1) No.1 孔の調査結果と考察
4.2 浄化効果および施工性確認を目的とした低濃度汚染サイトでの試験 .1 施工手順と実験条件
(1) 施工手順
低濃度サイトでの実験は、高濃度部とほぼ同様な方式で実施しているが、施工の効率化を目 途としてウォータージェットの噴射スペックと施工手順を変更した。
施工手順としては、まず、先行してGL-8.5 mまで直径142 mmのシール用のガイドパイプを 設置した後、図 4.16 に示すようにボーリングマシンにより GL-12.0 mまでロッド削孔して直
径45 mmの注入管を設置し、この後、エアーを併用する方式で、ロッド先端から横方向に超高
圧で清水を噴射しつつロッドを回転させて地盤を切削し、円盤状のスリットを造成した。
全スリット造成後、ロッドを最下端のスリット位置まで下げ、浄化剤をエアーは併用せずに 超高圧で横方向に回転しつつ噴射注入した。引き続き、ロッドを一段上のスリットまで引き上 げて同様の作業を繰り返し、GL-9.0 m~GL-12.0 mの深度に11枚の薄層状の水素徐放剤注入域 を造成した。ここで、スリットの上下の間隔は0.3 mとした。
ウォータージェットの噴射状況と現場作業および浄化のイメージを図 4.16 に示す。
図 4.16 ウォータージェットによる浄化促進剤投入工程と浄化のイメージ
(2) サイトBの地質及び汚染状況
実験箇所は、関西地区某所の稼働中工場敷地内で、VOCs の汚染が深度GL-13m 付近まで存 在している。
土質調査結果を図4.17 に示す。
また、汚染調査結果は表4.5に示すとおりである。
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なお、黄色着色部は土壌溶出量基準値を超過している部位を示す。
加えて、図4.17の土質柱状図中に赤丸でこの位置を示した。
今回実験したサイトは、すでに揚水と井戸方式の水素徐放剤注入により浄化処理が実施さ れており、帯水砂層部では良好に浄化が進んでいるものの、GL-9 m程度以深に堆積する難透 水性のシルト層や互層として存在する透水性の低いシルト混じり細砂層部においては汚染が残 存していた。
この互層部の粒形加積曲線を図 4.18 に示す。
表 4.5 サイトBの汚染状況(単位:mg/L)
図 4.17 サイトBの土質柱状図 深度
(GL)
対象物質 TCE cis-1,2 土層
-DCE VC
-1.0m 0.034 0.003 ND
透水層 -2.0m ND ND ND
-3.0m ND ND ND -4..0m ND ND ND -5.0m ND ND ND -6.0m ND 0.016 ND -7.0m ND 0.030 ND -8.0m ND 0.008 ND -9.0m ND ND ND
透水層と 難透水層 の互層 -9.5m ND 0.14 0.002
-10.0m ND 0.12 0.003 -10.5m ND 0.31 0.003 -11.0m ND 0.045 0.006 -11.5m ND ND ND -12.0m ND ND ND -12.5m ND ND ND -13.0m ND 0.003 ND -13.5m ND ND ND -14.0m ND ND ND
溶出
基準 0.03 0.04 0.002
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図 4.18 浄化対象土壌の粒径加積曲線 4.2.2 事前室内試験
(1) 試験方法
メジューム瓶(500 mL)に土壌を134 g投入し、ここに現地から採取した滅菌地下水を266 g 注水して全体として400 gに調整した後、試薬としてTCEを40 mg添加した後、所定の量の水 素徐放剤を添加した。なお、土壌は現地の難透水層から採取したものを混練して均一にした後、
所定の試料分に小分けしたものを用いた。
試験サイトの土壌汚染濃度はcis-1,2-DCE で0.1~0.3 mg/L程度の低濃度であるが、TCEを多 量に添加し、含有量として100 mg/kgとなる高濃度サンプルを作製し、微生物分解性能を明確 に判断できるようにした。水素徐放剤の種類としては大豆油を基質とするもの1種類(米国EOS 社製:E5)とした。週1回の頻度にて、メジューム瓶を上下逆転させたのち上下左右に振って 内部を撹拌した。試料は恒温器にて20℃にて保管した。
メジューム瓶撹拌沈降後に、分離した上部の水を分析した。
分析は、ヘッドスペース・ガスクロマトグラフ質量分析器(HS-GC-M: HSサンプラー Agilent G1888・GC Agilent 6890N・MS Agilent 5973 S )を用いて実施した。
水素徐放剤の添加量としては3ケース、比較のために無添加を1ケースとして計4ケースに ついて14か月間にわたって試験を実施した。
水素徐放剤の添加量は、最小添加量である試料全体重量の 0.2%をベースとしてこれの 2 倍 と4倍の0.4%、0.8%とした。
78 (2) 試験結果
トリータビリティー分解試験結果を図 4.19 に示す。
ここで、分離水の初期濃度は水素徐放剤添加直後のものであり、ここでの TCE の濃度は、
11~38 mg/Lとばらついているが、これは大豆油を基質とする水素徐放剤はVOCsを取り込む性
質を有することから、水分中にVOCsが溶出しにくくなっていることが原因と考えられる。
水素徐放剤が無添加のものでは、6 箇月後に完全分解されており、滅菌処理した現地地下水 と土壌とを撹拌混合することのみで分解が急速に進んだものであり、現地微生物の分解能力が 高いことを示している。
0.2%の水素徐放剤添加については6箇月後サンプルにてVCが検出されているものの、基本
的には、4ヵ月間でほぼVOCsが分解されたものと評価される。
0.4%の水素徐放剤添加のサンプルでは3箇月後にTCEがcis-1,2-DCEに分解されているもの の、これが完全分解されるのには14箇月を要している。
また、0.8%の水素徐放剤添加のサンプルでは10箇月経過後もTCEがcis-1,2-DCEに分解さ れなかったものの、14ヵ月後には全ての物質の完全分解を確認した。
水素の供給量が過大であると、メタン菌等が活発になり、デハロ菌の活性が図られないとの 報告 1) があり、0.4~0.8%の水素徐放剤添加は、結果として過大であり、微量な水素の供給が 浄化の基本であることが裏付けられた。
0.2%の水素徐放剤添加のサンプルでは、cis-1,2-DCEの濃度が3ヶ月経過時点で32mg/Lとい う大きな値を示していたものの1箇月経過後の4ヶ月経過時点でほぼ完全分解されていた。
このことは、分解に通常は期間を要するcis-1,2-DCEであっても、当サイトにおいては環境条 件が整うと微生物分解が加速的に進む可能性を示している。
なお、先に述べた薬剤未添加サンプルにおいては、2ヵ月後サンプルと3 ヵ月後サンプルの VOCs分解のデータが不連続となっている。2ヵ月後サンプルでは2ヶ月間でTCEがほとんど 検出されずにcis-1,2-DCEに分解され23 mg/Lという高濃度で検出されている。しかしながら、
3ヵ月後サンプルでは、再度、TCEが35 mg/Lという高濃度で検出されcis-1,2-DCEがほとんど 検出されないという矛盾した結果を示している。
この原因としては、メジューム瓶毎に小分けした土壌中における微生物の種類や量にバラツ キが生じ、このことが分解結果に影響を及ぼしたものと推察した。
79
図 4.19 サイトBのトリータビリティー分解試験結果
0 10 20 30 40
0 2 4 6 8 10 12 14 16
濃度(mg/L)
経過時間 (月)
(d) 添加量0.2%
TCE cis‐1,2‐DCE 1,1‐DCE VC 0
10 20 30 40
0 2 4 6 8 10 12 14 16
濃度(mg/L)
経過時間 (月)
(a) Control
TCE cis‐1,2‐DCE 1,1‐DCE VC
0 10 20 30 40
0 2 4 6 8 10 12 14 16
濃度(mg/L)
経過時間(月)
(b) 添加量0.8%
TCE cis‐1,2‐DCE 1,1‐DCE VC
0 10 20 30 40
0 2 4 6 8 10 12 14 16
濃度(mg/L)
経過時間 (月)
(c) 添加量0.4%
TCE cis‐1,2‐DCE 1,1‐DCE VC
80 4.2.3 現場実証試験
(1) 浄化促進剤の投入条件
サイトBでの浄化促進剤の投入条件を表 4.6 に示す。
浄化促進剤はトリータビリティー分解試験で性能確認をした大豆油を主成分としたもの(米 国EOS社製:E5)を使用した。
施工方式は、サイトAとほぼ同様であったが、施工性向上のために、全スリットの切削を すべて完了した後に水素徐放剤を注入する方式に変更した。このことにより、各々の工程に時 間差が発生し、最初に設置したスリットに閉塞現象が発生して注入が計画どおりなされない可 能性があったことから、ウォータージェットの到達域を確認した。
この確認は、地盤切削水として熱水(約60℃)を、また浄化剤として冷水(約15℃)を用 い、地中に予め設置した熱電対で地中の温度変化を測定することにより実施した。
測定深度は、GL-10.2 m、GL-11.1 m、GL-11.7 mの3深度であり、この測定の一例として、
GL-10.2 mの結果を、図 4.20に示す。
現場作業条件の関係から、注入実施がスリット切削から1時間半近く経過した後となった ものの、計画どおり半径1.25 mの位置で温度の上昇と下降が検知され、水素徐放剤の計画範 囲への注入が確認できた。
なお、スリット造成にあたっては、ウォータージェットにエアーを添わせる噴射方式が地 盤切削効率を向上させるため、この方式を採用した。
さらに、注入剤の原液比重は約1.0であるが、加重材(バライト)を添加することによりこ れを1.5にすることで、サイトAにおいて発生した薬剤の地表面へのリークを防止を図った。
現場実証試験の状況を図 4.21 に、プラント状況を図 4.22 に示す。
表 4.6 サイトBにおける浄化促進剤の投入条件
噴射量
(圧力:40MPa)
清水(地盤切削) 70 L/min 浄化剤(注入) 70 L/min
(加重材使用:比重1.5)
噴射時のエアー併用
(圧力:0.7MPa)
清水(地盤切削) あり(3 Nm3/min)
浄化剤(注入) なし
対象範囲 φ2.5 m
対象深度(H=3.0m) GL-9.0 m~12.0 m 注入ゾーン土量 14.7㎥/本
スリット数 11スリット
スリット間隔 0.3 m
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(a) 切削水噴射時(GL-10.2m)
(b) 浄化剤注入時(GL-10.2m)
図 4.20 熱電対による温度変化測定結果
図 4.21 施工状況 図 4.22 施工プラント状況
82
スクリーン区間
(2) 浄化効果の確認方法
浄化効果の確認は、土壌をオールコアサンプリングすることにより実施するものとした。
なお、土壌サンプリングの開始時期は、浄化体打設直後に設置した井戸内水の濃度の変化を モニタリングすることにより決定した。ここで、井戸はパージせずに貯留した状態の貯留水を 用いるものとした。