方式で実施した実験結果について述べた。

この実験において、地盤切削間隔等を広げても、浄化剤が地中で半径方向に所定量添加可能 であるとの結果を述べ、今回のスリット噴射方式の基礎技術となっていることを示した。

本章後半では、開発技術の浄化概念と水素の分子拡散により難透水層中に生息するVOCs分 解微生物を活性化させる浄化メカニズムを述べ、従来型のウォータージェット撹拌噴射方式と の差異を説明し、さらに、開発技術を従来の注入方式と機械撹拌方式とも比較してその優位性 を示した。加えて、類似の技術として、フラクチャリングで地盤に薄層状のゾーンを設けてこ こに浄化剤を注入する方式を紹介し、その内容と開発技術の差異を説明し、開発技術の独自性 と優位性を明確にした。

第3章 ウォータージェットを用いたバイオレメディエーション技術に関する基礎的な研究 本章前半では、水素の分子拡散に関する基礎研究の成果として、水素の分子拡散係数を求め るために新規開発した装置について説明し、成果として、この装置を用いて得られたガラスビ ーズと豊浦標準砂を試料として用いた場合の水素の分子拡散係数について示すことができた。

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新規開発した装置は透過型拡散試験方式のものであり、容器本体は水素ガスを透過しにくい材 質であるアルミ合金とし、溶接個所も極力減少させたもので、内部からの水素ガス漏洩のない ことを確認できた。

本章後半では、浄化促進剤(水素徐放剤)をどのような方式で地中に投与するのが効率的か を検討した。平面的拡散と中空円筒形拡散および中空球状拡散をモデルとし、水素の拡散係数 を4ケース( 5×10-10 m2/s, 1×10-10 m2/s, 5×10-11 m2/s, 1×10-11 m2/s )とし、拡散期間を半年、2年、

10年としてシミュレーションを行った。

結果の一例を述べると、拡散期間を 2 年とし水素の拡散係数を 5×10-10 m2/sという比較的高 い値とした場合でも、平面的拡散、中空円筒形拡散および中空球状拡散で拡散距離が、それぞ

れ0.75 m、0.55 m、0.45 m程度となり、水素の分子拡散は極めて緩慢なものであることが明ら

かになった。

さらに、浄化促進剤投入方式として先の3種類の方式を用いて、一定規模の汚染モデルを設 定し、これに対して拡散期間を半年と2年として具体的なコスト試算と比較を行い、結果とし て平面的拡散方式が圧倒的に優位であることを示した。

第4章 ウォータージェットを用いたバイオレメディエーション技術の現場実証試験

第3章で理論的研究を行った薄層状スリットに水素徐放剤を投入する浄化手法を、実汚染現 場でウォータージェットを用いて試験施工し、その浄化効果と施工性を確認できた。

薄層離隔を上下方向で0. 3mとして高濃度と低濃度の2汚染現場にて実証実験を行った結果、

低濃度汚染サイトでは8.5箇月でほぼ完全に浄化され、高濃度汚染サイトでは最大濃度75mg/L であったテトラクロロエチレンが2 年間でほぼ環境基準値(0.01 mg/L)レベルまで分解され、

ウォータージェットによる浄化促進剤の投入と水素の平面的拡散を併用したバイオレメディエ ーション技術の有効性が実証された。

さらに、施工性向上を目指して実施した以下の手法の有効性を確認できた。

① 拡径のためにウォータージェットにエアー併用しても嫌気性微生物に悪影響なく浄化可能

② スリット造成後に、時間をおいてここに浄化剤を圧入しても端部までの圧入が可能

③ 浄化剤に加重材を添加することにより地表面へのリーク現象を防止でき噴射浄化剤全量を 投入可能

加えて、高濃度汚染サイトと低濃度汚染サイトでの浄化効果を勘案して水素の拡散距離と拡 散係数を推定し、この値と第3章での研究結果とを比較し、水素の分子拡散係数は通常の土壌 において想定される間隙であれば一定の値となるものと推察した。

本開発技術は地中に浄化促進剤を微量に投入するものであり、地中への異物添加量が極力抑 えられており、加えて、地盤の泥濘化も発生させないことから、環境低負荷型の技術とするこ とができた。

なお、本研究成果は特許(特許第6104122号 登録日2017.03.10)として権利化されており、

国内においては試験施工を実施した結果、2020年初旬に本施工実施の予定であり、また、海外 への展開としては台湾企業に実施権を許諾し、2019年12月に試験施工を実施した。

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今後については浄化期間の予測のほか、トリータビリティー試験や室内でのモデル実験から 浄化レベルの推定、また実装して実汚染サイトの浄化に関する実測データと実績を蓄積するこ とにより、開発技術の適用範囲や適用条件及び適用限界などを明らかにするための研究の継続 を行う。

95 研究業績

[ 論文 ]

1) 川端淳一,河合達司,伊藤圭二郎,上澤進:ウォータージェットを用いた汚染地盤の修復 技術について, 土と基礎・地盤工学会誌 Vol.50 No.10, pp.25-27, 2002.

2) 上沢進,張銘,駒井武:難透水性地盤におけるバイオレメディエーションのための浄化促 進剤投入方式に関する研究, 地盤工学ジャーナル14巻2号, pp.141-148, 2019.

3) 上沢進,張銘,Robert C. Borden,駒井 武:難透水性地盤におけるバイオレメディエーショ ンのための浄化促進剤入方式に関するウォータージェットを用いた現場実証試験, 地盤工 学ジャーナル14 巻2号, pp.149-159, 2019.

[ 講演 ]

1) 伊藤圭ニ郞,川端淳一,河合達司,浦満彦,上沢進:ジェット工法による汚染土壌の浄化 について, 第8 回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集, pp.241-242, 2002.

2) 川端淳一,伊藤圭二郎,上沢進:ウォータージェットを用いた鉄粉混合工法のCVOCs汚染

粘性土層への適用について, 第 13回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 講演集(CD-ROM)S1-11, pp.49-52, 2007.

3) 川端淳一,大島博,浦満彦,地蔵典男,伊藤圭二郎,浜村憲,上澤進:高圧噴射攪拌工法を 用いた原位置VOC汚染浄化事例, 第13回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究 集会講演集(CD-ROM)S1-13, pp.57-62, 2007.

4) 吉川美穂,上沢進,和田忠輔,張銘,竹内美緒,駒井武:VOCs汚染と浄化対策技術 その

3:溶存水素拡散試験技術の開発,第16回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究 集会 (CD-ROM) S6-25, pp.677-682, 2010.

5) 山野辺純一,上沢進,吉川美穂,Ann Borden,Meichin Yeh:ウォータージェット技術を用 いた難透水性汚染土壌の原位置バイオ浄化, 第 19 回 地下水・土壌汚染とその防止対策に 関する研究集会講演集, pp.242-244, 2013.

6) 山野辺純一,上沢進,吉川美穂,Ann Borden,Meichin Yeh:ウォータージェット技術を用 いた難透水性汚染土壌の原位置バイオ浄化(その2), 第20回 地下水・土壌汚染とその防 止対策に関する研究集会講演集, pp. 69-70, 2014.

7) 上沢進,山野辺純,樋上裕之,Ann Borden,Meichin Yeh:ウォータージェット技術を用い た難透水性汚染土壌の原位置バイオ浄化(その3), 第24回 地下水・土壌汚染とその防止 対策に関する研究集会講演集, pp.240-243, 2018.