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ティーム保育の実践から見た教師の専門職性

第5章 ティーム保育の教育効果と教師の専門職性

第2節 ティーム保育の実践から見た教師の専門職性

Ⅰ.幼稚園教育において求められる教師の専門職性

『幼稚園教育要領』(2017)において、幼稚園教諭の役割は、「幼児との信頼関係を十分に 築き、幼児が身近な環境に主体的に関わり、環境との関わり方や意味に気付き、これらを取 り込もうとして、試行錯誤したり、考えたりするようになる幼児期の教育における見方・考 え方を生かし、幼児と共によりよい教育環境を創造するように努めるものとする」(1)と示さ れており、幼稚園教諭に確かな専門的知識や技術が求められていることは明らかである。こ のような使命を担う幼稚園教諭は、専門的な知識や技能を修得するための学修時間を経て 養成され、免許状の授与を受け、「専門的・技術的職業従事者」として専門職に認定されて いる(2)。幼稚園教諭が専門職と呼ばれるには、保育に関する知識、技術を修得し身に付ける だけでは不十分であり、教師としての経験を積むこと、日々省察を繰り返すことが求められ る。また、変化する幼稚園や幼児を取り巻く環境を背景に、教師に求められることも増えて きており、教師には自らの専門職性を絶えず向上させる姿勢が必要であると言える。

また、2002(平成14)年に開かれた幼稚園教員の資質向上に関する調査研究協力者会議 にて報告された「幼稚園教員の資質向上について-自ら学ぶ幼稚園教員のために」では、幼 稚園教員の資質向上の意義について説明され、環境の変化を背景とした多様なニーズにこ たえるために幼稚園教員に求められる資質が示された。その中で、幼稚園教諭が磨くべき資 質として、「幼児理解・総合的に指導する力」「具体的に保育を構想する力、実践力」「得意 分野の育成、教員集団の一員としての協働性」「特別な教育的配慮を要する幼児に対応する 力」「小学校や保育所との連携を推進する力」「保護者及び地域社会との関係を構築する力」

「園長など管理職が発揮するリーダーシップ」「人権に対する理解」が挙げられた(3)。本論 の主題と関連する項目としては、「得意分野の育成、教員集団の一員としての協働性」「園長 など管理職が発揮するリーダーシップ」を挙げることができる。「得意分野の育成、教員集 団の一員としての協働性」については、「個性あふれる教員同士がコミュニケーションを図 りつつ、教員集団の一員として協働関係を構築して、園全体として教育活動を展開していく ことが求められている。特にティーム保育においては、複数の教員が持ち味を活かしながら、

幼児一人一人に対してより柔軟に対応することができる点に意義があり、得意分野と協働 性の発揮が期待されている」(4)と説明されている。また「園長など管理職が発揮するリーダ

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ーシップ」については、「園長は、教職員組織のリーダーであり、教職員が互いに尊重しつ つ協力的な組織を構築し、各教員が資質の向上に取り組むことを支援する責任者であり、ア ドバイザーでもある」(5)と園長の責任について言及され、リーダーシップを十分に発揮でき るよう、資質向上に努めることが求められている。

Ⅱ.ティーム保育に求められる教師の専門職性

幼稚園教員の資質向上に関する調査研究協力者会議(2002)では、幼稚園教員に求めら れる資質には、いわゆる「不易」と「流行」の部分があるとされている。いつの時代にも求 められる、幼児を理解し総合的な指導をするために必要な資質は、「不易」として位置付け られ、常に向上させていくべきものであるとされている。一方で、幼稚園を取り巻く環境が 大きく変化する中、新たに幼稚園教員に求められるようになってきた資質は、「流行」とし て位置付けることができ、幅広い生活体験や社会体験を背景とした柔軟性やたくましさを 基礎として向上させていくことが重要であると説明されている(6)。それでは、ティーム保育 に求められる「不易」と「流行」の資質とは一体何であろうか。幼稚園教諭に様々な知識や 技能が求められ、一人一人に専門職としての資質向上が期待される中、現代のティーム保育 の実践において基礎的条件として必要な「不易」の専門職性は「協働性」であり、「流行」

の専門職性は「ティームとしての向上力」であると考えられる。

1.協働性

協働性は、ティームワークを重視する職業には欠かすことのできない資質であると言え、

目標に向かって他者と円滑に職務を遂行しようとする意識によって成り立つ。教師に対す る質問紙調査からも裏付けられたように、協働性の在り方は、ティーム保育の実践の成功を 左右する重要な観点である。協働性を持ちながら他者と物事を進める際には、一人一人が確 かに協働しているという意識を強く持つことが基盤となり、実践が進められなければなら ない。一人一人が協働性を強く認識することは、園全体の協働性を向上させることにもつな がるであろう。それでは、協働性を支える上で特に重要な要素は、一体どのようなものであ るのか、という問いに対しては、調査から得られた現場教師や園長経験者の語りを総括する と、協調性や受容力・許容力、共通理解力であると考えられる。そういったティーム保育を 支える教師の資質の育成は、養成段階においても求められると言え、その重要性を意識でき

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るような理論の教授や、協働性を要する取り組みを多く取り上げる養成カリキュラムの展 開が望まれる。さらにそれらの学びが、着任後の研修等と連続性を持って展開していくこと で、さらに個々の資質向上につながってことが期待できると考えられる。

(1)協調性や受容力・許容力

協調性とは、「他の人と物事をうまくやってゆける傾向や性質」(7)とされ、人として社会 または集団において生活する上で欠かせない。職務遂行においても同様であり、個々の育っ てきた環境やそもそもの気質によるところも大きいが、どのような職業に就いたとしても 不可欠である。協調性は、周りとの関係を円滑に構築できる資質として重要視されており、

その上に協働性は成立すると言える。個人として高い職務遂行能力を持ち合わせている人 でも、協調性がないと職場の雰囲気に馴染むことができない場合が多く、また協調性が低い 人が集団にいると、トラブルが生じる可能性も高い。特にティームワークを要するティーム 保育は、協調性が強く求められる。他教師の意見を聞きながら、その中で自分の考えも発信 し、自分自身が組織もしくはティームの一員であるということを自覚することが重要であ る。それに加え、一人一人が自律性も発揮し、周囲の環境に適応したり、状況を判断しなが ら自分を変化させたりする柔軟性も必要であると考えられる。

また、教師同士の対人関係が望ましい状態にあるためには、受容力や許容力が必要であろ う。人は誰でも、長所、短所、得手、不得手、様々な特性を持っている。幼児だけでなく、

そういった様々な教師の特性を個性として受け止め、受け入れることが大切であり、相手を 尊重したり敬ったりする姿勢が必要であろう。また、人の欠点や問題点を受容したり許容し たりできないと意見の衝突からトラブルが生じる。人間関係を円滑に構築するためにも、相 手を許容する心構えが求められるであろう。特に、熟練教師においては、寛容な態度で、若 手のできにくいことや課題について、長期的な視点で支援することが望まれる。熟練教師自 身もそのような経緯をたどって成長してきたことを振り返れば、若手の苦悩や葛藤に対し て共感し、理解することができるであろう。教師同士が、お互いを補完し合えるような理想 的な人間関係を構築し、園内に支持的風土を定着させることが、協働性を高める大きな要因 となると考えられる。

以上に関連する内容は、ティーム保育に関する先行研究でも指摘されており、また、本論 における教師に対する質問紙調査においても、協働性に関する6つの要素の1つ「教師間の 信頼関係や雰囲気」(本論の145~146頁)に関連すると言える。やはり、ティームワーク に基づいて複数教師が協働する以上、周囲との和を大切にする重要性は高いと考える。

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(2)共通理解力

他教師と協働して物事を進める際に重要なのは、共通理解をする力であると考える。「共 通理解」は、先行研究だけでなく、教師に対する質問紙調査や研究協力者の語りにおいても、

ティーム保育を支える重要な条件として度々語られるキーワードであった。コミュニケー ションを基に保育に必要な事柄を相互に理解し合うには、必要事項を相手に伝える能力が 必要となる。保育の計画や幼児についての情報等について、人によって受け取り方が様々で あることを十分理解した上で、言葉や時には文章によって説明できる力が試される。コミュ ニケーション能力は、自分の意見を提示し相手を巻き込む能力だけでなく、相手の話を傾聴 する力も含まれる。同時に、相手から提示された事柄を理解する能力も求められる。最終的 には言葉にされなかった意図をも読み取り、自分の考えと合わせて考察していくことも必 要となってくるであろう。ティーム内の教師が、同じ水準で保育についての理解や幼児理解 に努めることは重要であり、個々の教師に見る共通理解力は、協働を支える上で不可欠であ ると考える。

2.ティームとしての向上力

教師としての資質や専門職性の向上については、個人単位で議論される場合が多いが、テ ィーム保育を支える専門職性としては、集団としてのティームワークを基にティームが向 上していく力を挙げることができる。幼稚園や幼児、保護者を取り巻く急激な環境の変化に 対応するために、今後はさらに、ティームの一員としての高い意識の下で園の課題解決に挑 み、園全体のティームとしての専門職性を向上させていく力が必要であると考えられる。教 職員の減少がこれからも予想される中で、秋田(2013)が指摘する「一人一人の専門的知識 や技能だけではなく、お互いがその各々のかけがえのない卓越性を発揮できるよう認め合 いながら、相互に相補って、園の特性を生かして保育を行っていく、チームワークとしての 専門性」(8)が求められるであろう。またこのことは、橋本(2016)が、「保育者間の日々の 協力や話し合い、園内研修などを通して共通理解と協力体制を築くことを基盤に専門性は 高められる。保育者の専門性向上の課題は、一人で果たしていく側面と職場全体で果たして いく側面とがあり、協働する姿勢も保育者の専門性向上には不可欠なものなのである」(9)と 言及していることにも共通する。個々の専門職性を向上させることに加えて、園全体として のティーム力を向上させ、それらを基盤とした保育が期待されていると考えられる。