第2章 幼稚園の現場におけるティーム保育の様々な実態
第2節 現場教師から見たティーム保育のキーワードの抽出
Ⅰ.ティーム保育におけるキーワード
ティーム保育の研究を推進する上で、どのような観点や主題が重要な問題意識となるの であろうか。研究上のキーワードや考察対象を探る上で、研究者が学術的立場から構成軸を たどることも大切であるが、幼稚園の教師から広範囲に得たデータから、多くの実践者の所 見を基にして考察を進めることも重要であるだろう。教師から見たティーム保育に関する 重要な主題を見出すことは、実践現場の実態に即した研究を進めることにつながると考え られる。しかし、教師の考えや幼稚園現場の実態を明らかにした先行研究は、単独の園での 取り組みに焦点化したものや、少数の教師の考えや意見を取り上げたものがほとんどであ る。そこで、岡山県内の幼稚園に対する質問紙調査を行い、教師がティーム保育をどのよう なものとして捉えているかを明らかにしてみよう(1)。
Ⅱ.方法
1.調査の協力者・方法・期間・倫理的配慮
岡山県内の公立・私立幼稚園で勤務する教師に対する質問紙調査を行った。調査の協力者、
方法、期間、倫理的配慮等に関する説明は、第1章第3節(本論の48~50頁)で述べた通 りである。
2.調査内容
ティーム保育について、教師がキーワードとして位置付けている要素は何かを明らかに するため、質問項目として、「次の文に続けて、思い浮かんだことを自由にお書きください」
とした上で「ティーム保育とは…」と尋ね、その続きを自由記述で回答するよう求めた。こ れによって、教師がどのような観点からティーム保育を捉えているかについて考察する。
3.分析方法
テキスト型データの計量的な内容分析(計量テキスト分析)、もしくはテキストマイニン グを行うことのできる分析ソフトである「KHCoder(Ver.2.beta.26)」を用いた。
第2章 第2節
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Ⅲ.幼稚園現場の教師から見たティーム保育のキーワード
1.ティーム保育に関するキーワードの抽出
自由記述による回答について、KHCoder(Ver.2.beta.26)を用いた分析を行った。具体 的には、まず、回答の全ての文字データをChasenにより分かち書きし、18,847語を抽出 した。その中から、663語が分析に用いられた。分析に用いた語は、KHCoderの品詞体系 に従った。また、分析対象となる語の統一性を確保するため、語の趣旨を損なわないよう配 慮しながら、「子ども」「こども」「子供」「園児」は「幼児」に、「保育者」「教諭」「先生」
は「教師」に統一する等、語の置換作業を行った。さらに、本来連続して使用される語を分 けて分析しないために、強制抽出の処理を行った(例えば「共通理解」「多面的」等)。以上 の作業を行った後、頻出語の内容及び出現頻度について分析した。資料1は、頻出語の上位 50語を示したものである(「する」「なる」等の意味を成さない語は除いた)。
次に、頻出語のカテゴリー分けを行うため、「階層的クラスター分析」を行ったところ、
図1が示された(集計単位は「文」、語の最小出現数は「23」)。階層的クラスター分析とは、
文中における出現パターンの似通った語の組み合わせをデンドログラム(樹状図)によって 探索するもので、画面左側に並んでいる棒グラフは、それぞれの語の出現頻度を表している。
これによって、資料1に示すような上位の頻出語のうち、どの語と語がよく結び付いて語ら れたのかという傾向を読み取ることができ、また、頻出語がどのようなカテゴリーに分類さ れるかをデンドログラムの色別に見ることができる。分析の結果、41 の語からなる4つの 要素が抽出された(図1の①~④)。
資料1.語りにおける頻出語(上位 50 語)
保育(667)/幼児(423)/教師(366)/複数(276)/職員(210)/協力(199)/連携(172)/学 級(153)/担任(140)/行う(137)/同士(108)/全体(77)/共通理解(76)/一人一人(74)
/園(70)/見る(61)/見守る(53)/進める(49)/全員(45)/目(40)/役割(37)/学年(36)
/一緒(35)/それぞれ(33)/成長(31)/チーム(28)/育ち(28)/援助(28)/指導(28)/分 担(26)/1つ(26)/ねらい(25)/多面的(25)/育てる(24)/共有(24)/思う(24)/他(24)
/力(24)/園(23)/応じる(23)/合わせる(23)/支える(23)/主(23)/発達(23)/教職員
(22)/情報(22)/考える(21)/合う(21)/理解(20)/図る(19) ※括弧内は出現回数
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図1.教師から見たティーム保育に関する4つの要素
最後に、①~④の要素の妥当性について、「KWIC コンコーダンス」を用いて検証した。
具体的には、図1に示す41の抽出語が、分析対象ファイル内でどのように用いられたのか という文脈を確かめた(図2)。その際、図3に示す「コロケーション(collocation)統計」
①
②
③
④
第2章 第2節
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図2.「協力」の文脈の検索
図3.「協力」の前後5語における頻出語の検索
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を同時に用いることで、コンコーダンス検索を行った語の前後に、どのような語が多く出現 していたかを読み取った。例えば、図3を見ると、「協力」という語の2つ前(左2)に「教 師」という語が35回出現していることが示されており、図2でも「協力」と「教師」が文 脈上で強く関連していると言える。このような検証によって、例えば、図1の最上段の「協 力」及び3段目の「教師」の強い結び付きを指摘でき、それらが①の要素を大きく反映する 語である一方、5段目の「行う」は、①の要素にとって意味内容の低い語であること等が判 明した。この作業の結果、41 の語の取捨選択や4つの要素の洗練化を行い、①「複数教師 による協働性」、②「ティーム形態と幼児のグルーピング」、③「指導方法」、④「幼児への 影響」とそれぞれ名付けた。4つの要素の内容及び重要となるキーワードについては、次の ように考えられる。
2.教師から見たティーム保育に関する4つの要素
教師から見たティームに関する4つの要素について、図1を参照しつつ具体的に見てみ よう。代表的な回答を枠で囲った中に挙げた。
(1)複数教師による協働性(キーワード:複数、教師、協力、連携、共通理解)
ティーム保育では、複数の教師による協働体制が、職務上の重要な要素として位置付けら れていると考えられる(表1)。「園全体としての協働体制をつくることで幼児達に対するき め細かな指導や援助を行う」「それぞれの役割を果たしながら、協力して保育すること」の 回答で述べられるように、ティームを組んで保育を行うには、ティーム内での組織化された 動きや、高いティームワークが求められると言える。教師は、こうした彼ら自身の職場にお ける協働性に対する関心が高く、それは、「協力」「連携」の語の示す出現頻度の多さにも表 れている(資料1)。また、教師間の協力や連携について考える上で、「共通理解」がキーワ ードの1つであると示唆される。共通理解とは、幼稚園や保育の現場でよく使われる用語で あり、ティーム保育における教師の専門職性の1つであると考えられる。
表1.複数教師による協働性に関する代表的回答
■複数の教師がチームを組み、協力して保育を行う方法。複数の教師が幼児一人一人に対してより柔軟 に対応する。園全体としての協働体制をつくることで幼児達に対するきめ細かな指導や援助を行う。
■2人以上の教職員が、ねらい、内容(園全体、学級、幼児一人一人)等を共通理解し、それぞれの役
第2章 第2節
- 73 - 割を果たしながら、協力して保育すること。
■同じ園の教師同士が互いに助け合い、幼児の情報も共有し合い、どんな時でも連携して保育すること。
■職員一人一人が自分の持ち味を出しつつ、協力して全体で連携をとりながら保育をしていくこと。
■私の園の職員は4人と少ないため、常に話し合いをして、全員で保育、見守り、準備、環境設定を行 っています。連携って大切だと思います。
■職員同士が共通理解し合いながら同じ方向性をもって保育していくこと。また、悩みを共有し助け合 いながら保育していくこと。
■職員が、それぞれの幼児の実態や課題などを共通理解しながら、同じ方向へ向かって、連携、協力し て保育を進めていくことだと思う。
■教師間で協力し、補い合い、高め合いながら保育を充実させていく体制。
(2)ティーム形態と幼児のグルーピング(キーワード:学級、担任、学級、学年、園、全体)
ティーム保育では、教師側の指導形態の特徴として、活動の内容や幼児の人数規模に応じ た教師のティーム編制と幼児のグルーピングが行われる点を挙げることができる(表2)。
例えば、「1つの学級を複数の担任で保育すること」という回答が認められたが、これは、
学級単位でグルーピングされた幼児集団を、複数担任制というティーム形態で保育するこ とについて述べている。また、「学年ごとや、異学年の教師とも互いに連携をとりながら保 育をすること」という回答もあり、これは、学級を超えて教師のティームが組まれると共に、
満3歳児から5歳児学級までの幼児が学年団で活動したり、異年齢のグループで活動した りする場面を指摘している。このような、教師のティーム編制と幼児のグルーピングは、教 師の裁量で柔軟に変更され得るため、幼児が1日の中で複数のグループを経験する場合も
表2.ティーム形態と幼児のグルーピングに関する代表的回答
■1つの学級を複数の担任で保育すること。
■複数の教師でチームを組み、協力して保育する方法である。1つの学級に複数担任を置く場合や、担 任以外に学級に属さない教師が協力して保育を行う場合などがある。
■学年ごとや、異学年の教師とも互いに連携をとりながら保育をすること。
■学級の枠にとらわれず、学年や全職員で連携して幼児を見守ったり、保育を行ったりすること。
■選んだ遊びの場や、園全体で行う行事などが、ティーム保育に当たるのではないか。