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ティーム保育の円滑な運営のための有効な施策と園長の重要性

第3章 幼稚園の現場における様々なティーム保育の実践

第3節 ティーム保育の円滑な運営のための有効な施策と園長の重要性

Ⅰ.ティーム保育の運営における園長による取り組みの重要性

ティーム保育が、園内における教職員同士の人間関係を基盤として行われることは言う までもない。その際、今後の研究上の課題の1つとして、園の教職員をまとめる管理職とし ての園長が、ティーム保育を支える職場風土の形成やティーム保育の円滑な運営のために、

日々どのようなことに配慮しているのか、という問題意識を挙げることができる。そこで本 節では、管理職である園長が、どのような具体的な施策を持って教職員をサポートしている のかについて着目し、園長経験者に対するインタビュー調査を基に考察する。園長経験者の 語りからは、ティーム保育の円滑な運営を支える有用な示唆が得られるものと考えられる。

園の長である園長が、教職員の個々の主体性を生かしつつも、彼らをどのようにマネジメン トしていくかは、ティーム保育の実践に直結する極めて重要な課題の1つである。教職員一 人一人の意識も重要ではあるが、集団を客観的な視点で捉えてサポートする園長の責務は 大きいと言えるであろう(1)

Ⅱ.方法

1.研究協力者・調査方法・調査内容・期間

岡山県内の保育者養成校に勤務する、豊富な保育経験を有する園長経験者5名(研究協力 者)に対して、インタビュー調査を実施した。この5名は、本章第2節の研究協力者と同一 である。調査の協力者、方法、期間、倫理的配慮等に関する説明は、第1章第3節(本論の

54~55頁)で述べた通りである。

2.調査内容

研究協力者5名に対して、管理職としてティーム保育の円滑な運営のために、「ティーム を組む際の教師の組み合わせについて配慮していたこと」「園内における教師間の人間関係 が良好に保たれるよう配慮していたこと」「ティーム保育の運営に問題が生じた際の施策」

について、自由記述による回答を求めた。そして、それらの記述内容を基礎資料とし、各内

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容について経験を基に語ってもらうよう研究協力者5名に依頼し、インタビュー調査を実 施した。

3.分析方法

事前に得た自由記述による回答を基に実施された、インタビュー調査における語りを取 り上げて質的に分析した。具体的には、KJ法に準じた方法を採用し、類似する見解を統合 しながら全体像のカテゴリー化を図った。また、筆者による分析・考察の結果は、その都度、

園長経験者でもある研究協力者5名によって、確認と修正の作業を加え、論述の妥当性を高 めた。研究協力者の発言内容は、録音データから逐語録を作成し、ティーム保育の実践にお ける園長としての具体的な施策に関する回答部分に着目しながら分析を行った。以下にお ける罫線で囲んだ部分は、逐語録からの引用であり、本文中の①②③等の番号は、具体的な 施策に関する語り例の番号と対応する。

Ⅲ.円滑なティーム保育の運営のための教師の組み合わせ

ティーム保育の運営を考える上で、教師の組み合わせは最も議論されるべき問題である。

ティーム保育を支える重要な基礎的な条件であるとも言え、その決定は園長に委ねられる。

本人の希望を考慮する場合もあるが、「教師としての経験年数、その園での勤務年数を基本 に、指導力や実践力や経営力、人柄なども考えて組み合わせを決めていた」(表1‐①)、「経 験年数や年齢、それぞれの資質や専門的な知識や技能、得意分野、苦手分野、子ども観や保 育観、意欲、性格の相性、その全てが関わってくる」(表1‐②)というように、考慮すべ きことは多岐に渡り、最終的には、それらが総合的に判断され決定される。中でも経験年数 や年齢、その園での勤務年数等に関することは第1として挙げられた。このことは、保護者 にとっても安心感につながる関心の高い事項であると考えられ、園全体を客観的に見た際 の配置のバランスが考慮されるであろう。同時に、「学年のティームに関しては、学年主任 になれる人を先に決めて、それに組み合わせていく」(表1‐③)との経験も語られた。そ の上で、それぞれの教師の持つ保育力や保育観、特性や教師同士の相性が配慮される。複数 担任や学年団等において、年間を通して組み合わせを固定する際には、年度途中の組み替え ができないため、熟考の上、慎重に決定される必要があると言える。

考慮すべき事項の中で最も難しい問題は、教師同士の相性の問題であると考えられる。

- 122 - 表1.教師の組み合わせに関する語り例

①教師としての経験年数、その園での勤務年数を基本に、指導力や実践力や経営力、人柄なども考えて 組み合わせを決めていた。現場の先生は基本的に誰とでも組めるという人が多いけれど、中でも特に 誰とでも組める人がいて、そういう人が潤滑油的な役割を果たしてくれる。

②経験年数や年齢、それぞれの資質や専門的な知識や技能、得意分野、苦手分野、子ども観や保育観、

意欲、性格の相性、その全てが関わってくるので、そういうことをしっかり把握して「この組み合わ せなら」という望ましい組み合わせを考えていた。園の規模や学級数も関係してくる。職員数が少な いと組み合わせに限界があって、この配置しかできないという場合もあって理想通りにいかないこと もあった。

③学年のティームに関しては、学年主任になれる人を先に決めて、それに組み合わせていく。

④積極的で明るい先生と控えめで大人しいタイプの先生など、両極端の特性の人を合わせるのは難し い。性格の相性が一番難しい。

⑤組み合わせによって浮いたり孤立してしまったりすることもある。1人で保育するには適しているけ ど、協調性に欠けるような人は、相手側の性格を考えないといけないから組み合わせに苦慮する。

⑥若い頃は、自分の成長につながって一緒にいると勉強になる先生と組みたいと思っていた。園長にな っても、若い人がそう思える人を組み合わせてあげたいと思っていた。

⑦新採用の時、主任でベテランの先生と組ませてもらったことは非常に有り難かった。何でも質問でき たし、尋ねれば答えてくれて不安がなかった。その時に尋ねても丁寧に教えてくださらない方だった り尋ねにくい方だったりすると、辛かったと思う。若い先生にはしっかり学んでもらいたいという気 持ちがあって、自分にそんな経験があったから、組み合わせを考える時はそれが根底にあったと思う。

⑧職員室の席についてもティーム保育を考える上ではとても重要だと思う。学級担任や分掌などとの兼 ね合いも考えて決めるけど、相性や気が合うで、園内が二分されたりグループ化されたりしてはいけ ない。気が合ったり相性が良かったりというのはいいことだとは思うけど、幼稚園は職場なので気が 合い過ぎて仲良し集団にならないように配慮していた。

「積極的で明るい先生と控えめで大人しいタイプの先生など、両極端の特性の人を合わせ るのは難しい。性格の相性が一番難しい」(表1‐④)と語られるように、園長は、一人一 人の特性や性格を把握した上で組み合わせを決定するが、相性までも含め、多様な特性を持 つ教師集団において望ましい組み合わせを選択することは困難を極めると考えられる。ま た、「組み合わせによって浮いたり孤立してしまったりすることもある」(表1‐⑤)と、配

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置次第で人間関係が上手くいかなくなる可能性があることが示された。「1人で保育するに は適しているけど、協調性に欠けるような人は、相手側の性格を考えないといけないから組 み合わせに苦慮する」(表1‐⑤)と述べられるように、ティームで保育するに当たり、他 者と協働することに課題のある教師の組み合わせについては、特に配慮を要することが示 唆された。「現場の先生は基本的に誰とでも組めるという人が多いけれど、中でも特に誰と でも組める人がいて、そういう人が潤滑油的な役割を果たしてくれる」(表1‐①)ことも あるようだが、普段は良好な関係であっても、保育をするとなると譲れないことやこだわり が表れる場合もあり、性格や相性の問題は解決が難しいものである。

次に、組み合わせの決定において注目すべき点は、若手育成について考慮されるという点 である。その根拠として研究協力者は、「若い頃は、自分の成長につながって一緒にいると 勉強になる先生と組みたいと思っていた」(表1‐⑥)、「新採用の時、主任でベテランの先 生と組ませてもらったことは非常に有り難かった。何でも質問できたし、尋ねれば答えてく れて不安がなかった。その時に尋ねても丁寧に教えてくださらない方だったり尋ねにくい 方だったりすると、辛かったと思う」(表1‐⑦)と自身が若手だった頃を回想した。そし て、自身の経験を踏まえ、ティーム保育には若手育成の効果があることを前提に、「園長に なっても、若い人がそう思える人を組み合わせてあげたいと思っていた」(表1‐⑥)、「若 い先生にはしっかり学んでもらいたいという気持ちがあって、自分にそんな経験があった から、組み合わせを考える時はそれが根底にあったと思う」(表1‐⑦)と、明らかにそれ らの経験が基となり組み合わせの決定における1つの基準になっていることが認められた。

さらに、研究協力者は、「職員室の席についてもティーム保育を考える上ではとても重要 だと思う」(表1‐⑧)と職員室の席の配置にまで配慮が必要であると言及した。そして、

「学級担任や分掌などとの兼ね合いも考えて決めるけど、相性や気が合うで、園内が二分さ れたりグループ化されたりしてはいけない。気が合ったり相性が良かったりというのはい いことだとは思うけど、幼稚園は職場なので気が合い過ぎて仲良し集団にならないように 配慮していた」(表1‐⑧)と教師同士が馴れ合いになると、職務を遂行する上で緊張感が なくなってしまうこと、グループ化による弊害に関する言及が認められた。

近年、幼稚園の小規模化が進み、「園の規模や学級数も関係してくる。職員数が少ないと 組み合わせに限界があって、この配置しかできないという場合もあって理想通りにいかな い」(表1‐②)現状も確認できる。また、公立園に勤務する教師には転勤があり、教師の 異動が生じるが、私立園に勤務する教師は転勤がない場合が多い。教師の入れ替わりの少な