2
筋電図や運動分析で体幹や肩甲帯の動かし方に特徴はありますか?
上部僧帽筋の活動が下部僧帽筋の活動より高くなる傾向がある。
解説
片側肩関節周囲炎患者 15 名と健常成人 15 名を対象に,6 つの異なる検査肢位(60°と120°の屈曲位,前額面で の外転位,および肩甲骨面での外転位)で上下の僧帽筋から得られる筋電図(EMG)に関する報告では,肩関節周囲 炎群は健常者と比べて,60°と120°で上部僧帽筋の活動が有意に高かった。肩甲上腕関節の運動の補償として肩 甲骨が代償運動をしていることを示しているかもしれない。また,肩関節周囲炎群では上部僧帽筋が下部僧帽筋の 活動より高い割合を示した。このアンバランスは,肩関節周囲炎患者のリハビリテーションで考慮すべき重要な点で あるかもしれない。
文献
1) Lin JJ, Wu YT, Wang SF, et al.: Trapezius muscle imbalance in individuals suffering from frozen shoulder syndrome. Clin Rheumatol 24: 569-575, 2005.
3
交感神経の異常は見られますか?
肩関節周囲炎患者は交感神経の作用が低下している。
解説
サーモグラフィーを用いた評価で,健側に比べ 82%に皮膚温度分布の異常がみられ,その内の 3/4 が皮膚温の低下 をきたしていた。また,肩峰下滑液包内と関節包の滑膜への血流が,肩峰下インピンジメント症候群症例や健常者よ りも有意に増加していた。病態との確実な因果関係は明らかになっていないが,交感神経の恒常的な機能になんら かの異常をきたしていることが考えられる。
文献
1) Jeractiano D, Cooper RG, Lyon LJ, et al.: Abnormal temperature control suggesting sympathetic dysfunction in the shoulder skin of patients with frozen shoulder. Rheumatology 31:539-542, 1992.
2) Vecchio PC, Adebajo AO, Chard MD, et al.: Thermography of frozen shoulder and rotator cuff tendinitis. Clin Rheumatol 11: 382-384, 1992.
3) Tamai K, Yamato M: Abnormal synovium in the frozen shoulder: a preliminary report with dynamic magnetic resonance imaging. J Shoulder Elbow Surg 6: 534-543, 1997.
4
どのような痛み方をしますか?
肩関節周囲炎のほとんどに, 烏口突起の圧痛が認められる。
解説
特に原因が思い当たらないのに徐々に痛みが出て,夜間痛による睡眠障害も出る。症例によってはうずくまる程の 強さまで増悪する。痛みの増悪に伴って拘縮が重度化するが,拘縮が完成する頃には疼痛は最大の障害ではなく なっている。発症してから痛みのピークを迎えるまでの期間はばらつきがある。圧痛も症例により異なり,また病期 により変化していくが,一定のパターンは無い。
肩関節周囲炎の 96.4%に烏口突起の圧痛が認められ,腱板断裂の 11.1%,石灰沈着性腱板炎の 14.5%に比較す ると特徴的な徴候といえる。
文献
1) Carbone S, Gumina S, Vestri AR,et al.:Coracoid pain test: a new clinical sign of shoulder adhesive capsulitis. Int Orthop 34:385-388,2009.
まとめ
誘因無く痛みが出ることがこの疾患の特徴の 1 つとされるが,加齢変性が起こっている可能性,上肢の重 量による負荷を考えると, 明確なエピソードが無いから誘因が無いとは一概には言えないのではないか。
最初は痛みだけであるがやがて拘縮が発生し,重症化するとストレッチに反応しない強烈な拘縮に至る。
あらゆる方向に制限があり,決まったパターンはない。 拘縮が完成する頃には痛みは主たる障害ではなく なっていることが多い。
体幹や肩甲帯の使い方にも変化が生じるが,痛みを避けるための反応と可動域制限に対応した使い方は 異なる。従って, 代償するために過剰に動くとは限らない。
理学所見 (肩関節周囲炎理学療法診療ガイドラインQ&A) │ 第2章