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現状確認

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 48-52)

第 3 章 クリーンダッカ・プロジェクトの事例分析

3.3 計画プロセス

3.3.1 現状確認

日本による技術協力の必要性とプロジェクトの実行可能性を検討するために、

ダッカ市廃棄物管理の現状調査とニーズ調査を目的として、2000年2月から20

54 「プログラムは、プロジェクトの個別的なマネジメントでは得ることのできないベネフ ットを得るために、調和の取れた方法でマネジメントされるプロジェクト、サブプログラム、

およびプログラム活動のグループとして定義される」(PMI, 2013, p.9)

プロジェクト

プロセス 作業 JICA事業名 期間 実施年

① 現状確認 短期派遣専門家

調査 6ヵ月 2000年

② マスタープラン

策定 開発調査 26ヵ月 2003年~

  2006年

③ プロジェクト 計画

事前調査

(事前評価) 10日 2006年

実行

(Do)

本体フェーズ プロジェクト実行

クリーンダッカ・

プロジェクト 本体フェーズ

2年   2008年2007年~

評価

(See)

本体フェーズ プロジェクト評価

本体フェーズ

中間評価調査 19日 2008年 実行

(Do)

本体フェーズ プロジェクト実行

クリーンダッカ・

プロジェクト 本体フェーズ

2年   2011年2008年~

評価

(See)

本体フェーズ プロジェクト評価

本体フェーズ

終了時評価調査 20日 2011年

実行

(Do)

プロジェクト 実行

(延長フェーズ)

クリーンダッカ・

プロジェクト 延長フェーズ

2年   2013年2011年~

評価

(See)

延長フェーズ プロジェクト評価

延長フェーズ

終了時評価調査 14日 2013年 計画

(Plan)

図3-3 クリーンダッカ・プロジェクトの 計画・実行・評価プロセス(筆者作成)

43

表3-1 JICAによるダッカ市廃棄物管理改善支援(筆者作成)

00年8月の6 か月間にわたって短期派遣専門家調査がおこなわれた。派遣され たのは、開発途上国の廃棄物管理関係の調査経験を有するコンサルタント 1 名 である。現地での調査は、この日本人専門家を中心として、ダッカ市技術局

(Engineering Dept.)の主任技官(Executive Engineer)と技官補(Assistant Engineer) がその補佐にあたる形でおこなわれた。

以下に本調査の報告書(JICA, 2000)の分析を通して、いかに現状確認がおこ なわれ、それがいかにプロジェクト計画につながったかを確認する。同報告書の 章立ては以下のようになっている。

1章 導入

2章 現状に関する基礎調査

3章 ダッカ市の廃棄物管理の現状

4章 ダッカ市の廃棄物管理で使用されるトラックと機材 5章 ダッカ市の収入と開発活動に関する財務

6章 ダッカ市の廃棄物管理に関連する部局の機能 7章 ダッカ市の廃棄物管理に関して確認された問題 8章 将来のニーズ

9章 提言および問題解決のためのアクションプラン 10章 結び

調査報告書(JICA, 2000)によると、この調査は、ダッカ市の廃棄物の発生量、

収集状況、市の廃棄物管理関係部局の体制、技術力、保有機材、財務状況などに 関する現状(3章~6章)を確認し、そのうえで市民も含めた市全体と市政府の

実施年 期間 事業 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

2000 6ヵ月 短期派遣専門家調査 短専 2003 - 2006 26ヵ月 開発調査(マスタープラン策定)

2005 - 2006 1年 開発調査(フォローアップ)

2005 - 2009 5年 処分場建設 2006 - 現在 10年 青年海外協力隊派遣

2006 10日 事前調査(事前評価) 事前

2007 - 2011 4年 プロジェクト実施(本体フェーズ)

2008 19日 中間評価(本体フェーズ) 評価

2009 - 2010 2年 収集車供与

2011 20日 終了時評価(本体フェーズ) 評価

2011 - 2013 2年 プロジェクト実施(延長フェーズ)

2013 14日 終了時評価(延長フェーズ) 評価

プロジェクト実施 開調

開調FU

処分場建設

青年海外協力隊派遣

プロジェクト実施

収集車

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廃棄物管理に関する問題(7章)およびニーズ(8章)を摘出し、それらの問題 を解決するための解決策を提言(9章)している。表3-2に同報告書に記載され た主要な問題点およびニーズとそれらに対する提言(解決策)をまとめた。

表中の「組織・体制」の問題について補足をすると、当時、ダッカ市では廃 棄物管理業務を保全局(Conservancy Dept.)、技術局(Engineering Dept.)、運輸局

(Transportation Dept.)の3つの異なる部局が担当していた55。しかし、これらの

表3-2 現状確認調査によって確認された問題と原因および解決策

問題と原因 解決策

法律・規則 現在の廃棄物管理関係の法律・規則 は市の業務および責任について曖昧 なガイドラインを示すにとどまって いる。そのため市は廃棄物管理に関 する責任が果たせていない(p.43)

廃棄物管理関係の法律・規則が 不十分・不適切であるため、適切 な法律・規則を整備するべきで ある(p.52)。

組織・体制 ダッカ市においては 3 つの異なる部 局が廃棄物管理に関わっており、こ れらの部局間の連携・調整がないた め、廃棄物の収集・運搬の労働効率お よびシステム効率が悪い(p.45)。

これらの効率を向上させるため に、3部局を統合し、一元的に廃 棄物管理をおこなう部局を設置 するべきである(p.45)

収集 清掃員はほうき、すき、くまで、一輪 車といった道具を用いて手作業で清 掃をおこなっているため、作業に時 間がかかり効率が悪い(p.39)。

手作業による清掃は効率が悪く 危険でもあるため、清掃作業を 機械化するべきである(p.43)。

運搬 本調査による廃棄物排出量の推計に よると、現在 332 台の収集車によっ て総排出量の 40%しか収集できてお らず、100%収集するにはさらに 301 台の収集車が必要である(p.32)。

直ちに 301 台の収集車を調達す る(p.53)

処分 最終処分場では開放埋立がおこなわ れているため、浸出水による地下水 汚染、発生ガスによる大気汚染や発 火・爆発などが起きている(p.44)

これらの環境汚染を抑制するた めに衛生埋立を導入するべきで ある(p.44)。

注:表中のページ番号は短期派遣専門家調査報告書(JICA, 2000)のページ番号 出典:JICA(2000)より筆者作成(下線は筆者)

55 「保全局」は市内の清掃をおこなう部局で、90人の清掃監督員(CIs)と約7,000人の清 掃員(当時)が所属していた。「運輸局」は市の運輸・交通関係を運行・管理する部局で、

廃棄物管理に関してはごみ収集車の運転手が所属していた。「技術局」は市の技術部局で、

土木、電力、電気、機械、車両等すべての技術に関する業務を担当しており、廃棄物管理に 関してはごみ収集車や最終処分場の重機の整備および修理を担当していた(JICA, 2003)

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部局は縦割りで、相互に連絡・報告もなければ、権限や指揮命令系統も他部局に は及んでいなかった。ダッカ市に何人の清掃員がいるのか、何台のごみ収集車が あり、そのうち何台が稼働しており、どういう収集ルートになっているのか、ど れだけの量のごみを収集しており、それは市の総ごみ量の何%なのかといった ことを把握している部局が存在しない状態であった。この状態に対して本調査 は、3部局を統合して一元的に廃棄物管理をおこなう部局を設置することを提言 した(JICA, 2000)。

報告書(JICA, 2000)から見られる本調査の特徴は以下のとおりである。

(1) 問題の確認と原因の分析

現状の問題の把握に関しては、後続調査(JICA, 2003, 2005b)でもほぼ同様の 問題が確認されており、すでにこの時点で主要な事実をピックアップしていた といえる。しかし問題の原因の分析は、市が責任を果たせないのはガイドライン が曖昧なため、収集・運搬の効率が悪いのは3部局間の連携・調整がないためと いった具合に、実際にはひとつの問題には様々な複数の原因があるにも関わら ず、問題と原因が1対1対応で、単純な浅い分析にとどまっている。また、個々 の問題の原因は分析されているが、問題相互の関係、すなわち問題構造全体のシ ステム的分析はなされていない。

(2) 解決策の提示

問題に対する解決策が、法律・規則を整備する、部局を設置する、収集車を 調達する、といった具合に、ないものを整備・設置・調達するという対策にとど まっている。ダッカ市が現状で有する社会資本(住民のなかから発生したごみ収 集サービスなど)を生かしたり伸ばしたりする案は、市職員の教育・訓練と市民 に対する啓蒙以外には見られない。また、解決策の実行可能性(フィージビリテ ィ)を検討した旨の報告はない。

(3) マスタープラン策定の提言

以上のような問題の確認および解決策の提言をおこなったあとで、同報告書 はダッカ市の廃棄物管理に関する「マスタープラン」の策定を提言している。こ の提言は第8章「将来のニーズ」で唐突に現れ、「海外および国内の専門家やコ ンサルタント、大学教授、経験あるダッカ市の技術職員などでチームを編成し、

今後15年を見据えたマスタープランを可及的速やかに策定することが求められ

る」(JICA, 2000, p.46)というだけで、その内容や必要とされる理由は説明され

ていない。あたかも、マスタープラン策定を提言することが本調査の既定の方針 であったかのようであり、マスタープランといえばその内容は説明するまでも なく周知のものとされているかのように読める。すなわち、本節冒頭で解説した、

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①現状調査・②マスタープラン策定・③プロジェクト計画という定型的な流れ

(図3-2参照)を作ることが調査の前提とされていたことがうかがえる。

(4) ダッカ市側の関与

問題に対する解決策のなかに、関連部局の統合、清掃の機械化、301台の収集 車購入という案が含まれている。関連部局の統合に関しては、新部局のトップ3 名を経営学修士号(MBA)を有する工学士とし、職員には土木、環境、機械、化 学、社会学、会計学、保健、法律の専門家を配することを提言している(JICA,

2000, p.45)が、現在のダッカ市の人材状況から見てもおよそ実現可能性の低い

提言といわざるをえない。街路清掃の機械化も、301台の収集車購入も、市内の 交通事情や市政府の財政状況に照らすと到底現実的とはいえない。このような 提言がなされることに対して、調査に関わった 2 名のダッカ市職員からのイン プットはなかったのだろうか?

当事者たちから直接情報を得ることはできなかったが、後続調査の調査報告 書、クリーンダッカ・プロジェクトの進捗報告書ならびに関係者へのインタビュ ーから、ダッカ側が、1)日本側からの提言や条件が実現困難なものであっても、

それを指摘して技術協力プロジェクトの実施を危うくするようなリスクを避け た、2)計画は計画であって、それがすべて実行されるとは思っていなかった、

3)自分たちには困難であっても、外部者の立場であれば、あるいは日本の技術 力・経済力をもってすれば可能かもしれないと考えていたことなどが推測され る。これらについては次項3.3.2で詳しく見るが、これらの理由から、本調査に おいて、日本側からの提言に対して、バングラデシュ側からその実現可能性を危 ぶむ声が出ることがなく、結果的に、日本側の視点を中心とした提言が報告書に 残ることになったと思われる。

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 48-52)